アニガサキ!-PASTEL COLLARS- 外伝 Episode of ランジュ   作:海色 桜斗

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ちょっとサブタイトルに因んでやってみたいことが出来た。満足、満足。
さぁて、今回も変更点色々述べちゃうよ。

スクスタ及びアニガサキ設定の変更点まとめ・その②

・栞子の所属学科
スクスタ内では何故か設定されていない。故に、私は彼女をエマ・しずくと同様の国際交流科に所属しているものと仮定。動機については幼馴染みで大親友のランジュの姿を今も少し何処かで追っていた……みたいな感じでいいんじゃないかな(いいねと思って下さるのなら、お好きにこの設定を使っていただいて構いませんよ)。

・ランジュの栞子への呼び方
折角幼馴染みで大親友なんだからさ、もっとあだ名とかで呼びあうとかでもいいと思うんだよね。というわけでランジュは栞子の事を「シオ」と。栞子は回想でのみランジュを「ランちゃん」と呼ばせています。

最後に、エマさんお誕生日おめでとう‼


1-3「ランジュ、襲来」

アニガサキSS劇場②「エマ、ハッピーバースデー」

 

侑「エマさん!」

 

全員「「「「「「「「「「「お誕生日、おめでとーう!!」」」」」」」」」」」

 

エ「うわぁぁぁぁ、ありがとう皆!」

 

果「今年も無事にこの日を迎えられて嬉しいわ。ところで・・・・・・」

 

エ「どうしたの、果林ちゃん?」

 

果「何で本編で外国にいるはずの侑がまだ此処にいるのかしら?」

 

侑「酷いなぁ、果林さん。当然いるに決まってるよ、大事なメンバーの誕生日だし」

 

エ「侑ちゃん・・・・・・!」

 

侑「それにね」

 

エ「それに・・・・・・?」

 

侑「SSの時空は常に歪んでるから、本編の内容を気にせず色々出来る仕様なんだって!」

 

エ「わぁ~良く分からないけど凄いねぇ」

 

果「何がとは言わないけど色々メタいのね、この空間・・・・・・(私のさっきの発言もだけど)」

 

彼「うむ、彼方ちゃんは完全に理解した。此処では突っ込んではならぬと」

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

Side:三船 栞子

 

 

――少し、昔の夢を見た。

 

『ほら、シオー、こっちこっち♪』

 

『ま、まってよー、ランちゃーん・・・・・・!』

 

私がまだ幼い時の話。この当時、今とは別の理由で友達がそんなに多くなかった時、周りの人達から優等生過ぎてつまらないとまで言われた私を毎日遊びに誘ってくれる子がいた。名前は鐘嵐珠。台湾の大きな豪邸に住む、私より一つ上の女の子だった。

 

『いっちばーん!もぅ、シオったらはりあいがないわねぇ』

 

『ランちゃんがはやすぎるだけだよぉ・・・・・・』

 

『そうかしら?わたしにとってはぜんぜんふつうよ、ふつう♪』

 

その時の私は全然体力もなくて。彼女といつも競争はしてみれど、勝つのは必ず彼女だった。それもそのはず。彼女は何かを学ぶ度にその何かを平均以上の数値で上回って見せた。努力とかそういうものではない、何故なら彼女のその才能は生まれ持ったものなのだから。

 

『シオももうすこしがんばれば、わたしみたいになれるわ。きっとまちがいないわよ!』

 

『ぐすっ・・・・・・ほんとう?』

 

『このわたしがいうのよ、ぜったいなれるわ!』

 

『・・・・・・そう、かな?なら、わたしつよくなる。つよくなってランちゃんといっしょにはしりたい!』

 

『わかった!じゃあやくそくね!』

 

『うん、やくそく・・・・・・!』

 

彼女と指切りをしたその瞬間、突然その映像はぷつりと消えて。

 

「――あ」

 

目が覚める。辺りを見渡すと、私の居るそこは生徒会室のソファの上で。ソファの近くのテーブルの上には承認・非承認の判が押された大量の書類の束。あぁ、そうか。私はこの書類を大方処理し終えて少し横になったら、そのままうたた寝してしまったんだ。

 

「んっ、んーっ・・・・・・!」

 

いつの間にか私の体の上に掛けられていた毛布をソファの端に寄せて、その場で起き上がって背伸びをする。時刻はまだ起きていた時からそんなに経ってはいない。今日の日程が特別授業の為に午前中で学校が終わり、そのまま生徒会室で・・・・・・あぁ、そうでした。結子さんと面談していたのでした。それで同好会の方には業務が終わり次第向かうと・・・・・・あれ、終わり次第?

 

「あっ、いけない!私としたことが同好会を・・・・・・!」

 

まだちょっとボーッとしていた頭が一気に覚めて、私は自分の鞄を手に急いで生徒会室を飛び出す。同じ部屋に生徒会長の菜々・・・・・・せつ菜さんがいた事で少し油断してしまった。部活動開始の時間から30分くらいは既に経過している。皆さん、既に私の到着に待ちくたびれて、練習を始めちゃっている頃でしょうか。あぁ、申し訳なさ過ぎて凄く顔合わせし辛い。

 

「あぁ、けれど」

 

「・・・・・・さっきの夢は本当に懐かしいものでした」

 

遠い記憶、懐かしき声。彼女・・・・・・嵐珠は今頃何をしているのでしょうか、元気だといいのですが。

 

『ピーンポーンパーンポーン』

 

『国際交流科1年、三船栞子さん。理事長がお呼びです。至急、理事長室までお越し下さい』

 

 

Side END

 

 

場面は戻り、部室棟1F『帰宅管理部』部室内――

 

「あれっ、りなりーじゃん!こんなところでどったの?」

 

「私?私はただアサネちゃんのお手伝いをしてるだけ」

 

彼女を象徴するべき小道具の「璃奈ちゃんボード」を片手に此方をチラリと覗き見る璃奈。そんな彼女の後ろに立っていたアサネ、と呼ばれた少女が何やら突然あわあわし出していた。

 

「あ、ああああこがれのあいしゃんとななしぇさんのツーショットがみれるというインターネッツはここですかほわぁぁぁ本当にいるああああ幸せ幸せすぎて死んじゃう死ぬ死ぬとき死ねば死んだ・・・・・・」

 

死んだ。というよりも現在進行形で何が起こっているんだかよく分かっていない結子達の前で、彼女がいきなり鼻血を出して倒れただけだが。

 

「何だアサちーのお手伝いかー、ってあれ?アサちーどうしたの?」

 

「・・・・・・気にしないでくれ、ウチの妹はこういう病気なんだ」

 

頭に?マークを浮かべる愛に先程のガタイのいい眼鏡男が困った顔しながら話しかけてきた。

 

「自己紹介が遅れたな。俺は淳之介、橘淳之介だ。で、さっきのは妹の麻沙音」

 

「渡会ヒナミだよ!こう見えても一応おねーさんなんだぞ!」

 

「は、初めまして・・・・・・畔美岬です」

 

「琴寄文乃、と申します。以後、お見知りおきを、皆様」

 

その場にいた『帰宅管理部』の4人が一斉に名乗りを上げる。それに続くように結子達同好会一行も自己紹介をする(紹介シーンは敢えて割愛)。パッと見4人とも奈々瀬と同じく特に何の変哲もない普通の学生のように思えた。

 

「成程ね~・・・・・・じゃあ、君はじゅんじゅん!」

 

「じゅ、じゅんじゅん・・・・・・?」

 

「そっちの小っちゃい子はヒナミん!」

 

「小っちゃい子じゃありませんけど!」

 

「その子は~ミサミサ!」

 

「わっ、何か凄く良いあだ名をつけてもらえました、ギャルパワー凄っ!?」

 

「最後にそこの和服の子が~・・・・・・・ふみのん!」

 

「良いあだ名を頂きました、ぬっへっへ・・・・・・!」

 

そして、自己紹介が終わるや否や愛が一人一人にあだ名をつけ始める。いきなり呼ばれた面々は初めて呼ばれるようなあだ名だけに少し戸惑いを見せる者、突っ込みを入れる者、ギャルパワーに驚く者、結構満足している者とそれぞれであった。

 

「それで、璃奈ちゃんは結局ここで何のお手伝いをしてたの?」

 

「えっと・・・・・・アサネちゃん、話してもいい、かな?」

 

今度はエマが璃奈に質問を投げかけると、璃奈はちょっと困り顔をして、気絶状態から復帰した麻沙音の方を見やる・・・・・・が。

 

「や、駄目だね。今は取り敢えず企業秘密って事で」

 

「だって。ごめんね、エマさん」

 

「ううん、話したくないならいいの。企業秘密は大事だよね、うん!」

 

「まぁ・・・・・・そう時間経たない内にお披露目する事になるかもだけどさ」

 

「???」

 

二人から詳しく明かせない旨を受けたエマは、自身に謝罪する璃奈を慰め、自分にも言い聞かせるようにそう言った。しかし、最後に麻沙音が呟いた意味深な呟きまでは何であったのか察することが出来ないエマであった。

 

「あれ、そういえば何でここにカス子がいるのさ」

 

「ちょ、アサ子酷い!それにカス子じゃなくてかすみんですぅ!」

 

「ま、別にどーっちでもいいじゃねぇか、カス子」

 

「だからカス子じゃないんだってばぁぁぁぁぁ!」

 

一方で麻沙音は視界の端っこで見つけたかすみを見るなり、ケタケタと笑って揶揄っていた。如何やら愛と奈々瀬、璃奈と彼女といい、同じ学年同士ですでに知り合い済みだったようだ。

 

「えっと・・・・・・もしかしたらさっきの人達、そろそろ何処かに行ったんじゃないかな?」

 

部屋の中で談笑を続ける面々と違って、ずっと戸の前に張り付いていた歩夢が突然そう声を上げる。どれどれ、と結子もその言葉の通りかどうか確かめる為に戸へ耳を宛がう。すると、先程とは違って廊下の方で木霊していたガヤガヤ音が綺麗さっぱり止んでいるようだ。

 

「・・・・・・確かに。皆、歩夢ちゃんの言う通り、もう安全みたいだよ」

 

「ほんとにー?それじゃあ、後は部室に戻ろうか皆。レッツゴー!」

 

「またねー、皆」

 

「うぐ~っ・・・・・・後で覚えといてよ、アサ子ォォォ・・・・・・!」

 

「へっ、そう粋がんなよ、カス野郎」

 

「私も、そろそろ部室に戻るね」

 

「また何時でもいらしてくださいねー、璃奈ちゃん!」

 

各々がそれぞれの別れの言葉を口にして部屋を出ようとする。と、そのドアノブをひねるのと同タイミングっで向こう側から誰かが戸を開けて入ってくるところだった。不味い、これは流石に見つかったか。そう思った結子達だったが。

 

「あ、皆さん。此処にいたんですね、探しましたよ」

 

そこにいた人物の姿を目にして結子は意表を突かれた。戸を開けて中に身を乗り出してきたのは生徒会長の中川菜々。そう言えば、彼女も先に部室に行っているメンバーと早く合流する為に今まで生徒会の仕事を頑張っていたのだった。

 

「せつ菜ちゃん!」

 

「さぁさぁ、早く行きましょう。時間は待ってくれませんよ!」

 

若干せつ菜モードになりつつ、キラキラとした目で先頭に立って移動し始める菜々。一行が廊下に出たところで愛がある人物だけがいないことに気が付いた。

 

「あれぇ?ねぇ、せっつー、しおってぃーは?」

 

「あ、ほんとだ、栞子ちゃんがいない」

 

そう、放課後彼女と一緒に生徒会室で作業していたはずの栞子の姿が先程から何処にも見当たらなかったのだ。しかし、それを聞いた菜々は人差し指を口の辺りに持ってきてこう言った。

 

「栞子さんは今は作業疲れで寝ちゃってます。そっとしておいてあげてくださいね?」

 

成程、作業疲れ。そう言えば、今日のお昼頃からちょっと眠そうにはしていたから心配だったけどそう言う事なら安心だ。ゆっくり寝かせてあげよう。

 

「へぇ、しお子今寝てるんだぁ~・・・・・・ニヤリ!」

 

「か・す・み・さん?」

 

「ひぃぃぃぃぃぃっ!?う、嘘嘘、嘘ですってばぁ~!」

 

そんな情報を聞いたかすみが一瞬だけ悪い顔になったが企みを看破した菜々がニッコリとした笑みを浮かべてかすみに迫り、かすみはビビって慌てて誤魔化していた。今のは笑顔ではあったが完全に目が笑っていなかった。流石は『鋼鉄の生徒会長』、迫力あるなぁ。

 

『ピーンポーンパーンポーン』

 

『国際交流科1年、三船栞子さん。理事長がお呼びです。至急、理事長室までお越し下さい』

 

と、その時だった。不意に学校の呼び出し放送が鳴ったかと思ったら、普段生徒を呼ぶこと自体が珍しいとされる此処の理事長が栞子を理事長室まで呼びつける旨の連絡だった。あれ、栞子ちゃん今多分ぐっすり寝てると思うけど大丈夫かな・・・・・・?

 

「理事長さんが態々呼び出すなんて珍しいね」

 

「う、うん。それに、聞き間違いじゃなかったら栞子ちゃんの事呼んでたよね?」

 

「それ大変じゃん!遅れたら間違いなくしおってぃーが大目玉喰らっちゃうよ!?」

 

「あわわわわわ、大変です!?こ、こうなったら私が代理でっ・・・・・・!」

 

今も寝ているだろう本人が早々簡単にスッと起きて迎えるものだろうか。いや、あの栞子ならそれも可能かもしれない。そうは思いつつもちょっと心配な結子とまさかの事態に慌てだす愛と軽くパニックになっている菜々が何もできずにその場でおろおろしているとその彼女達の手前をスッと駆け抜けて走っていく人影を見かけた。あれは・・・・・・!

 

「あ、栞子ちゃん・・・・・・・!」

 

「おや、皆さん?まだここにいらしたんですか?」

 

迷わず声を掛けるとその人物が立ち止まってゆっくりと此方を振り返る。間違いない、件の呼び出されていた張本人、生徒会副会長・三船栞子その人だった。

 

「し、栞子さん!?も、もう起きて大丈夫なんですか・・・・・・!?」

 

「あら、菜々さんまで。はい、別に具合が悪いとかそういう訳ではなかったので」

 

再びの突然の事に、まだパニック状態に陥っている菜々を優しく宥めるように諭し。

 

「栞子ちゃん、あんまり無理したら駄目なんだよ?」

 

「エマさん・・・・・・あぁ、いえ。無理はしてませんから、そんなに心配なさらないでください」

 

自分を心配そうに見つめるエマに申し訳なさそうにしつつ、御覧の通り大丈夫だと伝え。

 

「し、栞子ちゃん!良かったら私も付き添うよ・・・・・・!」

 

「歩夢さん・・・・・・ありがとうございます。お気持ちだけで大丈夫ですので」

 

自分達の可愛い後輩が何か不当な事で怒られてしまうのではないかと不安そうな歩夢にそんな事はないと言い聞かせた。

 

「皆さんが思っている程、理事長は酷いお方ではありませんよ」

 

「私も終わり次第、すぐ戻りますから。だから結子さん、それまで皆さんをよろしくお願いしますね」

 

そして、彼女の真っ直ぐな視線が結子に向けられる。彼女とは同好会メンバー達と同じく、まだ初めて会った時からほんの僅かしか経っていない。それでも、彼女のその笑顔の裏に隠れた何かしらの覚悟のようなものを感じ取った結子は、彼女同様にその目を真っ直ぐに見据えて口を開く。

 

「うん、分かった。後でちゃんと来てね、待ってるから」

 

「はい。ありがとうございます、結子さん」

 

「・・・・・・よし、それじゃあ皆。部室に急ぐよ、他の人達が待ってる・・・・・・!」

 

最後に栞子の顔をもう一度一瞥して、廊下を同好会の部屋の方へ早歩きで駆けていく。

 

「おおっ、ゆいゆい凄い気合入ってるね!これは愛さんも負けてられないぞぉー!」

 

「私も、頑張る。璃奈ちゃんボード『えいえいおー』!」

 

「わ、私だって皆に負けないように頑張るんだからねっ!」

 

「か、かすみんだって負けませんよっ!」

 

「部室まで競争だね?よーし、かけっこなら負けない自信があるよっ!」

 

「えっ、あっ、ちょ、ちょっと皆さん!?ろ、廊下は走らないでくださーい!!」

 

それにつられて、他のメンバー達も結子の後について廊下を駆けていく。見事に不意を突かれて、ほんの数秒遅れてしまったが為に廊下を走るなとは言いつつも皆に追いつくために誰よりも全力疾走で駆け抜ける菜々。その姿を見えなくなるまで見送り続けて、栞子はキッと前方にある理事長室の扉を見据えた。侑が不在の今、自分がやるべきことを果たさなくては。そんな決意を滲ませて。

 

 

Side:???

 

 

『失礼します』

 

「何方様ですか?」

 

『お呼びに与りました、生徒会副会長・三船栞子です』

 

「あぁ、栞子さん。いいですよ、お入りになって」

 

理事長との軽い問答が行われ、理事長室の中に入ってきた人影が一人。あぁ、その姿、その姿勢、その態度。見間違えるはずがない、あの子はアタシの唯一の親友の。

 

「失礼します、それでご用件は?」

 

「言葉にすれば大した事ではないのだけれど。貴女に是非とも会って貰いたい生徒がいてね」

 

「私に・・・・・・ですか?それは一体何方でしょう?」

 

「うふふ、そんなに急かさないであげて頂戴。あの子だって準備はしっかりとしたいでしょうし」

 

「はぁ、そうですか」

 

理事長が上手く機転を利かせて一時的にアタシの存在を秘匿しようとしてくれている。やはり頼れるべきはこの国においての唯一の肉親の存在か。このアタシでもまだパーフェクトには程遠いという証ね。

 

「ところで栞子さん。貴女、つい最近同好会に入ったみたいね」

 

「はい。スクールアイドル同好会というところなのですが、中々に良い体験が出来ていると実感しています」

 

「やはり、自分の趣味嗜好から違った角度で物を見るというのは良い経験となりますね」

 

スクールアイドル同好会?あぁ、あのスクールアイドルフェスティバルとかいう只の素人の即興劇でしかないあの祭典を開いた張本人達か。アタシもあれを遠くで見ていたが、あまり楽しめた感じはなかった。どちらかと言うと呆れたと言うべきか。

 

「やっぱり貴女のその情熱はお姉さん譲りのもの、なのかしらね」

 

「そう、かもしれませんね。姉もスクールアイドルが好きでしたので」

 

何故あんなにも個性豊かで才能溢れる人々が付き従っているのがあのあくまでプロでもなんでもない只の平凡な少女の下なのか。アタシだったら、アタシが提供する環境であったなら彼女達はきっとあれよりもさらに高みを目指せる存在となりうる。はっきり言って逸材だ、早くアタシがあれを手にしてしまいたい。そして、それを決行するにはあの少女が不在の今こそが千載一遇のチャンス。

 

「少し話は変わるけれど、もしその同好会よりも高みを目指せる場所があると言ったらどうかしら?」

 

「ええと・・・・・・いまいち質問の意味が分かりかねますが」

 

「勿論、そのままの意味よ。私はね、貴女のその情熱を見て、もっと高みへ至らせてあげたいと思っているの。それこそ、あの少女の存在が必要なくなるくらいに」

 

それに、この部屋の中にいるアタシの親友もそこへ行ってしまった様だ。ならば、取り返さなければいけない。自分に用意できる全てのものを使ったとしても。アタシは、スクールアイドル同好会という呪縛に囚われた少女達を解放してあげたい。あわよくば、お友達になりたい。

 

「それはどういう・・・・・・」

 

「うふふ、私の小難しい説明では理解し難い様ね。詳しくは発案者の本人から聞きましょう」

 

「発案者、本人・・・・・・・?」

 

「もう心の用意はいいのでしょう?出てらっしゃい」

 

何処で出ようかと迷っていたら、理事長から直々のお呼び出しがかかる。こうなってしまってはもうしょうがない。盛大に祝いましょう。貴女との久々の再会を、そして新たなるスクールアイドルの歴史の誕生を。

 

 

Side END

 

 

「――久しぶり、栞子。ううん、シオって呼んだ方が分かるかしら?」

 

「・・・・・・・本国に帰ったはずの貴方が何故、虹ヶ咲(ここ)にいるのですか」

 

理事長室の奥、客間に設置された屏風の裏から現れたのは、腰まで伸びた長い銀髪と、透き通ったクリアブルーの瞳。学校指定の黒いシャツに赤のブラウスを羽織った何とも特徴的な美少女。彼女の名は。

 

「ランジュ」

 

「んー、何か冷たくない?一応、貴女の幼馴染みで親友との感動の再会なのよ?」

 

栞子が彼女の名を呼ぶと、彼女は不満げな表情で栞子の方へ近づいてきた。そう、彼女こそが鐘嵐珠。我々の派閥で今まさに、推すべきか弾劾すべきかで意見が二分した虹ヶ咲コンテンツ内に置いて二人と存在しない者。これから、いや、この後の騒動を引き起こすトリガーと成り得る人物。

 

「では、私は感動の再会の場面で泣くような女だと貴女は一度として思うに至りましたか?」

 

「そんなまさか、全然ないわ。だってシオはそういう子だって分かってるもの」

 

両者睨み合って、同時にクスリと笑う。一見対立しているようにも見えるこの構図。だが、彼女らはお互いが本来どういった性格であるか、それを理解し合える位に大の仲良しだった。

 

「私だって分かっているつもりです。ランジュが感動の再会云々に気を取られる人ではない事も」

 

「ん、ご名答。ところで、シオは昔みたいにアタシの事、あだ名で呼んでくれないのね」

 

「あれは・・・・・・ちょっと恥ずかしいので」

 

「そう、アタシはそんな事思わないケド?」

 

昔の事を思い出してか栞子が珍しく頬を赤くする。幼馴染みで大親友である者同士の再会、通常であれば何かを飲みながら思い出語りやお互いの話で盛り上がっているはず、だが。

 

「それで、理事長の話した事でランジュが詳しいとは一体・・・・・・?」

 

「あれ、もうそこに話し戻しちゃうんだ。出来ればもうちょっとだけ楽しみたかったんだけど」

 

二人のそんなやり取りを皮切りに部屋の雰囲気が一変する。真正面で対するは最早親友同士というものではなく虹ヶ咲学園の生徒会副会長と虹ヶ咲学園理事長の娘、只それだけだった。

 

「実はアタシ、明日から虹ヶ咲に転入する事になったの」

 

「それはまた急な話ですね」

 

「でしょ?まぁ、でもその件は一旦置いといて。ここからが本題ね」

 

ランジュは一旦言葉を切って、僅か一時の思考をした後、改めて言葉を続けた。

 

「実はこの学校にアタシ主体の新しい部活を作ろうと思うの、協力してくれる?」

 

「部活動を新しく作るという事なら可能ですよ。ただ、内容にもよりますが」

 

「その点は大丈夫よ、だってもう似たような部活動がこの学校にあるんだもの」

 

ランジュのその言葉に栞子は思わず首を傾げる。似たような部活がもう既にあると言うなら、そこに入ればよいのではないかと。確かにこの学校は生徒の自主性が自由に認められてはいる。だが、ただでさえ色々な部活が点々と存在して、所属生徒のほぼ全員が何かしらの部活に入っている今の状態で新しく部を立ち上げたとしても既定の人数に達するかどうかの瀬戸際に追いやられることはこれ以上ない明白な事実であったからだ。

 

「それで、その作りたい部、というのは?」

 

「スクールアイドル部」

 

「は?」

 

「だから、スクールアイドル部よ。虹ヶ咲を筆頭にアタシがスクールアイドルの歴史を塗り替えたい」

 

以降、ランジュが言うにはこうであった。自分が鐘家の権力と財力をフルに使って集めた、スクールアイドルに必要とされる各分野のプロを集め、そのプロの指導の下、完璧で一点の曇りもない才能に溢れたスクールアイドル界のプロチームを作る事。それが今の彼女が抱いた野望だという。

 

「ですが、それであれば今ある同好会に入ってそこにプロの方をお呼びすればいいだけでは?」

 

「それは駄目。前にやってたスクールアイドルフェスティバル、だっけ?あれ、アタシも見てたんだけど、正直全然ダメダメだったわね」

 

辛辣な友人の言葉に栞子はついムッとしてしまう。しかし、そんな表情を一瞬ばかりであっても彼女に見せてしまったが故に、彼女の弁に一層の熱が入り始めた。

 

「動き、ダンス、魅せ方。どれをとってもあれじゃあ全くなってないわ、0点ね」

 

「・・・・・・」

 

「だけど、彼女達一人一人の才能は確かに感じたわ。なら、少なくとも今の環境から少し上の環境に上げるだけで自然と全てが良くなってくるはず」

 

「だから私は彼女達を同好会ではなく、部を作ってこっちに引き入れたいの」

 

ランジュは自分からは隙を見せずに栞子の顔色を窺う。気を遣っているわけでも、変に遠慮しているわけでもない。それは相手を確実に引き入れようと獲物を見据える時のハイエナの目。

 

「だから、同好会のメンバーでもあってアタシの大親友でもあるシオにお願いがあるの」

 

「――同好会を捨てて、アタシのスクールアイドル部で一緒に高みを目指しましょう?」

 

「ッ・・・・・・!」

 

ランジュは機を見て、すぐに親友へ本題をさらりと吹っ掛け、噛み付いた。例えどんなに結束が固くともこうして徐々に揺さぶって堕としていけば、何れは同好会にいるメンバーのほぼ全員が自分の元へ来る。そう踏んでの発言だった。しかし、栞子もそれにただ負ける様な人物ではない。

 

「ランジュ、貴女は私に同好会を・・・・・・あの人を裏切れと言うのですか」

 

「裏切る?違うわね、寧ろ期待に応えられるんじゃないかしら?」

 

「・・・・・・期待に、応えられる?」

 

彼女の意外な言葉に、栞子は驚きで目を見開く。裏切りではなく期待に応えられる?あの人が作り上げた同好会と言う場を捨てるという、只の背信的な行為に何故そんな力があるというのか。

 

「だって考えても見てよ。シオが今崇拝しているその高咲侑って子は、()()()()()()()()()()()()()()()()()人でしょう?」

 

「なら、貴女達がその輝きをもっと高めることが出来れば大いに喜ぶはず・・・・・・違うかしら?」

 

ランジュの言う事は何ら間違ってはない。確かに、現在のスクールアイドル同好会の中心人物となっている高咲侑は以前にスクールアイドル『優木せつ菜』の放つ輝きに魅せられて、幼馴染みの歩夢と共にスクールアイドルに興味を持った人物だ。故に、もし自分達が彼女の予想を遥かに超える速度で実力をメキメキと上げて行ったのなら、ライブを見て喜んでくれるはずだ。しかし。

 

「ですが、それではあの人が一人になってしまう」

 

今でこそ近くでスクールアイドルの活動を支えられているから問題はない。ただ、その位置から離してしまう事で、一般学生とスクールアイドルという決して一線の垣根すら越えられない遥か遠くの存在となってしまう。スクールアイドルの輝きを一番近くで見て、やっと自分の夢と言うものを見つけて旅立っていた彼女。そんな彼女がその2か月の研修を終えて帰って来た時に同好会がバラバラになってしまっていたら。その時に受けるショックは計り知れないものだろう。もしかしたら、音楽科で頑張っていくことにやる気をなくしてしまうかもしれない。

 

「ランジュは知らないのでしょうが、あの人には不思議と人を惹き付けるカリスマがあります。確かにスクールアイドルとしてさらに高みを目指すならプロによる指導も悪くないでしょう、ですが」

 

「彼女は・・・・・・侑さんはそのプロにさえ出来ない視点を持ち合わせている。その一点こそが私達虹ヶ咲スクールアイドル同好会の全員が彼女に付いて行く一番の理由です」

 

嘗て利用するだけ利用されて、全て計画通りにいかずに捨てられた。スクールアイドルになるより前、彼女は只、現生徒会長・中川菜々を打倒する為だけの存在でしかなかった。友人もいなければ、クラスメイトからも距離を置かれた。そんな自分だったから、真の仲間とも呼べる者達と裏と表で姿を使い分けようとも自分の大好きと言う感情から目を離さなかった『優木せつ菜』に負けた。当然の結果だ、最初からあちらの方が大きな輝きを背負っていたのだから。

 

「だからこそ、貴女が今ここで何を言おうとも」

 

「私はそれに協力は出来ません」

 

栞子はきっぱりとそう言い切った。正直、今のランジュが一体何を考えているのか、それは大親友の自分にも分からない。本来ならそのまま自分が協力と言う形で親友を支えてあげたい気持ちもなくはない。けれど、今の自分は同好会にも同じくらいの恩を受けた身だ。故に今此処で自分一人のみの決断で全てを持っていくにはあまりにも早計過ぎる気がした。

 

「話は以上ですか?では、私は練習があるので失礼させていただきます」

 

「・・・・・・」

 

鞄を持って態とゆっくりめに彼女は理事長室を後にする。途中でランジュか理事長が何かしら引き留めてくるものとばかり思っていたが、如何やら杞憂だったようだ。何も返事が返ってこないのを確認して、理事長室の戸を閉める。そして彼女は同好会メンバーの待つ部屋へと急ぎ足で向かうのであった。

 

「・・・・・・交渉は決裂になっちゃったみたいね、あんなこと言われるなんて考えもしなかったって顔してるわよ?」

 

「五月蠅い」

 

栞子が去ったその部屋の中には、不敵な笑みを浮かべる理事長と不貞腐れたランジュの姿だけがあった。

 

「でも、まぁ、焦らなくてもいいんじゃないかしら?」

 

「何で」

 

自分の娘の交渉が目の前で失敗したにも拘らず、それを敢えて他人事のように切り捨てて話す理事長。やはりその顔には張り付いたような不敵な笑みだけが浮かんでいた。

 

「だって理由がどうあれ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()でしょうから」

 

「それも自分の意志で、ね」

 

そう宣言して、理事長が承認の判を押した書類の中にはこんな文字が躍っていた。

 

 

――『監視委員会』の設置許可証。

 

 

これこそが、後に同好会側の活動の基盤を揺るがすことになる事を、今はまだ誰も知らない。

 

 

                           第1章「その瞳、紅に燃やして」・完

 

 

             第2章へ続く......

 

 

 




次章予告

「全てのスクールアイドルとお友達になりたい」。彼女が最初に願ったのはただそれだけのはずだった。しかし、彼女を取り巻く環境は次第に彼女自身に逃れられぬ運命の枷を掛けていく。理事長と共謀する形で設置した『監視委員会』、彼等はいったい何者なのか?そして、発足したばかりのスクールアイドル部の勢力不足を嘆いた彼等の魔の手がついに同好会の果林と愛に伸びる時、物語の歯車は大きく狂いだす。

「アニガサキ!-PASTEL COLLARS- 外伝 Episode of ランジュ」次章、

第2章「彼女はそこにただ独り」

――愛がなければ、スクールアイドルではない。


以上、1章は此処で終わりです。次からは2章、此処からドーンと動きます、お楽しみに(出来れば1章を読んでの感想をお寄せいただければ幸いです)。
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