スクールアイドルアニメで見たような二人が、銀河の深宙域を駆けまわります!【とりあえず完結!】   作:ひいちゃ

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#03

 さて、わたくしたち……ダイヤ・ブラックウォーターとマリー・フィールダー、そしてヨシコさん……は宇宙港に着陸したAquaS(アクア)号を降りました。

 だいぶ前に仕事で立ち寄った時には、森を切り開いた平原に、仮設の着陸床を設置しただけの簡素なものでしたが、すっかり本格的な宇宙港になっています。これも近代化の成果ということなのでしょう。

 

 そしてわたくしたちが降りると、ターミナルビルのほうから、一人の女の子がこちらに走ってきています。何やら涙ぐんでいるみたいですね。ヨシコさんの身内の方でしょうか?

 

「ヨシコちゃ~~んっ!!」

 

 そしてその子は、すごい勢いで、ヨシコさんに抱き着いてきました。その勢いで、二人とも倒れこんでしまいます。

 

「うわっ、ちょ、ちょっとずら丸!?」

「ヨシコちゃ~ん、よかった、よかったずらぁ~~!!」

「み、みんな見てるから、ちょっと一度離れなさいっ。それと、ヨシコじゃなくてヨハネ!」

「本当によかったずら~! オラ、ヨシコちゃんが行方不明になったと聞いて、心配で心配で、4時間しか眠れなかったずらぁ~!!」

「とても心配かけたみたいね……って、結局寝ていたんじゃないの!」

 

 そう突っ込んで、ヨシコさんは、ずら丸さんとかいう女の子と一緒に立ち上がりました。

 

「恥ずかしかったところを見せてごめんなさいね。彼女はハナマル・カントリア。私の一番のリトルデーモンよ」

「ヨシコちゃんを助けてくれてありがとうございますずら。オラ……私は、ハナマル、ヨシコ姫の幼馴染ずら。彼女の侍女をやらせてもらってます」

 

 そう言ってハナマルさんはぺこりと頭を下げました。本当にかわいらしいお嬢さんですわね。レーヴェⅢに残してきた妹のルビィを思い出させますわ。ああ、また会いたくなってきましたわ。今度、久しぶりに里帰りしましょうか。

 

 すると、さらに向こうから、背の高い男と、その半分ほどの背丈の男がやってきました。低い背丈の男は見たことがあります。フォーリン族の長老さんですわね。もう一人のほうが、ヨシコさんが話していたミシェル宰相ですわね。

 

「おお、ダイヤ様、マリー様! 姫様を助けていただいてありがとうございます。感謝いたしますぞ」

「いえ、とんでもありません。ハンターとして当然のことですから」

「そうだ。紹介し忘れていましたな。こちらが、少し前にこのフォーリン族の宰相となられた……」

「ミシェルと申します。このたびは姫を助けてくださり、感謝の言葉もございません」

「いえ……」

 

 軽く頭を下げるミシェル。その彼を見て、わたくしはかすかに顔をしかめました。なぜなら、その彼にうさん臭いものを見たからです。そう、例えていうなら、「天使の顔して、心で爪を研いでいる者」の顔ですわ。横のマリさんもわたくしと同じ……むしろそれ以上に渋い顔をしているところを見ると、やはりそうなのでしょう。マリさんは、わたくしよりもっと陰謀うずまく世界に身を置いていたのですから、そういったことにはとても敏感なのです。

 

「今夜は、姫様が戻ってきたことを祝う宴を用意しております。二人とも、ぜひ参加してくだされ」

「えぇ、そうさせてもらいますわ」

「喜んで、参加させてもらいマース!」

「申し訳ありません。私は、まだ政務が残っておりますので、これにて」

 

 わたくしたちが参加を承諾したことを確認すると、ミシェル氏はかすかに苦虫をかみつぶしたような顔をして去っていきました。

 

* * * * *

 

 一方、そのころ、レーヴェⅦ衛星軌道上。

 

 レーヴェ防衛宇宙軍中将、ウミ・プレイスの旗艦、アースグリムの副砲が火を噴き、着弾した海賊船をあっという間に火の玉にした。

 

「ウミちゃん。残った海賊たちから通信。投降するって」

「そうですか。それならこの件はこれでおしまいですね。ただちに武装解除の準備を始めてください」

「了解♪」

 

 と、そこで通信士が着信を伝える。

 

「プレイス中将。レーヴェⅦのコーサカ大佐から通信が入っています」

「ホノカから? 何かあったのでしょうか。つないでください」

「了解」

 

 通信士が操作すると、艦橋の通信スクリーンに、顔に幼さの残る、サイドテールの若い女性の姿が映し出された。

 

「あ、ウミちゃん。そっちのほうはどうかな?」

 

 開口一番、自分のことをファーストネームで呼んでくる幼馴染に、ウミはため息をついた。

 

「もう、ホノカ。指令室ではちゃんと階級つけてファミリーネームで呼びなさいと言っているでしょう? こちらのクルーは、全員、私たちの関係を知っているから問題はありませんが、そちらはそうでないんですから。また基地司令に怒られますよ」

 

 その言葉を聞き、コトリを含めたブリッジクルーたち全員から苦笑がもれる。

 

「え~、だって、ウミちゃんはウミちゃんだもん。いいじゃない~!」

「はいはい、それでどうしたのですか?」

 

 ウミがそう聞くと、レーヴェⅦ防衛司令官補佐、ホノカ・コーサカ大佐はきりっとした表情に戻って言った。

 

「うん。情報元不明のタレコミがあって、レーヴェⅢとレーヴェⅡとの間にあるアステロイドベルトに海賊が潜んでいるんだって。今、ウミちゃんたちが戦っていたのとは別の奴ら」

「なるほど、わかりました。こちらはもうすぐ片付くので、これからただちに討伐に向かいます」

「お願いね」

 

 そして通信は切れた。

 

「それでどうする? ウミちゃん」

「ただちに向かいます。ここの奴らの武装解除には、駆逐艦を数隻残しておけば十分でしょう。彼らには、海賊たちが武装をオンラインに戻すそぶりがあったら、遠慮なく撃沈していいと伝えておいてください」

「了解だよ♪」

 

 敬礼を返したコトリにうなずくと、ウミは正面を見据えて、号令を下した。

 

「よし、ただちに発進! 目標、レーヴェⅡ近傍のアステロイドベルトです!」

 

* * * * *

 

 レーヴェⅡ、フォーリン族の『町』の王宮にある執務室。そこで、ミシェルは何者かと通信を行っていた。

 

「宇宙軍は奴らのところに向かったか? ならばいい。証拠を残すわけにはいかん。もしもの時には容赦なく仕掛けを作動させろ。それと、例の件も頼むぞ。今度は失敗は許さん。いいな」

 

* * * * *

 

 レーヴェⅡの『町』の市街地。そこを、わたくしとマリさんはのんびりと歩いていました。そこに聞こえてくる声。

 

「皆さん、超生物様は、私たち人間とその文明を築いてくださった偉大な方です。超生物様を信じて、幸せになりましょう!」

 

 一人の老婆が必死になって、宗教の勧誘をしているようです。

 

「あれは、超生物教の信者かしら? もうこんなところまで布教の手を伸ばしてるのね」

「ええ。驚きですわ。もっとも、あまりいい気はしませんが」

「そうね」

 

 超生物教。それはその名の通り、超生物を崇める宗教のことです。

 かつて、この深宙域には、超生物と呼ばれる巨大で強大な力を持つ生物が棲んでいたと言われています。深宙域の各地には、彼らの存在を示す化石が見つかっている他、一部では現在の人類の科学力では説明できないような超文明の遺跡も見つかり、それらも彼らからもたらされたテクノロジーで作られたものではないか、という学説もあったりします。

 超生物教はそんな超生物を神として崇拝するという宗教なのですが、世間からの評判はあまりいいものではありません。というのも、彼らの中には、二大国でかつて暗躍していたチキュー教の残党の子孫が多く混じっているという噂があるからです。実際に、超生物教の過激派によるテロ行為が、レーヴェ星域内で起こることも少なからずあったりするのです。

 正直、わたくしたちも彼らとはあまり関わりたくはありません。もちろん、向こうからケンカを売ってきたら、喜んで撃退してあげますけどね。

 

「あ、もうそろそろ宴の時間ですわね。そろそろ王宮に行きましょう」

「そうね! おいしいお料理と、陰謀が私たちを待ってるわ!」

「陰謀は待ってません! そんなのはごめんですわ!」

 

 そして王宮のほうに走っていくマリさんを、わたくしはため息交じりに追いかけるのでした。

 

* * * * *

 

 そして舞台は再び、レーヴェⅡ近傍のアステロイドベルトへとうつる。

 アステロイドベルトに潜む海賊の艦隊と、ウミ中将率いる防衛宇宙軍の艦隊の戦いは、あっけなく決着がついた。

 海賊たちは、どうやって手に入れたものか、正規軍の戦艦(おそらく中古で軍から除籍されたものだろう)で編成されていたが、練度や作戦では軍のほうが圧倒的に上である。海賊は、ウミ中将の作戦にまんまと振り回され、彼女率いる本隊の速攻で瞬く間に壊滅したのだ。

 だが、その戦いはすっきりしない部分も含んでいた。

 

「おかしいですね……」

「さっきの自爆のこと?」

 

 コトリ大尉がそう聞くと、ウミ中将はこくんとうなずいた。

 

「ええ。彼らはこちらが武装解除のために接近するのを待たずに自爆していきました。まるで、私たちを巻き添えにすることが目的ではないかのように」

「確かにそうだね……。あと、他に気になることがあるの」

「なんです?」

 

 ウミ中将の問いに、コトリは手元のメモを見て言った。

 

「彼らの通信ログを拾ったんだけど、『あの男』『裏切りやがった』って気になるワードが出てきてるの。きっと、この海賊の裏に何かあるような気がするんだよね……」

「確かにそれは気になりますね……。コトリ、共和国警察特務課のミュラー氏に、彼らが自爆したさいの映像データと、通信ログを送って、背後関係を調べるよう依頼してください。彼は、先祖とは違って、軍才が乏しく司令官コースから自らドロップアウトしたような人ですが、こうした調査に関しては極めて有能ですから。彼なら何か裏にあるものをつかんでくれるかもしれません」

「うん、わかったよ」

 

 コトリがそう言って通信士のところに歩いていくのを見ると、ウミは真正面に向きなおり、目を閉じてつぶやいた。

 

「何か胸騒ぎがしますね……。杞憂ならよいのですが……」

 




残念ながら鉄壁ミュラー氏、子孫に「鉄壁」は受け継がれなかった模様w
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