アニガサキ!-PASTEL COLLARS- 外伝 Episode of ランジュ   作:海色 桜斗

20 / 23
済みません、予定より遅れました。海色桜斗です。

さて、締め切りの6月ももう残すところ僅か!

現状、ひぃひぃ言いながら頑張ってる作者です。
解説点はオリジナル設定は小説内に記載してあるのと、特に原作と比較するべき場所もないので解説コーナーはありません。

出番が少なすぎたキャラには本当に申し訳ないですが(特に香さんとか)。
動かし方、もうちょい勉強しますか……

新しく始まったPSO2NGSで色々やったり、ウマ娘育成に熱意を注いだりで忙しい身ですが何とか間に合わせたいとは思ってます。ご期待ください。

それとお知らせ。
此処から、クライマックスですんでなるべく読者の皆さんに世界観に浸ってもらう為、今日の後書きと活動報告、そして次回の前・後書きは書かない方向で行きます。
(※SSもネタ切れし申した。次回作まで温存します)

エピローグ完成後にまたお会いしましょう。それでは、どうぞ。



※注釈
最後の侑視点のカタカナ台詞(メール)はデジモンの文字表記にしたかったのですが、そのフォントがなかったので断念しました。侑にはそんな感じで見えてるってことで保管しておいてね。



5-2「お台場動乱事変」

「よしっ、それじゃあ行こうか、皆!」

 

「「「「「「「「――愛弗防衛機構《ムーンカテドラル》、いざ出陣(です)(だ)(よ)!!」」」」」」」」

 

嘗てない危機がお台場を襲い来ようとする最中、同好会の面々と別行動を取っていた侑と結子は、元《μ’s》である愛弗防衛機構《ムーンカテドラル》の中でまだ出会えていなかった矢澤にこ、絢瀬絵里、西木野真姫、小泉花陽、星空凛の5人とまさかの初対面を果たしたのだった。

・・・・・・勿論、そんな運命的状況を侑が黙って静観していられるはずもなく。

 

「わぁぁぁぁ、μ’sだ、本物だ!!」

 

「ちょ、ゆ、侑・・・・・・!?」

 

「サインお願いします!!」

 

 

その場の興奮と勢いに身を任せ、目の前の8人に向かって色紙を差し出した。

えっと・・・・・・それ、バッグも何も持っていない状況なのに一体何処から取り出したの?

 

「うわ・・・・・・律義にちゃんと8枚あるわね、これ」

 

「はい、出来ればコンプリートしたいので!」

 

うわ、出た。オタク特有のコンプ欲。

 

「流石、侑ちゃんやね。それで、何処に飾るつもりなん?」

 

「はい、部室に飾りたいと思ってます!」

 

是非とも額縁に入れて飾ろう、そうしよう。

 

「別に構いませんが、神棚と一緒に飾るのだけは勘弁してくださいね?」

 

「えっ、駄目なんですか!?」

 

「ええと・・・・・・私のお父上様がそうしていまして。何と言うかその、気恥ずかしさがありますので」

 

説明しとくよ。この世界線のスクールアイドルを娘に持つパパさん達は、大体ドタコンなんだって。

 

「あのー、私達もそろそろ虹ヶ咲に向かったことりちゃん達と合流しないといけないんじゃ?」

 

「大丈夫、走っていけばまあ何とかなるって!」

 

「そんな根性論が通じる人は凛ちゃん以外、此処にいないんだよォ!?」

 

花陽さんと凛さんのショートコントみたいなやり取りが炸裂する。あれ?でも、最初のあの口上で名乗った愛弗防衛機構だか何だかやってるんだから、皆さん現役時代以上の体力をお持ちなのでは?

 

「あら、ちょっとそこのアナタ。もしかして負傷してるんじゃない、大丈夫?」

 

「・・・・・・えっ、私!?」

 

「アナタ以外他に誰にいるってのよ・・・・・・まぁ、いいわ。診せてみなさい」

 

そして私は、今まで侑を中心に話が進んでいた為に、真姫さんに話しかけられた際に直ぐに自分の事を指摘されているとは思いも寄らず、多少テンパってしまった。

 

「あの・・・・・・この場じゃ流石に応急処置くらいしかできないんじゃ?」

 

「まぁ、普通であればね。けど、此処には幸いこの力を実際に知ってる人しかいないから・・・・・・」

 

そう言うと、真姫さんはニジガクの皆と同じように掌の上に紋章(アイコン)のようなものを顕現させ、空いた片方の手で偽理事長との戦いで付いた私の身体の負傷個所に次々と触れていく。

全ての場所を触り終えた彼女は、シンプルなデザインの赤く光る星形の『それ』をぐっ、と握りしめる。

・・・・・・その輝きが真姫さんの手の中で一層強く輝いたかと思うと。次の瞬間には私の腹部の痛みは消え、少し動きづらくなっていた左肩と左脚は負傷前のように軽く、しなやかに動くようになった。

 

「わ、凄い、身体が一気に軽くなった!・・・・・・これが、真姫さんの紋章の力なんですか?」

 

「そう言う風に呼ぶ者かは知らないケド。まぁ、その通りよ」

「でも、それも一時的に治癒しただけだから・・・・・・これが終わったら、また悪化する前に私の病院に来なさい、今度はちゃんとしっかり診てあげるわ」

 

説明が端的すぎていまいち理解できないが、ゲームやファンタジー世界の治癒術みたく万能ではないと言う事だろうか。でも、うん。流石にまだ負傷が酷くて暫らく寝たきり・・・・・・にはなりたくないのでその内お世話になるとしよう。

 

「それと、これについては一切口外しない事。勿論、侑も同じく・・・・・・いいわね?」

 

「はい、一ファンとして守秘義務は守らせてもらいます!」

 

「安心してください、口は堅い方なので」

 

「えぇ、約束よ」

 

何処ぞの某藪医者もびっくりな『神の御手(ゴッド・ハンド)』。現在、真姫さんが携わっている医療界ではそう呼ばれそうな代物ではあったが、あくまで彼女はそれを軽々しく使う事を嫌っている様だ。

 

「さ、結子ちゃんの治療も終わったことだし、気を取り直して虹ヶ咲の皆と合流しよっか!」

 

穂乃果さんの号令を受けて、私達はそのまま、虹ヶ咲スクールアイドル同好会とNLNSの面々と合流すべく足を急がせたのだった。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

一方その頃、同好会メンバー達は――

 

「――ん、取り敢えず現状把握は出来たわ。色々聞かせてくれて有難う、虹ヶ咲の生徒会長さん」

 

「いえ、冴子さん達も態々遠いところから来て頂いて有難う御座います」

 

「ふふ、良いのよ。私達はこれも仕事の一環な訳だし、ね」

 

結子との話し合いの為に一時その場を離脱した侑の代わりに、冴羽と同業者の援護でやって来た冴子へ現状を伝え終わった菜々、そして生徒会メンバー達と行動を共にしていた。

 

「それじゃあ、私は持ち場に戻るから。気を付けていってらっしゃい」

 

「はい、冴子さんもお気を付けて」

 

粗方詳細を聞き終わった冴子は、菜々と虹ヶ咲の面々に別れを告げて、公園内を後にする。彼女を最後まで見送ったところで、虹ヶ咲学園生徒会は直ぐに行動を開始した。

 

「皆さん、急いでください。此処からではあまり猶予はありませんよ」

 

「会長、委員会は我々との最終決戦の地にDIVERCITYを選んだようです、如何致しますか?」

 

「問題ありません。右月さんと左月さんは念の為、逃げ遅れた人がいないかの確認を」

 

「「はい、会長」」

 

会場内で、ここ数ヶ月で身に付いた驚くべき速度の早着替え術でスクールアイドル・優木せつ菜から虹ヶ咲生徒会長・中川菜々へ転身した彼女は、生徒会書記である3年生の右月左月姉妹や他生徒会役員達に指示を出し、迫りくる悪党達に接触することがない様、避難誘導をしていた。

 

「菜々さん、私はどうしたら・・・・・・?」

 

「栞子さんは、NLNSの皆さんと引き続き、同好会の皆さんの警護を」

 

「侑さんと結子さんも直ぐに戻ってきますので、そしたら皆さんでDIVERCITYに向かいましょう」

 

「・・・・・・」

 

生徒会の人間達が菜々の指示で忙しなく動き回る中、その様子を少し離れたところでみていたランジュは、少しだけ躊躇いを見せた後、菜々に向かってこう呼びかけた。

 

「――ねぇ、菜々。この後の目的地、ニジガクにしてもいいかしら?」

 

彼女のこの唐突とも取れる発言に、菜々は眉を顰める。まだ完全に信頼を置かれていないので当然と言えば当然の事。だが、彼女も彼女でそれを覚悟して問いを投げかけたのである。

 

「ランジュさん・・・・・・一応、訳を聞いてもよろしいですか?」

 

「構わないわ。現状、皆には隠し通す理由がないものね」

 

そう言ってから、一呼吸置き、彼女は再び口を開く。

 

「虹ヶ咲の本物の理事長さんから、さっき菜々とサエコと話してる途中で連絡があって」

「アタシのママ、ニジガクにいるみたい」

 

短く、しかしてはっきりと。ランジュは菜々の目を真っ直ぐに見つめてそう言った。

 

「理事長・・・・・・いえ、ランジュさんのお母様ですか」

 

「そ、先に委員会の土井を抑えるのも手だけど、アイツはあのシティハンターに任せましょう」

「それよりも先に、この土壇場に来て功を焦ってるママの方が何を仕出かすか分らないもの」

 

要は優先事項を変えろ、と彼女は言っているのだ。確かに其方の方がDIVERCITY近辺で護衛の者達を大勢配備している土井の元へ真っ先に飛び込むよりも遥かに効率はいい。

 

「ですが、あの人は結子さんでも倒せなかったのですよ?流石に私達だけでは・・・・・・」

 

「あの人が鐘家の人間ならアタシもその一人よ。実力的には大分下だけど、ね」

 

チラリと。ランジュが自分の手を握りしめながら、それを見る。顔には彼女らしくない不安げな表情が影を落としていたが、自身の余りある実力不足を補える方法に一つ心当たりがあった。

 

「でも、ユイと一緒なら何とか出来る、と思う」

「勿論、これはユイが良いって言ってくれればの話だけど」

 

彼女が以前から不思議なシンパシーを感じていた人物、それが同好会名誉部長補佐となった舘結子ただ一人。

 

何故だかは分からない。けれど、ランジュの中では彼女の存在はある意味特別な存在で、きっと洗脳されていた自分でさえも欲していた理由が何処かにあるはず。そうでもなければ、ほぼ同様の立ち位置となる高咲侑だけを放っておくこうとした理由とイコールにはならないだろう。

 

「・・・・・・ランジュさんは、やけに結子さんを意識なさっているんですね」

 

「うん、不思議な事にね。初対面なはずなんだけど、シオとはまた違った懐かしさがあると言うか」

 

――とは言え、栞子と同様に過去に何らかの交流があった訳ではない。だからこそ、真っ先に付き合っていく人々と自分との間にある関係性が気になってしまう彼女の心は、少しモヤモヤとしていた。

 

「って、ごめんなさい、菜々。話が大分逸れちゃったわね」

 

「いえ、構いませんよ」

 

「取り敢えず、ユイの返答次第ではアタシ一人で戦わなきゃいけなくなるかもだけど」

「安心して、虹ヶ咲の皆はランジュが守るわ」

 

本当は、彼女の協力を多少強引にでも取り付けたいところではある。けれど。

 

『そんな事、一介の学生に許される行為じゃない』

 

彼女と初めて一対一で向き合った時の言葉を思い出し、その愚行ともいえる手段はそっと胸の内に秘めた。仮に今そんな事をしてしまえば、彼女の協力を得られないどころか同好会の皆の信頼も二度と得られなくなってしまうかもしれない。それは限りなく苦痛だから。

 

「――おーい、皆ー!」

 

その時。遠くから声が聞こえたかと思うと、此方に向かって大きく手を振る侑と控えめながら同じく手を振る結子の姿が見えた。

 

「あっ、侑ちゃん!おかえり」

 

「おお~、ゆうゆとゆいゆい、知らない間に大所帯になってるねぇ」

 

「侑せんぱーい、こっちですよ~・・・・・・ってよく見たら穂乃果さん達じゃないですか、あれ!?」

 

愛の言葉で咄嗟にその事に気が付いたかすみが嬉しさに悲鳴を上げる。一方で、菜々モードに徹しきっているせつ菜はどうしたものかと凄くアワアワしていた。

 

そんな菜々の姿を見兼ねてか、右月左月姉妹が持っていた通学用バッグから何かを取り出し始め。

 

「「会長、せつ菜さんと交代のお時間ですよ」」

 

「・・・・・・!」

 

マジックショーの消失マジックなどでよく用いられる、縦に伸びる分厚い布製のアレ。如何やら、この書記姉妹はこの場での菜々とせつ菜との入れ替えを、彼女の正体をしならない者達に自分達のマジックによるものだと錯覚させる腹積もりの様だ。

菜々は当然、この策に乗らざるを得ないとかなり強引で春が完璧なフォローを出した二人に感謝しつつ、その中へ身を隠した。

 

「さてさて、遠からん者は音に聞け、近くば寄って物を見よ!」

 

「今から私達姉妹がマジックで会長を家まで送り届け、代わりにせつ菜さんを呼び出します!」

 

二人の掛け声が公園内に響き渡り、周囲の視線が一気に其方へ集まる。事情を知っている同好会の面々と、同好会メンバーからこっそりと事前に情報提供されている(情報提供者は中川菜々本人)NLNSとムーンカテドラルのメンバー達は周囲に悟られない様にこっそりと物知り顔でそれを眺め、事情を知らないランジュとミアが興味津々の様子でそれを見つめた。

 

「行きます、はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~・・・・・・!」

 

「「そいやぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」

 

「――お待たせ致しました!優木、せつ菜、です!!」

 

バァーーーーーーーーーン!という勢いの良いSEが今にも聞こえてきそうな雰囲気を醸し出しつつ、髪型・衣装共に優木せつ菜へ変貌を遂げた菜々が、特徴的なクソデカボイスと共に布生地の向こう側から姿を現した。

 

「わぁぁぁぁぁ!ねね、淳くん、生徒会の人達のマジック見た?凄かったねぇ!」

 

「この方法、もしかしたら俺達の新しい戦略に使える・・・・・・!?」

 

「いやいや、そんな訳ないでしょうよ」

 

「むべ・・・・・・実に素晴らしい出来栄えのまじっくに御座います、ふんすふんす!」

 

「うぉぉぉぉぉぉ、これは同じエンターテイナーとして負けられません!私も此処で新技披露していいですかっ!?」

 

「止めとけよ、畔さん。新技って言ってもアンタが出来る事なんて精々アナルにフィギュア挿入するとかそういうやつだろ?」

 

タネは分かっていても数名が若干興奮を抑えきれていないNLNS。一方、完全初見のランジュとミアはというと。

 

「えっ、凄・・・・・・何それ、どうやったの!?ランジュにも教えて教えて!」

 

「うわ、うざっ・・・・・・」

 

目にも止まらぬ速さでせつ菜と書記姉妹の元へ駆け寄り、如何にも興味津々と言った様子で目を輝かせながら教えを請おうとしているランジュと、恐らくタネを一瞬で理解出来た為にランジュの様子を遠くから呆れて見つめるミア。二者二様の反応をしていた。

 

「では、早速ですがμ’sの皆さんにサインをッ!!」

 

「あ、それならさっき侑ちゃんからそう言われてしてあるよ?」

 

「大丈夫です、これは個人用ですから!」

 

・・・・・・正直なところ。何が大丈夫なのかは、意味が分からないが。

 

「ええと、右月さんに左月さん。あれで本当に良かったんですか?」

 

「せつ菜さんが良ければ、それで構わないかと」

 

「はい、会長のサポートもせつ菜さんのサポートも出来る。明らかに役得じゃないですか」

 

先程の即興劇に関する栞子の疑問に対して、当事者の二人はにこやかな笑みを浮かべてそう答える。正体を隠しているというのに普段から何かしらやらかしてバレそうになりつつある彼女の全面的なフォローを受け持つ、それが新生虹ヶ咲生徒会の追加業務となっていたのだった。

 

「はい、せつ菜ちゃん。これでいいかな?」

 

「はい、ありがとうございます!」

 

またもやサイン色紙を託されたμ’sの面々は、特に呆れる様子もなく手慣れた様子でサインを書き込み、代表して穂乃果が全員分の色紙をせつ菜へ渡す。

 

「さぁ、準備は整いました!行きましょう、皆さん!」

 

「敵は、私達の学校に在り、です!!」

 

「ってぇ、何でいつの間にかせつ菜先輩が仕切ってるんですかぁぁぁ!?」

 

すっかりハイテンションになって先導しようとするせつ菜に、かすみ渾身のツッコミが炸裂した。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「――・・・・・・つまり、だ。アンタには元々こういう事に備えての手持ちがあったって事か」

 

「ええ、その通り。少々出遅れた感はありましょうが、それも誤差の範囲内、無用の心配ですとも」

 

此処は夜の虹ヶ咲学園校舎内。日はとっくの昔に暮れ、何処の部屋にも明かりは灯っていない。そんな中、とある一室だけ、外部にまるで人がいるぞとでも豪語するように煌々と明かりが照っている。

 

「しかし、先にあの偽理事長の目をこっちに向けさせる為とは言え。目立たせ過ぎちゃねぇか?」

 

「確かに、我々のみでしたらデメリットしかなかったでしょう」

「だが、あのお方には我々以外に決して放置できない存在がいる。そう、実の娘さんがね」

 

男が二人と女が一人。奥の豪華なつくりをした机の椅子に座っている男が虹ヶ咲の前理事長、その部屋の入口の扉にもたれ掛かって理事長を真っ直ぐと見据える男が愛弗防衛機構《ムーンカテドラル》リーダーの長谷部祐介。そして、睨み合う男達を部屋の来客用ソファに腰かけながら何処か不安げな表情で見守る女が、元《μ’s》の南ことり・・・・・・その人だった。

 

「成程、さっきの意味深な電話の相手はあのランジュって言う鐘家のお嬢さんとだったんだな」

 

「ええ。そして、彼女の提案を受けて彼女達は恐らく此処へ向かってくるでしょう」

 

此処ではない、何処か遠くの方角を。両手指を組んだ状態の腕を机上に乗せたまま見やる虹ヶ咲前理事長。彼は一体その瞳の先に何を見据えるのか。

 

「・・・・・・!ことり、こっちに来い」

 

「どうしたの、ゆーちゃ――っ!?」

 

祐介が窓辺の外から見える景色を視界に入れたその時。不意にその近くを横切る何者かの影を捕らえ、急いでことりを傍に来るよう促し、当の本人であることりもその気配を察知して、彼の背後に身を潜める。

 

「間違いない、あの偽理事長様だ。やっぱり先にこっちを・・・・・・!」

 

「どうする、ゆーちゃん」

 

「どうするもこうするもねぇ、飛び込んで来たら返り討ちにしてぶっ叩く。それだけだ」

 

剣でいて何処か不自然にアンバランスな、セバスとの戦いのときにも持っていた彼自身の所有物である大剣を構える。しかし、その状況下においても狙われているはずの身である前理事長は、先程から全く同じポーズのまま微動だにせず、奇妙な程に落ち着き払っていた。

 

「いえ、それはないでしょう。ですから、その特徴的な大剣をどうかおしまい下さい、長谷部君」

 

「何をそんなにのんびりと・・・・・・狙われてんのはアンタなんだぞ」

 

「まぁ、何。あまりそう警戒せずに、御覧なさい」

 

依頼人の言葉だから、祐介はそう自分に言い聞かせ黙ってその場を見送る。すると、どうだろうか。偽理事長・・・・・・基、ランジュ母は明かりが灯っている祐介達のいる部屋には目も暮れず、必死の形相を浮かべて校門の外へと飛び出していった。

――奇しくも、前理事長の言葉通りに。

 

「・・・・・・マジで行っちまいやがったな。一体何だってんだ、あの女は」

 

「恐らく、本国の方で何か動きがあったのでしょう。勿論、彼女に都合の悪い方向に」

 

「何だって、それはどういう・・・・・・?」

 

委員会絡みの事件を幾度となく解決へ導いてきた祐介やことりでさえ、今回の真の黒幕ともいえる彼女の行動がいまいち理解できなかった。そして、それを予め分かっていたかのように推察した前理事長。この男の不可解なまでの先読み能力とその身分に隠した正体すらも。

 

「――時に長谷部君。キミは『十徳の六氏族』という名前を聞いたことはないかね?」

 

「日本の何処かにいて、特殊な協定を結んでるとかいうあの『十徳の六氏族』か?」

 

「流石は《ムーンカテドラル》、良く情報を知り得ている。そう、あの『十徳の六氏族』です」

 

――十徳(じっとく)の六氏族。

時は遡る事、江戸時代中期。都心の江戸を守るため、極めて主要な6つの県境から伸びる膨大な土地を所有する守人の代表格とも呼ばれた家々の直系。その当時の主であった者達がより強固な守りを実現する為、互いに手を取り合って生まれたのが始まり。以降、彼等は間に結ばれたとある協定を守り続け、幕府が存在しなくなった今もこの国の何処かにその末裔達が暮らしているのだという。

 

「何でここでそれが出てくる。今の『十徳の六氏族』には正式な守人はいないんだぞ」

 

「知っていますとも。今ではすっかり衰退して一般の家庭と同じようになっている家もあれば、まだまだその時の財力や権力を残して富を謳歌している家もある」

 

「では、その協定を結んだ6つの家名も、当然把握しているんでしょうな?」

 

「当たり前だ。中川、三船、高咲、冷泉院、天王寺、鐘・・・・・・あぁ、そう言う事か」

 

「フフ、キミの様に勘の良い御仁がいる事は実に有難いね」

 

前理事長が祐介の理解した様子を見て、静かに微笑む。

 

「それは神の気紛れか否か。お台場の、更に言えばその中にある我が校・虹ヶ咲学園に六氏族が揃っているこの状況」

 

「冷泉院以外はな」

 

「・・・・・・えぇ。ですが、その事実は恐らく彼女も理解している事でしょう」

 

「嘗てない不利に見舞われたその状況下で、彼女が死守すべきは古より伝わる《十徳の宝玉》」

 

――十徳の宝玉。前述の『十徳の六氏族』初代当主達が来るべき時の為に絶対的権力者の証として残した秘宝中の秘宝。それを所有する者はどんな圧力にも決して負けない不変の富と名声と力が手に入るとされている。

本来は、時の政権に何らかの不穏や行き過ぎた汚職が発覚した際に六氏族全員の賛同を得る事で正しく世を導ける人物にその役割を託すためのモノ。だが、しかし。

 

「強大過ぎる力は、大きな影を生む。故に、何かに固執し過ぎている者の手にあってはならぬ」

 

それは逆に、一度でも悪人の手に渡ってしまえば取り返しがつかなくなると言う事。一つのミスがお台場だけでなく日本全国を滅ぼすことに成り兼ねないのだ。

 

「では、それを踏まえた上でキミ達《ムーンカテドラル》に正真正銘、最後のミッションを授けよう」

 

「《十徳の宝玉》、これをきっと彼女は持っている。だからこそ、彼女が戦局をひっくり返すべく血迷ってその力を行使する前に彼女を倒し、宝玉を奪還せよ・・・・・・!」

 

「あぁ、任務了解だ」

 

「はい、精一杯頑張りますね!」

 

愛弗防衛機構《ムーンカテドラル》。彼等の長きに渡る戦いに、遂に終止符が打たれようとしていた。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「ユイ、お願いがあるの。聞いてくれる?」

 

「・・・・・・急いでるから、手短にね」

 

場所は再び戻り、有明テニスの森公園付近。公園内からは脱出し、いざ自分達の母校へと足を進めていた時。急にランジュが不安げな表情で私に話しかけて来た。

 

流石にここまで来て、本人の話したいという意思を無碍にしようものなら今度は彼女ではなく私が悪者になってしまう。それだけは避けたかったので、渋々彼女に同意する事に。すると。

 

「学園に付いたら。アタシと一緒に、そこで待ち構えてるアタシのママと戦ってほしいの」

 

次に彼女の口から飛び出したのはとんでもない発言だった。えっ、只でさえ一回ボロ負けしているというのにそんな相手にもう一度挑めと?いやいやいや、無理があるでしょうよ。

 

「とても正気とは思えない提案だけど、一応聞いとく。何で?」

 

「ユイとアタシが力を合わせれば、きっとママほどの実力者でも倒せるはずだから・・・・・・!」

 

視線は痛い程此方に真っ直ぐに向けられ、口も真横一文字にグッと固く結ばれている。少なくとも、洗脳の後遺症的な症状で思考がおかしくなっているとかそういう事ではなさそうだ。私は、彼女の次の言葉を待った。

 

「お願い、ユイ。まだ信じてもらえる段階じゃないかもだけど・・・・・・でも!」

「今のアタシには、ユイが必要なの。だからお願い、力を貸して・・・・・・!」

 

参ったなぁ、何で彼女はそこまで私に固執してるんだか。意味が分からないよ。

 

「ちょっと待った、ショウ・ランジュ!」

 

私が返答に迷っていると。いつの間にか、かすみちゃんがまるで私を守るかのように、私とランジュとの間に立ちはだかって、彼女の発言を遮った。

 

「もしかして、またあの時みたいにユイ先輩を危険な目に合わせる気ですか!?」

 

「違う・・・・・・!アタシは、アタシはユイにそんな事をさせるつもりじゃないわ!」

 

「同じ事じゃないですか!ユイ先輩は、私達の為に何度も身を張って戦ってくれた人ですよ!?さっきだって、せつ菜先輩を守るためにお前の母親と戦う事になってボロボロにされてた!」

「かすみんだって・・・・・・かすみんだって本当は守ってもらってばかりじゃなくて、先輩を守れる位の力が欲しい!なのに・・・・・・お前はまだ、先輩だけを酷使させるつもりですか!?」

 

「ッ・・・・・・!?」

 

私がかすみちゃんを最初に守ってあげた日の時と同じく、彼女の目にはうっすらと涙が浮かんでいた。身体は小刻みに震え、声は感情的になるあまり、少し荒っぽくなっていて。

彼女の涙で潤んだその真っ直ぐな瞳は、ランジュだけを真っ向から睨みつけていた。

 

「かすみちゃん、流石にそれは言い過ぎだよ」

 

「エマ先輩・・・・・・だって、だってぇ・・・・・・ッ!」

 

「気持ちは分かるよ。でも、ユイちゃんはそれも覚悟して護衛役を引き受けてくれたんじゃないかな」

 

「だったら、先ずはそのユイちゃんの気持ちを、私達が信じて見守ってあげなくちゃ、ね?」

 

そんなかすみちゃんをエマさんが優しく抱き寄せて宥める。全くかすみちゃんったら、大丈夫だからって言ったのに。本当、いい後輩に恵まれたなぁ、私は。

一方、かすみちゃんの本音を真正面から叩きつけられたランジュはと言うと。

 

「――そう、ね。アタシ、ユイに甘えすぎてたんだわ」

 

「・・・・・・」

 

「アタシ、ユイには何か凄く特別なものを感じてるというか。何でか分からないけど、気付いたら何時の間にかそうなってたのよ」

「シオみたいに幼馴染みって訳じゃない。けど、何て言うかその・・・・・・家族、みたいな凄く温かいシンパシーみたいなものを感じてるの」

 

かすみちゃんの私を想う気持ちが痛いほど伝わったのか。唇をキュッと噛み締めながら、彼女はゆっくりと語り出す。彼女が心の奥底で私に抱いていた気持ちを。

 

「ユイはアタシの恩人よ。勿論、ここにいる同好会の皆も、他の皆も」

「絶対に無茶はさせないし、何かあったらアタシが全部責任を取る」

「だからお願い。かすみの、同好会の大切な仲間の、ユイの力が必要なの・・・・・・!」

 

自分へ本心をぶつけに来てくれたかすみちゃんへ。そして同好会の皆に向かって頭を下げて懇願するランジュ。その姿は今まで闇に囚われていた彼女が見せた、彼女自身の、他人に誠意を見せる際の姿勢であった。

 

「そっか。じゃあ、一つだけ質問」

 

「・・・・・・本当に、全部に責任を負うつもりはある?」

 

一介の学生には重すぎてとてもじゃないが一人では背負いきれるはずのない、責任という言葉。普通ならこういう言葉を向けるべきではないのは分かっている。けれど彼女は、ランジュは今、鐘家という自分自身の生まれ育った家の将来の主になるべく存在として私達に向き合っている。故に、その覚悟を無駄にすることはあってはならないはずだ。

 

「勿論。だってアタシは今、その為だけに此処にいる」

「皆とユイには今のアタシの覚悟がどれくらいなのか、見ててほしい」

「それで皆がアタシを認めてくれるなら、アタシは皆と一緒に歩いて行きたい。もしその結果が逆だったとしてもそれが皆の答えなら、アタシは満足して向こうに帰れるから」

 

そう言ったランジュの瞳の奥には、静かな熱意が火を灯していた。あぁ、そう言う事ならば私は。

 

「・・・・・・分かった、今だけはランジュを信じるよ」

 

「うんうん、彼方ちゃんも今の言葉の中にかなりの覚悟を感じたよ。ちょっと見直しちゃった」

 

「はい、ランジュさんの中の確かな大好きの気持ちを捉えました。一緒に戦い抜きましょう!」

 

「ユイ、皆・・・・・・!」

 

彼女の相応の覚悟を認めた私に続いて、彼方さんとせつ菜ちゃんが其々思ったことを口にし、それに倣うかのように他の同好会のメンバーやNLNS、ムーンカテドラルの皆が強く頷き返す。

それを見たランジュは、少しだけ溢れ出した涙を拭い、再び全員を見回し、こう言った。

 

「えぇ、必ずママ達の野望を食い止めるわよ!」

 

「――へぇ、誰が誰の野望を食い止める、ですって?」

 

「――ッ!?皆、下がって!!」

 

刹那。ガキィン、と何かがぶつかり合う音と共に此方に向かって強襲を仕掛けて来た影が一つ。その人物は・・・・・・。

 

「・・・・・・ママ」

 

「まさかここまで情に絆されているなんて。やっぱり、アナタもあの人の血を引くのね、ランジュ」

 

まさに噂をすれば何とやら。私達が目標(ターゲット)にしていた偽理事長・・・・・・ランジュの母親がその場に姿を現した。

 

「漸く姿を見せたわね、大人しく観念しとけってんだ!」

 

その場にいた誰よりも早く、ずっと私達の周辺で偵察をしてくれていた香さんがランジュ母に麻酔弾が装填された銃を向ける。だが、彼女はそれを一瞥したにも関わらず、余裕の笑みを見せた。

 

「その程度の脅しで、この私が怯むとでも?」

 

「はっ、アタシだって伊達にこの仕事長くやってるわけじゃねぇんだ、覚悟しな!」

 

「鐘家当主候補の元妻、鐘悠嵐(ヨウラン)。貴女の罪も此処までよ・・・・・・!」

 

「流石はムーンカテドラル、私の名前を既に知っているみたいで。でも、詰めが甘かったわね!」

 

ランジュ母、悠嵐の叫びに呼応するように。周囲からざっと数百名の委員会の手の者達が街中の物陰から姿を現した。その手には当然、実弾が装填された銃が握られている。

 

「しまった、増援・・・・・・!?」

 

「彼等だけじゃないわよ。今に貴女達の背後から、公園内に到着した支援部隊も追い付く筈」

「流れが変わったわ。反抗組織の貴女達だけじゃない、この場にいる全員、皆殺しよ!!」

 

背後を確認すると、悠嵐の言葉通り、先程まで私達が離脱して無人だった公園内にぞろぞろと人影が増えつつあった。不味い、このままじゃ囲まれる・・・・・・!

 

『ザザッ・・・・・・――せよ、応答せよ、生徒会諸君』

 

思わず焦燥に駆られそうになった、まさにその時。書記姉妹の持っていたトランシーバーから誰かの声が聞こえて来た。通信・・・・・・一体何処から?

 

「はい、此方生徒会書記の左月。用件をどうぞ、オーバー」

 

『あぁ、漸く繋がった。此方、虹ヶ咲特別支援部隊』

『お台場近海に乗り上げた沼津のスクールアイドルを名乗る者達から、支援を得たり』

『彼女達がもう直ぐ其方に到着するはずだ。私の部の大切な後輩、しずくを頼む』

 

「部長!?」

 

トランシーバー越しに聞こえて来たその声に、しずくちゃんが驚愕の声を上げる。何と、通信してきた人物の正体はしずくちゃんが同好会と掛け持ちで所属している演劇部の部長さんからだったのだ。更に、彼女の言うとおりであるならば。

 

「――これでも、喰らえぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

「「「「「ぐわぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」」」

 

「な、何事ッ・・・・・・!?」

 

理事長のすぐ傍に控えていた委員会の役人達が数名程、突如飛来した凄まじい速度で回転するサッカーボールに吹き飛ばされた。近いとは言い難いその距離から聞こえてきたその声に聞き覚えがあったようで、今度は侑が声を上げる。

 

「果南さん!!」

 

『やっほー、侑。この間ぶりだね』

 

侑の声に反応するように、トランシーバーから先程聞こえたらしき声が響き渡る。そして、それは彼女だけに留まらず。

 

「――超偶像転身(ハイパーエレメント・エヴォリューション)・・・・・・!」

 

「超謝罪案件だろ、これぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

一つの影が公園の方から此方側の空の彼方へ飛翔し、遥か上空から本来の威力と重力を掛け合わせて周辺の地面を叩き割る。再び、侑が反応する。

 

「千歌さん!!」

 

「私達の後輩を虐める奴は許さないぞ~全員纏めて掛かってこぉぉぉぉぉい!!」

 

「千歌ちゃんと果南ちゃん・・・・・・って事は、来てくれたんだね。Aqoursの皆が・・・・・・!」

 

果南と千歌。この二人の名前を聞き、穂乃果さんがあまりの嬉しさに声を弾ませる。

そして、よく見ると港近くに何処かで見たことがある様な白く巨大な船が停泊していた。

 

『視界良好、ヨシ!全弾装填、発射(フォイヤ)!!』

 

『響け旋律、その歌を力に変えて・・・・・・!』

 

『行くわよ!全員、地獄の業火に焼かれなさい・・・・・・!!』

 

『よぉし、マルもそろそろ本気だすずらぁ!』

 

『皆様、お覚悟を。黒澤の名の前に立ちはだかった事、後悔させて差し上げますわ!』

 

『ル、ルビィだって負けないんだからぁ・・・・・・!!』

 

『オハラグループに楯突くなんて、本当に愚かな人達デース!』

 

『自らの地位に溺れし愚民共め――贖罪の準備は出来たか、ならば疾く失せよ!』

 

『お嬢達は地上を頼む。俺達は空の敵を叩く!』

 

『今月はお給料がどんと弾みそうね。いいわ、やってやろうじゃんの!』

 

『あんだとぉ、老いぼれに見えるだぁ?ならその言葉、後悔させてやるぜ』

 

『お台場の全区域、ハッキングしましたー、わーいわーい!』

 

今度は生徒会のものではなく、千歌さんの腰にぶら下がったトランシーバーから様々な声が聞こえてくる。渡辺曜、桜内梨子、津島善子ヨハネ、国木田花丸、黒澤ダイヤ、黒澤ルビィ、小原鞠莉、ギルバート・司=ハウリィ。そして、スパイク、フェイ、ジェット、エドワード。

伝説の沼津のスクールアイドルAqoursと彼女達の護衛役であるスペースカウボーイ達が向こうで知り合った侑の為、このお台場に駆けつけてくれたのだ。

 

「おのれぇ・・・・・・今度はAqoursまでも・・・・・・ッ!?」

 

「追い詰めたつもりが逆に追い詰められたみたいね、ママ」

 

「くッ、高々小娘たちが数人増えた程度で、図に乗るなァッ!!」

 

「ユイ!」

 

「分かってるよ。その代わり、ちゃんと付いて来てよね、ランジュ」

 

悠嵐の繰り出した掌底をランジュはギリギリのところで回避し、背後に隠れていた私がその一撃を弾く。そのまま相手が体勢を崩したところにランジュの技が炸裂した。

 

「鐘家百八奥義・弐拾四の型、絶空拳!!」

 

「うぐっ!?」

 

先ずは腹部に一撃。だが、相手はまだ折れてはいない。

 

「これしきの負傷で・・・・・・ッ!」

 

「きゃあっ!?」

 

「ランジュ・・・・・・!?」

 

相手の素早い立ち回りに翻弄され、ランジュに軽い一撃が入る。次の一撃が来る前に私が先行してそれを受け止める。

 

「ほぅ、少々出来るようになったな、舘家の小娘・・・・・・!」

 

「そりゃあ、自分よりも不利な状況にある子が頑張ってんだから猶更――ねッ!」

 

相手の動きをよく見ろ、よく見た上で今までの経験を活かせば、ギリギリでもやり合える可能性はまだ・・・・・・ある!

 

「悠嵐様、援護を・・・・・・!」

 

「サスケ、お願い!」

 

『ガブッと行くぜ』

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

援護射撃をしようとした一人の足元に歩夢ちゃんが呼び寄せたサスケが飛び掛かり、齧り付く。

 

「くっ、何なのだ、あの蛇は――あがががががががががっ!?」

 

「ふふっ、油断大敵、よ?」

 

『果林さん・・・・・・やっぱり素敵!』

 

その光景に一瞬だけ気を取られた役人が果林さんのローター型ショックガンで気絶する。

 

「無駄な抵抗を・・・・・・ッ!!」

 

「りなりー、行くよ!」

 

『うん、愛さんも気を付けて』

 

『『『やっほー、璃奈(ちゃん)。私達もサポートするよー』』』

 

『浅希ちゃん、色葉ちゃん、今日子ちゃん・・・・・・!』

 

「おおっ、りなりーのクラスメイトちゃん達もいるの?よぉぉぉし、愛さん燃えて来たぁぁぁぁ!」

 

「「「うぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」

 

璃奈ちゃんと愛さんのコンビがファンの子達のサポートを受けて、一気に数名を吹き飛ばす。

 

「右月さん、左月さん、援護お願いします・・・・・・!」

 

「「ええ、やりましょう、副会長!」」

 

「うがぁぁぁぁぁぁ!?」

 

『おーっす、栞子。2時方向に敵来てるぞー、頑張りなー』

 

「姉さん!?」

 

栞子ちゃんが書記姉妹と通信で割って入ってきた姉の薫子さんの援護を受けながら奮闘する。

 

「しずくスカイブルーハリケーン!!」

 

「ば、馬鹿なァッ・・・・・・!?」

 

『いいねぇ、役者魂にさらに磨きがかかってきたよ、しずく』

 

『じゃ、次は前に教え込んだアレ、いってみようか!』

 

「はい、行きます・・・・・・!」

 

「な、何だ、何をする気だ・・・・・・!?」

 

「せつ菜さん、かすみさん!」

 

「はい、一緒に戦いましょう、しずくさん!」

 

「ったくもー、しょうがないなぁ、しず子は」

 

「「「ミストルティンキーーーーーーーーーック!!」」」

 

「「「「「それ、キックじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」」」」

 

しずくちゃんが部長さんの指示を受けながら、せつ菜ちゃんやかすみちゃんと共闘する。

 

「くっ、突撃、突撃ーィ!!」

 

「ほらほら、お兄さん達、頑張り過ぎは良くないよ。彼方ちゃんと、( ˘ω˘)スヤァしようぜ?」

 

「「「( ˘ω˘)スヤァ」」」

 

『わ、本当に寝ちゃった・・・・・・流石お姉ちゃん!』

 

「ふっふっふ~、遥ちゃんのサポートがあれば彼方ちゃんのステータスは10倍になるのだぜぇ」

 

彼方さんが指揮をしていた隊長クラスの役人達を、一瞬にして眠りの淵に墜とす。

 

「はいはーい、マイナスイオン放出~」

 

「な、何をす――ばぶぅぅぅ、ママー!」

 

「はーい、エママだよぉ。よしよーし」

 

「「「ばぶぅぅぅ、ママー!全員がおぎゃれる様に均等に甘やかしてほしいでちゅー!!」」」

 

エマさんは纏ったマイナスイオンを放出する事で、数名を幼児退化させ。

 

「よ、よし、皆が頑張ってるなら私だって!おりゃあぁぁぁぁぁぁ!」

 

『ポコッ』

 

「あんじゃ、おどれぇぇぇぇ!?」

 

「ひぃぃぃぃぃっ、やっぱり無理だったぁぁぁぁ!?」

 

「待てや、コラ――あぁぁぁぁぁぁん!?」

 

「やれやれ、困った名誉部長さんだ。ここはボクに任せなよ」

 

皆の雄姿を見て自分も頑張ろうとした侑が、間一髪の所でミアちゃんに助けられて。

 

「淳、今よ!」

 

「任せろ、孕めオラァァァァァァァ!!」

 

「オラオラァ、自転車でも一応人を撥ねる位は出来るんですよぉぉぉぉぉっ!!」

 

「周囲索敵、後方6時の方角に敵を補足。射撃用意3・2・1、『パァン!』次弾装填」

 

「うおぉぉぉぉぉぉ、ヒナミ式大回転ガードォォォォ!!」

 

「へっ、非戦闘員だからって戦えないとで思ったかよ。逝けよ、やぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

「「「「「「「んほぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」」」」」」」

 

NLNSの皆がそれぞれの持ち場に立ち、様々な道具を使って、襲い来る敵を薙ぎ倒していく。

 

「おのれぇ、次から次へと・・・・・・!北方部隊を呼び戻せ、今すぐに!」

 

「は、はい!此方お台場本支部、北方部隊、応答せよ!」

 

『――はい、北方部隊です。如何なされましたか?』

 

「此方、多数の敵勢力出現により大いに不利!至急、援護を!」

 

『残念ながら、それは応じる事が出来兼ねませんね』

 

「な、何故――ごはっ!?」

 

「――連絡基地の敵勢力、全滅確認。ミッション完了したよ、姉様」

 

『はい、お疲れさまでした。理亞』

 

「全く・・・・・・何で私だけ態々お台場になんていかなきゃならなかったのよ」

 

公園内にて他地域に派遣していた更なる増援を呼び戻す算段が敵側でとられたが、突如そこへ乱入してきた函館のスクールアイドルSainto Snowの鹿角理亞の活躍によって援護要請が叶わぬこととなった。

まぁ、これは後に聞いた話だが、もし仮に理亞がここに来なくとも、既に鹿角聖良と東北のスクールアイドル達によって委員会の北方部隊は全滅していた為、同じ事であったとされる。

 

「ぐぅぅ、嘘よ・・・・・・!まさかここまで来て、こんな小娘共にこの私が負けるなんて・・・・・・!」

 

そして、場面は戻り、私とランジュの戦い。これまで悠嵐は私とランジュの必死の攻防によって既に体力が限界へと近づいてきた様だった。無論、私とランジュもそこまで余裕がある訳ではないのだが。それでも、決着の時は訪れようとしていた。

 

「もう止めよう、ママ。ママは李芳に都合よく利用されてるだけなのよ・・・・・・!」

 

「ふざ、けるな・・・・・・あの男を利用しているのはこの私だァァァァァァァァ!!」

 

「(もう重心が安定してない・・・・・・ママも、ここら辺が限界って訳ね)」

「ユイ、アタシに呼吸を合わせて!」

 

「無茶言ってくれるなぁ・・・・・・しょうがない、行くよ」

 

フラフラになりつつある悠嵐。しかし、彼女は未だ執念をその目に宿らせてギラギラとしていた。

権力と言う名の悪魔に取りつかれた哀れな母親。せめてもの情けだ、此処できっちり終わらせる!

 

「そこだァァァァァ!!」

 

「――幾重にも辛酸を舐め」

 

「ふっ・・・・・・!」

 

「な、何・・・・・・ッ!?」

 

「――七難八苦を越え」

 

「舘家奥義伍の型、掌破絶海断!」

 

「・・・・・・がはァ!?」

 

「――艱難辛苦の果て」

 

「鐘家百八奥義・六十九の――」

 

「「――満願成就に至る」」

 

ランジュと共に精神統一の詠唱を唱え終わり、悠嵐へトドメの一撃を・・・・・・!

 

「「宗家複合秘伝最終奥義・・・・・・烈火天響拳・珠結(たまむすび)!!」」

 

「そん、な――私の、私の野望、が、こんな、ところで・・・・・・」

 

私とランジュの重ねた思いが紋章を通して光り輝く巨大な拳に具現化し、悠嵐をコンクリートの壁へ勢いよく叩きつける。瓦礫が散乱し土煙が舞う中、彼女はゆっくりと此方へ近づいてきたが、やがて力尽きるように地面へと倒れ伏した。

 

「はぁ、はぁ・・・・・・勝った、の・・・・・・?」

 

「多分、ね。ふぅ・・・・・・終わったんだ、これで」

 

気を失ったらしい悠嵐の姿を見て、私とランジュもそのまま地面に横たわる。残り体力の限界ギリギリではあったが、如何やら無事に戦いを終わらせることが出来たようだ。

 

「「「「「「「「「「「「やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」」」」」」」」」」

 

直ぐ近くでは、同好会の皆の歓喜の声が響き渡っていた。

 

「でも、まだ委員会の土井が・・・・・・残ってる、わよ。ユイ」

 

「ははは、今すぐ向かうのは流石にしんどいかも・・・・・・」

 

全員が全員、全力を尽くして戦った為、私達は少しばかりその場で休憩を挟むことに。しかし、皆が揃って休憩に入った次の瞬間。

 

『――ドガァァァァァァァァン!!』

 

あまり遠くにではない場所で、爆発音が鳴り響いた。次第に各メンバー達がその爆発した方角を見てあたふたし始める。

 

「きゃあっ、ば、爆発!?」

 

「い、一体何処から・・・・・・!?」

 

「皆さん、あそこです!アレを見てください・・・・・・!」

 

せつ菜ちゃんの叫び声に呼応して、皆が視線を指さした方向に向ける。すると、その先にいたのは監視委員会の土井が待ち受けているとされる東京DIVERCITY。その広場にお台場を見守るように立っていたユニコーンガンダムが先程爆発した方向にライフルを向けている光景だった。

 

「嘘、何でユニコーンガンダムが・・・・・・!?」

 

『ふはははははっ、やったぞ!遂に!私は、ユニコーンガンダムを手に入れたァ!!』

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ユニコーンガンダム

  機械型    ウィルス種    究極体(?)  
      

『機動戦士ガンダムUC』で主人公バナージ・リンクスの搭乗する機体として描かれたガンダムだ。

お台場にあるユニコーンガンダムは等身大なだけで完全な立像でしかないが、

今回は委員会の土井が奇跡の力を逆利用してハッキングし、土井の憎悪によって生まれた邪悪なシステム、SID(スクールアイドルデストロイ)によって強制的に暴走させられている様だ。

使用する武器は、どれも生身の人間が受けるにはあまりにも危険すぎる代物。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

愛のふと呟いた疑問に、答えるような形で土井が周辺のスピーカーをジャックして返答をする。ユニコーンガンダムを手に入れた、だって!?それはどういう・・・・・・!?

 

『行くぞ、SIDシステム、発動!』

 

土井の掛け声と共に、ユニコーンガンダムの装甲が開き、中から赤色に光るサイコフレームが辺りをギラギラと照らし始める。そして、ユニコーンガンダムは方向転換をし、私達のいる方角を向いた。まさか、こっちを攻撃してくるつもりか・・・・・・!?

 

『さぁ、貴様の手で嘗て守り通したモノを、すべてを破壊しろォ!!』

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

Side:侑

 

「あれ、あの光の柱・・・・・・なんだろう?」

 

皆が迫りくるユニコーンガンダムに戦慄している中、私の視界にふと飛び込んできたのはさっきまではなかったはずの遥か上の空の彼方まで伸びる不思議な光の柱。

その柱は、私以外にも誰かが気付けそうなくらい近くにあったが、誰も反応を示さない。如何やら、皆には見えていないみたいだ。でも、何で私だけ・・・・・・?

 

「(もしかして、あのお爺ちゃん先生の秘策があそこにある、とか・・・・・・?)」

 

そうでなくてもこのタイミングで私にだけ見える形で現れたということは、皆をこの状況から救うヒントがあそこに少なからずあるかもしれないと言う事。だったら、私は。

 

「歩夢、歩夢」

 

「ゆ、侑ちゃん、どうしたの・・・・・・?」

 

「ちょっと私、向こうの方に行ってくるね」

 

「えぇ!?だって今こんな状況なんだよ、逃げ遅れちゃうよ!?」

 

「歩夢は心配性だなぁ。大丈夫、大丈夫、直ぐ行って見てきて戻ってくるだけだから」

 

不安げに私を見つめる歩夢に、いつものようにへらへらとした笑みで手を振ると、私はそこに向かって駆けだしていた。

 

「あ、何か落ちてる」

 

光の柱のすぐ近くまで差し掛かった時、その中心部に何かが落ちている事に気が付く。急いで拾い上げると、それは見たこともない黒い色をした携帯機器の様だった。

 

「待てよ、でも、何か見覚えがあるな。これって確か・・・・・・」

 

見つめていると何か自分の中で引っ掛かりを覚えて、私は自分の記憶を順を追って辿り始める。と言ってもあまり記憶力はよろしく無い方なので、非常に断片的ではあるけれど。

 

『おとーさん、これ、なんていうげーむ?』

 

すると、とある記憶の断片に辿り着いた。あぁ、これは確かまだ幼稚園に入って間もない頃の話だ。

 

『これかい?これは父さん達が高校生だった頃に流行ったアニメのグッズでね』

 

『――デジタルデヴァイス、通称デジヴァイスって言うのさ』

 

『でじ、う゛ぁいす?』

 

父さんがその時持っていたのは、水色をした精巧なデザインのモノ。やっぱり、色は違えど形は見れば見るほどそっくりだ。でも、何でこんなところに?

 

「誰かが落としていったのかな・・・・・・?」

 

♪Bolero♪

 

疑問に思っていると、不意に私の携帯の着信音が鳴り始める。

 

「んん?こんな着信音、設定してたっけ?」

 

もしかして、何処かで間違えて操作してたかな、と思い、届いたメールを確認する。そこには。

 

『ハシラノナカニハイッテ』

 

「な、何これ・・・・・・何処の言語?」

 

よく歴史の教科書で出てくる古代文明の古代文字の様な羅列が一言(?)だけ添えられていた。

 

「駄目だ・・・・・・全然分かんないや」

 

考えども考えども、私の中で解読できる問題ではなくて。散々試行錯誤した挙句。

 

「よし、せつ菜ちゃんに聞いてみよう」

 

私達の同好会で成績が飛びぬけていいのはせつ菜ちゃんと愛ちゃんだ。もしかしたら、この文字の羅列も解読できるかもしれない。そう思って、再び皆の所へ戻ろうとすると。

 

「――死ねェ、高咲侑!!」

 

『パァン!』

 

「え――」

 

私の直ぐ近くで、突然発砲音が鳴り響き。頭がグラッと揺れたかと思うと。

 

 

 

 

 

 

――私の意識は、そこで途切れた。

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。