スクールアイドルアニメで見たような二人が、銀河の深宙域を駆けまわります!【とりあえず完結!】 作:ひいちゃ
ダイヤさんとカナンの活躍、とくとごらんあれ!
マーメイ族の里の宇宙港。そこで、ノイズキャンセルヘッドホンをつけた私……ダイヤ・ブラックウォーターとカナンさんは、出発する準備を整えていました。
今から、チカさんの歌が響く中を、あの禁断の島まで突っ込むのです。船の点検はばっちり。後は突入するだけですわ。
人々のほうですが、王様や宰相様、城の中の人などは当身で一度気絶させて洗脳を解いた(どうやら一度気を失わせれば、洗脳の効果は解けるようです。とはいえ、またあの歌を聞けば洗脳されてしまいますが)のですが、さすがマーメイ族、そしてセイレーナ族の人達全てには手が回りません。なので王様たちには、人々が暴動を起こしたり、殺しあったりといった危ない行動をしそうな気配があれば、命を奪わない限りで阻止するように伝えてあります。
里にもチカさんの歌が流れるので、一度洗脳が解ければ問題はないでしょう。後は、チカさんが歌えなくなる前に、私たちが長官を倒し、遺跡を潰せるかどうか、ですわね。もちろん、必ず成し遂げるつもりですわ。
船に乗り込み、ブリッジのシートに座ります。回線の設定で、このブリッジ、そして装甲車『Saint Snow』の車内にも、チカさんの歌声が最優先で届くようにしてあります。対策はばっちりですわ。ベルトを締めると、計器のチェックを行います。その準備中に、チカさんからの通信が入りました。
『こちらの準備はできたみたい。ダイヤさん、カナンちゃん。くれぐれも気を付けてね。リコちゃんをよろしくお願いします』
「任せておいてください。チカさんも、歌頑張ってくださいね」
『はい!』
そして今度は、通信スクリーンに、セーラさんが現れました。
「……」
『……』
二人はしばし無言のまま、見つめあいます。やはりセーラさんも心中は複雑なのでしょう。
そしてその無言の後、セーラさんのほうから口を開きました。
『カナンさん、武運をお祈りしています。必ず無事に戻ってきてください。チカさんのためにも……』
「うん、わかってる。ありがとう」
『いえ。それから……チカさんを身体を張って守ってくれてありがとうございます』
そして通信は切れました。でもその間際、セーラさんの表情が少し柔らかくなっていたのに、私は気づきました。きっと、カナンさんがチカさんを守ったことに、彼女にも心情の変化があったのでしょう。そしてそれはカナンさんも気づいたようでした。その証拠に、カナンさんの表情から後ろめたさのようなものは消えていました。
そのカナンさんに声をかけます。
「こちらのほうはOKですわ。そちらはどうです?」
「うん、こちらもOKだよ。ハナマルちゃんとヨハネのほうはどう?」
「エンジン、ワープドライブ、ともにバッチリずら!」
「こちらもいいわよ!」
そしてカナンさんと顔を合わせます。
「必ず、長官を倒し、遺跡を破壊し、リコ姫を助け出しましょうね」
「うん、そして必ず無事で帰ってこよう!」
「そうですわね……行きます!」
そして私たちの船、AquaS号は飛び立ったのでした!
* * * * *
~見たことない~夢の軌道~追いかけて~♪
チカさんの歌がスピーカーから流れる中、私たちはAquaSを禁断の島に飛ばしていました。
それにしても、チカさんがポップな歌を好きとは驚きですわ。テレビか何かで聞いたのでしょうか?
さて、その歌が流れる中、進んでいくと、禁断の島のほうから戦闘機が飛び立ってきました。どうやら、長官府の軍のものみたいですわね。
「行きますわよ、カナンさん!」
「OK!」
ブースターを全開にして、戦闘機の群れに突撃していきます。戦闘機はこちらにレーザーを発射していきますが、私は集中力を研ぎ澄ませて、そのレーザーを見切り、紙一重でかわしていきます。
振り切れる敵については振り切っていきますが、それでも追撃してくる敵には……。
「そこだよ!」
カナンさんが狙いを定めて、トリガーをひきます。AquaSの後方ハッチが開き、中から迎撃ミサイルが発射されます。迎撃ミサイルからさらに小型のミサイルが発射され、追いすがる敵戦闘機を撃墜していきました。
前方から接近してくる敵機については、レーザーを発射し、撃墜していきます。
そんな空中戦を繰り広げつつ、敵の群れを突破しましたわ!……といったところで。
ドゴァ!!
爆音とともに激しい振動が。もしや!?
「ハナマルさん!?」
「さ、左舷エンジンを撃ち抜かれたずら! 今、切り離すね!」
敵の苦し紛れの攻撃が、エンジンの一機を撃ち抜いてしまったようです。ハナマルさんの操作で爆発する寸前にエンジンを切り離したので、大事に至りませんでしたが、推力と機動力が落ちたのは困りものです。
後方から追いかけてきた敵機と再び空中戦!
それでも、敵と戦いながら、島の目前まで来ましたが……。
「右舷エンジン、出力大幅低下ずら~! これ以上飛び続けられないよ~!」
「レーダー、ダウンしちゃったわ!」
「仕方ありませんわね。島の、あの滑走路に不時着しましょう。皆さん、ショックに備えてくださいまし! それと、念のため、ノイズキャンセルヘッドホン着用ですわ!」
「わかった!」
各所から煙を吐きながら、傷だらけのAquaS号は急降下し、そして……。
「くぅ……!」
「ぐうぅ……」
「~~~!!」
「ずらぁ~!!」
激しい振動が襲う中、なんとか滑走路に着陸したのでした。
「皆さん、Saint Snowに乗り込みましょう! 施設内部に突入ですわ!」
「わかったよ!」
「OK!」
「はいずら!」
* * * * *
装甲車『Saint Snow』に乗り込み、AquaSの後部ハッチを開くと、いるわいるわ。いつぞやの超生物の内部のように、兵士がわんさかと。
ですが。
「そんなもので、このSaint Snowを止めることはできませんわよ!」
機銃で兵士たちをなぎ倒していきます。船に乗り込まれないように、念には念を入れて。
ちなみに麻酔弾なので、死んだわけではありません。かなり長い間、気を失っているだけです。
そして、周囲に動いている者がいないことを確認して……よしOK。
AquaSのハッチを閉め、警備システムをオンラインにして施設の中にレッツゴーですわ! ……あら、マリーさんの口癖がうつってしまったかもしれませんわ。でも、彼女は無事なのでしょうか? 少し気になりますわ。
さらに進んでいくと、今度はロケットランチャーを持った警備兵が! こんなところで重火器を撃ったら大変でしょうに!
彼らが構える前に機銃を発射! 昏倒させて、さらに前進。
敵を機銃でなぎ倒し、隔壁は備え付けのビーム砲で破壊して、とにかく前進前進。
でも、前進はそこまででした。かなり広い空間のところで、パワードスーツに身を包んだ敵と遭遇したのです!
パワードスーツは飛び上がると、ロケットランチャーをこちらに向けました! やばいですわ!!
「皆さん、しっかり捕まっててくださいまし!」
そう言うやいなや、ハンドルを操作し、そのランチャーから発射されたロケット弾を必死に回避します。後ろから悲鳴が聞こえてきますが、気にしません。
「このぉ!!」
その中、カナンさんがガトリングガンを発射しますが、パワードスーツはそれを難なく回避しました。そして腕のガトリングガンを発射してきます。それを再び回避。
……敵は、かなりの手練れのようですわね。
* * * * *
それからも、私たちのSaint Snowはパワードスーツと激しい戦いを必死で繰り広げました。
こうなれば、出し惜しみはなし。
ビームキャノンを発射し、向こうが撃ってきたロケット弾をかわし、ガトリングを放ちます。
でも、その攻撃のどれも、敵に有効打を与えることはできませんでした。
……くっ、早く中枢部に行かなければいけませんのに!
そう焦りながら、私たちのSaint Snowが最後のロケットランチャーを発射したその時!
ロケット弾をかわすパワードスーツの動き……正確にはその動きの癖から、私はそのことに気づいたのです。
あのパワードスーツは……マリーさん!?
そのことに、どうやらカナンさんも気づいたようです。
「ねぇ、あのパワードスーツ、もしかして……」
「もしかしなくてもそうですわね。マリーさんとここで戦うなんて、なんてことでしょう……きゃっ!!」
そこで爆音と衝撃! マリーさんのパワードスーツのガトリングガンが、Saint Snowのビームキャノンを撃ち抜いたのです。
「カナンさん、ビームキャノンのパージを!」
「わ、わかった!」
ビームキャノンを切り離すと同時に、それが爆発しました。これで、残された武器はガトリングガンと機銃、そして体当たりのみ、ですか……。
ですが!
「ですが、相手がマリーさんとなれば、やりようはありますわ!」
何と言っても、彼女の動きの癖は熟知してますからね! 私は集中力を研ぎ澄ますと、彼女のパワードスーツに向けて、Saint Snowを突進させました。
パワードスーツが撃ってきたガトリングガンを、急旋回してかわします。しばらく撃ち続けた後、ガトリングガンを上に向けて持ち上げたところで、そのガトリングガンに、ガトリングガンを発射! 彼女は機関銃を撃った後に、銃口を上に向けて構える癖があるのです。
ガトリングガンは、パワードスーツのガトリングガンに命中し、爆散させます。ですが、これでこちらのガトリングガンも弾切れ。パージします。
そこでまた、マリーさんは機銃を放ってきます。それに対し、私はそのままSaint Snowを突進させました。
マリーさんは、機関銃などを撃つときは、集中したりせず、相手がよける可能性も踏まえて、弾をばらまく癖があるのです。ならばこうやって一直線に突っ込めばバッチリですわ! Saint Snowの前面装甲なら、多少弾が当たってもびくともしません。
そして体当たり! 隔壁と車体の間に、はさみこみ、動きを封じることに成功しました。さらに抵抗すると思われましたが、体当たりの衝撃で気を失ったみたいです。
とりあえず、勝ってよかったですわ……。
* * * * *
「マリーさん、しっかりしてください。請求書が来ていますわよ」
「う、うーん……。それぐらい、ダイヤの財布から払ってもらえば……はっ」
彼女を倒した後、何度か声をかけてゆすると、やっとマリーさんは目を覚ましてくれました。
それにしても、請求書を私の財布から払ってもらうなんて聞き捨てなりませんわね。まぁ、今はそれどころではありませんが。
「あれ、ダイヤ、私……確か長官府に潜入して……」
「えぇ。おそらくそこで洗脳されて、長官のしもべにされていたのですわ」
「そうだったの。助けてくれてありがとうダイヤ」
「いえいえ。ところで、自分への請求を私の財布から出そうなんて感心できない考えですわね」
そうさっきの寝言を指摘してやると、マリーさんは慌てだしました。
「えー、嫌だダイヤ、ジョークよジョーク! おほほほ……」
「……」
「ちょっとダイヤ。今はそれどころじゃないんじゃない?」
おっとそうでした。今はそんな場合ではなかったんでしたわ。
「まぁ、それについて追及するのはあとにしましょう。今は長官のいる遺跡の中枢に突撃ですわ!」
「そうね。マリーを洗脳してくれた借り、しっかりと返してあげなきゃ!」
* * * * *
「むむむ、まさかここまでくるとは! だが、この星と遺跡は誰にも渡さんぞ!」
中枢部にたどり着くと、そこでは兵士たちに囲まれた長官がそう強がっていました。その彼の背後には、カプセルの中に封じ込められたリコ姫がうつろな目で歌を歌っています。
「強がりはそこまでですか?」
「この星をあんたの好きにはさせないよ!」
「マリーを洗脳してくれた借り、返してもらうわ!」
Saint Snowから降りた私たちは、そう言い放ちました。本当はSaint Snowで暴れまわってやりたいのですが、リコ姫もこの場にいるので、そういうわけにもいきません。
「うぬぬ……やってしまえ!」
そして、長官の号令一下、最後のバトルが始まりました。
~君は何度も~立ち上がれ~るかい? 胸にあ~てて、Yes!と笑うんだよ~♪
チカ姫の歌がSaint Snowのスピーカーから流れる中、私たちは大立ち回りを繰り広げます。
私はレーザーソードで兵士たちを切り倒し。
マリーさんはレーザーガンの乱れうちと、セラミックダガーの二刀流で、敵を撃ち抜き、切り裂き。
そしてカナンさんは、金属製のグローブをつけた手と、同じく金属製のブーツを身に着けた脚による格闘戦で、敵を打ち倒していきます。
~まだ出会いにどんな意味があるか~知らないけれど、まぶしいね~僕らの夢~♪
「今ですわ、カナンさん、リコさんを!」
「OK!」
長い大立ち回りの末、カナンさんの周囲が手薄になったのを見てとった私は、カナンさんに声をかけます。うなずいた彼女は、高くジャンプし、そしてリコさんのカプセルに向けて飛び掛かり。
「砕け……ろおおぉぉぉぉ!!」
強烈なパンチの一撃が炸裂! それによって、カプセルのガラスにひびが入り、そして砕けました! 中の液体が流れ出し、リコさんも飛び出してきます。その身体を、しっかりとカナンさんが抱き留めました。
そして私は、それによって長官たちが動揺した隙をついて、一気に長官へと迫り、そして剣を突きつけます。そして言い放ってやりました。
「これでチェックメイトですわよ?」
~今み~ら~い~変わり始めた~かも~。そうだ僕たちはまだ夢~に~気づいたば~かり~♪
* * * * *
そして禁断の島の戦いが終わった後。
「ダイヤさん、カナンちゃん、マリーさん、それにハナマルちゃんにヨシコちゃん! 今回は本当にありがとうございました!」
宇宙港で、チカさんがそう礼を言って、頭をぺこりと下げました。
それが本当にかわいらしくて……はぁ……ルビィに匹敵しますわ、このかわいさは。
「大したことはしていませんわよ。礼には及びませんわ」
「まぁ、どうしてもというなら私に供物を……」
「ヨハネちゃん。相手を怖がらせることを言うのはやめるずら」
「どういう意味よ!」
そこで、くすくす笑いながら、リコ姫が一歩前に進み出ます。
「それでも、礼を言わせてください。本当にありがとうございました。宰相と長官がいなくなったことで、これからセイレーナとマーメイ、両種族とも、今までよりずっと仲良くやっていけると思います」
「本当によかったですわね。でも、これからはあなたたち次第ですわ。次に来た時には、今より美しいシーウォーターⅢを見せてくださいね」
「はい、必ず!」
そして次に、カナタさんが進み出てきて口を開きました。
「カナタちゃんはここで、復興の手伝いをすることにしたよ~。ダイヤちゃん。ヨシコちゃん……ううん、ヨハネちゃんのこと、よろしくね~」
その口調には、かつてのような敵意はありませんでした。ヨハネさんのことをハンターとして認めてくれて、そして私たちのことも悪人ではないとわかってくれたのでしょうか? その嬉しさに胸がいっぱいになりながら答えます。
「えぇ、わかりましたわ」
そしてその横では、カナンさんとセーラさんが会話していました。
「カナンさん、あの時はチカさんを守っていただき、ありがとうございました。そして、厳しい態度をとってしまって申し訳ありません」
「い、いや、いいんだよ。何も言わずに星を飛び出した私も悪いんだし」
「そうですか。そう言っていただくとこちらも助かります」
「え、えーと……」
そこでセーラさんがくすっと笑います。
「冗談ですよ。これからもハンター業、頑張ってください。次に会ったときは、また一回り大きくなったあなたに会いたいです」
「ありがとう……また機会を見て帰ってくるよ。その時にはもっと仲良くできたらいいな。それじゃ、チカ、またね」
「うん、カナンちゃん、ばいばい! 本当にありがとう!」
そして私たちはそれぞれの船で、シーウォーターⅢを旅立ったのでした。
* * * * *
これでこの話は終わりなのですが、実は余談があります。
シーウォーターⅢを出てから2週間後。私たちのAquaSにまた通信が入りました。
「あら? 通信が入ってるわ」
「どこからです?」
「Wao! コードネーム『シーウォーター』よ!」
「カナンさんからですか。2週間ぶりですわね。でもどうしたことでしょうか? ともあれつないでください」
「わかったわ」
そして通信スクリーンに映し出されたのは、私たちとそう年齢が変わらない女性の姿。青がかった黒髪をポニーテールにした少し垂れ目な女性。カナンさんでした。
「つながったつながった。二人とも、シーウォーターⅢを出て以来だね」
「えぇ、でもどうしたのです? 急に通信を送って」
「うん、それが、二人に気を付けてほしいことがあるんだ……」
「??」
そこでカナンさんから告げられたのは、とんでもないことでした。
「実はね。チカが、2週間前の件で、宇宙とハンターに憧れて、ちょうどシーウォーターⅢの復興が終わった直後に、『ハンターになる!』と言って、ヨーやリコと一緒に星を出て行ったらしいんだ。セーラから、そう連絡があったんだよ」
「ええ!?」
その話には、私もマリーも開いた口がふさがりませんでした。というか、後継者がいなくなったら、マーメイ族とセイレーナ族はどうなるのでしょうか?
「二人とも、もし三人を見かけたら、ハンターの先輩として見守ってあげてくれないかな? できれば諦めて星に帰ってくれたらいいんだけど、そうもいかないだろうし……」
「ははは……」
私とマリーさんのひきつった笑いが宇宙に消えていきました。
END
ここまで読んでくれてありがとうございました!
『スクールアイドルアニメで見たような二人が、銀河の深宙域を駆けまわります!』はとりあえず、これにて完結とさせていただきます。
感想くれたら嬉しいです!
それではまた、別の作品でお会いいたしましょう!