アニガサキ!-PASTEL COLLARS- 外伝 Episode of ランジュ   作:海色 桜斗

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はい、此方を選んだ人TRUE ENDです、おめでとうございます。


時間も予告時間を大分過ぎたんで、簡易的にまとめます。

読者の皆々様、今までご愛読ありがとうございました!作者のうざったい程のスクスタへの鬱憤返しもこれにて終了です。

次回作に乞うご期待!それでは!


EpilogueB「ずっと一緒に……」

――チュン、チュン

 

「Zzz・・・・・・」

 

朝が来た。でも、まだ眠い。だから、おやすみ。

 

「ねぇ――ってば」

 

誰かの声が聞こえる。あれ、昨日誰か内に泊めてたっけ?記憶がない、誰だろう。

 

「ねぇ――もう朝よ――ってば!」

 

もしかして、このしつこさは母さんか?ああ、もう・・・・・・お母さん五月蠅い。

 

「んもぉぉぉっ、ユイ、いい加減起きなさい!」

 

『ガーン、ガーン、ガーン!!』

 

「――いいや、それは死者の目覚めェ!?」

 

フライパンとお玉を叩き合わせて鳴らすという何とも近所迷惑な行為を意図も容易くやってのけるその人物に対し、私は起き抜けに某芸人の突っ込み風に声を上げる。

 

徐々に視界の焦点が合わさり、目の前にいる人物の顔が段々とはっきり見えて来た。その人物とは。

 

「あ、漸く目が覚めた。もう直ぐ朝食出来るから、パパっと食べて学校に行きましょ?」

 

「えっ、は?あ、あの・・・・・・何でランジュさんが我が家に?」

 

見間違えるはずもない。それはあのランジュ、鐘嵐珠本人だったのだ。

 

「むっ・・・・・・それ言われるの昨日に引き続き2回目なんですケド。流石に酷いと思うわ」

 

「といっても心当たりが全く・・・・・・いや、あったな」

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

――それは本当に唐突に訪れた。

ランジュを認める事にした私は、彼女を引き連れそのまま同好会の部室へ連れて行き、同好会の皆から許可をもらってランジュとミアちゃんを正式に同好会の仲間入りさせることに成功。その放課後の帰り道での事。

 

『・・・・・・!ね、ユイ、電話なってるわよ、誰から?』

 

『あ、ホントだ・・・・・・って爺さんからか、何だろ?』

 

珍しい事に滅多に連絡などしてこない爺さんから連絡があり、私は直ぐに携帯を手に取った。

 

『あぁ、もしもし。結子か?』

 

『ん、そうだけど。爺さんの方から電話なんて珍しいね』

 

『偶には孫娘と話すのも悪くないと思ってな、それとちょっとした老いぼれの頼み事じゃ』

 

しかも頼み事も込みで来た、か。その要件とは何か、私が訊ねたところ。

 

『ほれ、お前さんがつい最近知り合った・・・・・・ランジュちゃんだったかの?』

 

『・・・・・・うん?まぁ、そうだけど』

 

『以前お主からのメール報告で書かれていた「鐘家」という単語が気になってな、少し調べてみたんだが』

 

うん、確かに送った。あの『お台場動乱事件』集結の翌日。爺さんに此処に来てから起こった事の簡易報告書みたいなものをメールで送信した覚えはある。何だろ、因縁の関係的な?

電話の向こうから何やらゴソゴソとその時に書留したメモ帳を探す音が響く。暫らくその音が続いたかと思うと、音が止み此方に向かって歩いてくる足音が聞こえて。

 

『・・・・・・すまん、待たせた。それで鐘家についてなんだがな』

 

『うん』

 

『いやぁ、長生きしていればこんな偶然もあるんじゃな。お前さんは知らんかったかもしれんが、実はな――』

 

え、何その溜め方、怖い。

 

『我等舘家と鐘家は、凡そ100年ほど前まで本家とその分家の関係だったんじゃ』

 

『はい???』

 

爺さんから聞いた衝撃の事実。えっ、っていう事はなに?私とランジュって従兄妹みたいな関係にあるって事?え、は、何ですと?

 

『その交流こそ今は途絶えてはおるが・・・・・・鐘家の現当主様が何やら凄腕の持ち主と聞いてな』

 

それは、うん。十中八九ランジュのお父さんの事だね。

 

『儂らも、遥か遠く次の世代に流派を残してく為、彼との間に提携を結ぶことにしたんじゃ』

 

『へ?』

 

『要するにアレじゃ、再び鐘家と舘家間で関係をやり直そうという話じゃ』

 

『ええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?』

 

あ、ヤバい、何か本格的にめんどくさい案件が回って来そうな気がしてきた。何で、今諸々のアレで崩壊寸前の一族と同盟結ぶ気になったな爺さん、一族掃討も夢じゃないよ!?

 

『・・・・・・?どしたの、ユイ。そんなに大声上げて』

 

『いいから、ランジュは少しだま――』

 

『む、今鐘家のお嬢さんと一緒におるのか?』

 

『――え、えっとぉ・・・・・・』

 

『どうなんじゃ、正直に答えよ、結子』

 

『まぁ・・・・・・はい』

 

隠し通せるわけないじゃない、多分今の声バッチリ向こうに聞こえちゃったんだからさぁ!全く、何でランジュってこんなに声量あるんだよ・・・・・・スクールアイドルだからか、畜生!

 

『お嬢さんと話がしたい。代わってもらっても構わぬか?』

 

『分かったよ・・・・・・はい、ランジュ。ウチの爺さんが話したいんだって』

 

『ユイのお爺さんが、アタシに?うん、分かったわ』

『もしもし・・・・・・はい、初めまして。鐘嵐珠です』

 

ランジュに携帯を渡して、私は近くの壁に寄りかかる。あぁ、こういう時が一番不安だ。自分には聞き及ばないところで何か重大な話が進められてるかも知れないとなると尚更だ。

 

これはもう、ランジュのリアクションを見てその都度介入するしか・・・・・・!

 

『えっ、はい。はい、それはアタシのパパ、のことですよね?』

『はい・・・・・・えっ、ええっ!?』

 

ほら見た事か。来ちゃったな、あのランジュが驚く様な余程の案件がさぁ!私はランジュから勢いよく携帯をもぎ取り、携帯を耳に当てる。すると。

 

『ちょっ、ユイ!?』

 

『やれやれ・・・・・・もう少し待てんのか、お主は。まぁ、良い』

『鐘家のお嬢さんとの話し合いが丁度終わって、お主に変わろうとしてたところじゃ』

 

『・・・・・・はい』

 

あ、しまった。すでに手遅れだった。

 

『儂らの交流の先駆けとして、先ずは身近な次の世代の代表同士のお主らに協力してもらいたい』

 

『今の鐘家は厳しい状況にある。日本に唯一あるお台場の別荘も、もしかすればなくなってしまうやもしれん』

 

『そこでじゃ。お主に今明け渡している儂が前に住んどった家があるじゃろう。そこに、鐘家のお嬢さんを一緒に住まわせてやって欲しい』

 

『あー・・・・・・そう来ましたかー』

 

ある意味で予想外、しかしてある意味では想定内。その事実に呆然と立ち尽くす私に、爺さんは無情にも最後の一押しを畳みかけて来た。

 

『無論、お前さんの意思もちゃんと聞いた上で話を動かそうと思っとったよ』

 

『え、ホント!じゃあ私的にはさ・・・・・・!』

 

『ふむ、ところで結子よ。お主の今住んでる家の家主登録は誰の名前になっとったかのぉ?』

 

『あー・・・・・・はい、分かりました。ダイジョウブデス』

 

『うむ、それではお嬢さんの事、よろしく頼んだぞ』

 

そう言って、爺さんはこれ以上何も言わせまいという意思をもう一度伝えるかのように勢いよく電話を切ったのだった。成程、爺さんの家を借りてる時点で最初から私に拒否権はなかったんですね。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

・・・・・・多少ざっくりとなってしまったが。これが、我が家にランジュがいる理由なのであった。

そして、お台場に会った鐘家の別荘は予想通り取り潰しが決定し、そこから必要な荷物のみを持ってきたランジュが此処に居候を始めたと。つまりはそういう事だ。

 

「思い出した?」

 

「まぁ・・・・・・はい」

 

「ん、よろしい。じゃ、すぐ顔洗ってお皿用意してて」

 

「はーい・・・・・・」

 

こうなってしまったのなら、もうなるようにしかなならないか。人生時に諦めも肝心って誰かが言ってたしなぁ。あーあ、何かの手違いで絶大な権力が手に入らないカナー。

 

「――ん、それじゃあ」

 

「「いただきます」」

 

居間にある中くらいのテーブルにランジュと向かい合うようにして座って、朝食をかっ食らう。

 

最初ウチに来た時に彼女に作らせたらまぁ、作るもの全部不味い事不味い事。目を離した瞬間一瞬でゲテモノ料理が出来上がる。そんな実力程度しかなかったというのに。今や私が料理を作っている時に勉強したあれこれを駆使して、味が問題ないくらいには成長した。学んで実技でやって直ぐ習得できる彼女はこれだから怖い。

 

「どう、最初と比べて上手くなったんじゃないかしら、アタシ?」

 

「ん、そうだね。十分美味しいと思うよ」

 

「ホント、やったぁ!?」

 

頭の上のアホ毛をピョコピョコさせて、喜びを噛み締めているランジュ。現金な性格してるなぁ、と私が心の中でボヤいていると、ランジュが目を爛々と輝かせながら此方に期待の眼差しを向けていることに気付く。なんだろう、小動物かな?

 

「あー、いつものね。分かった、分かった」

 

ランジュが私にこういう目を向けている時は大体どうすればいいのか。それはもう嫌と言う程理解させられた。だから私は。

 

「よしよーし」

 

「♪」

 

こんな感じに、彼女の頭をよしよししてあげるのだ。

 

爺さんから電話が来て、一緒に暮らすことになる前は何か遠慮しているような素振りが見られたので私に対して何を躊躇っているのだろうと思ったら。まさかこんな事だとは。

 

「(ま、それもこれも全部)」

「(あのクソ理事長のせいだと思っとけばいいか)」

 

そのクソ理事長ことランジュのお母様の鐘悠嵐は、開かれた裁判の結果、最高裁で有罪判決が決定した。禁固刑三十年だそうだ、当分脱獄でもしない限り、厳重な警備の敷かれた臭い飯が出ると噂のブタ箱からは出てこないだろう。出来れば、そのまま牢獄の中でおっ死んでしまえばいい。素直にそう思った。

 

「よし、ご馳走様!そろそろ行くわよ、ユイ!」

 

「ほいほーい」

 

何時ものことながら食べ終わるのが早いなぁとは思いつつも、何だかんだピリピリしていた頃に見られなかった彼女の酷く純粋な笑みに、今ではすっかり乗せられてしまっている自分が憎い。

 

「ユイ、早く行かないと遅刻するわよ」

 

「いやいや、まだそんな時間じゃないでしょうに」

 

「いいから!はーやーくー!」

 

「はいはい、さっさと着替えますよーっと」

 

まだ登校時間にはちょっとだけ早い時間帯。だというのに彼女は何をそんなに行き急ぐのだろうか。まぁ、理由は大体早く同好会の皆に会いたいとかそういう事なんだろうけど。

 

「――さぁ、出発よ!」

 

「ふわぁぁぁぁぁ、眠・・・・・・」

 

「ちょっとぉ、しゃっきりしなさい!」

 

家の玄関に鍵をかけて、振り向きざまにランジュに顔をパンパンと叩かれる。うん、子供っぽいけど時折お姉さんじみた行動してくるからなぁ。これ以上絆されないように気を付けないと。

 

「普通に痛いよ」

 

「あ、ご、ごめん・・・・・・」

 

で、こんな風に私がガチのトーンで怒るとこの通りしゅんとしてしまう。幾ら何でも私一人の存在だけで情緒が不安定すぎやしないかい?

 

「学校、行くんでしょ。ほら、歩いた歩いた」

 

「もーぅ、それはアタシの台詞よ、ユイ~」

 

「分かったから機嫌直してねー、別にそれしきで嫌いにはならないから、普通」

 

「そ、そっか、えへへぇ」

 

あーもう、本当にめんどくさいな。これだからお嬢様の世話係なんてやりたくなかったんだ。

うん、実際にこうでも言ったらランジュが確実に泣き出すし、爺さんに何されるか分からないから言わないでおくんだけどさ・・・・・・。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「♪ンフフ、フフフーフフフフフーン、フフフフーン、フーンフフフフ♪」

 

「・・・・・・」

 

駅のホームにて。何処かで聞いたことがある曲を鼻歌で歌っているランジュ。当然、彼女の透き通ったような声に駅にいる人の何人かが此方を凝視している。うわぁ、やりづら。

 

「♪フンフフフフフーン、フンフンフーフフ、フフフフーンフフーン♪」

 

「ね、それ何の曲?」

 

「♪フフフンフンフ――えっ、ユイ知らないの?」

 

「ちょっと思い出さないだけ。何て言う曲名だっけ?」

 

「音楽の授業で一度くらいは聞いたことあるんじゃない?『Believe』よ」

 

あぁー、思い出した。そっか、通りで聞き覚えあるなと思ったら学校の音楽の授業でしつこい程出てくる楽曲じゃん。しかし、何でまた?

 

「いいわよね、この曲。昨日ミアに教えてもらったんだけど、凄くアタシ好みだわ」

 

あー成程。ミアちゃん発祥か、それなら頷ける。ランジュが自主的に聞くとは思えないからねー。

 

「ね、ユイ」

 

「何さ、突然。藪から棒に」

 

「スクールアイドル部もなくなって、元あった家もなくなって。ここから先の未来、アタシは本当にいつも通りのアタシで生きていけるのかなって不安だったけど・・・・・・」

 

「うん」

 

「でも、今同好会の皆と一緒に同好会に入れて。ミアもシオも一緒で」

 

「そんな毎日だから、アタシ、昔よりずっと楽しいわ・・・・・・!」

 

「・・・・・・そっか」

 

ランジュが飛び切りの笑顔を私に向けてそう口にする。

ランジュとしては一刻も早く十年ぶりに父親と再会したかったのだろうが、彼女はそれに対して。

 

『パパには、電話で何時でも話せるわ。それよりアタシは、皆に罪滅ぼしと恩返しがしたいの!』

 

そんな決意みたいなものを語って、彼女は只管前に行く。例えこれから何があろうともこのお嬢様はそう簡単に挫けはしないだろう。そして、何度でも足掻き努力するはずだ。

 

『キミが結子くん、か。暫らくの間、娘をよろしく頼むよ。彼女は、私の生きる希望だからね』

 

ランジュの父親とも一度電話で対談したが、優しい声のいい御仁であることが分かった。きっとあの鐘悠嵐のように娘を道具としか思わない扱い方をしない、人として出来ている人なのだろう。そんな聡明な心を持った人に言われてしまったなら、私は。

 

「ねぇ、ランジュ」

 

「ん、なぁに、ユイ?」

 

「ランジュが思ってるよりスクールアイドルの道は厳しいかもよ、覚悟はできてる?」

 

彼女も虹ヶ咲の皆も。守り通すしかないだろう、護衛役の名に懸けて。

 

「ふふっ、そんなコト、このランジュには愚問よ!」

 

 

 

そう言って、彼女は駅のホームの広くなっている所まで駆けて行って、振り返りざまに。

 

 

 

 

 

「――無問題ラ!!」

 

 

 

 

 

 

――目に映る者全てを魅了する、晴れやかな笑顔で笑って見せたのだった。

 

 

 

 

 

 

アニガサキ!-PASTEL COLLARS-外伝 Episode of ランジュ TRUE END

 

 

 




最後に……

ランジュにこのセリフを今まで言わせなかったのはこの為さ、あばよ!!

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