アニガサキ!-PASTEL COLLARS- 外伝 Episode of ランジュ 作:海色 桜斗
果林、愛、栞子、せつ菜推しの方へ。
もう公式の扱いが不憫すぎるから、此処で目一杯活躍させます!今こそ、基本全員推しを貫いてきた私が真価を発揮する時……!マグロ、ご期待ください。
あ、因みに此方が世界観参考にしたMAD動画です。是非、此方も見てみて下さい。
https://www.nicovideo.jp/search/LL%C3%97CH?ref=nicotop_search
歩夢ちゃんの誕生日が2日前だったので歩夢誕記念のSSと合わせて、今回は豪華2本立て!改めて、歩夢ちゃんHappy Birthday!!
ノベライズ本編におけるオリジナル設定解説④
・対愛弗防衛機関ムーンカテドラル
《μ’s》の元メンバー、東條希が密かに設立した一見普通のバー。本来の店としての役割も兼ねるが、裏の仕事も存在しており、組織には《μ’s》メンバー全員が漏れなく所属している。シティーハンターの冴羽獠が営む『冴羽商事』とも繋がりがあり、依頼を彼に頼むことも屡々。虹ヶ咲NLNSの親元。今を生きるスクールアイドル達を裏組織から守るために結成されたレジスタンス。
既存メンバー ステータス更新
長谷部 祐介(CV:杉田智和)
《ムーンカテドラル》所属のNo.0灰の狼。穂乃果、ことり、海未、絵里の幼馴染で音ノ木坂学院共学化の選抜テスターに選ばれた男子生徒。常時、面倒臭がり屋ではあるものの、根は真っ直ぐな男。ことり、海未同様にいつも穂乃果の急な思いつきに付き合わされて、廃校阻止の為のスクールアイドルグループ「μ's(音ノ木坂学院アイドル研究部)」のマネージャー(兼監督)を務めていた。学院を卒業してからは流浪のシンガーソングライターとなった穂乃果のマネージャーとして付き添いつつ、裏業の関係上で操作が命じられている「監視委員会」の動向を探っている。
高坂 穂乃果(CV:新田恵海)
《ムーンカテドラル》所属のNo.1晴天の化身。今尚語り継がれる伝説のスクールアイドルグループ《μ’s》の元リーダー。何事にも一所懸命な頑張り屋で、一度思い立ったら猪突猛進の割と情熱的な性格。実家は老舗の和菓子屋「穂むら」。無意識ながら周囲を惹きつける行動力とその精神力の強さは今も健在。現在は、流浪のシンガーソングライターとして各地でゲリラストリートライブを披露したり、《μ’s》時代のコネを使って、マネージャーである長谷部祐介と共に大型ライブ等に電撃参戦したりしている。裏稼業も同時にこなしており、今回は「監視委員会」の実態調査の名目でお台場を訪れていた。
東條 希(CV:楠田亜衣奈)
《ムーンカテドラル》所属のNo.8母なる女神。関西出身ではないが、関西地方の方言で話す。くじ引きなどでは決して悪い結果にならない強運の持ち主で、占いやスピリチュアルパワーなどに凝っている。現在はその強運さを見初められ、学生時代にアルバイトしていた神田明神で巫女の仕事を熟しているが、その裏で伝説の新宿のスイーパー『CITY HUNTER』こと「冴羽獠」への間接依頼口及び穂乃果と祐介が所属している裏組織に対抗するために結成されたレジスタンス『ムーンカテドラル』の経営に勤しむ。
アニガサキSS劇場⑥「歩夢、ハッピーバースデー」
侑「歩夢っ!」
全員「「「「「「「「「「「「「お誕生日、おめでとう!!」」」」」」」」」」」」」
歩「うわぁぁぁぁぁ、ありがとう侑ちゃん、皆!」
せ「歩夢さん、改めておめでとうございます!私、今日の為にカップケーキを作りました、食べてください!!」
歩「え、ええっと・・・・・・」
(すぐ近くにいた彼方をチラリと横目で見る)
彼「(フッフッフ、安心なされよ歩夢ちゃん。彼方ちゃん、バッチリ監修済みだよー)」
(歩夢に向かって小さくサムズアップする)
歩「ほっ・・・・・・」
愛「歩夢ぅー!愛さんのバースデーギャグを喰らえぇぇぇ!」
愛「歩夢と一緒にあゆむり(謝り)に行こう!誰にー?あゆむーる(アムール)貝に!」
侑「ぷひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、くぁwせdrftgyふじこlp」
歩「ゆ、侑ちゃん・・・・・・」
ラ「誕生日おめでとう、歩夢!ランジュがいい物を上げるわ!」
歩「えっと、ランジュちゃん・・・・・・これは?」
ラ「お台場上空ヘリ一周の旅の搭乗パスよ、意中の相手がいるならこれでイチコロね!」
歩「あ、ありがとう(流石、お金持ちだなぁ・・・・・・)」
侑「歩夢っ、私からはこれ、あげるねっ!」
歩「わぁっ、可愛い!」
侑「私の寝そべりぬいぐるみだよー、大事にしてね♪」
歩「うんっ、家に帰ったら早速お部屋に飾るね!」
(えっ、何それ、私も欲しい・・・・・・)
(※虹ヶ咲スクールアイドル同好会メガジャンボ寝そべりぬいぐるみ 上原歩夢、宮下愛、桜坂しずく 各地域のゲームセンターに取扱中!目指せコンプリート!あと侑ちゃんのも出ろ!!)
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アニガサキSS劇場SP「勝利の法則XYZ」
『ジリリリリリリリリ、ジリリリリリリ!』
獠「はいはーい、此方冴羽商事。ご用件をどうぞー」
希『獠ちゃん、駅前の掲示板見たらすぐにお台場まで来てねー、待っとるよ?』
『ブツンッ、ツー、ツー、ツー・・・・・・』
獠「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
香「おろ、どったの獠?こんな朝早くから」
獠「香・・・・・・。仕事だよ、駅前の掲示板を見てからお台場まで来いとさ」
香「へぇ、誰から?」
獠「そりゃあ、こんな時代に依頼寄こすんだ、物凄い変わり者だよ」
香「へっへ~、当ててあげようか。『ムーンカテドラル』から!」
獠「・・・・・・あぁ、正解だよ。という訳でちょっくら足伸ばしてくるぜ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
獠「ほほぅ、XYZで宛名があの子か・・・・・・」
香「わっ、懐かしいわね!会うの何年ぶりかしら、楽しみだわ!」
獠「・・・・・・何でお前もいんの?」
香「何、馬鹿なこと言ってんだよ。アンタが行くなら相棒のアタシも行かなくてどうすんのさ」
獠「ま、別にいいがな」
香「あ、待って。先に冴子さんに電話しといたほうがいいかな?」
獠「何、大丈夫だろ。別に何週間も空けるわけじゃないんだ、何とかなるさ」
香「そっかー・・・・・・ま、そうよね!」
獠「フ、お台場か・・・・・・ぐふふ、かわいこちゃんはいるかなぁ、楽しみだなぁ~!」
香「こぉんのぉ~・・・・・・おのれは結局、そこになるんかいィィィィィィィ!!」(2021tハンマー)
獠「あぼぁ!?」
(※お待たせいたしました、アニガサキ×CITY HUNTER編、始まるよっ!)
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――数年前。東京都千代田区秋葉原にて。
『追いかけっこは終わりだ、子猫ちゃん?』
『ぐ、ぐっ・・・・・・おのれ、おのれェェェェェェェェ!』
半ば自暴自棄になった男が、冷静に自分へ銃口を向ける男に手元の拳銃で発砲する。しかし、その拳銃を握る手は焦りで震えていて銃弾は男には当たらない。自棄になってもう一発、更に一発。目の前の男は一切回避行動をとることはなく。やがて、追いつめられた男の拳銃の銃弾が尽きた。
『馬鹿なッ!?わ、私は認めん!認めんぞォォォォ!!』
『そうだ・・・・・・この私が、勝利を約束されたはずのこの私がァ!ここで負け――』
カチカチと男の拳銃が虚しく響く音を立て、男が吠える。その様子を見て、相変わらず銃口をその男に向け続ける体格の良い男は、その銃弾をまずは一発。吠える男の顔面の真横に。因みに今のは態と外した。
『アンタがこれ以上罪を重ねないと誓うなら、俺もこれ以上はしない。さぁ、どうする?』
『わ、分かった・・・・・・!わ、私は此処で降りる!だからそれを仕舞え・・・・・・仕舞ってくれ!!』
『あらら、急にお利口さんだこと。だが、約束は必ず守れよ?』
男の説得に成功した体格のいい男が何の躊躇いもせずに男との距離を一気に詰める。そして、彼は鈍色に光る美しき銃を片手にこう言った。
『何せ、この俺を前にして2度も罪を重ねた場合は』
『今度こそ俺の相棒の銃弾が、貴様の脳天を貫くからな。それが
『・・・・・・・ッ!』
COLT PYTHON 357 MAGNUM。そう、彼こそ新宿のスイーパーとして裏社会中から恐れられた伝説の用心棒。その名は――
「――部への潜入、ね。へぇ、面白いこと言うじゃねぇか」
「だ、誰なんですか、貴方達は?」
「誰、ねェ・・・・・・ま、念の為、俺もコイツも通り名で名乗らせてもらうぜ」
「俺はラグナ。《ムーンカテドラル》所属のNo.0灰の狼だ」
「私はミノリ。この人と同じく《ムーンカテドラル》所属のNo.1晴天の化身だよっ」
ラグナ、ミノリ・・・・・・うん、いきなりそう言われても誰だか分からない。おまけに今はそういう気分じゃないし。と、思っていたら、何だかせつ菜ちゃんが先程からわなわなと震えている。あれ、せつ菜ちゃんは知ってるのかな?
「あ、あああああああ、あのっ、ミノリさん!!」
「ええと・・・・・・何かな?」
「その全てを見通すかのような瞳、そして丁度良い音程の声・・・・・・間違いありません!」
「ミノリさん、貴女はあの伝説のスクールアイドル《μ’s》の高坂穂乃果さんではありませんか!?」
「「「「「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」」」」」」」」
NLNS基地内に全員の驚愕の声が響き渡る。え、嘘!?この人があの《μ’s》の高坂穂乃果ちゃん!?いや、待て。確かに、確かによく見れば何となく面影はある。ほ、本物!?
「あちゃ~・・・・・・バレちった。有名過ぎるのも大概だね~、どうしよ?」
「・・・・・・ま、遅かれ早かれお前は気付かれると思ったがな。流石に早すぎてビビったが」
「そして、そんな穂乃果さん御隣に居らっしゃる貴方は、長谷部祐介さんですねッ!?」
「うそーん・・・・・・」
せつ菜ちゃんが興奮気味に隣の男の名前をスラリと言い当てた。長谷部祐介と呼ばれた男の方はまさかこんなに早く言い当てられるとは思ってなかったらしく、穂乃果ちゃん同様頭をポリポリと掻いていた。あれ、でも、長谷部祐介って誰・・・・・・・?
「うおぉぉぉぉぉぉぉっ!!よ、よろしければお二人のサインをお願います!!」
「ちょっと、せつ菜先輩!?あ~ん、かすみんにも書いてくださ~い!」
「抜け駆けは許さないぞ~?彼方ちゃんにもくださ~い」
「わ、私も、私もっ!!」
「もしよければ、この後スクールアイドルとしての演技指導をお願いできますでしょうか!?」
そんな疑問を抱いている間に旧スクールアイドル同好会メンバーがせつ菜に続くように一斉にサインを求めだした。しずくちゃんなんか指導お願いしに行っちゃったよ・・・・・・。
「むはーっ!これは超レアものですね、一生家宝にします!」
「あ、あのさ、せつ菜ちゃん」
「はい、何でしょう!!」
「えっと・・・・・・穂乃果ちゃんは分かったんだけど、隣の長谷部さんって、誰?」
「ええっ、ご存じ・・・・・・ないのですか!?」
「《μ’s》に所属する穂乃果さん達を守る為に当時の音ノ木坂で募集されていた共学化テスターと呼ばれる特殊入学条件を持った男子生徒3人で結成された、通称『女神達の守り人』『護衛三騎士』の中のリーダー格と呼ばれていた方です!」
「普段の態度は少し荒々しさがありますが、そんな彼にだからこそ守ってもらいたい、近くで囁かれてみたい、Sっ気全開で攻められたい等各所のスクールアイドル達から注目を集めた存在だったんですよ!」
せつ菜ちゃんのオタクモードが全開になり、オタク特有の早口で彼について語り始めるせつ菜ちゃん。あぁ、そうか。護衛役が男子生徒こそ適任だと言わしめたその一番最初の要因になった人か。流石に『女神達の守り人』なる呼び方が付いていたのは知らなかったが。
「あー、喜んでくれているところ悪いがその通称使うの止めてくれねぇか?当時のオレ達で考えた通り名とは言えちょい恥ずかしいんでな・・・・・・」
「ええーっ、何でですか!?十分カッコいいじゃないですか、長谷部さん!」
「そ、そうかぁ?へへっ、まぁ、そこまで絶賛されると考えた甲斐があったってもんだ」
さっきまで恥ずかしがっていたのに、せつ菜ちゃんに絶賛されて満更でもない顔をしている。成程、さては長谷部さん、とんでもなくチョロいのでは?
「ユースケ、間抜け面になってるよ」
「るせぇ、余計なお世話だ。・・・・・・とまぁ、最初に通り名で名乗った意味は完全になくなった訳だが改めて」
「オレは《μ’s》の元監督兼マネージャーの長谷部祐介だ、よろしくな」
「高坂穂乃果ですっ!皆、ファイトだよっ♪」
さも当然のように、しかしてあっさりと。彼と彼女は自分達の正体を認め、本名を名乗る。す、凄い!まさか伝説のスクールアイドルにこんなところで会えるなんて。侑が聞いたらきっと羨ましがるんだろうなぁ・・・・・・!
「穂乃果さん、長谷部さん、初めまして!虹ヶ咲スクールアイドル同好会の、優木せつ菜です!」
「お、同じく、中須かすみです!かすみん、って呼んでください♪」
「エマ・ヴェルデです。エマでいいよ?」
「お、桜坂しずくと申します!お会いできて光栄です・・・・・・!」
「彼方ちゃんは彼方ちゃんだぞ~?よろしく~」
「て、天王寺璃奈」
「えっと・・・・・・う、上原歩夢、です」
「始めまして、《μ’s》のお二人。私は三船栞子です」
穂乃果さんと長谷部さん両名にメンバー全員が挨拶を終えたところで、私達は気分を切り替えて現状についての対策を練ろうとした。が、長谷部さんは此方側に構わず、学園内へと戻るエレベーターのスイッチをオンにする。
「あの、長谷部さん?今学園内に戻るのは危険なのでは・・・・・・?」
「あ?そうりゃそうだろ、この上がNLNSを隠すための仮部室とは言え、敵地の真っ只中だしなぁ」
「えっ、じゃあ何でエレベーター前に?」
「決まってんだろ、エレベーターの下に隠してある地下通路から『ムーンカテドラル』最前線基地に行く為だよ」
えぇ・・・・・・最前線基地ぃ?この部屋の存在だけでもびっくりだったのに、まだ仕掛けがあるのか・・・・・・・というか、常識的に此処、他人の所有地だけどいいのだろうか、そんなことして。
「あぁ、何だテメェら。淳之介達から何も聞いてねぇのか?」
「な、何をですか・・・・・・?」
「この施設の使い方とかそういうの諸々をだよ」
「いや、聞いてませんが」
「マジかよ・・・・・・さてはまた説明省きやがったなアイツ。まぁ、別に今となっちゃどうでもいいか」
「あぁ、それともう一つ。今のテメェらの学園を管理してるあの理事長、ニセモノだからな」
「「「「「「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」」」」」」」」」
今明かされる衝撃の真実。というかいきなりすぎでしょう、何でそんな情報言ってくれなかったのさ淳之介君達は!?
「だから俺達『ムーンカテドラル』はホンモノの理事長様に召集掛けられたんだっての」
「って言っても誤解すんなよ?第三者が今の理事長様に変装してるっていう意味のニセモノホンモノじゃなくて、元の理事長様を如何にかするとかして席を奪っただけの他人が座ってるって意味だからな」
そんな事を長谷部さんはごくごく普通の事の様に説明しているが。いやいや、それが本当ならかなりヤバい案件じゃないですか。しかも、成り済まし以前の犯罪行為だし、それ。
「ただまぁ、厄介なのは奴さんが『監視委員会』って奴らとつるんで悪さしてるってところだな。いや、寧ろその悪行すらも世間に公表させずに保ってる鐘家の財政がヤバいと言うべきか」
「では、実質この学園は第三者である現学園長に乗っ取られている、と・・・・・・?」
「ま、そんなとこかね。取り敢えず、此処でこれ以上話していれば、向こうに情報が筒抜けるかもしれねぇ。早いとこ、こっからずらかるぞ」
長谷部さんの発言のすぐ後に、エレベーターがこの階に到着したことを告げる音が鳴り、扉が開いて、エレベーターの中が顕わになる。そして、長谷部さんがその中へ入り、穂乃果さんがエレベーターが閉まらないように開ボタンを押しっぱなしにする。それを一瞬だけ後ろを振り向いて確認した長谷部さんはエレベータールームの床をゴソゴソといじり始め、その内一箇所の床面を叩いて床板を剥がした。すると。
「よし、此処を下りるぞ。ついて来い」
エレベータールームの床にぽっかりと空いた穴に長谷部さんは何の躊躇いもなく飛び込んだ。私が急いで駆け寄ってその下を除いてみると、壁伝いに梯子がかかっていて、その梯子を使って長谷部さんが下へ下へ降りていく姿が確認できた。
「さ、エレベーターはこの状態のまま非常停止しておくから、皆は急いで下りてって」
穂乃果さんがそう言うと同時にエレベータールームの電気がすべて消え、扉が開きっぱなしの状態で動作を完全停止したことが分かった。後ろに控えている皆を誘導する為、私はすぐに長谷部さんの後に続いた。あ、でも制服のままだと確実にパンツ見えるよなぁ・・・・・・。
「安心しろ、伊達に何年も女の園の中の黒一点で過ごしてきてるわけじゃねェ」
「普通に下りてきてさえくれりゃあ、オレは何も見ねぇよ。
ですよね、と心の中で賛同し、梯子を伝って下へ降り始める私。それにしても長谷部さんが最後に言ってた新宿の種馬って一体誰の事なんだろうか。気になる・・・・・・けど、聞いちゃいけない気がする。止めておこう。
――それから。全員が梯子を下りて、最後に穂乃果さんが諸々の証拠隠滅を行って、下へと降りて来て。大分下へと降りてきた私達を出迎えたのは遥か先まで続く、長い長い平坦な通路であった。
「そう言えば、淳之介君達は一体何処に?」
「あいつら『NLNS』ならもう本部に一足先に到着して会議しながら待ってるだろうよ、急ぐぞ」
そうだったのか、通りで先程から姿が見えないはずだ。
「ところで、穂乃果さん達はどうしてお台場へ?」
「えっとね、ストリートライブをしに来たの。因みにこの作戦はあくまで現地に行くならそのついでにって希ちゃんにね」
「希さんもいらっしゃるんですか!?」
「んー、支部からの通信って形だから、残念だけど来てはないよ」
「そうですかぁ・・・・・・お会いしたかったです」
穂乃果さんから希さんの話を聞いて期待に胸を躍らせたせつ菜ちゃんだったが、穂乃果さんの口から来ていないとの説明がなされるや否や明らかにテンションダウンしたのが分かった。
「・・・・・・せつ菜ちゃんは希ちゃん推しなのかな?」
「いえ、私はどちらかと言えば絵里さんですかね!同じ生徒会長を務める者として尊敬しています」
「あはは、そっかぁ。そう言えばせつ菜ちゃんは生徒会長さんだったね、憧れちゃうな」
「勿論、私は《μ’s》の活動の発起人でもある穂乃果さんも尊敬していますよ!」
「えぇ~、私はそんな大したことしてないよ~?」
「そんな事ありませんよ!《μ’s》の精神が今も生き続けているのは、やはりあの時の穂乃果さんが口にした言葉の息吹が人の心に少なからず衝撃を与えた証拠です、間違いありません!」
せつ菜ちゃんの言う通り、伝説のスクールアイドル《μ’s》は嘗て、世界中の期待を一身に背負う中でその活動に終止符を打った。だが、その潔い解散こそが当時の人々の心に伝説のスクールアイドル《μ’s》としての姿を長く刻み込むきっかけとなり、その姿は今も多くのスクールアイドル達の心の中に焼き付いている。
『行こう。《μ’s》なら・・・・・・
そんな穂乃果さんの掛け声と共に、あの日の秋葉原は一つの思いで世界を染め上げた。宿敵でもありライバルでもあったA-RIZEをも引き込んだ、今も語り継がれる幻の名曲。
――全てのスクールアイドルの為の歌、『SUNNY DAY SONG』。
「ストリートライブでは、今も歌われているんですか?《μ’s》の曲を」
「偶にねー。私が自主的にセトリに組み込むこともあるけど・・・・・・やっぱり一番多いパターンは会場に来てくれた皆からリクエストされてやる、って感じかな」
「おおおおおおっ、やっぱり!!後でライブ見に行かせてもらってよろしいですかっ!?」
「いいよ~、この騒動が終わってからならいつでも、ね」
せつ菜ちゃんばかりが穂乃果さんと会話を進めているが、他のメンバーは特に不満そうという訳でもなく、寧ろご本人を前にしなければ聞けない貴重な話に挙って耳を傾けていた。
「あ、そうそう。実は私とユースケがここに来る前に希ちゃんのお遣いで来た人がね」
「丁度今希ちゃんがいる現地で研修してた高咲侑って子から言伝があったんだってさ」
そんなことを穂乃果さんが口にした瞬間、そこにいた同好会メンバー全員が驚きと嬉しさとが混じり合った表情で一斉に反応を示した。
「嘘、侑ちゃんが・・・・・・!?」
「ああああああ、あのっ、それで侑先輩は何と・・・・・・!?」
「侑さんが元気にしてるか、私、知りたい・・・・・・!」
「良かったぁ~、ずっと音信不通だったから心配だったんだぁ・・・・・・!」
「侑さん・・・・・・!」
高咲侑という一つの個人名のみでここまで複数の対象の心を動かすことが出来るとは。やっぱり私の友達は・・・・・・侑は凄いんだな。すっかり彼女達が虜じゃないか。
「穂乃果さん、それで侑さんは何と・・・・・・?」
「ふふっ、後1ヶ月で戻るから待ってて、だってさ」
「侑ちゃん・・・・・・うん、待ってるよ。私達、ずっと侑ちゃんが帰るの待ってるから・・・・・・!」
メンバー2人と活動場所を奪われた同好会の皆の顔から、すっかり影が消え去った。そっか、侑は向こうで元気にやってるんだな。なら、私もマネージャー代理として負けてられないな。
「・・・・・・話は終わったか?着いたぜ、オレ達の目的地によ」
長谷部さんがそう言って、正面にある近未来的なドアに手を伸ばし、認証機器のようなものにカード―キーをかざす。扉が開く。私達は、迷わずその扉の向こうへ駆け込んだ。
「おっ、噂をしてたら何とやらだね、兄」
「そうだな。取り敢えずは全員無事って訳か」
「これで一安心ね。さ、気を取り直して作戦会議を進めるわよ、淳」
「此度はお互いに窮地で御座いましたね。お疲れ様です、同好会の皆様」
「もうあそこの基地使えないっぽいですね・・・・・・少し寂しい気がします」
「ごめんね、皆。あのトキは、あまりに突然だったから椅子持ってくるの忘れてたんだよ・・・・・・」
先程のNLNS基地とは規模も設備も部屋の大きさも桁違いの、御立派な空間の中に見慣れた皆の顔が一堂に会していた。
「で、三船さん、だったか」
「栞子でよろしいですよ、長谷部さん」
「じゃあ栞子さんよ、さっき向こうで言いかけた件について詳しく聞かせてもらうじゃねぇか」
「はい、分かりました。やはり、皆さんに直接聞いてもらった方が早そうですから」
Side:ランジュ
『・・・・・・ジュ・・・・・・ランジュ』
――夢を見た。アタシにとって大切な誰かの夢を。
その人は夢の中でアタシを呼んでいる。遥か遠くまで響くような酷く優しい声をして。
『誰・・・・・・?』
アタシは問いかける。不思議な事に相手の姿はぼやけていてはっきりと見えない。
『忘れてしまったかな。無理もないか、もうかれこれ十年は会ってないからね』
アタシの問いに答えたその人は何だか悲しげな顔をした。相変わらずぼやけたままだけど、何故かそういう顔をしているであろうことだけは分かった。
『十年・・・・・・そんなに?』
『あぁ、やっぱりキミは変わらないな。相変わらずの綺麗で聡明な目をしている』
ふとそんな風に褒められて、何だか少し照れくさい。何故だろう、他の人から言われても何とも思わないというか寧ろ当然だと受け入れているのに。この人だけは違う、もっと褒められたい。
『だが、如何やらそんな君の純粋さに付け込んで誰かが悪さをしようとしている』
『これは多分、キミにとっても、キミの家にとっても、あまり良くないモノを運んでくる』
良くないモノ・・・・・・それを聞いてちょっと怖くなる。それじゃあアタシはどうすればいいの?
『それは・・・・・・おっと、如何やら今日は此処までの様だ、追手が来ているのでね』
その人がそう言った途端、その人の身体がすうっと半透明になり消えかけているのが分かった。
『追手・・・・・・?誰かに追われてるの?アタシに・・・・・・ランジュに何か出来ない?』
『あぁ、いや。そう意味ではなかったんだけどね。だから今は大丈夫だ』
徐々に姿が薄れていくその人は、そう言って微笑む。まだ靄のようなものがかかっていて顔は見えない。でもやっぱり、アタシにはその人の感情が手に取るように理解できた。もしかしたらアタシは何か、大切な何かを忘れている気がする。ここで別れるのは嫌だ、とその人へ叫ぶ。
『心配しなくても、またいつか会えるさ。それまで、キミもどうか変わらずに、ね』
『待って・・・・・・!待って、アナタの名前は――』
『また会おう・・・・・・が・・・・・・しの・・・・・・めよ・・・・・・』
――夢は、そこでプツリと終わった。
「・・・・・・ま・・・・・・うさま」
「んうっ・・・・・・うぅ~ん・・・・・・?」
また誰かがアタシを呼ぶ。あ、でもこれはとても聞き覚えがある。
「・・・・・・お嬢様・・・・・・ランジュお嬢様」
間違いないセバスだ。きっとアタシを心配して起こしに来てくれたのだろう。アタシはそれを悟るとゆっくりと目を開けた。
「セバス・・・・・・?」
「はい、おはようございます、お嬢様。その通り、貴女のセバスに御座います」
「ゆっくりとお休みのところ申し訳ないのですが、至急ご報告をと思いまして」
アタシはその声を聞きながらベッドから体を起こし、背伸びをする。えっと報告?アタシ寝る前にセバスに何か頼んだかしら?そんな調子で寝ぼけ眼のアタシがポケーッとしていると。
「ランジュお嬢様、予定通り同好会の二人をお連れしました」
同好会・・・・・・?同好会の二人って・・・・・・と思い起こした瞬間、アタシは、はっと思い出した。
「もしかして、昨日言ってた果林と愛のことかしら!?」
「はい、左様に御座います。お二人を説得し、無事部への転入を済ませました」
「正式な採用基準まであと一人に御座います、お嬢様」
「でかしたわ!流石ね、セバス」
「勿体なきお言葉・・・・・・感謝致します」
「「・・・・・・」」
セバスが部室のドアを開けると、廊下の方には確かに虹ヶ咲スクールアイドル同好会の朝香果林と宮下愛の二人が立っていた。あぁ、遂にこうして対面することが出来た。アタシは嬉しくなって廊下にいる二人にブンブンと手を振ってみる。
しかし、二人共何か驚いたような顔をして此方に近づいてくる気配がない。あれ、アタシ二人に何かしたかしら・・・・・・?すると、セバスも何やら慌てたような顔でアタシに詰め寄って来た。
「お、お嬢様!何時ものように鐘家の者としての正しい振舞いをなさって下さりますかな?」
「えぇ、どうしてセバス?だって、二人はもうアタシの友達なんでしょう?なら、遠慮する必要はないと思うのだけれど」
「親しき仲にも礼儀あり、と申します。此処は何卒、尊大なる態度にて・・・・・・!」
セバスが頭を下げる。まぁ、そこまで言われてしまったら仕方がないか。アタシの元々のスタンスとは違うけど家柄の問題もある訳だしね。あぁ、出来るなら普通の家に生まれたかったな。
「それじゃあ改めて。果林、愛、Welcome to perfect world。アタシは貴女達を歓迎するわ」
「一応聞くけど、アタシの名前は知っててくれてるのよね?」
アタシが質問をすると、二人は無言でこくりとだけ頷く。それなら自己紹介はいらないか。うんうん、折角アタシの部に二人が来てくれたんだし精一杯もてなさなくっちゃね。ええっと、先ずは。
「・・・・・・セバスは下がっていてくれるかしら?この3人でお話がしたいの」
「もてなしの紅茶等はご不要に御座いますか?私めが淹れてきますが」
「大丈夫よ、紅茶だったら自分で出来るわ。アタシのお客様なんだもの、アタシに淹れさせて」
「・・・・・・畏まりました。御用があればお呼びください、その都度お邪魔致します故」
普段通りの規制な姿勢をキープしたまま、セバスは部屋から退出する。その場には、今回の事件の
「さ、好きなところに座って、二人共。紅茶は砂糖は多めかしら少なめかしら?」
「え、えっと・・・・・・じゃあ、少なめで」
「ちょっと、愛!?」
「わっ、ちょっと待って、カリン!せ、折角淹れてくれるって言ってくれてるわけだし、此処は、ね?」
「はぁ・・・・・・勝手にしなさい。因みに、私は要らないわ」
アタシの提案に愛は素直に応じてくれたが、果林はきっぱりと断ってすぐにそっぽを向いてしまう。う~ん・・・・・・流石にこの前のライブ乱入はやり過ぎたかしら。ユイにも謝ったんだけどなぁ、ちょっとショック。
「ねぇねぇ、他の皆はどうなの?ウチに来てくれそうかしら?」
「えぇ!?えっと、う~ん・・・・・・い、今のところはアタシ達だけかな~あはは・・・・・・」
「そうなの?悪くない提案だと思ったんだけど・・・・・・何がいけなかったのかしら?」
紅茶の茶葉を適温のお湯で蒸かしながら、アタシは考え事をする。うーん、もしかしたらアタシが多々純粋に経験不足なだけかも。だって今まで友達なんてシオしかいなかったわけだし。
「じゃあ、友達が沢山いる愛ならきっと分かるわよね。皆に来てもらう方法、とか」
「え、えぇ~・・・・・・ア、アタシはほら、何て言うか、同好会以外からも勧誘受けてるけど断ってる立場だからそこまではよく分からない、かなぁ?」
愛の言葉を聞いて成程、と思うアタシ。部に勧誘するっていうのはそういうのとはちょっと違うのね、やっぱり難しいわ。でも、友達は欲しいし・・・・・・どうしよう。
「と、と言うかさ、えっと、ランジュ、さん?」
そんな考え事をしていると、愛が突然アタシの事をさん付けで呼び始めるからちょっと驚いた。へぇ、あの友達が多い事で有名な愛もそういう時があるのね、意外な発見だわ!
「ランジュでいいわよ。だって、愛とはもうお友達じゃない、気軽に呼んでくれていいわよ!」
「・・・・・・えっと、じゃあ、ランランでいい?」
ランランだって!きゃあ、初めてあだ名で呼ばれちゃったわ!愛の提案に胸のときめきを隠しきれないアタシは上がり過ぎたテンションで紅茶をティーカップ一杯になみなみまで淹れないよう、細心の注意を払いながら、愛の元へ自分の分と一緒にお盆に乗せて持って行った。
「はい、愛の分の紅茶ね。それとさっきの呼び方だけど、勿論いいわよ!」
「そっか。じゃあ、ランラン。何か今日凄くテンション高いって言うか何か前にあった時よりもキャラが違うって言うか・・・・・・」
あぁ、それでさっきから愛が必要以上におっかながってると言うか困惑顔な訳ね!何となく避けられてる感じな理由が分かったのならもう大丈夫。要はアタシがもっと歩み寄ればいいのね!
「無問題よ、愛!これが普段のアタシ、プライベートランジュ。で、一回同好会の部室まで行った時のアタシがさっきもセバスが言ってた鐘家スタイルね、覚えておいて!」
「へぇ~、そうなんだ。ランランも苦労してるんだね」
「分かってくれて嬉しいわ、愛!ホントは家柄とかそういうの、あんまり気にしたくないんだけど」
実際問題、このアタシにシオ以外の友達がいないのはこれが所以だったりする。出来る事なら今すぐ取っ払ってしまいたいくらい。でも、それでもこのアタシが鍾家に生まれた鐘嵐珠としての生きるに必要な道であるなら、アタシはその使命を全うするべきだ。
「そ、御高説どうも。まさか貴女がそれ程の事を考えているなんて思いも寄らなかったわ」
「でも・・・・・・よくもまぁ、あれだけの事を仕出かしておいて私達を前にその言葉が吐けるわね?」
初めて出来た友達にアタシの全てを知ってほしい。だから、アタシは全てを語る。けれど、その話の途中で今まで黙りこくっていた果林が苛立ち交じりの表情でアタシを睨んでいた。アタシはその表情を向けられる理由が分からず、果林に問い返す。
「果林、どうしたの?アタシ、果林に何か悪いことした?」
「そう言ってすっ呆けるつもり?私と愛はね、貴女の部下に無理矢理連れてこられたのよ」
「他の誰でもない、貴女の命令でね」
「嘘・・・・・・!?」
果林の言葉を受けて、アタシは絶句した。アタシが、セバスに果林と愛を無理にでも連れてこいと命令したって言うの・・・・・・!?在り得ない、そんな事、アタシが言った記憶はない。もしかしたら、果林がアタシにドッキリを仕掛けているのかもと考えて向かい側に座る愛を見たが、愛は此方に目を合わせてはくれず俯いていた。そんな・・・・・・果林の言ってることは事実なの・・・・・・!?
「当り前よ、決定権を持つ人間は此処に貴女しかいないんだもの」
「嘘・・・・・・嘘よ!アタシは・・・・・・ランジュは絶対にそんなことしない!」
「じゃあ、今私が言っている事と貴方の部下であるセバスの言ったことが嘘って事になるわね?でも、そんな事はないわ、だって私と愛は駅前であの男に襲われたんだから!」
アタシの記憶にはそんな事実は存在しない。けど、目の前の二人はそれが実際にあった事だと言っている。何だろう、間違っているならいつもはちゃんときっぱり否定できるはずなのに。それが全く出来ずにいる。段々と頭が痛みだす。
「う、ぐっ・・・・・・アタシは・・・・・・アタシ、は・・・・・・!?」
「――おおっと。私の”娘”を虐めるのは、それ位にしておいてもらえるかい?」
シンと静まり返った部室内に突然響いた男の声。アタシは聞き覚えがあるようでないその声のする方を向く。その男と目を合わせた時、アタシはアタシの中に眠る得体の知れない何かに急速に精神を浸食されるような感覚に飲まれ、気付いた時には。
「・・・・・・お父様?」
どことなく虚ろな目で。しかし、元のアタシよりも遥かに上品で気高く。そんな誰かになっていた。
Side END...
「ああ、そうだよ。私は君の父だ。愛しき”娘”よ」
「フフ、あまりに急すぎるわ、お父様。アタシ、びっくりしちゃったじゃない」
ランジュの目に再び光が灯る。しかし、それは以前の様にキラキラと綺麗に輝いてはいなかった。
「それは済まなかったねぇ、ランジュ。ところで、此方の方々はどうしたんだい?」
「アタシがセバスに頼んであの同好会から部に連れてきてもらったの。大丈夫よ、お父様。あそこの部室はお母様に頼んで使えなくしてもらったから」
果林と愛は確かに見た。今まで、ただ純粋に自分達の事を見ていた彼女が急にあの時のような態度と正確に豹変していく様を。しかもそれは、ランジュの父を名乗る男が部屋に入ってきてからすぐの事。あまりにも辻褄が合いすぎていた。
「ランランのお父さん・・・・・・・?ねぇ、ランランはどうしちゃったの?」
彼女の変貌に耐えきれなくなった愛が男にそう質問した。だが、男は愛をチラリと一瞥するが特に答える様子がない。その代わりに彼女が、ランジュがその問いに答えた。
「アタシはどうもしてないわ、愛。心配は不要よ」
「えっ、そ、そう?あ、あはは、ごめんね。愛さん、てっきりランランが――」
「それと、その呼び方やめてくれるかしら?いつも通り、ランジュでいいわよ」
「・・・・・・!!」
愛の背筋が凍った。さっきのようなあの何かちょっと抜けてて、でも心の奥底に熱いものというか信念みたいなものを秘めている彼女ではない。極めて冷徹に非情に。見慣れたあのスクールアイドル部の女帝、鐘嵐珠の声が辺りを支配する。
此処で、果林と愛の中で渦巻いていた疑念がはっきりとした。間違いない、スクールアイドル部の部長・鐘嵐珠はこの男に操られている、と。
「ご、ごめん、ランジュ・・・・・・」
「別にいいわよ、愛はもうアタシの友達なんだから。勿論、果林も・・・・・・ね」
「なぁに、漸く本性を見せたって事かしら。スクールアイドル部の部長さん?」
ランジュがそうなったことで、周りの空気がどんどん彼女の支配域として律されていく気配を感じる。しかし、彼女の今の状況が操られている状態だとしたら、まだそれが何かは分からないが、何処かに必ず解決策はあるはず。
部に無理やり連れて来られたとは言え、現状を作り出している要因を早くも見つけてしまったのだ。果林と愛は今の自分達がやるべきことをしっかりと理解した。
「成程、成程。キミ達がランジュの大切なお客様だというのはよく分かった。しかしだ」
「此処で”我々”に逆らえば、キミ達が折角セバスの手から守り抜いたお仲間が、また窮地に陥ってしまうかもしれないよォ?果たして、本当にいいのかなァ?」
「くっ・・・・・・!」
まさに万事休す。またもや危機を迎えてしまった果林と愛はその言葉に身動き一つ取れなくなってしまう。自分の行動一つで今の部室を失った仲間たちがあの黒服の男達に再び囲まれて、狙撃されて、傷ついて。そうなることを恐れてしまったのだった。
「お父様、あまり二人を委縮させてはいけないわ。だって彼女達は今日から正式にスクールアイドル部で活動していくことになったんですもの、仲間は大切にしなくちゃいけないでしょう?」
「あぁ、そうだったな。済まない、ランジュ」
「でも目標まであと一人、あと一人仲間になってくれればアタシ達は本格的に動くことが出来る」
「長かった、長かったわ。全く、目の前にそれがあるのに届かないというのは中々に厄介な事象ですね、お父様」
「あぁ、そうだな」
父と娘が何処か遠くを見るような目で窓の外を見やる。外には直ぐ近くにある海が真夏の空の元に燦々と照らされてキラキラと光り輝いていた。愛と果林がその光景を前に立ち竦んでいると、不意に部室のドアが素早く開かれ、中に一人の女子生徒が入ってきた。
「果林さん、愛さん、ランジュ、無事ですか!?」
黒髪のボブに短い紐のような髪飾り。特徴的な赤い瞳と偶に口元からチラリと此方を覗く八重歯。そして、学校指定の制服の上着の袖に通したワッペンに書かれた『虹ヶ咲学園生徒会』の文字。一年生にして生徒会長の次に偉い立場に選ばれた少女。彼女こそ。
「栞子、何で貴女が此処に!?」
「嘘、しおってぃー!?」
――虹ヶ咲学園生徒会・副会長、別名『鋼鉄の副会長』として知られる三船栞子、その人だった。
「果林さん、愛さん・・・・・・!良かった、お二人は無事のようですね」
「うぐぅ・・・・・・しおってぃーが来てくれた、アタシ達の為に来てくれたよぅ・・・・・・!」
「あら、スパイ疑惑が確信に変わって追い出されてきたのかしら?」
「ちょっと、カリン!その言い方は酷いんじゃないのっ!?」
「・・・・・・いえ、いいんです、愛さん。果林さんも悪気があって言っている訳ではないでしょうし」
意外な仲間の登場に少し心を落ち着かせた二人を相手にした後、彼女は本来の目的であるランジュの方へと向き直る。そして、ランジュの傍にいる男に向かってこう叫んだ。
「ランジュに何をしたんですか・・・・・・『監視委員会』の代表取締役である貴方が!!」
「へっ、やっぱり覚えてやがったか。だよなぁ、僕達は元々協力者同士だったもんなぁ。なぁ、三船栞子ォ!!」
栞子とその男は嘗ての事件において途中まで共闘関係にあった。だが、彼は役目を果たせなかった彼女をそのまま見捨てて次の作戦へと歩みを進めた。栞子にとってこの男ほど憎い存在もいなければ、今の仲間達に出会うきっかけを与えてくれたであろう、ある意味において恩師的な存在も他にはいなかったのだ。
「本来ならあそこでテメェが生徒会を乗っ取っていれば、此処までもっとスムーズに、もっと早く来れたのによォ!」
「だが、テメェはあの現生徒会長様に負けた。しかも、今はその右腕として扱き使われてやがる!」
「自ら戦いを挑んで負けた相手に尻尾を振る気分はどうだァ・・・・・・?この負け犬ゥ!!」
「口を慎みなさい、土井。貴方が文句を言える程、私の今の仲間は安くありませんよ」
因縁の相手を前に栞子もいつもより言葉に熱がこもっているし、土井と呼ばれた男も自身の本性を露わにした。果林と愛はその雰囲気に圧されながらも、両者の争いを見ている。だが、そこで今まで事を静観していたランジュが口を開く。
「・・・・・・シオ、お父様。今は少しだけ、その争いを止めて頂けないかしら?」
「ランジュ・・・・・・」
「何を言う、ランジュ。キミの嘗ての友は、今は君を阻害する側についているのだぞ、それを認めるとでも言うのか・・・・・・!?」
「そうではないわ、お父様。アタシはただ、シオがどうして此処に来たかを知りたいだけ」
「さぁ、シオ。一度アタシの誘いを断った貴方が何故来たのか・・・・・・教えてくれる?」
ゆっくりと誘うように栞子に問いを投げかけるランジュ。一方の栞子は、ほんの一瞬だけ目を閉じ、己の心の中で此処に来る時に抱いた決意を以て、その問いに答えた。
「ランジュ、私をスクールアイドル部に入れて頂けませんか・・・・・・!」
「「しおってぃー(栞子)!?」」
栞子の言葉に驚きを隠せない果林と愛。当然だ、彼女がこの行動をとった経緯を知らないのと部側に強引に引きずり込まれた二人からすれば、これは只の同好会に対する裏切り行為でしかない。実際、栞子も彼女達からこの言葉を述べた時にバッシングされるであろうことを覚悟しないままに来たわけではない。
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『成程な、アンタの考えていることは分かった。だが、いいのか?』
ムーンカテドラル基地での事。栞子は自らが同好会のスパイになって部に潜り込むことで、捕らわれた二人の救出と自分の幼馴染みであり親友でもあるランジュの真意を探り、同時にランジュに手を貸す『監視委員会』が最終的に何を成す為に何を企んでいるのか。それを見極めるのだと言う。
『もしかしたら、その行動が部に連れ去られた二人からは悪印象に見えるかもしれない。それでも、その意志を貫くのか?』
『それで構いません。私は本来強い女です、一時の誤解ならば堪えて見せます』
同好会のメンバー達は揃って彼女の事を心配してくれた。けれど、これがもしあの時の自分も関わった事件の続きと言うならば。私が動かずして誰が動くというのか。今の栞子はそんな固い信念のもと、目の前の困難に挑もうとしていた。
『友の為に見せる覚悟、か・・・・・・悪くねぇ』
彼女の言葉を聞いた祐介は、ふとある日の思い出に耽る。まさか自分がスクールアイドルのマネージャー兼監督のような立場になり、未来でもそれと同じような立場にいる。あの一瞬のような時間の中で起こした奇跡は確実に自分の中の価値観を塗り替えたのだと、そう悟った。
『長谷部さん・・・・・・?』
『フ、悪い。少しばかり昔の事を思い出してな』
『ま、アンタはアンタのやり方って奴を通して見せろ。途中で誤解されようが何されようが、自分の信念が変わらないならきっとその姿を見てる内に自ずと分かってくれるはずだ』
自分があの時味わった「楽しい」を、これから出てくるアイドル達やマネージャーを引き受ける奴らに味わってほしい。だからこそ、自分達の代から続くこの長き因縁をそろそろ断ち切らねばと、そう思った。
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「貴様・・・・・・一体どの口でそれを・・・・・・ッ!」
「いいわ、アタシは歓迎するわよ、シオ。貴方がいれば心強いわ」
栞子の願いを聞いて、激昂する土井とは裏腹に冷静に対処するランジュ。彼女には彼女の思うところがあるのだろう。土井はそう考えてすぐに怒りを収めるも、まだ納得のいかない表情でランジュを見る。
「ランジュ・・・・・・しかし」
「お父様がシオの存在を危険に思うのも無理はないわ。でも、アタシはシオを信じる。それに、生徒会と繋がりがある人間を事前に引き込むのも一つの手・・・・・・いいでしょう?」
「ふん・・・・・・勝手にしろ」
そんな捨て台詞を吐いて、土井は部屋から出ていった。恐らく理事長室にでも向かったのだろう。
「ありがとう、シオ。お父様は気に入らないみたいだけど、実際貴方が入ってくれたお陰でこれからのスクールアイドル部は正式な認可された部として本格的に始動できるわ」
やれやれと言った感じで溜息を吐きながら、ランジュは栞子を見つめたまま微笑む。やはり、彼女にとって栞子は大切な存在であることが傍目から見ても良く分かる。
「ランジュ・・・・・・活動を開始する前に一つ聞いてもよろしいですか」
「えぇ、他ならぬシオの頼みだもの。一つと言わず幾らでも」
「ランジュは・・・・・・この部で一体何を成そうというのですか?」
栞子はランジュと再会したあの時に聞いた質問と同じ問いを彼女に投げかける。ランジュはそれを聞いてニヤリと笑い、掲げる思いを口にした。
「当然、アタシの野望はこの平行線を辿るスクールアイドル史に再び革命を齎す事」
「嘗ての《μ’s》や《Aqours》にも負けないような、ね」
「アタシがやる決めたんだもの。これはもう、決定事項よ・・・・・・!」
24章の影響で果林と愛のところ、初期案からざっくり内容変えました。
というか見ました!?今月号のLoveLiveDaysに乗ってたランジュの説明文!
きっと、あれが本来ラブライブ運営が出したかったランジュの設定なのでしょう。それを脚本の雨野の野郎がクソ改変して……脚本家辞めちまえ!!
仮に↑みたいな推測したらランジュ推せてこない?一緒に推そうよ、ストーリーガン無視でいいから!さぁさぁ、ランジュ沼(まだグッズもないけど)へWelcome come on!!
ミアは璃奈の事好きすぎですね、りなミアはいいぞ。
PS
地道にUAが増えてきてて嬉しい限りです。文章力は雑魚いですが、これからもお付き合いよろしくお願いします!増えろ、ランジュ推し!