スクールアイドルアニメで見たような二人が、銀河の深宙域を駆けまわります!【とりあえず完結!】 作:ひいちゃ
「Oh! 防衛宇宙軍のご登場!? それは逃げなくちゃ!」
そう言って、マリさん……わたくしの相棒マリー・フィールダー……はコクピットに駆けこもうとします。……って、ちょっとお待ちになってください!
「ちょっと待ちなさい、マリさん! 相手は即戦即決に定評のあるウミ提督なのですよ! 逃げ切れるわけないじゃないですか! それに、逃げ切れたとしても、そんなことをしたらわたくしたちはお尋ね者確定なのですよ!」
「やってみなくちゃわからないわよ~。それに、お尋ね者なんていう刺激的なのもいいんじゃなーい?」
そう言って、マリさんは再びコクピットに行こうとします。あー、もう! この人は本当にフリーダムすぎますわ! 頭が痛くなってしまいます。
「もう! ヨシコさん、あの人を止めてください!」
「ヨシコじゃなくてヨハネ! それはともかくわかったわ!」
そう答えると、ヨシコさんはマリさんに飛び掛かり……
「Oh,No~~!!」
コブラツイストでマリさんを悶絶させたのでした。わたくしたちよりも身長が低い彼女がどうやってコブラツイストをしたのか……それは謎ですが。
ともあれ、その間にわたくしは、彼女の代わりにコクピットに飛び込み、エンジンを止め、武装をオフラインにしたのでした。
お尋ね者になるなんて、ブラックウォーターの娘として恥ですもの。そんなことは願い下げですわ。
* * * * *
わたくしたちがエンジンを止め、武装をオフラインにしたのを察したウミ提督の戦艦は、ゆっくりとこちらに接近してきて、そして接弦チューブを接続してきました。
そして移乗してきたのは、亜麻色の髪の女性……あれ?
「止まってくれてありがとね。まずは身分証を見せてもらってもいいかな?」
「は、はい、いいですけど……あなたがウミ提督なのですか?」
確かウミ提督は、『黒髪の勇将』と呼ばれていたはずですが……。
「ああ、違うよ。私はコトリ・サウザント大尉。ウミちゃん……じゃなかった、ウミ中将の副官だよ。ウミ中将は……って、ウミちゃーん、そんなところに隠れてないで出ておいでよ~。示しがつかないよ~」
「そ、そんなことを言われても、まだ心の準備が……。ああっ、引っ張らないでください~」
その声とともに、物陰からコトリ大尉に、黒髪の女性が引っ張り出されてきました。どうやら彼女が『黒髪の勇将』ウミ中将のようですね。でも彼女がこんな人見知りだったとは知りませんでしたが。
「もう、ウミちゃんったら。ご先祖様が見たら草葉の陰から泣いちゃうよ? ウミちゃんの先祖って、護衛艦隊の司令官をしてたほどの人でしょ?」
「それは確かですが、だからと言って、私が人見知りではいけないって理由にはならないでしょう? ……こほん。レーヴェ防衛宇宙軍中将、ウミ・プレイスです。それでは身分証を見せてもらえますか?」
毅然な態度に戻ったウミ提督はそう言ってきました。でも体はまだ小刻みに震えているようですが。
なにはともあれ、わたくしは彼女に身分証代わりのハンター証明書を渡します。
「C級ハンター『AquaS(アクア)』のダイヤ・ブラックウォーターと、マリー・フィールダーですね。確認しました。ご協力、ありがとうございます。それともう一つ。私たちは、レーヴェⅡから拉致されたヨシコ姫を捜索していたところなのですが、彼女について心当たりはありませんか?」
そう聞いてくる彼女に、わたくしは隣に立つ人影を指さしました。
「あっ、これはヨシコ姫ではないですか!」
「ヨシコじゃない、ヨハネ!」
「航行中に彼女が乗った救命ポッドを発見して回収していたのですわ」
わたくしがそう言うと、ウミ提督もコトリ大尉も、ほっとした表情を浮かべました。
「そうだったのですか、ありがとうございます。それでは、彼女は私たちが責任をもってレーヴェⅡに送り届けますので、お引渡ししていただいてもいいでしょうか?」
「はい、もちろん。彼女と別れるのは名残惜しいですけど」
と、そのとき、コトリ大尉の携帯通信機が鳴り響きました。それに受け答えする彼女。そして。
「ちょっと待って、ウミちゃん。そうはいかないみたい」
「……どうしたのですか?」
「レーヴェⅦのホノカちゃんから報告があって、宇宙海賊がレーヴェⅦに接近してきてるんだって。私たちに迎撃要請があったよ」
コトリ大尉からの報告を受けて、ウミ提督の表情がきりっとしたものに変わりました。これが、彼女の軍人としての表情なのですね。さすがですわ。
「仕方ありませんね。ただちに向かいましょう。……すみません。そういうわけですので、ヨシコ姫は、お二人がレーヴェⅡに送り届けてあげてもらえませんか?」
「えぇ、かまいませんわ」
「ありがとうございます。他の防衛宇宙軍の艦艇に遭遇した時には、このカードを見せれば通してくれるはずです」
そしてウミ提督は、わたくしにカードを渡してくれました。それを確かに受け取ります。
「それではただちに出撃しますよ! コトリ!」
「了解だよ!」
そして二人はAquaS号を去っていったのでした。その姿は颯爽としていて、最初に会った時のような人見知りでおどおどした姿とは大違いです。さすが軍人といったところでしょうか。
* * * * *
さて、ウミ提督たちと別れたわたくしたちは、一路レーヴェⅡに向かいました。当然、本来の仕事の依頼主さんにはその旨を伝えて、了解をとってあります。その仕事は、幸いにも急を要しないものだったようで、一週間ぐらいなら始めるのを伸ばしても構わない、とのこと。本当に助かりましたわ。
そしてAquaS号を駆る私たちの目の前に、レーヴェⅡが見えてきました。一面、青と緑に包まれた美しい惑星です。
ヨシコさんの故郷であるレーヴェⅡは、海と森に覆われた星。そこに住むフォーリン族はそれらをとても愛し、開発は最低限にとどめ、森の一角を切り開き、そこに小さな町を作り、自給自足の生活を営んでいるといいます。
レーヴェⅣのレーヴェ惑星同盟共和国政府も、彼らを尊重し、レーヴェⅡに対しては開拓や植民は行っていません。
……なのですが……。
「おや? 『町』の規模が少し大きくなっていませんか?」
「それに、なんか『町』にビルが増えてきているような……」
私たちがそう言うと、ヨシコさんは少し表情を曇らせました。
「うん。あなたたちもニュースで見たでしょ? フォーリン族の宰相にミシェルとかいうアースマン(人類)が就いたって。あの男が宰相になってから、レーヴェⅡは少しずつ近代化を進めてるのよ。幸いにも、お父様が過度な近代化は抑えてるけど……。それでも、素朴だった『町』が近代化したものになっていくのは寂しいものがあるわ」
そう言って、ヨシコさんは寂しそうに眼を伏せました。ヨシコさんは本当に、自然あふれるレーヴェⅡを愛していらっしゃるのですね。
「ヨシコは故郷の星がとても好きなのね」
「ヨハネだってば! ……故郷が嫌いな人なんていないわよ。それに、自然が減っていくと、魔力がどんどん減っていくもの。この堕天使ヨハネにはそれは辛いわ……」
やっぱり安定のヨシコさんに苦笑しつつ、わたくしは大気圏突入したAquaS号をレーヴェⅡの宇宙港へ向けたのでした。