アニガサキ!-PASTEL COLLARS- 外伝 Episode of ランジュ 作:海色 桜斗
複数回の延長乗り越え、遂に満を持して最終章第1節、投稿完了です!!
スクスタ本編は完結迄もう2章くらい必要そうですね。
よし、本編よりお先に完結準備に入らせてもらうぜ……!
ごゆるりとお楽しみください。
〇既存キャラ・ステータス更新
鍾嵐珠(CV:法元明菜)
虹ヶ咲学園所属の2年生。香港からの留学生で、実家は香港でも最も勢力を誇る超一流のエリート企業を経営している。その為、昔からの超お嬢様体質でいい意味でも悪い意味でも世間を知らなさすぎるのが欠点。逆にそんなエリートの家系に生まれたこそ持ち合わせる、類まれなる求心力と絶対的なカリスマが持ち味。何でもできるように見られがちだが、実は何かを新しき始める時には自身が納得するレベルまで仕上げる事を忘れない、努力の天才。常に『鐘』家の人間であることを忘れず、権力に溺れず、自身の力を過信し過ぎない。しかし、しっかりしなきゃとは思っていても偶に気が抜けて幼馴染みのシオや他人に甘えがち。本人もそこは直すべきところだと自負している。
アニガサキSS劇場⑪「気象操作、その秘密」
侑「穂乃果さん、穂乃果さん!」
穂「はいはーい、穂乃果だよー?」
侑「穂乃果さんは、気象操作が出来るって話を聞いたんですが、それって本当なんですか!?」
穂「えっ・・・・・・?あっ、あー、うん。勿論、出来るよ(あの時の話かぁ~・・・・・・)?!」
侑「やっぱり出来るんだ・・・・・・!くうぅっ、スクールアイドルフェスティバルの時に知り合えてれば、もしかしたらあの時の急な雨も・・・・・・惜しい、惜しいなぁ」
栞「あ、あのっ、誠に個人的なお願いで恐縮なのですが・・・・・・。実は明日、歩夢さんとの久しぶりのお出かけをすることになりまして・・・・・・出来れば、いいお天気にして欲しいんです!」
愛「おおっ、じゃあ愛さんもお願いしちゃおうかな!ソフトボール部の練習試合が――」
し「私も実は明日は野外ステージでの演劇がありまして――」
穂「ちょ、ちょっと皆!?せめて、せめて一人ずつ!?」
侑・栞・愛・し「「「「お願いします、穂乃果さん!!」」」」
穂「うわぁぁぁぁぁぁん、助けて祐介~っ!?」
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祐「やれやれ、穂乃果のカリスマっぷりは相変わらず健在って事か」
「さて、と。ここでお前らには、あの時のリアル天気の子騒動の真相をお話しよう」
「・・・・・・つっても、何て難しい事は何一つない、単純な原理さ」
「穂乃果があの時叫んだタイミング、丁度あの時に偶々通り雨様が止んだ。それだけさ」
「ただ、秋葉原じゃない別の所・・・・・・そうだな確かアメリカ辺りだったか」
「物凄い勢いで降り続いたスコールを引き起こした分厚い雲が、その日突然消し飛んだらしい」
「他にもインド洋から接近しつつあった超大型台風が忽然と姿を消したりもしたそうだ」
「・・・・・・何か平然と凄い事起きてるけど、俺は認めねぇ!認めねぇからなぁ!?」
海「あの、祐介?貴方は一体、誰に向かって言っているのですか・・・・・・?」
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「――今まで迷惑ばかりかけて、ごめんなさい!!」
「「「「「「「「「「・・・・・・」」」」」」」」」」
虹ヶ咲スクールアイドル同好会の皆が顔を揃える中、アタシは彼女達に向かって頭を下げ、謝罪の言葉を口にした。第三者によって洗脳されていた事を抜きにしても、今回の自分の行いはあまりに無責任なものだった。これしきで許されていいはずない。
だが、それでも。
「こんな言葉だけでどうにかなるなんて思ってない・・・・・・けど、アタシは」
「アタシは此処が・・・・・・お台場が好きなの!」
上っ面の言葉だけじゃない、ちゃんと自分の心のありのままの言葉を紡げ。別に許してくれなくてもいい、ただこの言葉に込めた誠意が彼女達にもし伝わったのなら、行動で信頼を勝ち得ろ。
「同好会の皆が力を合わせて作った、あのスクールアイドルフェスティバルお陰でアタシはもう一度ここに戻って来ようって思った・・・・・・此処でスクールアイドルとして頑張りたいって思った!」
今のアタシは、ただ委員会の思惑通りに動く操り人形じゃない。
そう、アタシの名前は鐘嵐珠。台湾で有数の、巨額の富を築いた誇り高き『鐘』家の一人娘だ。
そんな名高い名家の生まれであるアタシが、長年自分を苦しめて来た委員会の呪縛から逃れたからそれでお終いでは、格好がつかない。10年前に離れてしまったけど、それでもこんな自分をずっと信じて待っててくれたパパの為にも。アタシは必ず、やり遂げなければいけない・・・・・・!
「だから、お願い・・・・・・!皆の最後の作戦に、アタシも協力させてほしいの・・・・・・!」
もう一度、皆に向かって頭を下げる。すると、そんな様子を見兼ねた果林が。
「この子はこう言ってるわけだけど・・・・・・どうするの、皆?」
その場にいる皆に聞こえるように。全員の顔を見渡しながら、そう問いかけた。
「ま、私は少なくとも反対はしないわ。それに・・・・・・今の貴女なら、少しは信用できそうだもの」
「はい、私は何時だって貴女の味方ですよ、ランジュ」
「アタシだって!ランランとは、もう友達だからね!」
「別にいいんじゃない。けど、足だけは引っ張んないでね」
「今は兎に角戦力が欲しい。だから、協力してくれるなら嬉しい」
「璃奈さんの言う通りです。今はこの事態の収拾を最優先しましょう、ランジュさん」
「別にまだ認めた訳でも許した訳でもないですけど!あくまで一時的ですからね、一時的!」
「私達のだけじゃない・・・・・・一緒に守ろう、皆のお台場を!」
「そうですね、一先ずはその辺で落とし前を付けて頂きましょうか」
「まぁ、今は一刻を争う事態ですからなぁ・・・・・・」
「うん、スクールアイドルや私達の学校には罪はないしね。皆で守り抜こう・・・・・・!」
「分かった、さっき言った言葉信じるからね、ランジュちゃん」
「皆・・・・・・!」
果林が、シオが、愛が、ミアが、璃奈が、しずくが、かすみが、歩夢が、せつ菜が、彼方が、エマが、侑が。アタシの言葉に頷き返してくれている・・・・・・厳しい言葉も刺さるが、そこは気にしても仕方がない。今は取り敢えず委員会の手から、同時にママの手からこのお台場を救わなきゃ。
「それで?この約2か月間に私達の代理マネージャーになってくれた結は、どう思うの?」
そんな風にアタシが心の中で決意を新たに掲げていると、先程の問いに一人だけ答えていなかったユイが果林に質問をされていた。
「はぁ・・・・・・皆、やっぱりお人好しだよね。ま、分かってはいたんだけどさ・・・・・・」
「うん、許す許さないは別としても、好きにすればいいと思うよ」
「ユイ・・・・・・!」
シオのライブを見る前。アタシの心の中に粘り強く居座ろうと抵抗し続けた闇を、完全に抗えない状態まで一時的な封印を施してくれた彼女はやや不服そうな顔をしながらも、アタシの言葉に了承の意を唱えてくれた。
――舘結子。アタシがまだ完全な洗脳状態にあった時、シオと同様に、その時のアタシにも信頼されていた虹ヶ咲スクールアイドル同好会のニューカマー。勿論、素の状態のアタシと彼女が話したことなんて一度もあるはずがなく。それでも何故かこう、彼女に対しては同好会の皆とはまた違った心惹かれるものがあるというか何と言うか。要するに、シンパシーみたいなものを感じて赤の他人とは全く思えない。事実は小説よりも奇なり、とはよく言ったものだ。
「・・・・・・因みに、NLNSの皆は?」
「これまでの事を思うとあまり歓迎は出来ないが・・・・・・協力してくれるなら有難い」
「ま、いいんじゃないの。アサちゃん的にはあんましそこの中華野郎と慣れ合いたくはないけど」
「ウチのリーダーが一応了承してることだし、私は問題ないわ」
「うんうん、困った時はお互い様だしね!それに、味方が増えるのはいいコトなんだな!」
「事態はいよいよ最終局面に御座います。先ずはご助力に感謝を」
愛弗防衛勢力”NLNS”。彼等の活動もまた、洗脳されていたアタシや、ママと委員会の土井の野望を食い止める一因となったと聞いた。大敗を期して逃げ帰ってきた委員会の男達曰く、データになかった戦力であるユイの存在に続いて、彼等も出てきたことで近接戦は分が悪すぎた為に急遽現在の主装備であるライオット弾導入に至った理由だとか。
兎に角、今回の戦いの中で彼等が同好会側に齎した貢献はかなり大きい。功を焦って同好会メンバー以外を実弾で撃ち殺すという選択をさせなかった詰めの甘い自分を褒めてどうかいいかは微妙ではあるが、少なくとも犠牲者を一人も出さなかったのはことこの状況を見ていると英断としか言いようがない。
「NLNS側からも、特に反論なしみたいね」
果林がそう言って、次の話題へ移ろうとする。が、アタシは少し引っ掛かる事があったのでその疑問をぶつけてみる事にした。
「ねぇ、果林?これで全員だったかしら、誰か一人足りないような気がするのだけれど」
「えっ、そうかしら?気のせいじゃない、私は少なくとも全員いるように見えるわよ?」
「そうよね、皆?」と一応その場にいる全員に確認を取った果林。それに対し、他の面々は一様に首を横に振り、人数が間違っていない事を果林へ伝える。あれ、おかしいな、アタシの記憶違いだったかしら。それならそれでいいんだけど・・・・・・何か、引っ掛かるなぁ。
「じゃあ、各自色々思うところはあるかもしれないけれど。最後の作戦会議と行きましょうか」
未だ気になって仕方ないもやもやを抱えたままのアタシの様子を気にしながら、全員の意見を聞き終わった果林が発した言葉で、この場の空気が一瞬にして引き締まる。続いて、果林はアタシにチラリと視線を向けながら再び口を開く。
「現状として私達は、委員会の情報は掴んでるし、その委員会と理事長様との間で連携していた貴女の身柄も確保出来た。けど、肝心の理事長さんの狙いは分からず仕舞い」
「そこで質問よ、ランジュ。貴女は理事長さん・・・・・・いいえ、実のお母様の狙いは何か、分かっているのかしら?」
「先ずは情報提供をしろ・・・・・・そう言いたいのね?」
「まぁ、そう言う事になるわね。何せ、この中では貴女程、今の理事長さんに近い人はいないもの」
本当なら。育ての親の不利益になる情報なんて子が言うべき事じゃないのだろうけど・・・・・・色々な事を差し引いたとしても、アタシのママのこれまでの行いは到底看過できるものではない。
だから、此処でアタシが今更ながら味方をする義理は一切ない。今優先すべきは同好会の皆だ。
「アタシのママ・・・・・・理事長の目的は、鐘家の現当主になる事よ」
「・・・・・・分かってはいたけど、かなりの野心家なのね。で、それが今回の件と関係あるのかしら?」
「一見無関係に見えるけどね、実はちゃんと裏で繋がってるの」
「本来なら、今の鐘家の当主はアタシのパパのはずだった。けど、10年前にパパは家から追い出されたわ・・・・・・ママと先代の当主だったアタシの祖父に当たる人によって」
鐘家の先代当主、鐘李芳(リーファン)。アタシも詳しい事は知らないが、如何やら今の鐘家が様々な業界を独占していられるのは彼の活躍による恩恵といても過言ではないらしい。そんな家の者達から見たら確実に英雄扱いされる男も、老いを重ね、隠居生活を始めた辺りから段々と性格が豹変。嘗て、自分から手放したはずの権威を今更になって急に取り返そうと躍起になり始めた。この世のありとあらゆるものを制覇しつくした経験が、老体に沁みついた自己顕示欲と共に大きくなってしまったのだろう。
「でも祖父は、既に当主として居座れる年齢を越えてしまってる。そこで目を付けられたのがママ」
「自分の息子には愛想を尽かされたけど、ママとは凄く気があったらしくて。だから、当主になる事は出来なくても、当主のアドバイザー的な地位を得るって腹積もりみたい」
引退済みの当主という条件付きでなれる特殊な役職で当主程・・・・・・とはいかなくてもそれなりの権力を持つことが出来る。後の事は恐らく、権力を手にして慢心状態のママに上手く口裏を合わせつつ、自分の都合のいい方向に持っていくように仕向けるつもりなのだろう。アタシが委員会に上手い事騙されてすっかり洗脳されてしまっていたように。
「要するに、アタシのママが
「ま、何方かと言うと一応協力者でもある委員会の土井の目的を、前報酬で達成したかったのよ」
「その為だけに皆さんを危険な目に合わせたというのですか・・・・・・度し難いですね」
アタシの話を粗方聞き終わって。ママの横暴さというかそう言うものに(同じようなことしてたアタシが言えたことではないかもだけど)呆れかえる同好会の皆の気持ちを代弁するかのように、シオがポツリと呟いた。正直、その気持ちは分からなくもない。
「はいはーい。その件について、かすみんからショウランジュに質問でーす」
「何で今までそれに協力的だった人が、いきなりこっちの味方面してるんですかー?」
案の定、アタシの事を一番快く思っていないであろうかすみが、そんな意地悪な問いを投げかけてくる。うん、だけど今のアタシならそれに対する答えは勿論。
「アタシも貴女達と同じく、此処お台場とスクールアイドルが好きだからよ」
この言葉以外に適切な表現を、今のアタシは知らない。だからこそ、きっぱりとそう答えた。
「うぐっ・・・・・・そう言われたら何も言えなくなるじゃないですか、ぐぬぬぅ・・・・・・!」
「かすみさん、ランジュさんも真剣なんだからそんなこと言っちゃ、めっ!」
「しず子ぉ、だってぇ・・・・・・!」
駄々をこねるかすみを、しずくが叱りつける。皆の前に行く前にシオから色々聞いたけど、この二人はいつもこんな感じらしくて。このスクールアイドル同好会が今の状態になる前からの付き合いで、同じ一年生同士だったことも相まって、かなり仲が良いみたい。何かいいな、そう言う関係性。
「すみません、ランジュさん。説明中にかすみさんが変に突っかかってしまって・・・・・・」
「そんな、気にしないでいいのよ、しずく」
「・・・・・・虹ヶ咲の皆には、突っかかられて当然の事を今までしてきたんだもの」
「ランジュさん・・・・・・」
何かを言いたげな様子のしずくではあったが、敢えてその言葉の先を言う事なく、再び話を聞く体勢を整え、アタシを真っすぐに見つめた。何だろう、1年生だというのに随分と肝が据わっている。この子より年下のミアもそうだが、最近の子はこんなにもある程度の覚悟が出来ている子ばかりなんだろうか・・・・・・アタシもそう年も変わらない内から何言ってるんだって感じだけど。
でも、もしかしたら。洗脳されたアタシが唯一見逃していた部の勧誘候補はこの子だったかもしれない。そうね・・・・・・きっと、シオと一緒に暴走するアタシを止めてくれたかも。
まぁ、此処でたられば話をしても、既に後の祭りにしかならないのは分かってはいるが。
「だからアタシは皆と一緒に委員会とママを止めるわ。何が何でも、絶対に」
「へぇ、いい目をするようになったわね、ランジュ」
「そして、それが栞子ちゃんの言ってた、本来のアナタなのね」
シオが果林や皆にアタシの事をどう説明したのかまでは分からないが。でも、そっか。にへへ、果林に褒められると何だかちょっと嬉しいかも。
・・・・・・って、いけないいけない。アタシとしたことが一層気を引き締めないといけない局面で気を抜いてしまうところだった。直すべきは甘えたな性格ってとこかしら。
「だから、これから向かうべき場所についてなんだけど――」
「――ね、そこのアナタ達。作戦会議中に急で申し訳ないけれど、少しいいかしら?」
アタシが同好会とNLNSの皆に作戦地点と概要を説明しようとすると、公園の入り口側から此方に向かって歩いてくる、スタイルの良い女性が一人。何処かで見たことがある訳でもない、全くの赤の他人。普段ならば人違いかも知れないと彼方側からの指摘があるまで反応しない事にしているのだが・・・・・・その女性の隣で泣きべそを掻きながら連れられていた人物を見て、話しかけられた対象が間違いなくアタシ達である事を理解すると共に。
「み゛な゛ざん゛、ずびばぜん(すみません)~・・・・・・!」
「「「「「あっ、美岬(さん)(ちゃん)・・・・・・」」」」」
アタシが抱いていた違和感が解消された。そうだ、畔美岬。普段からそれなりに存在感はあるほうだとは思うけれど、ふとした瞬間にあまりにも存在感が希薄になりがちな彼女だからこそアタシもその存在を忘れかけていてしまったんだ。無意識下のステルス性能、気を抜けば常に戦いに身を置くプロでさえその存在を途中で見失って痛手を喰らうかもしれない厄介な存在だ。
「あっ、そっか。じゃあ、さっきまでランランが気になってたのってミサミサの事だったのかぁ」
「仲良くしてる皆の顔なら全部覚えてるはずなんだけど・・・・・・私も忘れちゃってたよぉ~」
「あ、あはは~、別に気にしないでいいのよ?あの子偶に影が極端に薄くなるから・・・・・・」
「まぁ、発言してる時のインパクトが本体には付属してない欠陥品だからな、親方は」
「ちょっ、皆、酷いですよぉ!?Σ( ̄ロ ̄lll)ガーン」
まさに泣きっ面に蜂とはこの事。普通は仲間であるからこそ覚えてなくちゃいけないモノじゃ無いの?それとも交流が深い故の・・・・・・って事かしら。うーん、アタシには理解出来そうにもないわ。
「で、用件はそれだけなの?」
「フフ、本当ならこのまま返して終わりなのだけれど。そうもいかなくてねぇ」
「アナタ達の作戦に獠も絡んでるって言うじゃない?だから、そこら辺を詳しく聞いておきたくて」
都会のスイーパー、冴羽獠。あぁ、時々土井が愚痴を漏らしていた彼にとっての天敵の事ね。裏社会で生きる人々にその名前は広く知れ渡っていて、一度も歯向かいもせずに大人しくしている輩もいれば、一度歯向かって見事なまでにコテンパンにされて、その後は彼の存在にビクビクしながら過ごす輩もいるのだとか。
しかし、そんな人物と知り合いと言う事はこの人もまさか裏社会の・・・・・・そんな一抹の不安を抱いたアタシの心配は次の彼女の発言で杞憂となった。
「自己紹介が遅れたわね。私は新宿の警視庁捜査一課所属の野上冴子よ、よろしく」
「え、マジ?本物の警察・・・・・・?え、でも、何で態々新宿から・・・・・・!?」
予想だにもしなかった正真正銘、本物の警察関係者の登場に、アサネは驚きを隠せずにいた。
「ところで、この子は・・・・・・アナタ達のお仲間さんよね?」
「は、はい。そうです、けど・・・・・・」
「見かけた時はびっくりしたわよ、まさか街中の道路をあんなに速度で走行してるのに後続の車と違って何処にも接触したり擦ったりぶつかったりしないんだもの」
「アクション映画の登場人物も真っ青の、凄い操縦テクニックだったわ」
「えへへへへ、それ程でも~」
だが、サエコは本題に触れるわけでもなく、美岬が委員会の者達とカーチェイスを繰り広げていた時の事を語り出す。この人が一体何を考えているのか、先程から思考が全く読めない。
「ま、それでも一応、未成年の上、無免許運転ともなれば当然警察としては取り締まらないとだし」
「現に、貴女達が彼女の車に乗っていた時にここら辺の交通車両が1台もいなくて道路がガラガラだったのは、私達の敷いた大規模な交通規制のお陰でもあるって訳」
そこまで言われて漸く気が付いた。そうか、サエコが言いたいことは恐らく、事故を起こさなかったとはいえ、美岬が違反行為したことに変わりはないので、それを見逃す代わりに此方の現在の状況を詳しく知りたい・・・・・・ということなんだろう。TVでよく見る外国の警察とかがよくやる、捜査に協力する見返りとして特定の人物に課せられた刑を軽くするという条件の下に行われる交渉手段だ。
「へぇ、日本の警察にしては中々いい方法思いついたじゃん。嫌いじゃないよ、そういうの」
「ミア・・・・・・貴女、もうちょっと言い方何とかならないの?」
「は?普段から我儘お嬢様っ気全開で発言してるお前に言われたくないんだけど」
そして案の定、そう言う交渉術が実際に行われている国の出身であるミアが皮肉交じりの表情でそう答え、それに何となく突っ込みを入れてみたアタシはミアの毒舌を前に敢え無く轟沈した。
「美岬は俺達の仲間だ、だから、その交渉には応じさせて貰いたい」
一方、そんなサエコの言葉を受けて、淳之介がNLNSメンバー全員の言いたい事を代弁する形で同好会メンバー全員に頼み込んだ。そして、その熱意をいち早く理解した人物はと言うと。
「そうですね、美岬さんには移動の際にお世話になりましたし・・・・・・分かりました、説明します」
「皆さんも異論はない、ですよね?」
そう言って、同好会の皆の反応を伺う優木せつ菜・・・・・・あれ、せつ菜って髪型こんな感じの三つ編みだったっけ?そもそも眼鏡かけてたっけ?・・・・・・えっ、誰???
「アタシも賛成だよー」
「はい、やはり今回の騒動はNLNSの皆さんにも御恩がありますので」
「うん。所属してる部活は違うけど、皆、大切な仲間・・・・・・!」
「μ’sの人達と会えたのも、NLNSの皆がいてくれたお陰だしね!」
愛、シオ、璃奈、エマ・・・・・・次々と同好会メンバーが突如現れたせつ菜に少し似ている謎の人物に返答をしていく。えっ、何でみんな何も疑問に思わないの!?
「あら、もしかしてランジュは
「果林・・・・・・何か知ってるの?」
「えぇ、勿論。と言っても、今まで散々敵対してたわけなんだから、流石に聞いたことあるんじゃない?ウチの生徒会長の中川菜々ちゃんよ」
中川菜々。その名前を聞いてピンときた、そう、彼女があの噂の『鋼鉄の生徒会長』の中川菜々なのね。え、待って、じゃあ猶更何で此処に?そもそもさっきまで端っこの方で何やらごそごそしていたせつ菜は何処に消えたって言うの・・・・・・???
「ふぅん、流石のランジュも初見は一発でピンとこない訳ねぇ・・・・・・」
「ええっ、何なの果林、その反応は!?」
「ふふ、焦らなくてもその内分かるわ。存分に悩みなさい、後輩さん♪」
「もーっ、何なのよぉーっ!?」
結局、果林は先程起こった出来事にまつわる事実を一向にアタシに話してくれないまま、お茶を濁してしまうのであった。
「ええと、そろそろ話を進めてもよろしいでしょうか、ランジュさん」
「えっ、あっ、ごめんなさい。えっと・・・・・・生徒会長、さん?」
「ふふふっ、そんなに畏まらなくても。同学年なんですから、好きに呼んで頂いて構いませんよ?」
「直接会うのは初めてですね。初めまして、普通科2年、中川菜々です」
「・・・・・・ランジュよ。よろしくね、菜々」
「はい・・・・・・!」
噂通りの生徒会長であったなら、アタシが学内で行った行為は当然彼女の逆鱗にとっくに触れているはずでこの通り仲良くは出来ない筈である。その噂が単なる噂であるだけなのか、それとも彼女自身の相当広いだけなのか。少なくとも、今のアタシでは問うことは出来なかった。
「ところで、アナタ達の代表は・・・・・・高咲侑、さん、で良かったかしら?」
「はっ、はい!」
「うふふ、そんなに固くならなくても大丈夫よ。いつも通りのアナタの姿勢で答えて頂戴」
それから、侑はこれまでの事件の流れを掻い摘んで、しかして分かり易い様に説明を続けた。無論、サエコが話の途中で何らかのアクションをして侑を問い詰める・・・・・・みたいな尋問に掛ける様な事をせず、時々を相槌を打ちながら、真剣な表情で手元のメモ帳に書き込んでいく作業に徹していて。その姿は、昨今の腐り果てていく一部組織の上層部に見習わせたい姿勢だった。
「――・・・・・・って言うのが、今までの経緯と現在の状況になります」
「成程ね。良く分かったわ、有難う」
「でも、そうねぇ。獠が早めに動いてるなら、きっと今頃、彼がホシを抑えてるんじゃないかしら」
「ええっ、そんなに早くも、ですか!?」
「ええ、シティーハンターは一度狙った獲物は逃さない。増してやそれが二度目なら、猶更ね」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「――数年ぶりだな。だろ、土井さんよ?」
「ちぃっ・・・・・・やはり私の前に立ちはだかるのは貴様か・・・・・・!」
お台場にある建物の中で、一際目を引く造形をしているフジテレビ本社。今回の事件を受けてお台場一帯が交通規制により封鎖され、無人となったその建物の屋上で、2人の男が睨み合う。
一人は自分が長年に渡って抱いてきた野望を叶える為に。一人は嘗て果たせなかった因縁に、この場で終止符を打つ為に。
「あの時アンタが命乞いをした時に俺は言ったはずだぜ?2度目はない、とな」
冴羽獠が土井の返答を待たずにCOLT PYTHON 357MAGNUMを構え、発砲する。
――先ずは一発目。威嚇射撃の為、相手の足元に近い場所に態と外す。
「威嚇射撃・・・・・・嘗めているのか、冴羽」
「嘗めてはいないさ。少しばかり、用心の為の威嚇射撃だ」
「アンタほどの人間が、数年前と全く同じ戦法で挑んでくるとは限らないんでね」
冴羽は至って冷静に言葉を返す。すると、土井は突然とち狂ったかのように高笑いを飛ばした。
「く、くはははははははっ!あぁ、その通り、流石は天下のシティーハンター様だなァ!!」
「貴様にとっては容易い相手の私とて、情け無用の裏社会を生き残ってきた男の一人!」
「最早因縁深き関係と行っても過言ではない貴様との決着を、コイツで付けてやろう・・・・・・!」
土井の叫びが屋上階に響き渡った次の瞬間、下の階層に隠れるようにして潜んでいたであろう、黒い大型の飛行物体が冴羽に襲い掛かる。
「何ッ・・・・・・『それ』は・・・・・・!?」
予想外の獲物の出現に、少しばかりたじろぐ冴羽。
彼が驚くのも無理はない。何せ、先程彼に襲い掛かり、派手なプロペラ音と共に、夜のお台場の上空を我が物顔で滑空する。一度対峙したことのある、大量殺戮兵器の名は・・・・・・!
「紹介しよう。と言っても、貴様は既にコレと相対した事があるだろうから知っているとは思うが」
「Warfare製の対戦争用大量殺戮兵器『メビウス』。その後継機、『メビウスMk-Ⅱ』だ!!」
――『メビウス』。今より数年前に、冴羽が自身のホームである新宿で戦う事になった鋼の大量殺戮兵器。『死の商人』ヴィンス・イングラードと提携したIT企業「ドミナテック」代表の御国真司によって新宿の地へ放たれたそれらの殺戮兵器は、次々と被害を齎すも、冴羽や香、海坊主や冴子らの活躍によって無事に撃墜された(※詳しくは「劇場版CITY HUNTER 新宿PRIVATE EYES」参照)。
そして、今相対しているのがそれの後継機とされる『メビウスMk-Ⅱ』だと言う。
「それらは末端情報に至るまで俺達が潰したはずだ。どうやってその状態から後継機を作れた?」
その事件の解決へ動く最中、『メビウス』は破壊され、それらの情報が詰まったコンソールは外側のジュラルミンケースごと粉々にして二度と使えないようにし、首謀者の御国やヴィンスらもまとめて逮捕したことで実質再開発不可能まで追い込んだ。ならば何故、それに相当するモノを開発することが出来たのか。
「フハハ、何も不思議な事はない。これは我々委員会が、裏社会の情報戦に勝利した証だ」
「実を言えば、我々もあの時に実演会の会場に呼ばれていてね。まぁ、幾らヴィンスが入れ込んだ男とは言え所詮は小物も小物。計画は失敗するとみて、敢えて不参加を決め込んだのさ」
「そしたら予想通り、ヴィンスと御国は貴様の手で無様に敗北した!全て、全て予想通りだ!」
土井は冴羽の投げかけた問いに丁寧には答えず、代わりに冴羽が出くわした例の事件の渦中に敢えて身を潜めた自分自身の行動を、如何にも最善の方法であったかのように語り、同時に事件の当事者であるヴィンスと御国を小馬鹿にしたような笑みを浮かべる。
「混迷の裏社会で散り散りになった者達を歓迎し、拡大するのが我が監視委員会の利点」
「さぁ、見てみろ、冴羽!貴様とそのお仲間の相手をするのは、何もこの私だけではない!!」
「・・・・・・そういう、事か」
土井の言葉に促されるように冴羽が見たものは、フジテレビ屋上から望めるお台場の夜景。いや、それだけではない。その闇夜に紛れて、続々と海上に姿を現し始める無数の所属不明のボート達。そう、土井が委員会で持ちえたコネ全てを使い、世界中のありとあらゆる不法者達を、此処お台場に集結させんとしていたのである。
「土井・・・・・・!」
「フ、そう焦るな、冴羽。先ず貴様には此処で、この殺戮機械擬きの相手をしていてもらおう」
冷酷な笑みを浮かべたまま、土井はパチンと指を鳴らす。すると、何処からか土井が手配していたであろう自前のヘリコプターが屋上へと飛来し、土井はそこから垂らされた梯子に掴まり、その場から逃亡しようとしていた。
勿論、冴羽がそれを逃がす筈もなく、再び彼の銃が火を噴く。だが、その弾は目標の目の前に立ち塞がった『メビウスMk-Ⅱ』によって防がれてしまう。そして、更には向こうの方から容赦のない連弾の嵐が冴羽に襲い来る。
「くっ・・・・・・こうも足場が狭くては、あまりにも地の利が向こうにあり過ぎる・・・・・・!」
「はははっ、いい、いいぞ!それでこそ態々決戦兵器として引っ張り出してきた甲斐があると言うものッ!」
その間に、土井はヘリに乗り込み、屋上からの脱出を試みる。『メビウスMk-Ⅱ』に徹底的にマークされた状態の冴羽にそれを止める手立てはなく、彼は物陰に隠れてそれを見送る事しかできなかった。
「もしも、貴様が運良くそれを突破で来たならば。その足でDIVERCITYまで来るがいい」
「今度は最初から万全の準備で、貴様を討つとしよう」
「――待たせたな、冴羽ァ・・・・・・
奇しくも、最終決戦の地としてこれ以上なく相応しい舞台となってしまったお台場。今此処に、彼女達スクールアイドル連合と委員会との最後の戦いの火蓋が切って落とされた・・・・・・!
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
一方その頃、野上冴子との交渉が一段落付いたところで、突如侑に呼び出された結子は、菜々と栞子、そして後から来た生徒会の面々にその場を任せ、侑の待つ公園の海沿いの道へと向かう。
――歩くこと約数分。視線の先に侑の姿を捕らえた結子は、若干急ぎ足になりつつ歩み寄った。
「侑・・・・・・!」
「おおっ、意外に早かったね。別にもうちょっとゆっくり来ても良かったんだよ?」
「いやいや、事態が事態だし。それに、侑がこうやって私だけ呼び出したってことはあの話でしょ?」
「えっへっへー、大正解~」
緊迫した状況が迫り行く中、こうしていつも通りのテンションで振舞えているのは、元々のポテンシャルの高さからか、それとも彼女が留学先の地でそれに足る何かを得て成長したからか。何方にせよ、このスクールアイドル部との熾烈な戦いを通して、更にパフォーマンスに磨きがかかった同好会メンバー全員をこれからも牽引していける・・・・・・そんな最高のリーダーへとレベルアップして、彼女は帰って来たのだ。
「先ずは、約2ヶ月お疲れ様、結子」
「ホントにね。あまりにも色々起こり過ぎて体感5分どころか1年位だったよ」
「あはは!うん、分かるよ。同好会の皆といると、時間の感覚が長いんだか短いんだか分からなくなっちゃうくらいに楽しいよね!!」
「いやぁ、それだけが原因じゃあないんだけどさ・・・・・・(汗)」
振り返れば本当に色々あった。約2ヶ月という長いようで短い時間がこんなにも充実以上に満ち溢れていた事など、私のこれまでの人生の中で全く体験したことがないと言っても過言ではない。
「あ、でも、結子はもう同好会の皆のパフォーマンスは一通り見れてるんだよね」
「ま、まぁ、一応は・・・・・・」
「くうぅぅぅぅぅっ・・・・・・いいなぁ、いいなぁ!!」
「わっ、ちょっ!?」
そして、パフォーマンスの話になるや否や急にハイテンションになり始める侑。抗えぬ衝動に身を任せてとでも言うべきか、彼女は私の方に思い切り身を傾けて超至近距離で私の目を覗き込んでくる。心なしか、侑の目には特大のハートマークが浮かんでいるように見えた。
おおぅ、気持ちは分かるけどちょい待って、顔が近い近い。
「やっぱり人から聞くだけじゃ駄目だ・・・・・・!私も同好会の皆の今のパフォーマンス見たい!!」
「ゆ、侑が言えば皆喜んで無条件で見せてくれるんじゃない・・・・・・?」
「いや、そこはほら!完成系としてのライブの風景とセットで見たいじゃん!?」
「えぇ~・・・・・・じゃ、じゃあ、これまでのライブ映像、動画サイトに投稿してるからそれを見れば?」
「うーん・・・・・・それもいいけど、でもでもっ、折角だから会場の雰囲気全部を感じたくない!?」
あー、これはアレだね。この件にカタが付いたら、速攻ライブの準備だね。タイトルは・・・・・・えっと、『名誉部長・高咲侑おかえりなさいlive』的な?
「それじゃあ駄目だよ!やっぱり私がメイン過ぎるとライブに来てくれたファンの皆が、同好会の皆を純粋に応援できなくなるかもしれないし!」
「主人公特有のNT並みの思考読み取り、止めて!?」
「あ、そうだ!話変わるけど、結子は推しは誰にするか決まった!?」
「話の方向転換、いきなり過ぎじゃない・・・・・・?」
ちょいシリアス展開からの急激なギャグパートへの移行。そんな転換も思いのままにやってのける侑はやっぱり凄いなと呆れながら感心している私を他所に、侑が更にヒートアップしていく。
「――歩夢は勿論可愛いよね!何かこう、大人しめに見えて凄く感情表現が豊かでさ!何かあるたびに表情がコロコロ変わって・・・・・・そう言うところが可愛いYOー!因みにあの子私の幼馴染みなんだよ、凄くない!?」
「――かすみちゃんは何て言うか守ってあげたくなるよね!自分の可愛いを磨くために普段から色々見えないところで頑張ってるところとかさ!同好会の皆が皆凄く可愛いけど、かすみちゃんは何か特別で無敵級で・・・・・・何だか私、かすみちゃん推しになれそう!みたいな気持ちにしてくれたりとか!!」
「――せつ菜ちゃん!?いいよねぇ、せつ菜ちゃん!何たって私がスクールアイドルに嵌るきっかけをくれた子だし、大好きを貫く姿勢はかっこいいけどやっぱり可愛くもあって・・・・・・!結子も一回聞いたなら分かるよね、せつ菜ちゃんの曲に必ずと言っていいほど入ってるシャウトは凄いビリビリ来るって言うかさ・・・・・・もう、最高にときめいちゃった!!(オタク特有の早口)」
「――愛ちゃんはいつも明るくて元気で、同好会のムードメーカーだよね!愛ちゃんがいるだけで何か周りの雰囲気が凄く明るくなるし!それに、果林さんみたいに意識して作られたわけじゃないと思うけど、あの抜群のプロポーション!あ、駄目だ、さっき聞いた渾身の駄洒落思い出したら急に・・・・・・ぷひゃひゃひゃひゃひゃ!!(軽く呼吸困難)」
「――エマさんは包容力が物凄いよね!こっちがお願いしてもないのに時々、優しくギュッとしてくれたりしてその度に癒されるって言うか・・・・・・出てるよね、エマさんからは人口のマイナスイオンが完全に出てるよね!?見える、私も見えるよ、溢れ出んばかりのマイナスイオンが!!」
「――璃奈ちゃんには編集作業とか曲作りの時に凄くお世話になってるよ!いやぁ、私ってばPCの専門的な部分になるとてんで駄目でさ。だから、璃奈ちゃんの持ってる技術力は本当凄いと思う!最初はちょっと表情が乏しい子だななんて思ったりもしたけど、ああ見えて凄く表情以上に言葉的な感情の起伏が分かりやすい子で、しかも人懐っこいんだよ!?推さずにはいられないよ!!」
・・・・・・とまぁ、こんな感じで。同好会に所属する一人一人の事を語る侑の顔は誰よりも一番輝いていて。こういう話を見聞きするだけで本当にこの虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会という部の中にどれ程彼女の存在が必要不可欠か、嫌が応にも理解できてしまう。
――ついでに、そんな彼女が何らかの理由で同好会からいなくなってしまった場合、現状の同好会がどうなってしまうのかも。
「あ、あのさ、侑。そろそろ本題に・・・・・・」
「えっ、ああ、ごめんごめん。いやぁ、皆の事になるとついつい話が長くなっちゃうね」
「それじゃあ、結子に質問。同好会の皆と一緒に活動して、どうだった?」
侑のその言葉に、私はこれまでの皆と過ごした日々を思い返す。
侑が帰ってくるまでの約2か月。丸々スクールアイドル活動が出来たかと言えばそうではなかったけれど、それでもこんなにも間近で大好きになったスクールアイドルの現場を見れる立場に付けたというのは、私にとってかなり嬉しい体験だった。
それに、うん。自分ではそれなりに護衛役として自信を持ってはいたけれど、色々な危険から彼女達を守るというのは自分だけでは限りなく不可能な事だと実感したし、所々で私の詰めの甘さが露呈した。悉く辛酸を舐め、それでも抗った日々を一言にまとめるのなら。
「勿論、楽しかったよ!」
周囲に仲間がいるという事がどれだけ幸せなことか、私はそれを知り得た。同時に、武術を極める為に孤高で我が道を貫くにも限界があると言う事を。
ただ、一人で出来る限界を知ったからこそ。今度は皆と共に高め合って、何れその限界さえも越えていきたいと。適性も可能性も資質さえも越えて、自分自身が嘗て見たこともない景色に同好会の皆となら辿り着けると、そう思った。
「だから、私の答えは決まってる」
「――侑、私はこれからも皆と一緒に頑張っていきたい・・・・・・!」
これが、ほんの一握りのスクールアイドルの輝きを特等席で目にした、今の私の偽らざる気持ち。そして、それを聞いた侑は、やがていつものように無邪気なニッカリ顔で微笑んで。
「うん、よろしく、結子。これから一緒に皆の可愛さ、広めていこうね!」
最も彼女らしい言葉を述べた後に、私に向かって手を差し伸べてくれた侑。そんな侑の期待に応えるべく、私はその手を握り返し、握手を交わす。
――こうして、私こと舘結子は、この場から正式に虹ヶ咲スクールアイドル同好会名誉部長補佐に任命されたのだった。
「えっへっへ、これで完全に結子とは同じ穴の狢だね」
「よし、それじゃあ皆の可愛さを伝えるために、早速最初の共犯と行ってみよーう!」
「共犯って・・・・・・何だか悪いことしてる響きだなぁ」
愚痴を垂れつつ、侑と一緒になって笑い合う。出来ればこの時がずっと続けばいい、思わず平和ボケの思考に逃れようとし始めた私の意識は、次の瞬間、一気に現実へと引き戻された。
「――ちょっと。こんなところで何してんのよ、アンタ達」
不意に、私達の背後からそんなボヤキが聞こえて。驚いて振り向くと、そこにいたのは。
「何って見るからに大事そうな話し合いしてたじゃない。もうちょっと位待ってあげたら?」
「そうよ、あくまで私達は虹ヶ咲の子達のサポートをしに来たんだから。日程がギチギチでどうしようもないのは分かるけど、そこは貴女のマネージャーさんが頑張ってくれるんでしょう?」
「成程、成程ぉ・・・・・・此処がお台場かぁ。じっくり探索したことなかったから、何だか新鮮だね」
「うんうん、久しぶりに獠ちんにも会えたし、テンション上がるにゃー!」
その人だけでなく、更に続々と後ろから現れる見知らぬ女性達。いや、しかし、この人たちには何処かで見たようなそんな面影を感じる。私が思い出せずに考え込んでいると、その5人の女性達に続いて現れた3人組を見て、彼女達が誰なのか、瞬時に理解できた。
「やっほー、ちょっと前ぶりだね、結子ちゃん、侑ちゃん。高坂穂乃果、只今帰還です!」
「結局、冴羽さんには一人で大丈夫と追い払われてしまいました。まぁ、予測通りではありますが」
「それじゃあ皆、揃ったみたいだしそろそろ行こうか」
「「「「「「「「愛弗防衛機構《ムーンカテドラル》、いざ出陣(です)(だ)(よ)!!」」」」」」」」
――元音ノ木坂学園スクールアイドル研究部、通称《μ’s》。スクールアイドルの時代を最先端で切り開いた彼女達全員が、遂に此処、お台場の地に集結したのであった。
さて、如何でしたでしょうか。
スクスタのランジュからいい所だけ取って、オリジナル設定を多少付け加えた私のランジュは可愛いだろう!?
と言う事で、今回の活動報告では、予定通りランジュを語ります。
諸々の事はそこで話すので是非、気になった方は覗いて頂けると幸いです。
次回更新予定の激動の2~3節を経ての、最後に分岐式Epilogue。
一気に駆け抜けますので、よろしくお願いします!!