スクールアイドルアニメで見たような二人が、銀河の深宙域を駆けまわります!【とりあえず完結!】 作:ひいちゃ
さぁ、果たしてダイヤたちは、地下遺跡から脱出することができるのか!?
「ちょっと、ダイヤ。大丈夫?」
「う、うーん……マリさん、だから無駄遣いはあれほどダメだと……あら?」
わたくし……ダイヤ・ブラックウォーター……が目覚めると、そこは暗い、遺跡のような地下空間の中でした。
ああ、確か、あの超生物教(グレイツ・ブラザーズ)の方々の最後のあがきで、地下に落とされたのでしたっけ。
「大丈夫、ダイヤ? 痛いところはない?」
「ええ、大丈夫ですわ。マリさんのほうは大丈夫でしたか?」
「えぇ。私も大丈夫よ」
それはよかったですわ。打ち身で少し痛むところはありますが、大したことはなさそうです。落ちる間際に、小型重力制御装置のスイッチを入れといてよかったですわね。落下速度を低下させるぐらいしかできませんが、それでもこうして無事だったのですから。
「それにしても……毒殺されかかったり、こんなところに落とされたり……ふんだりけったりね。超生物教の奴らにはリベンジしてやらなきゃ気が済まないわ」
「そうですわね。でもひとまず今は、ここから脱出することを先に考えましょう。あら?」
と、そこでわたくしは何かの気配を感じました。とっさに、腰のレーザーソードを取り出します。
「What?」
「気を付けてくださいまし、マリさん。通路の奥から何者かがやってくる気配がします」
「Oh!?」
わたくしの言葉に、マリさんも、レーザーガンを構えます。
そうしてる間にも、足音はどんどん近づいてきて、緊張もそれに伴って強まります。そして。
「Fleese!!」
マリさんが、入口付近の床にレーザーガンを発射しました。気配が一瞬たじろいだような感じがしました。威嚇射撃の効果はあったみたいですわね。
「ひいっ、待ってください待ってください!」
そして、通路の奥から、手を挙げながら、わたくしたちとそれほど年も変わらなさそうな女性がやってきました。
セミロングで、片方の髪の一部をサイドテールにして流しています。着ている白衣はところどころ薄汚れています。
もしや彼女は……。
「もしかしてあなたは……ここで超生物(グレイツ)の研究をしていた……」
「はい! 研究員のセツナ・ユーキといいます!」
やはりそうでしたか。わたくしたちは安心して、武器をしまいます。それを見て、セツナさんもほっとした表情を浮かべました。でも、その瞳には、何か情熱めいたものを感じます。さすが研究者といったところでしょうか。
「でも、ずっとこんなところにいて、大丈夫だったんですの?」
「はいっ! ここは、超生物に関する情報の宝庫なんですよ! 何日いても飽きることはありません! 超生物はすごいんですよ!」
と、ここから、セツナ研究員の超生物に対するレクチャーが始まりました。
ですが、そのレクチャーが始まって十分ぐらいしたところで……。
「Oh! 二人とも、ちょっと待って!」
マリさんが再び銃を構えました。また何か近づいてきてるのでしょうか。
「敵ですの?」
「そうみたい。明らかに友好的でない気配が近づいてきてるわ。ねぇ、セツナ。これってもしかして……」
「はい、あいつ……超生物『カーバンクル』だと思います」
そのセツナさんの言葉を受けて、わたくしも、レーザーソードを構えます。
そしてどのくらい時間が経ったでしょう。『奴』はついにその姿を現したのです!
「こ、これが……!」
「『カーバンクル』!?」
「そうです、二人とも! そいつが『カーバンクル』です!!」
それは、なめくじとカブトムシが合体したような生物でした。
動きは遅そうですが、強大な力を持っているのが、気配からびしびしと感じられます。
ここは、奴が動き出す前に、仕掛けたほうがいいかもしれませんわね。
わたくしは、剣を構え、マリさんと視線を交わしあうと、『カーバンクル』にとびかかりました。セツナさんの制止の声に気づかないまま。
そしてレーザーソードを振るいました……が。
「!?」
なんと、剣は、音もなく、カーバンクルに弾かれてしまいました。なんなんですの!?
マリさんは、レーザーガンを乱射しますが、それもカーバンクルに弾かれてしまいます。
「皆さん、落ち着いてください! カーバンクルには全ての攻撃は効かないんです! 私も、護身用のレーザーガンで攻撃したのですが駄目でした!」
「Oh,No! それを早く言ってちょうだい!」
「だって、言う前に皆さんが飛び掛かっていったから……」
『うぐ』
そう言われては、ぐぅの音も出ませんわね。と、そんなことを言ってる場合ではありませんわ!
そうですわ。物理的なダメージが無理なら……。
「皆さん、閃光弾を使いますわ! 奴が目をくらませているうちに、通路の方に逃げますわよ!」
「OK!」
「わ、わかりました!」
そしてわたくしは、ベルトから閃光弾を外すと、カーバンクルのほうに投げつけます。そして三秒後……。
ピカッ!!
あたりを白い光が埋め尽くします。わたくしたちは、目をつぶって、目がくらんでいるであろうカーバンクルのわきを走り抜け、通路の方に逃亡していったのでした。
* * * * *
「ふぅふぅ……。なんとか逃げ切れましたわね」
「でも、あんな怪物、どうしたらいいのよ~。セツナ、何か対策はないわけ?」
「残念ながら……私が調査していたのは、『カトブレバス』の化石のほうなので、『カーバンクル』のほうは……。あ、ただ……」
「ただ?」
わたくしが聞き返すと、セツナさんは首をかしげて、話をつづけました。
「あいつ、なぜか、日の当たる場所には近づきたがらないんですよね。私も、そのおかげで何度か助けられましたし」
「うーん。どうしてかしら……まばゆい光が苦手だとか?」
「どうなのでしょう……。でも、今はそれよりも、ここから脱出する方法を考えなきゃですわ。セツナさん、脱出の方法についてはご存じありませんか?」
すると、セツナさんは自信たっぷりでうなずきました。希望が見えてきましたわね。
「任せてください! この遺跡のどこかに、地上に上がるエレベーターがあったと思います。私も、それを使って、ここまで来ましたから」
「Oh! それはGoodね! さっそくそこまで行きましょう!」
というわけで、さっそく出発したのですが……。
「Oh……セツナ、そのエレベーターってどこにあるの~?」
「あれ~、ここじゃなかったかなぁ……。どこだったっけ……」
地下遺跡のあちこちを歩き回ったのですが、エレベーターはなかなか見つからないのです。かれこれ、一時間歩き回ってるのですが……。
「さすがにマリー、もう疲れてきちゃったわ」
「わたくしもですわ……。そろそろ休憩したいところですわね」
と、そこに!
ドガーンッ!!
天井をぶち破って、カーバンクルが落ちてきました! なんて神出鬼没な奴なんですの!?
「Oh,No~~!!」
「皆さん、こちらへ! ここを通れば大丈夫ですよ!」
声がする方を見ると、セツナさんが、天窓から日がさしている一帯から手を振っています。天窓はかなり広いらしく、壁際を部屋の出口のほうまで照らしていました。なるほど、あそこを通っていけば、襲われる心配はなさそうですわね。
「わかりましたわ。逃げますわよ、マリさん!」
「OK!」
そしてわたくしたちは、無事にその部屋を脱出したのでした。
* * * * *
その後も、わたくしたちはある時はカーバンクルと鉢合わせして逃げ出したり、地面を突き破って出てきたカーバンクルから逃げ出したり、と、とにかく逃げまくったのでした。
もうくたくたと言っていたのですが、これだけに逃げられるなんて、人間の底力ってまだまだ計り知れないのですね。
そしてわたくしたちは、なんとかそこまでやってきました。
「行きますわよ。準備はいいですか?」
わたくしは、エレベーターのリフトの上に乗っている二人に声をかけました。うなずくのを見ると、スイッチとなっている床板を踏みぬきました。それと同時に、リフトが上昇を始めました。それと同時に、わたくしはリフトのほうに走り出します。
「ダイヤ! Hurry,Up~~!」
「ダイヤさん、早く早く!」
「ま、待ってくださいまし。とりゃあ~!!」
全力でジャンプし、なんとかリフトに飛び乗ることができました。そのまま、リフトは地上のほうに上がっていきます。
本当に大変でしたわ。超生物教の皆さんには、本当に仕返ししないと気が済みませんわね!
* * * * *
そして上がったところにはやはりというべきか……。
「お、お前ら! カーバンクルに食われたはずじゃなかったのか!」
そう、超生物教の皆さんがいらっしゃったのでした。
「ぜぇぜぇ……ざ、残念でしたわね……」
「ま、マリーたちは、そう簡単にやられるようなBallじゃないのよ……はぁはぁ……」
「なんてこった。だが、今度こそ終わりだ! 来やがれ、カーバンクル!」
なんということでしょう!
リーダーらしき男が笛を吹くと、なんと床板を破ってカーバンクルが現れたのです!
「カーバンクルにはどんな攻撃も効かねぇんだ。今度こそこいつの餌になりやがれ!」
「ど、どうしましょう、ダイヤさん、マリーさん……」
「そうだわ! ここから外に出ましょう! もしかしたらそれでなんとかなるかも!」
そういえば、カーバンクルは太陽の光が苦手と言ってましたわね。それは名案かもしれませんわ。
「敵に後ろを見せるのはしゃくですが、それが最善のようですわね。わかりましたわ!」
「レッツ・ランですね! わかりました!」
「行くわよ! それ~~!!」
マリさんの号令一下、わたくしたちは最後の力を振り絞って、出口へと駆け出しました。
カーバンクルは、一瞬、躊躇するそぶりを見せましたが、リーダーの笛の音を受け、こちらを追撃してきます!
もうすぐ出口! しかし!
「きゃっ!!」
セツナさんがつまずいて転んでしまいました! その後ろにカーバンクルが迫ってきています!
「セツナ!!」
「大丈夫です、私のことは気にせず先に行ってください……ってごめんなさいすいません。おいていかないでください!!」
「世話がかかりますわね……せいっ!!」
わたくしはベルトの片方に備え付けられている鞭を取り出すと、それを彼女のほうに振るいました。鞭は見事に、セツナさんの脚に巻き付きました。そして。
「そーれっ! セツナさんの一本釣りですわっ!!」
全力で彼女を釣り上げるように、こちらに引き寄せました。そして彼女をなんとか受け止め……というより、彼女の下敷きになりましたが、それでもなんとか立ち上がり、再び二人そろって逃げ出したのでした。
それを追って、カーバンクルも外に出てきます。すると……なんということでしょう! カーバンクルは太陽の光を浴びると、たちまち溶けてしまったのでした。
そういえば、ハナマルさんが、恒星アーペンハイルから降り注ぐ陽光のスペクトルには、普通の恒星とは違うものが含まれてる、と言っていましたわね。そのせいだったのでしょうか。
何はともあれ、これで最大の障害は排除できましたわね。あとは、にっくき超生物教の奴らをぶっ飛ばすだけ……おっと、疲れからか、口が悪くなってしまいましたわ。こほん。奴らを成敗するだけですわね。とはいえ……。
「さすがに疲れすぎましたわね……」
「マリーもよ。もう、一歩も動きたくない……ううん、動けないわ……」
「私もです……」
ここまでの逃避行で、三人とも精魂尽き果てたのでした。そして……。
* * * * *
「そうですか、サンプルは奴らの手に……」
「はい……申し訳ありませんわ……」
わたくしは、研究所で、アーヴァンク氏に謝罪していました。
そう、精魂尽きしてたわたくしたちは、一度AquaS(アクア)号に戻って疲れをある程度とってから、奴らを成敗しに行こうと思ったのです。ですが……。
そうほいほい残ってやられるのを待つほど、あの遺跡の超生物教の奴らは馬鹿ではないようで……。
疲れをいやしたわたくしたちが改めて遺跡に乗り込むと、そこはもうも抜けの空。細胞サンプルももちろんなくなっていたのでした。ですが、あのまま突っ込んでいても返り討ちにあっていた可能性が高かったですし、仕方ありませんわね。
「……というわけですので、報酬は半分で構いませんわ」
「いえ、報酬は全額差し上げますよ。その代わり、皆さんには引き続き、細胞サンプルの追跡と、その処分をお願いしたい」
「……いいのですか?」
意外な申し出で、こちらとしてはありがたいのですが、それでいいのでしょうか?
わたくしが聞くと、アーヴァンク氏はこくりとうなずきました。
「はい。事態は、この深宙域の運命にも関わりかねないことですので。ですが、皆さんには絶対に依頼を達成していただきたいのです」
「なるほど、わたくしたちが依頼をちゃんと引き受けるための鎖、ということですわね」
もし報酬をもらいながら、依頼を放棄したら、持ち逃げになってお尋ね者になってしまいますからね。
「言い方は悪いですが、そのとおりです。なにとぞ、よろしくお願いします」
「わかりましたわ。どのくらいかかるかわかりませんが、必ず処分して見せますわ」
そしてわたくしたちは、アーペンハイルⅢを後にしたのでした。
読んでくださり、ありがとうございました!
次回は、ちょっと骨休めの話を書く予定です。
その後はいよいよ……!
お楽しみにです!