アニガサキ!-PASTEL COLLARS- 外伝 Episode of ランジュ   作:海色 桜斗

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「聖地巡礼は沼津に行け、でなければ帰れ!!」

……どないしろっちゅうねん(笑)
前の章では、本当に描きたかったものがあまり再現出来てなかった為、反省してこの章に活かします。μ’sもあんまりシリアスに書きすぎたかもしれない、寧ろこのくらいのノリで良かったのでは。

という訳で、第4章の始まりの一節です。
前回投稿した登場人物紹介で入れ忘れた人を用語解説と共に↓に掲載します。

さぁさ、今宵はスクスタの生放送!
テーマは恐らく……そう、あの「25章」です。Twitterでも告知しておりますが、生放送待機のお供として、是非。何卒、何卒、よろしくお願い申し上げます。
では、お楽しみください!!

※因みに、冒頭のシーンはこのMAD動画のシーンの演出を一部変えたものです。
https://www.nicovideo.jp/watch/sm33476458


登場人物・追加参戦キャラ紹介

国木田 花丸(CV:高槻かなこ)
私立浦の星女学院に所属していたOB。一緒に暮らしている祖父と祖母がお寺の住職を務めている事もあり、年齢の割に妙に落ち着いて悟りきっている。当初気にしていた語尾の「ずら」は、今では開き直って普通に使っている(というか昔から沁みついた癖で、もう取れなくなってしまった)。善子とルビィとは幼馴染みで前者は幼稚園時代、後者は小学校からの付き合い。

お爺ちゃん先生(CV:チョー)
虹ヶ咲学園音楽科担当の教師で、音楽科への転入希望者研修の引率も担当している老人。彼の経歴に関してはまだまだ謎が多い。


アニガサキ及びスクスタ設定変更・オリジナル設定解説②

・善子と花丸とルビィ
アニメ版「ラブライブ!サンシャイン!!」では花丸が善子の幼馴染みとなっていて、Gs設定のルビィとの幼馴染み設定が消されたが、本ノベライズではその設定を全て両立。私も初期から追ってるんでね、Gsの勿体ないなぁという設定をこれ以外にもこれでもかと盛り込む予定です。

・腕っぷしの強いリトルデーモン達
ヨハネ様ファンクラブに所属する力自慢の眷属たちの事。ヨハネ様の為ならば、某渋谷の暴動系アニメに出てくる一組織の様に対象をボコす。兎に角、ボコす。

・ギルバート
作者が構想案として考えていた小説の設定の名残。同じくオリ主設定で出てくる長谷部祐介よりも大分濃ゆいキャラが出来てしまった(※詳しくは主な登場人物紹介・第4章を参照)。

・千歌のダジャレ好き
これも失われた貴重な設定の一つ。愛さんと被るだぁ?関係ないね。

・ゲート
『COWBOY BEBOP』の原作で登場した超オーバーテクノロジーな転送装置。原作は舞台が全宇宙だから、これさえあれば移動が楽になるね!ただし、何故ラブライブ世界の、しかも宇宙でなくて上空に現れたのか。エドのハッキングによる影響か、それとも……。

・Aqoursの現在
スクールアイドルを継続して続けている。けれど、それは学校所属のと言う意味ではなくて……(※詳しくは本編参照)?ネタ元はrontorl氏の同人誌より。本人に突っ込まれたら変えます。




4-1「時代遅れのカウボーイ」

アニガサキSS劇場⑧「ズラララ!!×2」

 

?「見えます。もうじき、かの運命すら打ち破る大きな輝きを持った者がこの地へ降臨する様が」

 

?「救世の鐘は既に鳴らされた。今こそ、この長きに渡る最終決戦(ラグナロク)、真なる決着がつく時が遂に訪れたのです・・・・・・!」

 

花「・・・・・・善子ちゃん、また中二病発症したずらか?」

 

善「う、うううう五月蠅い!悪かったわね、もう止めたくても止めれなくなってるのよぉ!?」

 

花「うわぁ、末期ずら」

 

善「末期言うなぁ!」

 

花「まぁ、でも、千歌ちゃん達も丁度動き出したみたいだし、強ち間違いでもないかなぁ」

 

善「ふん・・・・・・それで、黒澤姉妹と曜は何で来れないのよ?」

 

花「ルビィちゃん達は親戚のお家の用事。曜ちゃんは今頃きっと大航海時代ずら」

 

善「嘘・・・・・・!?魔都・東京で聖戦が始まるのよ、それ以上に大切な用事なんてあるわけないわ!」

 

花「仕方がないよ、人生生きていればそういう時もあるずら」

 

♪Ringing -Over the field-♪

 

善「ごめん、ずら丸。ちょっと電話出るわね」

 

花「お構いなく~」

 

善「・・・・・・はい、もしもし」

 

花「・・・・・・」

 

善「――ん、分かったわ。それじゃあ、また後でね」

 

『ピッ!』

 

花「誰からだったずら?」

 

善「誰からですって?決まってるじゃない」

 

善「私のリトルデーモン達からよ。如何やら早々に事は始まっていたみたいね」

 

花「今すぐ出る?」

 

善「勿論。現に今、腕っぷしに自信のあるリトルデーモン達が県境から入って来た委員会の人間達への襲撃に成功したわ」

 

花「うん、じゃあ急いだほうがよさそうだね」

 

善「えぇ、だからこそ」

 

善「私達の目的地への送迎、頼んだわよ、ギル」

 

ギ「ク、任せておけ」

 

花「・・・・・・本当に、大丈夫かなぁ」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「――・・・・・・良いかァ?世の中ってのは煮え滾った鍋の中みたいなもんなんだ」

 

「ドロドロに溶けたシチューの中では、どれが偉い訳でもどれが役立たずな訳でもない。一つだってっシチューな訳だ」

 

「ただ、どうしても忘れちゃいけねぇものがある・・・・・・何だかわかるかァ?」

 

此処は日本から遠く離れた海外の地。その都心から離れたちょっと寂れたコンビニで、その地に蔓延る無法者達が今まさにコンビニ強盗を働いている所であった。そんな中、運悪くそのコンビニに足を運んでしまったのが。

 

「(どうしよう・・・・・・何だか良く分からないけど、私、絶体絶命のピンチ・・・・・・!?)」

 

――虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会名誉部長・高咲侑、その人であった。

 

「・・・・・・お肉?」

 

「成程、それもそうだ。だがな、シチューの素がなけりゃシチューじゃない」

 

「同じ材料だってカレーにもなっちまうのさ」

 

「シチューの素なら、あそこに・・・・・・」

 

「そういうこと言ってんじゃねぇんだよ!!」

 

店員の女性の対応が気に食わなかったのか、バァン!と男がカウンターの上に座ったままカウンターを思い切り叩く音がした。現在、侑は後ろ向きで両手を挙げている為、その様子を直に確認する事は出来ない。だが、この状況は明らかに不味い状況であることは直ぐに理解できた。

 

「あら、何か凄く大変な事になってるわねぇ・・・・・・いけるの?」

 

「まぁ、任せときなって。全ては、お嬢様の命令通り、ってな」

 

その時、店の外で中の様子を伺う人物が二人。一人は派手な長い金髪を、サイドで輪っか状に結ぶという何とも特徴的な髪型をした女。もう一人は少し姿勢の悪い、ボサボサ頭の長身痩身の男。

 

『ザザッ』

 

『いーい?虹ヶ咲の子、撃っちゃダメだからね!』

 

「オーラ~イ」

 

と、男の持っていた通信機のようなモノにオレンジの髪の、頭の上にぴょこんと跳ねたアホ毛が特徴的な女の姿が映り、男に向かって注意を飛ばす。男はそれを受けて、やや気だるげに了解の返事を唱え、コンビニの入り口へとゆっくりと歩を進めていった。

 

「警察を呼んだって無駄だぜ?此処のセキュリティは全部分かってんだからな、何故だと思う?」

 

「レンジ、早くやっちまえよ!」

 

店の中で相も変わらず偉そうに御高説を垂れる、コンビニ強盗のリーダー格の男。すると、仲間の一人が痺れを切らして彼に催促をする。彼の名前は、どうやら「レンジ」というらしい。間違っても家電製品ではない。

 

「――おい、今日はもう閉店だ。他所へ行きな」

 

再び店外。ボサボサ頭の男が自動ドアの前に来ると、その前に立ち塞がっている、恐らく彼ら強盗一味の仲間であろう巨漢の大男がズボンのポケットに手を突っ込んだまま、そんな言葉を漏らす。

 

その男の背後にはコンビニであればお馴染みの、24時間営業を現す『24H』の文字・・・・・・全く以て説得力がない。

 

「・・・・・・」

 

しかし、そんな男の言葉を特に気にする様子もなく、ただ黙って入り口前の地面を見つめて俯き続けるボサボサ男。当然、そんな彼の態度に腹を立てた大男は。

 

「おい!」

 

声を荒げて目の前の男に退却を迫る。が――

 

「・・・・・・」

 

「んん?・・・・・・ぐをっ!?」

 

何も変わらぬ男の視線にふと興味を駆られ、同じように地面を見たその瞬間。視界に映った男の足が容赦なく顔面にめり込み、そのまま上を向いて気絶した。

 

「ワォ、何て素早い蹴り上げ。マリーじゃなかったら見逃しちゃうかも、ネ」

 

その一連の動作を見て、後ろに控えた金髪の女がそう呟く。先程の何処か心配しているような様子とは打って変わって、今は何だかその状況を愉しんでいるようにも思える発言であった。

 

「――分かったら、さっさとこの電子マネーに金を・・・・・・あぁん?」

 

更に再び店内。リーダー格の男が仲間の催促に応じて、此処に来た目的を果たそうとしていたその時。入り口の自動ドアが開き、店の中にボサボサ男が入ってくる。先刻までは暗がりでよく分からなかったが、彼は如何やら両耳をヘッドホンで塞いでいる様だった。成程、これであれば大男の忠告が聞こえなかったとしても何ら不思議ではない。

 

「おいこら、誰だテメェ!?」

 

「・・・・・・」

 

「おい、聞こえねぇのか!・・・・・・くっそ~ぅ」

 

入り口前でのやり取りよろしく、特に男に興味を持たず、商品棚にあるクラッカーを手に取るボサボサ男。自分の問いかけに無反応な男に痺れを切らしたのか。彼は拳銃を男に向けたまま、今まで座っていたカウンターを下り、その人物に詰め寄ろうとした。しかし。

 

「おい、ソイツを外して聞け!お゛ぉん!?」

 

「・・・・・すいませーん、これ下さい」

 

『パァン!』

 

『ドキューン!』

 

ボサボサ男が手にしたクラッカーを目の前で鳴らし、それに驚いた男は、怯んだ影響で持っていた拳銃から弾を天井に向けて発砲。その一瞬の隙を突いてボサボサ男の蹴りが男の顔面横に命中。近くのコーヒーサーバーに顔を突っ込むように倒れこんだ男は、流れるような勢いで「コーヒーを入れる」ボタンをボサボサ男に押され、顔にアツアツのコーヒーを浴びながら気絶した。

 

「野郎・・・・・・ッ!」

 

その様子を見た仲間の赤ジャケの色黒男が発砲し、あっという間に店内で銃撃戦が開始される。その男を援護しようと白ジャケの男が同じように拳銃をボサボサ男に向ける、が。

 

「よーいしょ、っと・・・・・!」

 

「ぐはっ・・・・・・!?」

 

「ふぅっ・・・・・・まだまだ甘いね。プロテイン、足りてないんじゃないの?」

 

急に天井の板を剥がして降って来た、青髪のポニーテールの女に殴り倒され、呆気なく気絶し昏倒。援護することさえ叶わなかった。

 

「ぐっ、うううっ・・・・・・!」

 

赤ジャケの色黒男は、ボサボサ男の背後の商品棚を登り、不意打ちで倒そうとするも。

 

「あらよっと」

 

「ッ・・・・・・ぐおわっ!?」

 

その行動を呼んでいたボサボサ男に上から出てきた腕を引っ張られ、そのまま向こうの通路のドーナツ販売スペースに背中から投げ付けられる。ガシャーン、と派手な音が鳴り、男は台の上で動かなくなった。

 

「スパイクさん、そっちはどう?」

 

「おぅ、上々だ。・・・・・・ドーナツ代はコイツ等にツケておいてくれ」

 

一通り店内の強盗一味を全員撃退した二人は、互いの戦況を確認し合う。天井から降りて来たポニーテールの女が言うには、ボサボサ男の名前は「スパイク」というらしい。

 

彼・・・・・・スパイクは、その光景を前に呆然と立ち尽くす店員を一瞥し、そんな言葉を漏らす。

 

元より、自分で弁償する気はないようだった。

 

『ズゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・』

 

「ふぅっ・・・・・・んあ?」

 

ポニーテールの女と退店しようとした、まさにその時。コンビニの奥、トイレのスペースから水を流す様な音が聞こえ、扉が開く。中から帽子を被った男が出てくる。

 

先程まで強盗によってジャックされていた店内。ならばそこに普通の客がいるなんてことはまずなく。

 

「あ・・・・・・」

 

「ッ・・・・・・う、動くな・・・・・・!」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

店内の状況を目にした帽子男と暫らく見つめ合い間が空いた、刹那。拳銃を取り出した男は、その店内で唯一の普通の客である高咲侑を人質に此処から逃げ果せようと企てた。罪を犯した人間の防衛本能に基づく、実にシンプルな。この場において最も成功確率の高い選択である。

 

「・・・・・・カナンさんよぉ」

 

そんな一幕を目にして、スパイクは苦虫を噛み潰したような表情でポニーテールの女に尋ねる。

 

「ええと・・・・・・何かなん?」

 

「・・・・・・三人、って言ったよなぁ?」

 

予め提示された人数と違う、と抗議するスパイク。如何やら店内侵入前に「カナン」と呼ばれた女が隠れていた天井裏で犯人達の人数や様子を偵察し、その情報を元にして突入したスパイクとの連携で早急な撃退に至った・・・・・・というのが先程までの一連の流れらしかった。

 

成程、ではその時から既にこの男がトイレに籠っていたのであれば、数えられないはずである。

 

「銃を床に捨てろォ!」

 

「・・・・・・っ!」

 

人質を手にした男の要求を前に、何かを決意したかのような表情になった彼女は。

 

「ま、まぁ、人生誰だって失敗はあるって!・・・・・・次、頑張ろう?」

 

「さり気無く立場逆転させてんじゃねェ、馬鹿!」

 

雰囲気が一瞬にして、シリアスからコミカルなコント劇風に変わる。海外ドラマあるあるだ。

 

「大体、テメェのクソが長すぎんだよ!」

 

「や、喧しい!コイツが死んでもいいのかァ!?」

 

帽子男が侑の頭に銃を突きつけて脅しをかけてきた。ここで保護対象を殺されてしまえば、彼等の今迄のプランが全部パーだ。カナンはため息を吐くと、その要求に従い、隠し持っていた銃を床に捨てる。だが、スパイクは。

 

「へっ・・・・・・?」

 

「聞こえてんのかァ、おい!コイツが見えねぇのか!?」

 

銃を床に捨てる訳でもなく、逆にその男に向かって銃口を向けていた。

 

――何時ものように余裕たっぷりの顔をして。

 

「そこのアンタ、俺達は警察でも無ければ警備員でもない」

 

「それこそ、人の命を守る義務何て、持ち合わせちゃいねぇ」

 

「(えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?)」

 

スパイクが吐いたその言葉を、侑は内心で驚きと共に受け止めた。では、何故彼が自分を助ける様な真似をしたのか。それが分からなかった。

 

「だが、俺達『掃除屋』を信用してついて来るってなら助けてやる」

 

「えぇ・・・・・・?」

 

普通なら、こんな見知らぬ土地で出会った見知らぬ人間に、正体が分からぬまま全信頼を置けと言うのも酷な話だ。けれど、ここで志半ばに命を散らしてしまうかもしれない危機であるならば。

 

「ちょっ、スパイクさん、正気!?」

 

「掃除屋・・・・・・ちっ、カウボーイか」

 

「・・・・・・さぁ、どうする?」

 

選択を間違えれば立ちどころに死に至る。そんな究極の選択を前に、侑は。

 

「――分かりました、行きます!」

 

「いい子だ」

 

覚悟を決めた侑の期待に答えるが如く、帽子男が銃で狙いを付けるより早く。

 

――ジェリコ941改、その引き金を引いた。

 

 

時は進み、某海外都内上空。

 

「――わぁ、凄い!」

 

虹ヶ咲スクールアイドル同好会名誉部長の高咲侑は、一生に一度あるかないかの絶体絶命の危機を脱して、スパイクと言う男に言われるままに彼の愛機でもある赤い戦闘機のような機体『ソードフィッシュ』に乗ってとある目的地へ赴く為に空の上にいた。

 

「ここら辺は、世界の夜景百選の中でも飛びぬけて絶景のスポットだ。早々拝めるもんじゃないぜ」

 

「はい、とっても綺麗です!」

 

運転席に座る男、スパイクからの発言を受けて、素直な返答を返す侑。と、機体の通信機から通信が入った。

 

『ハァイ、侑。最上級の夜景、堪能してもらえてるかしら?』

 

「はい!上空からのこんな景色、あまり見たことが無かったので、とっても新鮮です!」

 

『ウフフ、そういう素直な反応、ワタシ的にすっごく好きヨ!』

 

「あははっ、ありがとうございます、鞠莉さん!」

 

画面に映るは先程の事件の際にスパイクと共にコンビニ前で待機していた金髪の女。彼女の正体、それは嘗てμ’sと同じようにスクールアイドル史に名前を残した、伝説のスクールアイドルグループ《Aqours》のメンバーの一人、小原鞠莉であった。

 

『ちょっとぉ!何で前に乗り出してくんのよ、後ろにも通信機付いてるでしょうが!』

 

『いやぁ、つい癖で。後ろの席に座ったら、前の方に顔出したく・・・・・・ならない?』

 

鞠莉と侑の和やかな会話を遮るかのように、機内の別の通信機から聞こえて来た、同乗している人物に文句タラタラな女と物腰柔らかな女の声。

 

『ならないわよ!いいから黙って座ってなさい・・・・・・!』

 

『ちぇー・・・・・・って、あ、そうだった。やっほー、侑。さっきは大変だったねぇ』

 

「は、はい!でも、お陰様で無事助かりました。ありがとうございます、果南さん」

 

侑と会話を始めたのほほ~んとした声の女を、侑は「果南さん」と呼んだ。そう、彼女もまたあの伝説のスクールアイドルグループ《Aqours》のメンバー、松浦果南。コンビニ騒動の際にスパイクと大暴れしていたのも彼女だ。

 

一方、イライラしている声の女の名は、フェイ。スパイクが所属している『ビバップ号』というならず者や賞金首を懸賞金目当てにしょっ引く組織に同じく属している、元イカサマギャンブラーの女。今は訳あって、『ビバップ号』クルー全員が鞠莉の経営する「オハラグループ」の用心棒をしている。

 

『勿論私もいるよぉ。やっほー侑ちゃん、お次はチカだぞ~?』

 

「わあぁ、ホントに千歌ちゃんだ・・・・・・!」

 

『へっへ~ん!そうなんだぞ、私はあの「チカ」なんだぞぉ~!』

 

またまた別回線から聞こえてきたのは、《Aqours》の実質的リーダー高海千歌の声。スクールアイドルの魅力にすっかり虜になった侑にとってはこれ以上ない程「ハコオシダイカンキ」な事態だった。

 

「普通怪獣ー!」

 

『がお~っ!』

 

「誰かの物真似やって!」

 

『生しらす揚げとぉ、とろぼっちぃ・・・・・・!』

 

「ダジャレを一つ!」

 

『カエル館で()()()()()()()()()なんて・・・・・・許されないよッ!』

 

「ぷひゃひゃひゃひゃ、くぁwせdrftgyふじこlp」

 

『嘘、千歌のダジャレでこんなに大爆笑してる人初めて見た・・・・・・』

 

そして、唐突に始まった侑の千歌へのリクエスト大会。ノリ良く全てのフリに対応する千歌と、最後の千歌のダジャレを受けた侑の反応に困惑する果南がそこにはいた。

 

『と言うかスパイク!なーんでアンタの方はその子だけなのに、アタシの方は2人なワケ!?』

 

「仕方ねーだろ、ジェットは向こうでやることがあるから来れなかったわけだし」

 

『狭苦しいったらありゃしないのよ!誰か一人、マリーの方に乗りなさい、よッ!』

 

『Sorry,ワタシの専用機、一人乗り用なの』

 

スパイクの専用機『ソードフィッシュ』とフェイの専用機『レッドテイル』。その2機の前を優雅に飛んでいるのが小原鞠莉専用機『スペシャリティシャイニーマリーゴールド』。豪華絢爛な見た目に予想を裏切らぬ純粋な一人乗り専用機。当然、後部座席などはついていない。

 

『・・・・・・ていうかアンタの専用機、無駄に名前長いわよね。一々呼ぶのがめんどいわ』

 

『oh yes,全てはマリィから溢れ出るこのオーラを完全再現したんだもの、抜かりはないワ』

 

「機体の良さは素材の味、シンプルイズザベストだ。ごちゃごちゃ付けりゃいいってもんじゃあない」

 

――何故か機体乗り達による、良く分からない議論が始まった。

 

『第一、機体へのカスタマイズなんて個人の自由なんだから、文句付けること自体ナンセンスね』

 

「金だけを豪勢につぎ込めばいいってもんじゃない。妥協に次ぐ妥協でも本人の熱意さえあればそれは最高のカスタマイズになり得る・・・・・・世の人間全てがアンタみたいな富豪人だけと思うなよ」

 

『何言ってんのよ、金を掛けてこそのカスタマイズでしょうが。昔とは環境が違うんだから、いい加減その沁みついた貧乏人根性直しなさい』

 

勿論、その議論の内容が行き着くところを、蚊帳の外の3名は全く着いていけてない訳で。

 

『・・・・・・で、その時の千歌が何て言ったと思う?』

 

『わ、わぁ~っ!?果南ちゃん、その話は秘密って約束したよねぇ!?』

 

「え、もしかしてあの有名なエピソードの話ですか!?」

 

『惜しい。正確にはそのライブ会場に入る前、ここだけの裏話だよ?』

 

浦の星女学院スクールアイドル部《Aqours》に所属していた時の話に花を咲かせていた。

 

『ジーーー、ザザッ・・・・・・』

 

『・・・・・・っほー、やっほー、スパイクの人~』

 

『んん、ちゃんと繋がったのかぁ?スパイクゥ、聞こえてんなら応答しろぉ!』

 

機体内の会話が其々カスタマイズの話とスクールアイドル時代の話で見事に分断されている中、またまた別の通信機から此処に来て初めて耳にする声が聞こえて来る。一人は無邪気な少年のような声でもう一人はそれなりに年を感じさせる厳つい男の声だった。

 

「お、噂をすれば。あー、此方スパイク。ちゃんと聞こえてるぞ、ジェット、エド」

 

『おぉ~、スパイクの人から反応ありましたー、わはは~い』

 

『おぅ、如何やら今度はちゃんと接続出来たみたいだな。全く久方ぶりに熱中しちまったぜ』

 

『ワフゥ・・・・・・ウォンウォン!』

 

スパイクにジェット、エドと呼ばれた2人が無事通信が繋がった事を安堵したような声になる。同時に背後で犬の鳴き声のようなものが聞こえた、彼等が飼っている犬なのだろうか。だが、ここでその会話を耳にした侑は、ふと頭をよぎったある疑問点を口にした。

 

「あの、そのジェットって人、確か沼津にいるはずですよね?」

 

「ん、まぁ、そうだな」

 

「此処のエリア一帯だと日本への通信は出来なかったはずですが・・・・・・」

 

『ああ、それについてはマリーが説明してあげるわね!』

 

この現地にいて、身をもってその不便さを体験をしたからこその当然の疑問。そんな彼女の問いに通信機越しで鞠莉がノリノリで説明を始める。

 

『確かに、現状では既存の回線系は全て、委員会の手で意図的に封鎖されてしまっているワ』

 

『ケ・ド、小原家の財力を持ってすれば、既存の回線系に縋らない新たな個人用回線を用意する事も不可能ではないのデース!』

 

「えぇぇ・・・・・・?」

 

この地に来て色々なトラブルに巻き込まれて。その度に侑が思い知る、巨額の富を持つ者達が行使する一般常識を遥かに逸脱した行動の数々。自分の夢を漸く見つけて動き出した侑にとってこれ程までに濃密である意味良い体験となる事態は、この後の人生においても早々起こらないだろう。

 

『相変わらず行動力の化身だね、鞠莉。全く、これだから小原家の人間は』

 

『私はその内、実家の旅館が乗っ取られないか心配だよ・・・・・・』

 

けれど、だからこそ。普通ではきっと味わえない体験がスクールアイドルとトキメキを追いかけ続ける彼女にとっては逆に更なる刺激と自己の成長へと繋がった。この2か月間弱で遭遇した出来事はきっと約束の地へ帰還した時の自分への力となってくれるはず。

 

『んで、これからどーすんのよ?このまま日本へ戻るとしてもそれなりに時間は掛かるわよ?』

 

『まさか!セイコーホーで戻ってたら、今向こうで起きてるフェスティバルに乗り遅れちゃうワ』

 

「んじゃ、どうするんだい、お嬢様よ」

 

『こういう時こそ、『ゲート』を使いマース!エドー、後はよろしく!』

 

『あいあいさ~』

 

何だか徐々に意味深な会話になって来た通信を聞いていたら、先程から自分達が乗る機体がどんどん加速し高度を上げていっている事に気が付く。

 

「あの、一体何を・・・・・・?」

 

「『ゲート』は初めてかい?まぁ、無理もないか。元々この世界には存在しない代物だしな」

 

「げ、『ゲート』?」

 

ゲート。和訳すると「扉」という意味でも使われる言葉だが、こんな上空にそんなものがあるのだろうか。そう思っていた矢先。

 

「見えたぜ、『ゲート』のお出ましだ」

 

「うえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」

 

さらに高度が上がり、機体が雲を突き抜ける。スパイクの言葉を受けて、侑が前方を見ると。そこには明らかに現代には存在しない技術で形成された謎の大きな輪っかが空に浮かんでいた。

 

「な、なななな、何ですかこれぇ!?」

 

『瞬間移動装置よ。何かよく分からないけど、エドのハッキングで使えるみたいなの』

 

『あ、モチロン普段は絶対使えないし見えるモノじゃ無いから、そこら辺は安心してOKヨ♪』

 

『皆、沼津におかえり、おかえりぃ~、えっへっへ~!』

 

ああ、これは。きっと今の自分には幾ら考えても理解できない事だ、侑は静かにそう悟った。

 

『先に行くわよ、スパイク』

 

「おう、先行よろしく頼むぜ」

 

『ワタシも続きマース!』

 

フェイと千歌と果南の乗った『レッドテイル』が。鞠莉の乗る『スペシャリティシャイニーマリーゴールド』が、スパイクの乗る『ソードフィッシュ』の前に連なり、『ゲート』と呼ばれたモノの中へ一直線に飛び込んでいく。

 

「・・・・・・さて、行きますかぁ!!」

 

前方の2機がさらに加速し、距離を放される。しかし、ここでスパイクが機体のアクセルペダルを全開にする。長くて高いレールの上から急降下するジェットコースターが如く、機体の速度はみるみる上がっていき、身体で感じるGがどんどん重くなっていく。

 

――あぁ、駄目だ。これは確実に酔うかもしれない。

 

『Fantastic!Yeahhhhhhhhhhhhhhhhhhh!!』

 

『そうそう、この感覚よぉ!やっぱりお構いなしに速度出せるのはいいわねぇ!!』

 

「あんま燥ぎすぎんなよ。『ゲート』の出口付近で減速しないと目的地を通り過ぎちまうかもだからな」

 

『うぷ・・・・・・ごめん、果南ちゃん。私、まだそんなに慣れてない・・・・・・!』

 

『それじゃあ、早く慣れるように帰ったら体幹鍛えようか、千歌』

 

『それは嫌だぁ~!!』

 

酔いがこれ以上深刻化しないように、侑はぎゅっと目をつぶり何とか持ち堪える。

 

視界が意識的に塞がれて数刻後。先程までとは逆に徐々に速度が落ちていく感覚を覚え、侑は恐る恐る閉じていた眼を見開いた。すると、そこには。

 

「・・・・・・!うわあぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

太陽(サンシャイン)を浴びて煌めく砂浜に、何処までも続いていそうな青い海。

 

嘗ての浦ノ星女学院スクールアイドルであり、現在はこの土地を総括する新たな括りのスクールアイドル《Aqours》の本拠地。

 

――静岡県沼津市内浦、その上空に彼等はいた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「うぅ~・・・・・・まだクラクラする」

 

「大丈夫、侑?ま、そこで少しゆっくりしててよ。今お茶淹れてくるからさ」

 

「あー・・・・・・お気遣いなくぅ~・・・・・・」

 

未知の体験をして『ソードフィッシュ』を降りた侑は、一度スパイク達と別れ、果南に連れられて淡島の一角にある『松浦探偵事務所』に足を運んでいた。如何やら、《Aqours》メンバーの松浦果南はここで探偵業を営んでいる様だった。

 

まだ酔いが醒めない侑を見兼ねてか、果南がお茶を汲みに事務所の中へと入っていく。海岸沿いに建てられたここから淡島からの景色が一望できる解放的なラウンジでベンチに座りながら、侑は気分を落ち着けていた。

 

「(それにしても・・・・・・)」

 

「(適度に吹き抜ける風が心地よくて、日差しも丁度いい感じに照らしてくれてる)」

 

「(こんな、こんな最高な環境なら絶対に彼方さんじゃなくても・・・・・・)」

 

「( ˘ω˘)スヤァ」

 

何処でも寝れる先輩、近江彼方ように。彼女は、眠りの淵へと落ちてい・・・・・・

 

「はッ!?(って、ダメダメ!色々パニックで整理したいのは分かるけど、もう少し頑張れ私!!)」

 

かなかった。

 

決して無理をしようとかそういうことを考えていたわけではない。だが、今はそれよりも先に自分にしかできない、やるべきことがあると。その思いで彼女は、襲い来る睡魔に見事打ち勝ったのだ。

 

「はい、お待たせ。今朝摘み立ての茶葉で淹れた『ぬまづ茶』だよ」

 

「あ、すみません、いただきます。・・・・・・わ、美味しい!」

 

その後、果南が淹れてきてくれたお茶を堪能した侑。静岡県産の『ぬまづ茶』。緑茶好きなら誰もが唸る、至高の一品。

 

「お気に召したようで何より。今なら急須セットとリユースボトルセットもあるから、もし近くのお店で見かけたらよろしくね。ネット通販もあるよ」

 

「商魂逞しいなァ・・・・・・」

 

流石は地元と密接な関係にあるスクールアイドルグループだ、地元産の物の売り上げに余念がない。けれど、それもまた一つのトキメキの集大成なのかもしれない・・・・・・そう思った。

 

「そう言えば、さっき鞠莉から電話が来てね。今日の夜7時、作戦決行だってさ」

 

「今日の夜7時・・・・・・急ですね」

 

「まぁ、如何やら私達が相当出遅れてたみたいでね。現地ではもう何度か交戦があったそうだよ」

 

「そう、ですよね・・・・・・皆、大丈夫かな」

 

果南の言葉につられて、侑はお台場に続いているであろう地平線の彼方を見やる。自分の大切な仲間達が自分が不在の間にも色々と奮闘してくれていることは、希から話を聞いていた為、分かってはいたのだが。

やはり、出来る事なら直接会いたい。会って自分にできることがまだ残されているのなら、私は同好会の名誉部長として。そして何より、皆と同じ同好会の仲間として皆の力になりたい、と。

 

「大丈夫だよ、きっと。今はあっちで《ムーンカテドラル》が護衛してるって話だしね」

 

「《ムーンカテドラル》・・・・・・?」

 

聞きなれない単語に、侑は思わず機微を傾げる。そんな侑を見て、果南は一瞬だけはっとした顔つきになってから、すぐに苦笑いを浮かべてこう言った。

 

「ありゃりゃ、希さんってばそこだけ伝え忘れるとか。そりゃあないでしょうに・・・・・・」

 

「希さん・・・・・・?希さんってもしかしてあの《μ’s》の希さんの事ですか!?」

 

恩人ともいえる人の名を聞き、侑のテンションが一気にブチ上がる。噂にまで聞いた伝説のスクールアイドル《μ’s》と《Aqours》、この二つが今回の事件の裏で密かに共闘していた。そうともとれる発言を聞いてしまえば、侑が興奮を抑えきれないのも無理はない。いや、実際そうだったわけなのだが。

 

「あぁ、そこは聞いてたのね。そう、さっきの《ムーンカテドラル》ってのは今の《μ’s》が作戦行動中に使ってる組織名みたいなものだよ」

 

「っていう事は、同好会の皆からの報告にも含まれてた長谷部さんや穂乃果さん以外にも《μ’s》メンバーがお台場にいるって事ですか!?」

 

「流石に全員ではないけど・・・・・・まぁ、そう聞いてるかなん?」

 

「うわぁぁぁぁ、ってことは皆はもう直接会ってるって事だよね!うぅ~っ、私も早く会いた~い!!」

 

「・・・・・・凄いハイテンションだね」

 

《μ’s》とまではいかなくても一応自分達も有名どころだと思ってたんだけどなー、一応キミも有名人にはもう会ってるんだけどなーと心の中でぼやいた果南であった。

 

「――あ、果南ちゃんに侑ちゃん、此処にいたんだね!おーい!!」

 

「ったく、何で俺まで・・・・・・」

 

「千歌さん!それに、スパイクさんも!」

 

その最中、船着き場のある方から此方に向かって歩いてくる影が二つ。同じく《Aqours》の高海千歌と雇われカウボーイのスパイクであった。

 

「よぉ、侑ちゃん。さっきぶりだな」

 

「はい。作戦会議はもういいんですか?」

 

「まぁ、粗方決まってはいたから明確化してすぐ終わったもんでな、心配ないさ」

 

「そこで!暇そうにしているスパイクさんをチカが連れてきたのです!ドヤァ・・・・・・!」

 

「アンタの行動が偶に迷惑なのは自覚がないのな・・・・・・」

 

いいことしたでしょ、私と言わんばかりの千歌と迷惑そうにしながらも実際は満更でもない顔をしているスパイク。もしかしたら、この二人は結構いいコンビなのかもしれない。

 

「あ、そうでした。あの、千歌さん、質問いいですか?」

 

「おおっ、何々?チカに答えられることなら何でも答えちゃうよ!」

 

色々振り回され過ぎて質問するのを忘れていたけれど、こればかりは聞いておかなければいけない。侑はノリノリな千歌の様子を見て、意を決して尋ねる事にした。

 

――昔の《Aqours》と現在の《Aqours》。その二つの違いについて。

 

「違い・・・・・・違いねぇ。果南ちゃん、分かる?」

 

「自分で答えるんじゃなかったの、千歌」

 

「答えようと思ったけどー、チカだけだと難しくて良く分かんないんだよぉー!」

 

「やれやれ、じゃあ途中途中で私がフォロー入れるから。ちゃんと話してあげて」

 

「合点承知だよ!えっとね、それなりに長くなるとは思うんだけどー」

 

以降、彼女の話はこうだった。

 

昔の《Aqours》についてはスクールアイドル界隈の人達にとっては説明不要な位に有名な浦の星女学院のスクールアイドル部で生まれたスクールアイドルグループ。一方で、現状の《Aqours》はメンバー全員が母校である浦の星女学院を卒業している為、浦女のスクールアイドルではなく。この静岡県沼津市を代表する地域密接という形でのスクールアイドルグループ。

 

元来、スクールアイドルの『School』という単語は「学校」と言う意味の他に「(魚・クジラなどの)群れ」という意味も含んでおり、今のスクールアイドル《Aqours》はそう言った意味合いを指しているのだという。スクールアイドルが誕生する前から、地元に寄り添う形で活動をしているアイドルは多く見られていた・・・・・・要はその派生形ともいえる一つのカタチ。

 

つまり、彼女達《Aqours》は《μ’s》と同じく、ラブライブ優勝や母校の廃校阻止を成し遂げる以外に、自分達の行動の結果としてスクールアイドル界に新たな定義を開拓していたのだ。

 

「やっぱり凄い・・・・・・まさかそういう意味もあったなんて!」

 

「えへへぇ、それ程でも~」

 

「ま、実際にはホントに卒業後の自分達が好きでやってたことが、そういう意味で世間に捉えられてたからそれに乗っかっただけって話なんだけどね」

 

「もー、果南ちゃん!ホントのこと言ったら一気にショボくなるじゃんかー、やめろぉー!」

 

伝説を残したスクールアイドル《Aqours》の再結成。流石に学生の時みたいに全員が集まる機会はそうそうないようだが、それでも彼女達は活動し続けている。今度は、母校のみでなく自分達が生まれ育ったこの土地を守るために。

 

彼女達の代表曲の一つである「想いよひとつになれ」の歌詞が指すように。彼女達は今まさに、何かを掴むことで何かを諦めない・・・・・・それを実行し続けているんだ!

 

「ショボくなんて、全然ないですよ!私、ときめいちゃいました!!」

 

「えぇ、ホント!?いやぁ、侑ちゃんは話が分かる人だなぁ、凄いなぁ!」

 

「いえいえ、千歌さん達の方が凄いですって!」

 

「いやいや、侑ちゃんこそ!」

 

再結成の裏エピソードについて、真実は少しカッコ悪いと心の何処かで思っていた千歌だったが侑の言葉を受けて思い直す。やっぱり、自分達が辿ってきた道は間違っていなかったんだと。自信をもって誇ってもいい事なのだと。そして、それは果南やスパイクも同じことを思っていたようで。

 

「へぇ、成程ね。そういう見方も出来るわけだ、知らなかったよ」

 

「あの時の夢はまだ続いてる・・・・・・か。悪くねぇな、そういうのも」

 

「何、スパイクさんもそういう事があったの?」

 

「まぁな。今はその()()()()()()()()()()()()()()()()()が・・・・・・代わりにいいモノをもらった」

 

「ふぅん、そっか。こう言っていいのか分からないけど・・・・・・良かったね」

 

「あぁ、俺を雇ってくれたアンタ達には感謝の言葉しかないかもな」

 

そう呟いて、胸ポケットにしまってあった煙草を取り出し、火をつける。ああ、これが全て終わった後に飲む酒は、過去に飲んだどんな酒より美味いはずだ。そう確信して。

 

「わ、気付いたらもうこんな時間だ!そろそろ鞠莉ちゃんの言ってた集合時間だよ、行こう皆!」

 

「ホントだ、全然気づかなかった・・・・・・」

 

「センセーの話が長すぎたんじゃねぇのかい?」

 

「んもー、またスパイクさんってばそういう事を言うー!今度言ったら鞠莉ちゃんに直訴するんだからぁ!」

 

「ハハハ、そりゃあ勘弁してくれ。マジでジリ貧金なしになっちまう」

 

笑いながら、その場にいる全員が鞠莉の待つ『ホテルオハラ』の前へと急ぐ。その中で高咲侑は。

 

「歩夢、結子、皆・・・・・・やっぱり《Aqours》は凄いよ、だってこんな事が普通に出来ちゃうんだもん」

 

この研修中、自分は色々な人に助けられてきた。そして何より、伝説のスクールアイドルである彼女達に色々なことを教わった。

 

「私も改めて分かったんだ、皆と目指すこれからの道」

 

それらの経験を活かして。私は、今度もまた同好会の皆と一緒に歩み続ける為に。己が信じた道を突き進もう。嘗ての《μ’s》や《Aqours》の皆の様に・・・・・・!

 

「――だから待っててね、もうすぐ会えるよ・・・・・・!」

 

沼津の大地を吹き抜けた一陣の風と共に、その『羽根(バトン)』は確かに繋がった。

 

 

『――あのっ、先生!』

 

『おや、キミは確か・・・・・・普通科から転向した高咲侑さん、だったかな』

 

コンビニ騒動に巻き込まれる2日程前。彼女は、希に言われた通りに今回の研修の引率担当の教師である老年の男に話を通しに行っていた。

 

『じ、実は、先生に折り入ってお願いがあって・・・・・・!』

 

自分が離れている間にお台場で、虹ヶ咲で起こっている騒動を彼女なりの決断と行動で解決する為に。そして、それは彼女の決意を灯した目を見れば誰もが何かを察せる程にギラギラと輝いていた。

 

『・・・・・・希くんに言われたんだね、私に話せと』

 

『えっ、先生、ご存じなんですか!?』

 

『私も、教師をやって短くはないものでね。それに、彼女が指し示したのなら間違い等あろうものか』

 

この教師も彼女とは偶然会っただけだ、長らく時を同じくして理解を深めたわけではない。だが、もしあの時の自分自身が背負った責務を全う出来るのなら、そこに後悔はなかった。

 

『いいでしょう、あちらの事は私も聞いている。キミは、キミの成すべきことをしに行きなさい』

 

『はい・・・・・・ありがとうございます、先生!』

 

みなまで言わずとも、彼女の言わんとしている事を即座に理解し、夜の街に駆けだした彼女の後ろ姿を見送った彼。若いからこそ今しか出来ない事もある、虹ヶ咲学園という生徒達にとって希望が開けた道の一端になれればそれでいい。

嘗て、起こる全ての事象を上から見守る事だけを徹していた男は、やがてポツリと呟いた。

 

「大人は子供のやる事にそっと手を添えるだけでいい、か・・・・・・」

 

「強ち間違いではないのかもしれんな、その言葉も」

 

教育現場の最高権威を意図的に剥奪されたその男は、静かな笑みを携えながら夜の街の暗がりの中へと姿を消した。

 




はい、如何でしたでしょうか。

Aqoursらしいわちゃわちゃと、侑の別視点ならではの意見。作者的には見事に内包出来たかと思います。お時間があれば、是非感想等でお聞かせいただければと。

そして、このお爺ちゃん先生の正体は、4章のラストではっきりします。
……分かってる人には分かってると思うけどネ。

今回の活動報告ではスクスタの25章について語ります。良ければ見てね。

では、また次回の更新でお会いしましょう!
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