アニガサキ!-PASTEL COLLARS- 外伝 Episode of ランジュ   作:海色 桜斗

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さてさて、まさかまさかでかなり早めの第2章突入です!!

そして何と、今回ライブ演出初公開です!やっぱりニジガクにはライブ演出は必須だからね、頑張ってみました(昨日2章の登場人物紹介挙げてます、そっちも見てね)。

原作でも本作でも「目的に至るまでの過程を履き違えている系の悪役」であるランジュの暗躍、そして何より今回のノベライズでメインでコラボさせている「ぬきたし」のNLNS陣営とスクールアイドル同好会メンバーが繰り広げる「スタイリッシュ逃亡・バトルADV」風味のちょっぴり大人なラブライブ。

今宵(投稿時間は正午ですが)もどうか、コッペパン片手にご賞味あれ……!


ノベライズ本編でのオリジナル設定解説①

〇主人公『舘 結子(タチ ユイコ)』について
スクスタのあなたちゃん的な立ち位置。ビジュアルとして
・栗色の髪のセミロング。平常時はポニーにしている(家では下ろす)。
・顔立ちはスッとしていてつり目。一応美少女。
・体系は平均的。胸は貧乳クラスだが、本人曰く「武術の型を披露する時に邪魔だから不要、これくらいがちょうどいい」。
・『パッと見普通の女子高生っぽいんだけど脱いだら凄い(筋肉量的な意味で)』
・本人曰く、自身の筋肉量は一般以上朝の某テレビショッピングで出てくるムキムキの女性以下

〇《μ's》《Aqours》の扱い
設定的に全員が母校から卒業している状態(詳細な年数は敢えて記載しない事とする)。尚、本編中に述べられる彼女達絡みの『事件』は、作者が以前書こうとして或いは書いたが途中で行き詰って止めた作品群の設定の名残(要望があれば、事件内容のみをピックアップしてノベライズ化する事を検討中)。

〇橘兄妹の境遇
原作「抜きゲーみたいな島に住んでる貧乳(わたし)はどうすりゃいいですか?」では不慮の事故により両親を失っているが、本作では双方とも健在。ただ、仕事の都合で海外出張に出ている為、家には実質淳之介と麻沙音以外誰もいない。

〇Georgius Protocol(ゲオルギウス・プロトコル)
麻沙音作の逃亡用シュミレーションシステム『アリアドネー・プロトコル』を参考にして璃奈が開発したゴーグル型の内蔵秘密兵器(第1章でのお手伝いとはこれの製作の事)。ランジュ率いるスクールアイドル部と『監視委員会』の手から無事に逃れる為のもの。本編ではあまり描写しないが一応、人数分製作済み。

〇監視委員会
ランジュ及び理事長が鍾家の財力を使い、設置したスクールアイドル部の用心棒(詳しくは次回の2章2節で解説)。


……そういや、4日前は「ぬきたし」に登場するアサちゃんこと橘麻沙音の誕生日で今日は糺川礼先輩の誕生日ではないか!
Youtubeで中の人である水野七海さんによるライブ配信がされているようだぞ。是非とも見てみようじゃないか!
アサちゃん、礼先輩、ハッピーバースデー!!(尚、礼先輩は本作には出てこない模様)



2-1「NLNS、始動」

アニガサキSS劇場③「貴女と貴方にハッピーバレンタイン」

 

歩「侑ちゃん、ハッピーバレンタイン・・・・・・!」

 

侑「歩夢~ぅ、いつもありがとね」

 

愛「はい!ゆうゆにちょこっとだけチョコを上げるよ。チョコだけにっ!」

 

侑「あっはっはっはっはっは!!ちょ、ちょっと待って、全然、ツボって、受け取れ、ない・・・・・・ぷはははははははははっ!」

 

せ「不肖優木せつ菜、侑さんの為に手作りチョコをご用意しました!(善意100%の笑顔)」

 

侑「えっ、私、せつ菜ちゃんから貰っちゃっていいの!?やったぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

か「侑せんぱぁ~い、かすみん特製のチョコ生地コッペパン、受け取って下さい♪」

 

侑「わぁぁ、おいしそう!有難う、かすみちゃん!(やっぱりコッペパンなのか~・・・・・・)」

 

し「流石にチョコレートばかりでは飽きてしまいますよね。と言う訳で、私からはクッキーです、先輩!」

 

侑「しずくちゃんの心遣いが心に沁みるよ・・・・・・有難う、有難う・・・・・・!」

 

璃「私からはこれ。名付けて『璃奈ちゃんマシュマロボード』」

 

侑「わ、凄い!マシュマロ一つ一つに違う表情が描かれてる・・・・・・!」

 

栞「ゆ、侑さん。私からも、その、つまらないものですが・・・・・・!」

 

侑「えぇ~、そんなことないよー。ありがとう、栞子ちゃん!」

 

エ「侑ちゃん、いつも私達の事を見ててくれてありがとう。はい、これは感謝の気持ちだよ!」

 

侑「有難うエマさん・・・・・・!」

 

果「ふふっ、何だかんだ侑にはお世話になってるから。はい、お姉さんからのプレゼントよ?」

 

侑「こ、高級なチョコレートだ・・・・・・!」

 

彼「ふっふっふー、彼方ちゃんからはポッキーをお裾分けだ~」

 

侑「作った訳じゃないんですね・・・・・・」

 

彼「うんにゃ、作ったは作ったけど例年通り全部自分で食い申した」

 

侑「やっぱりかぁ~」

 

侑「あ、そう言えば私もチョコ用意して来てるんだった!先ず、これは同好会の皆の分で、そしてこれが・・・・・・行くよ皆、せーのっ!」

 

全員「「「「「「「「「「「この作品を呼んでくれる貴方へ、ハッピーバレンタイン!!」」」」」」」」」」」

 

(※明日、作者同様チョコをもらう予定のない人へ……おいおい、総勢12名からチョコのプレゼントだぜ?嬉しいけど、糖尿病にならないようにな!)

(※明日、チョコ貰うの確定事項だよって人……モテの最前線へ行った者達に私が声を掛けるべき事は何もない。取り敢えず(幸せで)孕めオラァ!!)

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

それから一週間後の事。私達スクールアイドル同好会は、講堂のステージにて急遽ライブを行う事にした。その原因としては勿論、あのスクールアイドル部の存在。

 

時を遡る事4日前、ライブの下準備を整えた私達の元にいきなり現れた彼女達は、スクールアイドル同好会に対して宣戦布告をしてきた。

 

『来週の貴女達の講堂のライブ、私達も乱入させてもらうわ』

 

『精々、このアタシに観客が取られないように頑張りなさい?ふふふっ・・・・・・!』

 

私の友達である高咲侑。このスクールアイドル同好会の大黒柱たる存在が音楽科の研修の為にこの地を去って2週間。私が代理として就任してから次から次へと色々起こり過ぎだ。しかも、私の頼みの綱でもあった栞子ちゃんも最近は時々何か凄い思い詰めてるし。こんなの私のデータにないよぉ・・・・・・!

 

「あら、また考え事かしら、結子。追い込み過ぎは体に毒よ?」

 

「果林さん・・・・・・」

 

「そういう時は寝るのが一番。どれどれ彼方ちゃんが君を( ˘ω˘)スヤァさせてあげよう」

 

「彼方さん、今は練習中だからちょ・・・・・・( ˘ω˘)スヤァ」

 

「先輩!?嘘、本当に彼方さんの力で先輩が眠りについた・・・・・・!?」

 

「おーい、起きてー。璃奈ちゃんボード『おはようございまーす』」

 

「あらあら、完全に寝ちゃったわ。これは相当、疲れが溜まってたのね」

 

でも、そんな明確な敵対組織みたいなのが出てきたものだから、あの時に交流を深めた愛ちゃん、エマさん、歩夢ちゃん、かすみちゃん以外のメンバーとも仲良くなれた。あれだね、不幸中の幸いもしくは怪我の功名って奴かな。前途多難過ぎるけど、意外と悪くない・・・・・・のかも。

 

「結子さーん、そろそろ再開・・・・・・って寝ちゃってますね」

 

「フフフ、彼方ちゃんの超絶マジックは種も仕掛けもないのだよ」

 

「そりゃあまぁ、疲れてた時にいきなり頭の下によさげな枕置かれたら・・・・・・ねぇ?」

 

「仕方ありませんね。では、代わりに私がリズムをとるので皆さんはそのままでお願いします」

 

連日続いた、侑のノートから同好会のみんなと関わっていく為に必要な、様々な情報の数々の暗記。それにライブも控えているから個々の演出がどうだとか楽曲の云々閑雲がどうとか。ねぇ本当にこれ、侑が全部一人でやってたの、作業量とかあり得なくない?

 

「とてもじゃないけどときめきだけでやれる作業量じゃな・・・・・・Zzz」

 

「わぁ、寝言だ」

 

「侑ちゃん程じゃないけど、結子ちゃんの寝顔も可愛いね」

 

「かすみんは最近の歩夢先輩の侑先輩へのこだわりが怖いDEATH・・・・・・」

 

とはいえ、ライブが始まらない限りは向こうも手出しはしてこない気らしいので、本日も同好会メンバー達はいつも通りの練習を少し軽めに行っていたのだった。

 

 

一方、その頃の『帰宅管理部』では――

 

「そういや今日はカス子たちのライブらしいじゃん」

 

いつもの寝床、部屋の隅っこに置かれた毛布の詰まった段ボール箱の中に麻沙音はいた。そして、暫らくボーッとした後に急に思い出したが如く、講堂でやるライブの話をし始めた。

 

「急にどうした、アサちゃん」

 

「見に行こうかって話をしてんだよ、兄。何たってあそこには愛しの愛しゃんが露出高めの衣装で踊ってくれるって言う個人的にとんでもないご褒美があって、でっへっへっへ・・・・・・!」

 

麻沙音はいつものげへげへした笑いを浮かべて、両手をわきわきさせていた。相変わらず、処女童貞を拗らせた可愛げのない可愛い妹だった。

 

「はい!良ければ私もドスコイ系スクールアイドルとしてデビューしてみたいです!」

 

「けっ、誰がピザの擬人化のステージなんか見るかよ、養豚所に帰れ」

 

「大体いいのかよ。アイドルやるって事は必然的に露出多めの格好をさせられる可能性があるから、畔さんのその醜い腹の皮下脂肪が観衆のもとに晒されるんだぞ?」

 

「あっ・・・・・・それは普通に死ねますね。止めておきます」

 

スクールアイドルへの転換を夢見た美岬の妄想を間発入れずに叩き壊す麻沙音。だがそれは罵倒に見せかけた助言だったのかもしれない。でもなければ、美岬の他人に腹を見せるのが怖いというコンプレックスを態々使って説明などしないはずなのだ。

 

「スクールアイドルかぁ。いいな、私もやってみたいな!」

 

「わたちゃん、ロリにはスクールアイドルなんて無理な相談だぜ」

 

「ロリじゃないですけど!」

 

「成程、ロリ系スクールアイドルの先駆けか・・・・・・!」

 

「何だぁ、兄?ついにモテなさ過ぎてロリコンでも拗らせたか・・・・・・?」

 

「ロリじゃらいれすけろぉ!?」

 

橘兄妹の畳みかけるような禁句攻撃に、遂にヒナミは怒り心頭のあまり呂律が回らなくなってしまっていた。こういうところこそがロリと呼ばれる要素をさらに加速させているとは、思いもしないだろう。

 

「すくーるあいどる、で御座いますか。私もそのような存在になれますでしょうか」

 

「文乃の場合はなったらなったで実家のお父さんとかが五月蠅そうだよね、溺愛するって意味で」

 

「あの人の事など気にするだけ無駄に御座います、ぷいっ」

 

その瞬間、何時もニヒルに笑って悪いおっちゃんのイメージがある文乃の父親が、そんなイメージをぶち壊すが如く、何処かで号泣しながら文乃の名前を叫んでのたうち回っている姿が、その場にいる全員の頭の中に浮かぶ様だった。

 

『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛、文乃ーーーーーーーっ!?』

 

「私は・・・・・・流石に無理よねぇ」

 

「いいえいいえななしぇさんならいずれきっとギャルビッチかいのかがやけるニュースターとなってわたしらのとようなギャルビッチにうえるものたちのきぼうのひかりとなってそしてゆくゆくはふしょうこのわたくしめがかならずやファンクラブかいいんいちごうをかちとってみせまする、デュフフフフ」

 

「グッズとか出たらアサちゃんが原因で我が家が破産する・・・・・・!?頼む奈々瀬、後生だ!!」

 

「あー・・・・・・流石は私のチャンネルに呟く一言一言が全部スパチャの子なのだわ」

 

ちょっと残念そうにしながら、まさか自分が間接的に橘家の家計を火の車にし兼ねないと言う事情から何時ものように一歩引いて見せる奈々瀬であった。

 

・・・・・・一応、これは補足なのだが、奈々瀬は動画配信サイト『Youkakutube』で個人的に動画配信をしており、フォロワー数も多い。そして、そんな彼女が動画配信生放送をする度に麻沙音は自宅のPCから呟く一言一言を全てスパチャに載せている。本人曰く。

 

『奈々瀬さんいう一生涯ではどうやってもお目に掛かれない至高のギャルビッチの配信となれば、全てを賭けるのは当然だろ、兄ィ!!』

 

・・・・・・と言う事らしい。一方兄であり、現在は海外出張中の両親の代わりに家計を維持している淳之介としては、出来れば一個人の精神論だけで家計を圧迫しないでほしい、との事。

 

「じゃあ、アサちゃんがなるってのはどうかしら?」

 

「えっ、わ、私ですか?いや、私もそういうのは別にいいかな、と・・・・・・」

 

「こんなに可愛いアサちゃんを不特定多数の童貞達の前に出せと?お兄ちゃん、許しませんよ!?」

 

「あんだよ兄、お前も童貞イ〇ポの同類の癖して他の人らに文句言える立場かよ!?」

 

「今度は俺が我が家の家計を火の車にしてしまうだろぉ!?」

 

「結局はファンになる事前提じゃんかよ。でも妹の為なら財布の紐ゆるゆるにしてくれる兄、好き!」

 

淳之介と麻沙音が罵倒し合うのを止め、がしっとお互いを抱擁する。性別の壁を越えた、まさに橘兄妹にしか再現できない理想の兄妹愛だった。

 

「淳くんと麻沙音ちゃんは相変わらず仲がいいなぁ」

 

「平常運転過ぎて何だか安心しちゃうわね」

 

奈々瀬の言う通り、これが彼等の日常、変わり映えのない程退屈な今の象徴でもあった。

 

「あのー、いつものやり取りも良いのですが今日は何で態々集まったんですかね、私達?」

 

「あんだよ、食べて寝るだけが取り柄のピザファットにしては今日は冴えてるじゃねぇか」

 

「私、間違ったこと何も言ってないのに・・・・・・酷い!」

 

「今日集まって貰ったのには訳がある。奈々瀬、例のアレを」

 

「ん、了解。やれやれ、最近大人しいと思ったらまた淳の厨二病が始まったのだわ・・・・・・」

 

珍しく美岬が突っ込んだ発言から始まり、何やら再びわちゃわちゃし出したと思ったら、淳之介の指示を受けて奈々瀬が壁側に一つだけ付いている怪しげなスイッチを何の躊躇いもなく押す。すると、今までホワイトボードが掛けられていた壁がスライドして開き、中に広めの空間のある1台のエレベーターが姿を現した。

 

「ホント、何でこんな大掛かりな設備がついてるのかしら、この部室」

 

「さぁな。ただ、こういうのは漫画とかアニメだと俺達がこれから学園に潜む秘密組織と戦って、とんでもない活躍をする暗示だったりするわけだ」

 

「だーから、そういうのを厨二病っつーんだよ、兄」

 

「何か淳之介君、今めちゃくちゃ悪い顔してません?」

 

「古来より、力を持つ者は他者より忌み嫌われる定めにあります。ここは我慢の時で御座います」

 

「あーあ、こんなトキ、礼ちゃんが居てくれればなぁ」

 

各々が別々の事を宣りながら、そのエレベーターの中へ乗り込んでいく。彼等の後姿は宛ら戦場に向かう選ばれた戦士達のようであった。

 

「アサちゃん、ホワイトボードに例の張り紙は張ったか?」

 

「ん、任せてよ兄。そこら辺の細工は事前にしとくのがこのアサちゃんなんだぜ?」

 

「よし、それじゃあ作戦会議と行こうか」

 

扉が閉まり、淳之介たちの姿が見えなくなると、その空間は自動的に元の何の変哲もない教室へと戻り、ホワイトボードには先程淳之介と麻沙音が言った通り、一枚のメモ帳が貼ってあった。

 

 

――舞台は整った。いざ、戦いの始まりへ。

 

 

「うん、大丈夫。機材は、問題ない」

 

「スクールアイドル部の人、まだ来ませんね」

 

「どうせこっちの事甘く見て途中でフラっと現れるつもりなんですよ。こうなったら、かすみんのステージで会場を盛り上げまくって、乱入しても無駄な足掻きにしてやりますよ・・・・・・!」

 

最初の場面から2時間後。いよいよ今日のライブ本番直前となって、私達は学園の劇場のステージ裏・・・・・・つまり楽屋に集まっていた。先程、彼方さんによって一時的な睡眠を得ることのできた私の目はすっかり元のパッチリ感を取り戻していた。

 

「結子ちゃん、調子は大丈夫そう?」

 

「歩夢ちゃん・・・・・・うん、さっき寝たから問題ないよ」

 

「そっか、良かった」

 

今日のセトリを確認していた私の前に歩夢ちゃんが駆け寄ってくる。基本、このスクールアイドル同好会に所属する人達はとっても優しいが、中でも一番歩夢ちゃんがエマさんとは違うベクトルでフワッとしていて近くにいてもらえると凄く落ち着く。そんな彼女だから。

 

「歩夢ちゃんは、さ・・・・・・ホントは私の事、どう思ってるの、かな?」

 

「どう思ってるって?」

 

「うん。侑からさ、大体聞いてるんだ、歩夢ちゃんの事」

 

高校に入って、何か目付きが怖いとか女子なのに筋肉が付きすぎてて萎えるだとかそんなことばかり言われて避けられてきた私。そんな私に唯一話しかけてくれたのが侑だった。

 

そう、あれはスクールアイドルフェスティバルという行事がある事を知らなくて偶々通りかかった時の事。

 

『あれ・・・・・・何かやってるな?』

 

『えっと・・・・・・スクールアイドル、フェスティバル?』

 

思えばあれが初めてだった。中学校時代から憧れてはいたが、所属していた剣道部の大会がライブの当日に運悪く重なることが多くて、直接見にいけたことはなかった。だから、買い出しの用事があるというのについつい足が其方に向いてしまった。そして、出会った。

 

『スクールアイドルフェスティバルー、まだまだ盛り上がってますよー、是非見ていって下さーい!』

 

『・・・・・・!』

 

ライブ会場の近くで、道行く人全員に懸命にチラシを配り続ける一人の少女。宣伝用のスタッフでも雇っているのかなと思いきや、その子の服装・・・・・・上は何かオリジナルのTシャツっぽいものを着ているがスカートを見た途端、驚いた。アレは間違いなくウチの学園の指定制服、ということはあの子はウチの学園の生徒・・・・・・?

 

『あ!ねぇねぇ、そこの貴女。もしかしてスクールアイドル、興味あるのっ?』

 

『えっ、あー・・・・・・うん』

 

『わ、本当!?じゃあ私と一緒だ、嬉しいな!』

 

急に話しかけられて最初は戸惑ったけど、それでも彼女の問いへの返答を同意で返した私に、物凄くキラキラした笑顔で反応してくれた。私にはそんな彼女の反応が新鮮で嬉しかった、だからついつい余計な事を世間話ついでに話してしまったのだ。

 

『へぇー、スクールアイドルは好きだけど自分はあんまり似合わないと思ってるんだ』

 

『まぁね。私って・・・・・・ほら、この通り筋肉量凄くてさ』

 

制服の袖を捲って、腕に力を入れて彼女に見せてみる。すると、彼女は特に怖がる様子もなくただ純粋に「うわぁ~、凄い!」と目を輝かせていた。

 

『だからやるならマネージャーみたいな立場がいいなと思って色々調べてたんだけど・・・・・・』

 

スクールアイドルがいてその上マネージャーを必要としている学校を調べたはいいが、マネージャーの募集要項にははっきりとした字でこう書かれていた。

 

《条件:我が校に所属している男子生徒であること》

 

結局、何処を見ても同じ条件付きで電話して聞いて見ても答えは同じ。自分が元剣道部で力もあって何かあった時に護衛となれると言っても「でも、男子生徒の方がいいから」の門前払いであった。

 

それにしても、何故男子生徒でなければいけないのか。それについても調べた、そしたらその解はあっさりと見つかった。

 

『伝説のスクールアイドルグループ《μ’s》と《Aqours》。彼等と彼女達の起こした奇跡・・・・・・?』

 

当時、まだスクールアイドル活動が活発化する前の事。突如、スクールアイドル界に彗星の如く殴りこんできた期待の新星《μ’s》。そこに所属する9人の歌の女神達を護衛する3人の騎士(ナイト)達。彼等はその当時の音ノ木坂が廃校の危機から脱するために募集した共学化テスターで音ノ木坂に所属していた生徒だったようだ。そして何より目を引いたのが。

 

『《μ’s》のリーダーである高坂穂乃果の誘拐事件・・・・・・・!?』

 

日付はラブライブ準決勝が行われた日の会場での事。《μ’s》誕生のきっかけとなった、音ノ木坂学院と同じく東京都千代田区に存在するUT-X高校の《A-RIZE》。彼女達との決戦ともいえる舞台で疲労する曲のセンターを務めるはずだったリーダーの高坂穂乃果が行方不明になる事件があったが、その3人の男子生徒の勇気ある行動のお陰で高坂穂乃果は無事会場へ到着。彼の名曲『Snow halation』が披露されたのだとか。

 

『成程・・・・・・それじゃあ次は《Aqours》の方か』

 

《μ’s》の活躍によって中止が騒がれていたラブライブ大会が延命し、スクールアイドル活動が一気に伸び始めた数年後の事。今度は《μ’s》に憧れた一人の少女が立ち上げた《Aqours》。静岡県沼津の内浦という小さな港町にある浦の星女学院。その当時で既に廃校が決定されていたこの学校を廃校から救うために生まれた奇跡のスクールアイドル。彼女達も《μ’s》と同じく3人の男子生徒によって護衛されていたのだという。そして、そんな《Aqours》が体験したという一番の事件が。

 

『沼津内浦間のヤクザ抗争・・・・・・』

 

元々沼津と内浦の地を代々守り、その地に住まう人々とご近所付き合いまでしていたとある一族の家系。当時、沼津の地に舞い降りたフランス・パリで栄華を築いた『オハラグループ』と冷戦中だったとされた時。突如彼等の領地内に無法者ばかりが集められたヤクザグループが侵入。そのまま抗争に繋がり、《Aqours》も被害を受けたが、土地を管理していた一族とオハラグループの結託。そして、要である3人の男子生徒達による命がけの護衛でラブライブ大会に優勝。優勝旗を母校に持ち帰り、見事廃校が決定した危機から母校を救い出すことに成功したのだという。

 

『ちょっとおっかなすぎじゃない・・・・・・?スクールアイドル活動』

 

何故男子生徒である事が絶対条件として重宝されるのか。その理由は今現在において、伝説のスクールアイドルと呼ばれる《μ’s》と《Aqours》の彼女達を大きな事件から助けたのが彼女達の学校に所属していた男子生徒達だったから、と言う事だった。

 

『でも、不自然な事にその後はそう言う過激な事件がパッタリとなくなってるんだよね・・・・・・怖いな』

 

《スクールアイドル2大事件簿》として今尚語り継がれるそれは、《Aqours》の巻き込まれた事件を最後に急に途絶えていた。後は、所属アイドルが男に強引にナンパされかけたーとか、過激な活動をしているスクールアイドル反対派の突然のデモでライブが中止にされたーとかそんな感じ。確かにそれも事件ではあるが、《μ’s》と《Aqours》の時ほどではない。

 

『だったら、猶更私の力が役に立つかもしれない・・・・・・!』

 

決して自惚れているわけではない。けれど、もし実際に《μ’s》や《Aqours》の時のようなものではないかも知れないが、少なくとも多少の危険を払いのけることはできるはずだ。だからこそ私は、募集要項こそなかったものの自由な校風で知られる虹ヶ咲ならそれっぽいものがあると信じて入学したのである。

 

『でも、やっぱり虹ヶ咲にもなかったし。そもそも来た当時はスクールアイドルもいなかったし』

 

『そっかぁ・・・・・・そんな事があったんだ、知らなかったなぁ』

 

『ま、そういう事件とかは起きて~・・・・・・いや、それっぽい感じのはあったけど』

 

『あったの!?』

 

それっぽい事件がこの虹ヶ咲でもあった、そう侑から聞いた私は不謹慎ではあるがその時に少し心が躍った。ならば、もしかしたら、此処でなら出来るかもしれない。私が心の底からやりたいと思ったこの力が背負いし使命というものを。ただ侑は少し困惑した表情で言葉を続ける。

 

『い、いやぁ、でもそれは身内のゴタゴタみたいなやつだったし・・・・・・ねぇ?』

 

『そっか・・・・・・ところで話は変わるけど、高咲さんはスクールアイドルなの?』

 

『侑、でいいよ。ううん、私はどちらかと言えばマネージャー、みたいなもの、かな?』

 

マネージャー枠。そして原作・アニガサキを視聴した読者の皆さんならば分かる通り、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会名誉部長・高咲侑は女子生徒である。疑問詞が付いてはいるが、その返答を聞いて漸く確信できた。今の私の居場所は此処にしかないと。

 

『でも結子が話してくれた、スクールアイドルならではの事件が起こるってのは気になる所かな』

 

『ウチの同好会には幼馴染みの歩夢もいるし、皆が皆、普通の女子高校生なワケで』

 

『だから皆が将来的にそう言う事件に巻き込まれるのは何か嫌だなって思う』

 

『侑・・・・・・』

 

「大切な仲間を守りたい、全力で応援したい」。侑のそんな本心が先程述べた言葉に全て詰まっていた。なればこそ、今の自分が力になりたい・・・・・・が果たして侑はそれを望んでいるのだろうか。誰かを救いたいという気持ちは同時に誰かの危機を望むものである、と誰かが言っていた。侑と同じで私もスクールアイドルが好きだから、自分で使命を感じてはいても、侑からの誘いの言葉が出ない限りは、自分のこの願望をこの場で容易に口にするのは憚られた。

 

『あ、じゃあさ、結子に一つ提案があるんだけど、いいかな?』

 

『何?』

 

『実は私、まだ自分の夢みたいなのをきちんと見つけられてなくて。けど、このスクールアイドルフェスティバルが無事終わった時に何となくだけどそれが掴めそうな気がする』

 

『それで私が夢を見つけて一時期皆と離れるようなことになった時は、結子が私の代わりに皆を守ってくれないかな?』

 

『それって・・・・・・』

 

『あはは、まぁ簡単に言えばマネージャー役の体験実習って感じだよ。結子がいいなら、だけどね』

 

言いながら、侑の表情に少し影が落ちる。ああ、本来なら彼女は決してこういう選択をしたりはしないのだろう。だからこそ、私は本来ならば此処にはいない。彼女と彼女達の、平和だけれど日常的な波風の立ち引きがあって。それらを乗り越えていくからこその青春群像劇がある。だが、私は今此処にいる。此処にいて高咲侑と向き合っている。で、あるならば。

 

『分かった。もしそんな時が来たら、侑の大切なスクールアイドル達は私が守るよ』

 

『ホントに!?あははっ、有難う結子!』

 

私の答えを受けて、再び侑の表情に光が戻る。やっぱり彼女の存在は眩しい、だからこそ憧れた。例えスクールアイドルではなくとも、スクールアイドルを全力で、ただ直向きに応援するその姿が他のどんなスクールアイドルよりも輝いていたからだ。

 

『じゃ、約束!』

 

『うん、約束』

 

『あ、それともう一つだけ。もしその期間が終わって私が帰ってきても、結子がまだ続けたいって思ったなら私と一緒にやってみるってのはどう?マネージャーの相棒的な、さ』

 

『うん、それもいいかもね。考えとく』

 

『へへっ、じゃあ、それも約束だねっ!』

 

そう言葉を交わして、私と侑はお互いに誓いの握手をした。

 

――それから数日後の事。彼女との一つ目の約束を果たす機会はすぐにやってきた。彼女は同好会の皆ともっと深く関われるようにと音楽科への学科移動を試みた。無事、一次試験は合格。そして今、彼女は2次試験であり同時に音楽科加入の際のカリキュラムである海外での2か月間の滞在をしている。私は、あの時の事を一生涯、決して忘れはしないだろう。

 

「へぇ、侑ちゃんがそんな事を・・・・・・」

 

「そ。だから偶に思っちゃうんだ、こんな私があの侑の代わりで良かったんだろうかって」

 

私の侑との出会いの経緯をずっと聞いていた歩夢ちゃんは静かに、けれど力強くうんうんと頷く。入ってみて分かった、この同好会には侑の存在は絶対的に必要であると。現に他のメンバーとはそこそこ仲良くはなれたが、まだかすみちゃんには認めてもらえてはいない。だから思ってしまうのだ、本当に私の選択は正しかったのだろうかと。

 

「・・・・・・それは大丈夫だと思うよ」

 

「歩夢ちゃん?」

 

私はその言葉に思わず顔を上げる。すると、歩夢ちゃんがその場に屈んで私の手を握った。私のすっかりゴツくなってしまった手とは大違いの、とても柔らかい手だった。

 

「確かにこの同好会には侑ちゃんが必要だよ」

 

「でもね、それと同じくらい。一緒に過ごした時間はまだ少ないけど、貴女の居場所にもなってる」

 

「だからもう少しだけ自分を信じてあげようよ。かすみちゃんもそのうちきっと分かってくれるから」

 

その時、私に向けられた歩夢ちゃんの笑顔は、私の心の清涼剤となって自分の中で燻ぶっていた気持ちを晴れやかなものにしてくれた。

 

「有難う、歩夢ちゃん。お陰でいろいろ吹っ切れそうだ」

 

「ふふっ、どういたしまして。これからは、あんまり一人で抱え込んでちゃダメだよ?」

 

優しい言葉を言い残して、歩夢ちゃんは楽屋奥の部屋に引っ込んでいった。恐らく、ライブの為の最終確認でもするつもりなのだろう。本当に噂通り、頑張り屋な子だ。

 

「もうそろそろ本番ですよ、結子さん。行けそうですか?」

 

「あ、栞子ちゃん」

 

歩夢ちゃんの姿を見送った後、今度は栞子ちゃんが私に近づいてきて話しかけてくれた。表情は・・・・・・うん、いつも通りのキリリとした顔に戻っている。良かった、最近はよく暗い顔をするから心配だったんだけどこの調子なら。

 

「うん、私は大丈夫。さっきまで歩夢ちゃんに励まされてたからね」

 

「歩夢さんが・・・・・・ふふっ、相変わらずお優しい方ですね」

 

「栞子ちゃんも歩夢ちゃんのああいうところが好きなの?」

 

「す、好き・・・・・・ですか?///

 

栞子ちゃんも以前歩夢ちゃんと侑に励まされたという話を聞いた。だから、もしかしたら今の私と同じ気持ちだったのだろうかと、そう聞こうとしたが栞子ちゃんはその問いに、少し頬を赤らめて黙りこくる。中々珍しい反応だったため、少し驚いてしまった。

 

「た、確かに大変好ましくはありますが、別にそういう訳では・・・・・・///

 

「そう?でも、私は栞子ちゃんの事も同じくらい好きだけどな」

 

「っ・・・・・・!?そ、そうですか・・・・・・その、えっと、ありがとう、ございます///

 

おや、気のせいかな?さっきよりも栞子ちゃんの顔が一層真っ赤になった気がする。ど、どうしよう、まさか急に熱でも出てきたのかな!?

 

「栞子ちゃん、顔赤いけど・・・・・・大丈夫?」

 

「えっ!?あ、い、いえ!何でもありません、大丈夫です!?///

 

「そっか、良かったぁ。無意識に栞子ちゃんに無理させちゃってたら侑に合わせる顔がないからね」

 

彼女はまだスクールアイドルとしてステージに立つということはしていないようだが、それでも私の友達である侑がスクールアイドル枠として採用した子でもある。そして、彼女は同時に学園の生徒会の副会長も務めている。サポートで不慣れな私に色々教えてくれるのは有り難いが、やはり無理だけはさせないようにしないとな。

 

「結子さん、もうすぐで開演ですよ!」

 

「あれ、もうそんな時間か。それじゃあ皆、今日のライブ絶対に成功させよう!」

 

「「「「「「「「「「私達の虹を咲かせに・・・・・・!」」」」」」」」」」

 

こうして、ランジュ率いるスクールアイドル部との対立が予想される今日のライブが幕を開けた。

 

 

「――雷鳴が胸に鳴り響いて、閉じ込めていた感情が溢れ出していく」

 

「もう、見失ったりしない。私だけの、思いを・・・・・・!」

 

トップバッターはしずくちゃんで『Solitude Rain』。前奏と共に語り紡がれるモノローグに周囲の観客達のボルテージが一気にブチ上がる。

 

 

『天(そら)から舞い落ちる雨粒が ぽつり ぽつり 頬伝って』

 

しずくちゃんの演劇風の曲調に、会場の皆と一緒に、私は歌詞が紡ぐ物語の中へと誘われた。

 

『知らないうちに 心 覆っていた仮面を そっと洗い流していくの』

 

そして同時に、こんな物語の誕生の時に一番近くで立ち会えた侑には嫉妬の感情すら覚えた。

 

『胸の奥 変わらない たったひとつの思いに やっと気づいたの』

 

ああ、でもこの曲を聞いていると、当時のしずくちゃんの心境の変化が理解できてしまうようで。

 

『目覚めていく 強く 裸足で駆けだして行こう どんな私からも逃げたりしない』

 

気付いた時には、私の目からは一滴の涙がつーっと頬を伝わっていくのが分かった。

 

『迷いも不安も全部 ありのまま抱きしめたなら まぶしいあの空へと 飛びだすよ』

 

 

曲と言うものを聞きながら、涙を流したのは何時ぶりだろうか。少なくともここ最近では滅多にそう言う体験は出来ていなかったと思う。意味もなく飾られた歌詞、遠回り過ぎる表現・・・・・・現代病とも呼ばれるその事実をこの歌は容易に吹き飛ばした。それくらいに感動的だったのだ。

 

「結子さんは、感受性が豊かなんですね」

 

「えっ、わっ、栞子ちゃん!?」

 

私が歌に夢中になっていると先程まで曲に合わせて機材調整していた栞子ちゃんが、背後から私に声を掛けてくる。私はびっくりしすぎて座っていたパイプ椅子から転げ落ちてしまった。

 

「だ、大丈夫ですか・・・・・・!?」

 

「あ、あはは、大丈夫大丈夫。元々身体は丈夫な方だからさ」

 

「そ、そうですか。それなら良かったですが・・・・・・」

 

こうして何かあった時は咄嗟に心配してくれる辺り、栞子ちゃんも優しい子だなぁ。

 

「それで何の話だったっけ?」

 

「結子さんは感受性が豊かな方ですね、という話です」

 

「私が・・・・・・?そうかな、自分ではあまりそうは思わないけど」

 

「何を言っているんですか。先程、しずくさんの曲を聞いて泣いていらしたでしょう?」

 

あ、そっか。さっきの驚きで少し忘れかけたけど、しずくちゃんの歌を聞いているうちに色々な感情がごっちゃになって、感動に打ち震えていた自分がいたのは覚えている。けど、感受性が豊かかどうかで言われるとそうでもないような気もするが。

 

「でも、いい曲だよね。今まで携わってこれた侑が羨ましいくらい」

 

「ふふっ、そうですね。皆さんの曲を聞くと、やはり羨ましい気持ちが勝ってしまいます」

 

「あはは、じゃあ栞子ちゃんと私、一緒だね」

 

「ですね。活動に途中から加入した者同士ですから、私達」

 

言い合ってお互いにふふふ、と笑う。うん、こういう同じ部活動の仲間との何気ない会話が出来るって言うのは本当にいいものだ。

 

それから、しずくちゃんが終わって璃奈ちゃん→愛さん→エマさん→果林さんと続いて、無事ステージはスクールアイドル部の干渉もないまま、進行していった。次の出番は――

 

「しお子ー、次ぃ、かすみんの出番だからぁ、行ってくるねぇ~♪」

 

「おや、かすみさん。そうですね、是非、皆さんに可愛いかすみさんを見せてあげてください」

 

「ぬっ、おうっ・・・・・・い、言われなくても分かってるからぁ!!///

 

かすみちゃんだ。何かよく分からないけど凄く、くるくる回りながら移動していったと言うか。そして、当然の事ではあるが栞子ちゃんには声を掛けていったものの、私には一切のコミュニケーションがなかった。うーん、まだまだ遠いなぁ。

 

「かすみさんに声を掛けられなかった事がそんなに残念でしたか?」

 

「まぁ、だって、一番懐いてくれそうな子だから猶更、ね・・・・・・」

 

「恐らく時間の問題ですよ。かすみさんだって今のままじゃいけないと思っているでしょうし」

 

「そうかな、だったらいいんだけど」

 

「間違いないかと。あ、そろそろ始まりますよ」

 

栞子ちゃんが、次のかすみちゃんの曲に合わせて素早く調整を終わらせた。私もそれを合図に部屋の中にある外部撮影のカメラから録画されている映像が映ったモニターをチェックする。

 

だが、この時の私達は完全に油断しきっていた。未だスクールアイドル部の介入のない中で着実に進んでいく目の前のライブに夢中になり過ぎて、肝心な警戒を怠ってしまっていたんだ。

 

 

『ああ、きらり輝く未来にきゅんとしたなあ (大切な場所)なんだかんだね』

 

『たくさんの願いと思いを込めた歌を歌おう』

 

『このダイヤモンド光って・・・・・・』

 

 

非常に可愛らしい、まさに可愛さの果てを追求し続ける彼女の為の曲。サビ前のコーレスが最高に気持ちいい、かすみちゃんの持ち曲「ダイヤモンド」の歌詞が、2番に差し掛かったその時。

 

「あら、所詮その程度の実力なのかしら?なら、貴女達はやっぱりアタシの敵じゃあないわね!」

 

「sit・・・・・・怠いな」

 

最も恐れていた事態。ライブ中にも拘らず、彼女は仲間を引き連れ、そのステージの上に実に堂々と。そして、自身に満ち溢れた笑みを浮かべて現れた。

 

「――平伏しなさい!全ては”善”全ては”アタシ”・・・・・・このランジュの最高のパフォーマンスを、貴女達に見せてあげるわ!!」

 

・・・・・・彼女の高らかな宣言と共に、彼女の持ち曲「QueenDom」が披露された。

 

それからは実に見るも無残な惨敗の形。彼女を妨害する形で持ち曲をステージの端で披露し続けたかすみちゃんの抵抗も空しく、会場内はスクールアイドル部部長の鐘嵐珠・・・・・・彼女の領域に完全に支配される形となってしまった。

 

『・・・・・・!かすみちゃん、これを!』

 

「へっ、り、りな子!?な、何コレ・・・・・・?」

 

『説明は後。取り敢えず、付けてみて』

 

と、そこへ舞台裏で待機していた璃奈がステージ上のかすみに向かってゴーグルのようなものを投げ渡す。友達から取り敢えず付けてみてとお願いされた手前、いつものように「これじゃあかすみんの可愛い顔が隠れるでしょ」とは言えず、指示通りにそのゴーグルを掛けた。

 

 

――顔認証、完了。生体データベース、登録条件2に該当・・・・・・一致。プログラム、起動します。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

Georgius Protocol Online...

 

そして場面は、1章1話の冒頭へ戻る。

 

『へっ、やーっぱり現れやがったか・・・・・・あのいけ好かない中華野郎』

 

かすみがそのゴーグルを掛けると、何処からともなくその場にいないはずの麻沙音の声が聞こえてきた。最初こそ従ってはいたが、かすみは楽屋に戻って少し落ち着きを取り戻した為、漸く浮き上がってきた疑問をそのまま麻沙音にぶつけた。

 

「あのぅ・・・・・さっきまで聞き覚えある声だったから自然に受け入れちゃってたけど」

 

『あんだよ』

 

「アサ子、何処から喋ってんの?」

 

『・・・・・・企業秘密だよ。場所考えろ、盗聴されてる可能性もなくはないでしょ』

 

「それはそうだけど・・・・・・」

 

『いいから、黙って私の指示通りの経路で其処を脱出すりゃあいいんだよ』

 

『ちゃーんと全員で無事に着ける事を、ほんのちょっとくらいは祈ってるぜ、カス子』

 

「だからカス子じゃないんだってばぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

麻沙音とかすみの何時もの口論が始まったところで、すぐ近くの通路から楽屋に近づいてくる複数の足音が聞こえてきた。やがて楽屋の扉が乱暴に開かれ、中に数人のスーツを着た男達が押し寄せて来る。あまりに突然の出来事に、その場にいた同好会メンバーは恐怖で固まってしまった。

 

「貴様らがスクールアイドル同好会だな?」

 

突入から一拍間をおいて、スーツの男達の代表であるような男が声を上げる。そんな彼の問いに、この現状になっても唯一恐怖心に打ち勝つ事が出来た結子が問いを投げ返す。

 

「・・・・・・ご名答。それで、貴方達は誰?」

 

「我等はランジュ様及び虹ヶ咲学園理事長様よりこの学園に派遣された『監視委員会』の者だ」

 

「よって、ランジュ様の言伝通り、貴様らをこの場で拘束させてもらう!」

 

その言葉を合図に、複数人の男が一箇所に集まった同好会メンバーに迫る。そんな同好会メンバー達を守るように立ち塞がっていた結子は、故郷を離れる前に聞いた祖父の言葉を思い出した。

 

『――結子よ。儂が何故、オヌシに武術を覚えさせたか、それが理解できるか?』

 

私の実家・・・・・・舘家は戦国の世より名だたる武術の師範代として名を轟かせてきた銘家の一つ。

 

『武術とは、即ち守る力也。例えその技術を持っていたとしても、真に揮える者は少ない』

 

そこに男女と言う区切りはなく、その家の孫娘として生まれた私も例外ではなかった。

 

『故に、守る力が失われ始めた現代にこそ、その術は真価を発揮する』

 

全ては家の為、と父も母も言っていた。だが、祖父だけはその固定概念に縛られていなかった。

 

『覚えておきなさい。オヌシが今まで携わったモノは、全て守るための力であると』

 

家柄などどうでも良い。ただ一つ、これから学ぶ武術の道の先の果てを捉えよ、と。

 

『そして、もしオヌシが心の底から守りたいと願った何かが危機に晒されるようなことになった時』

 

道を一生を賭けて貫こうが、途中で道を違えようが、何処かで履き違えなければそれは同じ道と。

 

『オヌシの培った全てを使って守れ。それがその場でオヌシにしか出来ぬのなら、猶更だ』

 

 

――幾重にも辛酸を舐め、七難八苦を越え、艱難辛苦の果て、満願成就に至る。

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「なっ、貴様、何をッ・・・・・・ぐふっ!?」

 

結子が正面に放った掌底が男の腹部に突き刺さり、男がその場に崩れ落ちる。

 

それを見た他の男が結子の身柄を取り押さえようと向かってくる。・・・・・・甘い!

 

「貴様、よくも・・・・・・がはっ!?」

 

「やってくれたなぁテメェ・・・・・・!いいかァ、言っとくが俺は中学のこ・・・・・・げっふぅっ!?」

 

「おのれ、学園に所属していながら理事長様に楯突く気か・・・・・・ぐわぁぁぁぁぁっ!?」

 

気を整え、相手の隙を窺い、その一点に攻撃を絞る。

 

――舘家秘伝奥義参の型『激身裂砕』。

 

文字通り、相手の身を激しく裂き砕く技。打ち込む位置を見誤れば、人を殺す凶器とも成り得るが技巧によって正しく磨くことで急所に当てずとも相手を気絶させることの出来る、不殺生の奥義となる。兎に角、今は同好会の皆をこの場から逃がすことだけを考えろ・・・・・・!

 

「せぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!!」

 

「くっ・・・・・・こんなやり手がいるなんて聞いていないぞ!至急、増援を・・・・・・だはぁっ!?」

 

「何て迷いのない動き・・・・・・こんなの私のデータにない・・・・・・おほぉ!?」

 

近づいては打ち、挟まれては後退し、打ち返す。大の大人の男を一切顔色を変えずに倒し続ける私を見て、同好会メンバーの目に少しずつ希望の光が戻ってきた。指示するなら・・・・・・今か。

 

「皆は急いで扉から出て脱出して!私もすぐに追いかけるから・・・・・・!」

 

「結子、せんぱぁい・・・・・・!」

 

「結子さん貴女という人は一体・・・・・・いえ、先を急ぎましょう。皆さん、此方へ!」

 

『えぇ・・・・・・こんなに強いとかチートかよ。まぁ、いいや。地図はデータベース通り、行くよカス子』

 

「頼りにしてるよ~、かすかすぅ!」

 

「もぅ、急かさないでよぉ、分かってるってば!あと、カス子でもかすかすでもないです、かすみんですぅ!!」

 

同好会メンバーがかすみちゃんを筆頭に楽屋の入口へ向かう。その最中で。

 

「絶対に・・・・・・絶対に戻ってくださいね、先輩。じゃないとかすみん、許してあげませんから!」

 

「うん、分かった。約束だよ」

 

この土壇場で漸くかすみちゃんに認めてもらえたようだ。なら、彼女の期待に応えないといけない。それが、友達の高咲侑から託された、私のやるべき事なのだから・・・・・・!

 

 

――それから数分の刻が経ち、応援を呼ばれる前に全ての男達を気絶させ薙ぎ倒した私は脱出する前のかすみちゃんからもらったメモ用紙に書かれている指示に従い、無人の廊下を駆け抜ける。流石に今ばかりは「廊下は走ってはいけません」を守るわけにはいかなかった。

 

「ふっ、はぁ、はぁ・・・・・・!」

 

走る、走る、走る。只管に、がむしゃらに、必死で。そうして辺りを警戒しながら廊下を走り抜ける事十数秒。遂にメモ用紙に書かれている部屋へと辿り着く。そこは。

 

「あ、此処『帰宅管理部』の部室だ・・・・・・!」

 

つい最近に見つけた、記憶に新しいこの場所。しかし、此処は只の部室だったはずだ。虱潰しに探されると直ぐに見つかってしまうのでは・・・・・・?

 

「おい、奴を見かけなかったか?」

 

「いいや、全く。向こうの方も探してみましょうぜ・・・・・・!」

 

「そうだな。む、この先は部室棟か・・・・・・ちょうどいい、此処にある部屋を全て回って探し出せ!」

 

「うわっ、やばっ!?」

 

暫し悩んでいると遠くの方からそんな声が聞こえてきた。最早一刻の猶予も時間もなし。黙っているより行動した方がマシだ、そう考えた私はメモ用紙を信じて『帰宅管理部』の部室の扉を開け、中に入った。急いで扉を閉め、念の為鍵はそのままにしておく。そして、細工として窓を開け放った後、ホワイトボード上に貼られている紙の存在に気付く。私は迷わずそれを手にした。

 

『壁の近くの非常用スイッチを押し、エレベーターに乗り込み、至急地下へ来られたし』

 

『PS 最後の人は責任をもってこの用紙を剥がして帰宅後に処分するように』

 

・・・・・・書かれている意味は解らなかったが、私はその通りに壁の非常ボタンと思わしきものを押す。すると、ホワイトボードの掛かっていた壁がスライドし、その奥に立派なエレベーターが現れた(勿論、ボードの紙は回収済み)。

 

「えぇ・・・・・・すごっ・・・・・・!?」

 

SF映画のワンシーンを彷彿とさせる場面に立ち会ったことに驚きと興奮を覚えるが、今は感傷に耽っている程時間がない。私はすぐにエレベーターへ乗り込み、地下を目指した。

 

扉が閉まる瞬間、先程スライドした壁が元通りになって手前側に立ちふさがる光景がほんの一瞬だけ見えた気がした。

 

「・・・・・・流石にオーバーテクノロジー過ぎじゃない?」

 

そんな私の突っ込みはエレベーターの空間内に虚しく響き渡り、周囲の壁を伝って反響していた。

 

・・・・・・暫らく無言の時間が続き、エレベーターが下へと移動する微かな音だけが響く中、遂にエレベーターが目的の階へ到着したことを告げるアナウンスを流した。

 

『お待たせ致しました。地下1F、地下1Fで御座います』

 

目の前の扉が開き、外の空間が視界に移る。そこには――

 

「あら、よかったわ。元気そうじゃない」

 

「う、うぐぅ~ぐすっ・・・・・・ゆ、結子しぇんぱぁ~い・・・・・・!」

 

「結子ちゃん・・・・・・!良かったぁ」

 

「えっへへ、貴女ならきっと来てくれると信じていました!」

 

「先輩、ご無事で何よりです!本当に、本当に良かった・・・・・・・!」

 

「ふふふ~、貴女も中々に強運の持ち主みたいだねぇ~?」

 

「ゆいゆい~っ!愛さんは心配したんだぞ、このこのぉ~!」

 

「私は・・・・・・結さんなら大丈夫だって信じてた」

 

「良かった・・・・・・結子ちゃん!さっきはありがとうね」

 

「これで無事に全員が揃いましたね。全く・・・・・・一時はどうなる事かと」

 

自分の手で守り通した同好会のメンバー全員が、涙を浮かべて私の帰りを待っていてくれた。

 

「おーおー、再会して早々に感動的な物を見せてくれるねぇ」

 

「良い話ね、いい話なのだわ・・・・・・っ!」

 

「皆さん・・・・・・ゔあ゛ぁぁぁぁぁ~よ゛がっだでずね゛ぇぇぇぇぇぇ・・・・・・っ!

 

「素晴らしい青春の一幕で御座いました。我々も負けてはいられませんね、ふんすっ」

 

「何だろう、美岬の泣き方が凄くて逆に泣けない・・・・・・ッ!」

 

そのメンバー達に紛れて、見慣れた『帰宅管理部』のメンバー達も一堂に会していた。そこで私は恐らくこの部のリーダー的立ち位置であろう淳之介君に質問をする。

 

「ところで、何で一介の部活がこんな場所を?」

 

「あぁ、すまない。余り部外者に感づかれたくなくて態と隠していたんだ。だが、舘さんとスクールアイドル同好会の皆は俺達の敵とたった今敵対した」

 

「だからこそ、俺達は漸く本来の形で動けるようになったんだ。感謝してるよ」

 

( ,,`・ω・´)ンンン?何だか私の問いに対する答えになっていない気がするぞ?そして、何故かさっきから淳之介君が少し悪い顔をしている。あれ、もしかして厨二病患者だったのかな、淳之介君。

 

「おいこら、淳。それじゃあ答えになってないでしょ、ちゃんと答えてあげなさい」

 

「う・・・・・・・分かってるぞ、奈々瀬。ええとだな、つまり俺達は普通の部なようでそうじゃないのさ」

 

「だからこそこんな多少オーバーっぽい工作も出来るって訳なんだが、詳しくは分からない」

 

「俺達はとある人に頼まれてこの学校のこの部を引き継いだだけの一般生徒だからな」

 

成程、つまりその見ず知らずの誰かに利用・・・・・・と言われれば聞こえが悪いが、要するに学校内部の事情をよく知る何らかの情報網からの協力要請に応じただけと言う事か。さては厨二病心が上手く利用された事に何も気が付いてないな?

 

「ふぅん、じゃあ本来は『帰宅管理部』なんて名前じゃないって事?」

 

「その通りだ・・・・・・よくぞ聞いてくれたな!」

 

そして、私の次の質問を聞いた瞬間、明らかにテンションが上がり始める淳之介君。うわぁ、マジだ。

 

「本来なら名乗り口上などないのだが――」

 

「あぁ、ならば今から協力関係となる君達にだけ聞かせてやろう」

 

淳之介がニヤリと笑い、それに倣うかのように他メンバーが淳之介を囲うように周りに集まる。

 

「我等は()()()()()()()N()L()N()S()()――」

 

「・・・・・・全ては危機に晒され続けるスクールアイドル達を守護する者達だ」

 

愛弗防衛勢力”NLNS”。彼等との出会いは、私達とスクールアイドル部の長い戦いの始まりを意味していたのだった。

 

 

 

 

 

「「「「「「――ようこそ、”NLNS”(部)へ!」」」」」」

 

 

 

 

 




如何でしたでしょうか?

「ぬきたし」をプレイしている方ならきっと「Georgius Protocol(ゲオルギウス・プロトコル)」起動と「NLNS」の名乗り口上の所でハッスルして頂けたと思います。

そして、今回初挑戦のライブパート。もし何か御意見・御要望等ありましたら、是非感想欄にご記入ください。設定に関する質問でも構いません。現段階で明かせる出来る限りの事に全てお答えします。


……それでは、また次の投稿でお会いしましょう。お楽しみに。
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