アニガサキ!-PASTEL COLLARS- 外伝 Episode of ランジュ 作:海色 桜斗
まぁ、いいや。何時もの設定解説、行きまぁぁぁす!!
スクスタ及びアニガサキ設定の変更点まとめ・その③
・ランジュとミアの関係
スクスタ本編では友達……の間柄であると言う事だが、本作での2人の関係性は無いに等しい。単純に雇用上の関係のみ(ランジュが一方的に親友と思っているだけ、ミアは前述の通りの関係性だと思っている)。故に、ランジュが自身の預かり知らぬところでどういう目に合おうと誰かに何かを吹き込まれようとミアにとっては興味の対象外。支払われた分の仕事はするが、それ以上の領域には首を突っ込まない。
・監視委員会について
スクスタ本編では開始早々から栞子が生徒会長であり、同時に部へ移動しているが為に生徒会役員である右月・左月姉妹が監視委員会の実質的メンバーとなっている……なっているが、ええい、クソぬるい!!頼むから栞子にそう言う謎配慮やらせんな、クソ脚本が!何だ、テイルズオブゼスティリア(ゲーム版)を制作した馬場Pと鉄血のオルフェンズの監督と岡田摩里がシナリオでも作っとんのか、あァ!?という具合でストーリーを見てた作者が、事実上の名前が似ている秘密組織として設定改修。本作では生徒会長がせつ菜のままである為、ランジュが生徒会を乗っ取ることはできなかった。元ネタはSteins;Gateで有名な5pb.社の化学アドベンチャーシリーズにて暗躍する「三百人委員会」。
・ランジュの目的と思想
スクスタでは同好会メンバー(あなたちゃんを除く)を部に引き抜きたいだけ。本作ではそんな生ぬるい事にはせず、最初から自分で思うところの”善”を振りかざす”悪”である事を強調。更には野望として「スクールアイドル全員と仲良くなる」や「同志を募った上でスクールアイドルの可能性を広げる為の革命を起こす」という目的の為に動いている(だから、若干言ってることが某アグニカ信者みたいになってるのは気にせんでくれ……)。
ノベライズ本編でのオリジナル設定解説②
・主人公『舘 結子』について②
以前、スクスタにおけるあなたちゃんサイドと説明したが、性格は大きく違う。自分の信念を否定されたら普通に怒るし、他人の意志に簡単に左右されない(と言うかスクスタ版あなたちゃんが聖人君主過ぎるだけ)。個人的にはやっぱりランジュにどうこう言われたり、同好会の頑張りを全部スクールアイドル部の実績にされたりした辺りのところで一度くらいは本域で怒りの感情くらいは見せてほしかったなって思う。だから、その全部をオリキャラの結子へ落とし込んだって感じですね。
アニガサキSS劇場④「最強、2年生ズ」
せ「優木、せつ菜ですっ!(バァーーーン!!)」
愛「はろはろ~、愛さんだぞっ!」
歩「う、上原歩夢です」
侑「すっごーい、ときめいちゃった!高咲侑だよっ!」
せ・愛・歩・侑「「「「四人揃って、公式虹ヶ咲戦隊ニネンジャーズ!!」」」」
せ「くぅぅぅぅぅっ・・・・・・・今の紹介はすっっっごく良かったんじゃないですか!?」
愛「あっはは、愛さんも久々にテンション爆上がりだったよー!」
侑「戦隊モノってやっぱりいいよね。ときめき感じちゃう!」
せ「侑さんも分かりますか!?じゃ、じゃあ、今度おすすめの作品お貸ししますねッ!」
歩「あはは・・・・・・私にはよく分かんないや」
ラ「(ワクワク、ソワソワ・・・・・・)」
*ランジュが なかまに なりたそうに こちらをみている・・・・・・!
せ「あ、皆さん、あちらの方を見てください」
歩「あれ、あの子って・・・・・・」
愛「あー、そっかぁ。此処は時系列関係ないから遊びに来たみたいだね、どうする?」
侑「取り敢えず放置で」
To be continued...?
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
Side:ランジュ
「――状況はどうかしら?」
ステージで披露する曲目が全て終わり、観衆の熱烈な歓声を後に楽屋へ戻るアタシ。そして、楽屋に着くなり一人のスーツ姿の男がアタシの到着を待ちわびていたようだった。同好会の人々がどうなったか、アタシは戦況を彼に問う。すると彼は。
「申し訳ございません。我等としたことが不覚を取ってしまい・・・・・・彼の者達には逃げられてしまいました」
「そ、使えないわね」
「・・・・・・仰せの通りで」
彼等は『監視委員会』。アタシとママ・・・・・・理事長が学園でのスクールアイドル部の活動をよりアクティブにするために同好会の動きを監視する名目で設置した運営組織である。
・・・・・・本来であれば、強制力を押し出す為に生徒会に圧を掛けてスカウトしたかったが、今の生徒会を束ねているのは中川菜々。いや、スクールアイドル同好会の優木せつ菜である。故に一般企業から募集を掛けた上で、鐘家から彼等に事前報酬を4割程前払いしているはずだが。はっきり言って金の無駄遣いだったわね。
「それで、最後に目撃したのは?」
「はっ、目撃と言うより逃げた跡と言いますか。部室棟1Fにある『帰宅管理部』なる部活動の部屋の窓が開いたままになっておりました。恐らく、彼らの協力でそこから外へ逃げたのではないかと」
「へぇ・・・・・・『帰宅管理部』、ねぇ」
理事長を務めているママもあまりに適当過ぎる。確かに此処は「自由な校風」で親しまれている虹ヶ咲学園だ。しかし、だからといってこれを筆頭とする色々と胡散臭い名前の部活動をそのまま放置しているのもどうかと思うが。まぁ尤も、このアタシに楯突くのなら、例えあの人の擁護があろうとなかろうと一切の容赦はしない。
「じゃあ命令よ。次はその『帰宅管理部』を潰しなさい」
「・・・・・・!?し、しかし、理事長様の情報では彼等と『ムーンカテドラル』が通じていると・・・・・・」
「『ムーンカテドラル』ぅ?知らないわよ、いいから潰しなさい」
「・・・・・・承知、致しました」
何にせよ、アタシがスクールアイドル同好会の全てを部に吸収さえできれば、全ては詮無き事。一応の対策として、その他の一般生徒とは既にお友達になって貰った。まだまだ一部ではあるが、それもあともう少し。生徒会と同好会が陥落すれば、全てはアタシのものになる。
「待っててね、シオ」
「アタシが必ず貴女を同好会の呪縛から解放してあげるわ」
全ては親友を救う為とここの全校生徒と等しくお友達になる事。そして、ゆくゆくはアタシのスクールアイドル部が掲げる革命の旗の下で全てのスクールアイドルと繋がる事。これが今のアタシの野望、夢のような現実の完成形。これだけは必ずや成し遂げて見せる。
――この、鐘嵐珠の名において。
Side END
「「「「「「――ようこそ、”NLNS”部へ!」」」」」」
拝啓、実家の祖父様。私は如何やら、友達の選び方を間違ったようです。
「・・・・・・はっ、しまった!?つい兄につられてこのアサちゃんまでもが厨二病の真似事を!?」
「・・・・・・慣れって怖いのだわ」
何かこう・・・・・・良さげな紹介シーンを終えた後、麻沙音ちゃんと奈々瀬ちゃんの二人は自分達の身体が淳之介君の動きと連動するように動いてしまったことを嘆いているようだった。しかし、他の三人は寧ろそういう風ではなく。
「やったぁ、綺麗に決まりましたね、淳之介くん!」
「うんうん、漸くチーム感が出て来たんだな、嬉しいんだな!」
「たいみんぐはこれ以上無い程に正確で御座いました。どうぞ、文乃をお褒め下さい、淳之介様」
素直に喜びを分かち合っていた。あれ、もしかして同類なのかな?
「流石は文乃だ。よしよ~し」
「ぬっへっへ・・・・・・!」
「ああっ、文乃ちゃんだけズルい!淳之介くん、私もナデナデしてください!あ、でもどうせなら頭じゃなくておっぱいとかお尻でもいいですよ!」
「ええっ!?あー、じゃあ、私は~・・・・・・よし、頑張った淳くんをナデナデだ!」
「え゛ん゛っ!?」
そして自動的に形成されつつある、橘淳之介専用ハーレム。・・・・・・もう何でもいいや。
「あああ、くそぅ!兄を見てたらもう我慢の限界だ!愛しゃん、ななしぇさん、やっぱりここはわれわれとしてもたいこうするべくむこうのへやでしっぽりとゆめのような3Pを・・・・・・!」
「ナナセっち~、3Pって何?」
「・・・・・・・愛は気にしないでいい事よ。もぅ、大勢人がいる中でそんなこと言っちゃめーでしょ?」
「はいぃ、ぜんしょしまふです、でっへっへっへっへ・・・・・・!」
前回迄では確かにシリアスだったのに・・・・・・おかしい、まるで空間が歪んだみたいにおかしい。
「ん゛ん゛っ!・・・・・・・皆さん、取り敢えず現状をおさらいしましょう」
ヘンテコな空気に耐えられなくなった栞子ちゃんが咳払いをすると共に、部屋の中の空気が一瞬にしてピシャリと入れ替わる。おぉ~流石は生徒会副会長・・・・・・!
「今より数刻前、私達スクールアイドル同好会はランジュ率いるスクールアイドル部の妨害を受けて『帰宅管理部』の・・・・・・」
「『NLNS』だ、これからはそう呼んでくれて構わない」
「・・・・・・『NLNS』の皆さんの協力のお陰で此処まで逃げ果せることが出来ました。それに関しましては我々一同、感謝の念に堪えません」
「残された問題は帰路の確保と言う事ですが・・・・・・恐らく、現状で脅威はないとだけ宣言します」
その場にいるスクールアイドル同好会とNLNSの皆が栞子ちゃんの話に聞き入っていた。目まぐるしい状況の変化に頭がおかしくなりそうだが、今は気にしている場合ではなさそうだ。
「でもさ、しお子。もしかしたらさっきのスーツ男がまだ学園内にいるかもしれないし・・・・・・」
「いえ、それについては問題ありません。先程のアレは我々の行動を一時的に妨害するだけの、謂わばスクールアイドル部からの牽制のようなものです。今頃はきっと解除されているはずでしょう」
ランジュならきっとそうするはずでしょう、と最後に付け加えた栞子ちゃんの言葉にひっかかりを覚えた果林さんがすぐにそれに対しての質問を返した。
「ふぅーん・・・・・・まるで、昔からあの子を知ってるような口ぶりなのね、栞子ちゃん?」
「えぇ、まぁ。何せ、私とランジュは小さい頃からの幼馴染み、ですので」
「・・・・・・本当にそれだけかしら?」
「何がおっしゃりたいかは分かりませんが、私は皆さんの味方ですので。悪しからず」
直ぐに警戒を解かない果林さんの続けざまの質問に、あくまで冷静に答える栞子ちゃん。確かに私達に被害を与えた人と親しい関係にあるならば疑われても何も文句は言えない。けど、やっぱりこういう部員同士の衝突というかそういうのは見ている此方の方が辛くなる。
「これは仮の話よ。もし今、裏で栞子ちゃんとあのランジュって子が繋がっていた場合、さっきの帰路の話に関しても罠だったりしないかしら?」
「ちょっと、果林ちゃん!?それは流石に言いすぎだよぉ・・・・・・!」
「いえ、大丈夫です、エマさん。私とランジュの関係性を言えば、真っ先に私が疑われるのは分かっていましたから」
「現状の私はそれに反論出来る証拠を持っていません。ですが、これだけは言わせてください」
「――今は、私を信じてください。同じ同好会の仲間として皆さんの安全は保障致しますので」
自身に疑いの目を向ける果林さんの目を真っすぐに見据えながら、そう発言した栞子ちゃんの赤い瞳が何かを果林さんに訴える。その目を向けられた果林さんは、やがて溜息を吐いて口を開く。
「そ、関係性については否定も肯定もしないのね。分かったわ、一先ずは信用してあげる」
「ご理解頂き、ありがとうございます。では今後についてですが――」
果林さんと栞子ちゃんの間に漂っていたピリピリしたムードが果林さんのその言葉で一気に覚める。取り敢えずは一安心、と私はほっと胸を撫で下ろす。
その後。スクールアイドル同好会とNLNS部による合同での作戦会議が1時間に渡り続いて、各自の区切りのいい所で終了の宣言がされ、今日はそのままお開きとなった。
「ふぅ・・・・・・・」
虹ヶ咲学園前の自動販売機。解散後に他のメンバー達が帰路に着く中、自販機で買ったコーヒーを飲みながら結子はそこにいた。とある人物に待ち合わせ場所として指定されたからである。そして、その人物と言うのが。
「あの、お待たせしました。結子、先輩・・・・・・」
「そんなに気を遣わなくても大丈夫だよ、かすみちゃん」
そう、同好会最後の防壁として結子を頑なに認めようとしなかった中須かすみであった。心配そうな顔をする彼女の呼びかけに対して、結子は優しく笑って返した。
「それで、今日はどうしたの?」
「うえっ!?え、ええっとですね・・・・・・その・・・・・・い、今まで変に無視してしまってごめんなさい!」
かすみが結子に向かって謝罪の言葉を述べながら、勢いよく頭を下げる。結子は急に謝られたものだからどうしたら良いか分からないといった表情を浮かべ困惑していた。すると、そんな結子の考えを察したかのようにかすみは瞬時に顔を上げて、更に言葉を続けた。
「最初、侑先輩から結子先輩の事を聞いて・・・・・・それで侑先輩がいなくなって結子先輩が代わりに同好会に来て・・・・・・同好会の皆は割りと早い段階で結子先輩と打ち解けて。なのに・・・・・・」
「かすみんばっかり意地を張ってて、でも、何となく侑先輩の居場所が突然知らない誰かに奪われたみたいで・・・・・・だから、かすみんは・・・・・・かすみんはぁ・・・・・・!」
その先を言おうとして、言葉に詰まる。果たしてこの言葉を向けても良いのだろうか、自分達が危険に晒された時、必死に体を張って守ってくれた勇気ある先輩に。
今まではそれを何回心の中で思って叫んでいた事か。しかし、心の中で思うだけと実際に言葉にするのとでは重みが違ってくる。それは例え勉学であまり成績が芳しくない彼女であっても十分に理解できることであった。だからこそ、その先を言って恩人である彼女を傷付けてしまわないかが、どうしようもなく怖かったのだ。
「かすみちゃんは、偉いなぁ」
「へっ・・・・・・?」
そんなかすみの姿を見て、結子は彼女の頭を優しく撫でた。自分でも良く分からない、初めての体験。だが、これはもしかすると噂に聞いた「母性本能を刺激される」と言うヤツなのかな、と頭の中でそう解釈し、本能のままに彼女の頭を撫で続けた。
「寧ろ私が此処に来てから今までの皆の受け入れ様が凄すぎただけでさ。かすみちゃんの反応が多分一番普通なんだと思う」
「そりゃそうだ。いきなり他人が大きい功績を残した後に臨時と言う形ではあるとはいえ別の人が入る・・・・・・そんなの、抵抗があって当たり前なんだよ」
読者諸君も学生の身であった頃……または現在進行形で一度は体験したことはないだろうか。自分が尊敬していたクラスの担任が大人の事情で別の教師に代わるという体験を。
昨今の問題である学校の教師達の質の低下。これによってクラス内による、いじめを筆頭とした様々な問題・・・・・・それが深刻化しつつある。クラス担任というのはコミュ力が低い生徒にとっては親の次に身近な大人だ。故に、その立場にある人間が全く別の性格をした人間に代わるというのは中々子供心ながら精神的にもかなりの負担を強いることになる。
スクールアイドル同好会を自身の絶対的な居場所として捉え、色々なトラブルに見舞われながらも再興した同好会の象徴的存在、高咲侑。彼女の代わりが来るということは、まさにかすみにとっては前述のそれと同義であり、決して認めたくない事象の一つであった。
「あはは、やっぱり私じゃ侑みたいな精神的支柱にはなれないのかなぁ?」
結子は心にもない事を言って笑ってみる。自分でも薄々気が付いてはいた、平和を象徴する存在である高咲侑の対極に存在する自分では決して侑の代わりにはなれないのではないかと。事実、それは誰が言わんとする前に当人である舘結子自身が一番良く分かっていた事だからだ。
「そんな事・・・・・・そんな事、ありません!!」
「かすみちゃん・・・・・・」
「確かに、侑先輩は凄い人です。ちゃんと同好会の皆の事も見てくれてるし・・・・・・かすみんの事だって一番近くで理解してくれてる凄い人です!・・・・・・でも、それは結子先輩も同じなんですよ」
「普通なら怖くて動けないはずなのに、結子先輩は真っ先に私達の前に立って守ろうとしてくれました。あの行動はきっと侑先輩でも出来ないだろうから・・・・・・結子先輩だけのものだから・・・・・・!」
だが、それ以上に中須かすみと言う少女が真に持つ思いと言うか、心の奥深く・・・・・・根底に秘めた隠しきれない優しさ。それらが日常において輝く瞬間があるからこそ、彼女の人気は高いのだ。
普通であれば誤解されて嫌われてしまってもおかしくはない彼女の性格。だが、その裏に隠し持っているのは他の何でもない、自身が所属する同好会とそのメンバー達に対する熱き思い。そんな彼女の一面に気付けた者達が挙ってファンとしてついてくれているのであった。故に彼女は、自身と同じく裏で必死に努力を重ねて来たであろう人間に否定の言葉を掛けるなど出来る筈がなかった。
「少なくともかすみんはっ・・・・・・かすみんだけは、先輩が努力されてた事を知ってますから」
「だから、そんなに自分を否定しないであげてください。どんな努力だって、それが決して報われることがない・・・・・・他の人から見れば意味のない事だったとしても、その過程で本人がいろいろ苦しんだり悩んだりして頑張っているのなら・・・・・・それが全部、無駄じゃなかった証なんですから!」
「・・・・・・!」
長い長いかすみの思いの丈を全て含んだ演説を聞いて、結子は自然と歓喜の涙を流していた。ああ、何もかもが途中参加の自分はなれるはずがないと諦めてかけていたというのに、彼女は私を支えてくれようとしている。ならば、もう、迷う必要などないのだろう。私は、この2ヵ月の間の代理役を見事に熟しきり、その果てに自分だけの答えを掴んでみせると。
「あはは、まさか部活動の後輩に泣かされる日が来るなんて、夢にも思わなかったな」
「けど、そうだね・・・・・・うん、決めた。私は、今度こそこの道を最後まで貫く事にするよ」
「だから、有難う。かすみちゃん」
「ゔえ゛ぇ・・・・・・ひぐっ・・・・・・じぇん゛ばぁ~い゛!ゔあ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ~っ!!」
何故か自分よりも号泣してしまっている彼女を、私は優しく抱きしめた。スクールアイドル同好会の中で人一倍優しい心根を持った後輩、中須かすみ。今この時を以て、私は彼女に漸く認められたんだ。此処にいていいと。全てにおいて侑の行動と自身の行動を比較して顧みずともいいのだと。
「でも何で私よりも泣いちゃうかなぁ・・・・・・」
「だっで、だっでぇぇぇぇぇぇぇ・・・・・・!」
「おー、はいはい。頑張ったねかすみちゃん、よしよーし」
「ゔわ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁ~ん!!」
そして、私はかすみちゃんが泣き止むまでずっと彼女の頭を優しく撫でて、慰めてあげたのだった。
――その翌日の事。
「ふあ・・・・・・はあぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・!」
登校を終えて教室に着くなり、自分の席で大欠伸をする私。しかし、昨日の夜は凄かったなぁ。
『結先輩、結せんぱ~い!どうですか、寝間着のかすみんも可愛いでしょ~?』
『うんうん、凄く可愛いよかすみちゃん』
『うひゃあぁぁぁぁっ、ありがとうございますぅ~!かすみん、とっても嬉しいですぅ~♪』
泣き止むまで面倒見てあげたら、昨日のうちに態度が一変したかすみちゃんからあんな熱烈なラブコールが来るとは・・・・・・チョロ可愛いって、いいなぁ。
「おや、結子さん、おはようございます。どうしましたか、朝から大分お疲れのようですね」
「あ、菜々ちゃん、おはよー。いやぁ、昨日はかすみちゃんからのラブコールが凄くてね、参っちゃうよ」
「あはは・・・・・・それは、お疲れ様です・・・・・・」
すると、丁度菜々ちゃんが自分の鞄を持って教室に入ってきて、私に声を掛けてくれた。まさか菜々ちゃんの登校が私より遅いはずがない。きっと朝早くから生徒会室に用事があって今の時間までいたのだろう。そうに違いない。
「菜々ちゃんはもしかしてさっきまで生徒会室に?」
「えぇ、はい。普段はそうやって気付いてくれる方は少ないのですが、流石は結子さんですね。私の事を理解してもらえているようで助かります」
「ふっふっふ、クラス内唯一の情報通(自称)である私を舐めてもらっては困りますなァ・・・・・・!」
態とらしく手を顎の下に持ってきて、目の奥をきキラーンと光らせてみる私。しかし、情報通であるのは強ち間違いではなくて。何故なら、普通科は他の科より遥かに人数が多いので4クラスほどあるのだが・・・・・・同じ普通科2年の歩夢ちゃんとは他クラスで、侑は音楽科に行き(普通科だった時は歩夢ちゃんと同じクラス)、スーパー助っ人ギャルの愛さんは情報処理科。つまり、同好会内で私が唯一菜々ちゃんとクラスが同じで。更に、伝説のスクールアイドル『優木せつ菜』の正体が彼女である事を知っているのもこのクラスで私一人。・・・・・・もしかしたらその内、自称ではないホンモノになれる日が来るかもしれない。
「成程、宛ら昔の映画やドラマなどでよくいる主人公の友人のようですね・・・・・・!」
「・・・・・・それは私に主役が似合わんと言う意味での意表返しかな?」
「あっ、い、いえ、そうではなく!ただ情報通と言う言葉を聞くとそれを連想してしまう訳でして」
菜々ちゃんと会話をしながら私は、彼女の擬態スキルの高さに思わず唸っていた。とは言え、途中途中でボロが出そうにはなるが気付かれない様慌てて引っ込めて菜々モードに戻る様は本当に素晴らしい演技力を感じさせる。道理で演劇の道を行くしずくちゃんがリスペクトするはずだよ。
「へ~っ、会長もドラマとか見るんだ?」
「はい。やはり力を込められて作られた映像作品には心動かされるものがありますから、あまり見たくなくてもついつい見入ってしまうんですよね」
「あ~っ、分かる分かるぅ!横目に偶々チラッと良いシーンが映ると目が離せなくなるよねー」
「えぇ、それが映像作品の偉大さと言いますか醍醐味と言いますか。・・・・・・良い物ですよね」
他のクラスメイトに突然話しかけられてもこの通り。おぉー、高ぶりそうになりつつも見事にそれを抑えている・・・・・・流石だなぁ。
「あ、そう言えばさ、結子って会長と仲いいじゃん?」
「あ、私?ま、まぁ、良い方・・・・・・ではあるの、かな?」
「わ、酷ーい。幾ら鋼鉄の生徒会長でも仲が良いクラスメイトにそれ言われたら傷付くよー」
「お、お気になさらず・・・・・・」
まさかのクラスメイトの真意を突いた質問に遠慮気味に答える菜々ちゃん。本人は平然とできていると思っているだろうが先程よりも明らかに内心でションボリしているだろうオーラが漂ってきている。嗚呼、菜々ちゃんのこういうオタク特有の素直に感情表現したいけどいざしてみたら周りにちょっと引かれそうで怖くて取り敢えず愛想笑いしてみるところ、好きィ!!
「それに結子、会長の事好きなんでしょ。球筋に出てるぞ~?」
「ゔえっ!?///」
「いやいや、球筋って何さ。野球やってんじゃないんだから」
「まぁまぁ、いいじゃないのさ。で、実際のところ、どうなの?」
その問いを受けた直後、横目でチラリと菜々ちゃんの様子を見る。おや、頬を赤くして何やらもじもじしているぞ、トイレにでも行きたいのかな???
「好き、だね。眼鏡っ娘枠は至高」
「分かりみが深い」
その瞬間、私とそのクラスメイトはがっしりと握手をしてお互いの中に眠る熱い思いを確認し合う。現実に男なんていらない、フェミニストもニッコリの世界の真理の域・・・・・・私達はそこに到達した。
「あ、あの、お二人共・・・・・・?一体、どうなされた――」
「「よぉ、眼鏡っ娘」」
「何故、いきなり属性呼びに!?Σ(・ω・ノ)ノ!」
趣味の合うクラスメイトの乱入によって騒がしくも微笑ましい・・・・・・そんな朝の一幕であった。
場面は飛び、本日も放課後がやってきた。さぁ、今日も楽しく部活をしよう。・・・・・・流石に練習の邪魔まではしてこないはず、ランジュって子も、その子の手先の『監視委員会』も。
「――あら。貴女、もしかして同好会のマネージャー代理の人?」
部室へ向かうとする途中、誰かに呼び止められた私は後ろを振り返る。すると、そこには今最も出会いたくなかった相手が待っていた。
「・・・・・・スクールアイドル部の、鐘嵐珠・・・・・・!」
「貴女もシオと同じでお堅いのね。同じ学年なんだし、普通にランジュでいいわよ?」
至って普通の顔で彼女はそんな事を言ってのける。普段ならば、私も此処まで警戒を強めないが妨害されたのが昨日の今日である。当然、近くに『監視委員会』の黒スーツの男達がいないものかと辺りを見回す。・・・・・・如何やら、今日は引き連れてはいないようだ。
「そう。じゃあ、ランジュさん。貴女の目的は何?どうして同好会の皆にあんな真似を?」
「言ったでしょう、これは戦いだと。でも、昨日の部下達の非礼は詫びさせてもらうわ、御免なさい」
出会った時から浮かべていた余裕の笑みを崩さぬまま、彼女は礼儀正しく姿勢を正して首を垂れる。既に昨日の時点で倒さねばならない敵であることが分かっている為、その謝罪すら全く反省の色が見られないように思えた。それでも彼女は何も気にすることなく、言葉を続ける。
「アタシはね、ただあの子達をスクールアイドルとして輝かせたいだけなの」
「今だって、十分に彼女達は輝いていると思うけど?」
「いいえ、違うわ。貴女のそれはシロウト目の判断ね。考えてもみてよ、彼女達はこれまでのスクールアイドル業界にはなかったソロアイドルとして羽ばたこうとしている。それは良い考えだと思うわ、正直に言っていい線を言ってると思う」
「でも、だからこそ足りないの。今までになかった常識を新たに作り上げる・・・・・・そう、これは謂わば一種の革命のようなモノ。それを成し遂げる為には劇的な舞台に似付かわしい劇的な演出こそが必要不可欠。でも、今の彼女達ではまだそのレベルにまで達せていない」
「だから、アタシが直々にその道のプロの力を借りて、スクールアイドルに必要な要素全てをパーフェクトに鍛え上げる。そうすればきっと彼女達も急成長間違いなしってワケ。理解了?」
理解できたか、だって?冗談じゃない。だからって彼女達と侑の居場所である同好会を活動停止にさせるような真似をしたとでもいうのか。そんな事、権力も何も持ち合わせていない普通の一般学生がやっていい事の限界を超えている。はっきり言ってやり過ぎだ。
「確かにプロの手を借りるのは悪い事じゃない。でも、今より良い環境で練習できるようになるとはいえそれを他人に強いるのはあまり褒められたことじゃないね」
「何で?別にいいじゃない、全ては”善”で全てが”アタシ”なんだもの。これは良い事よ」
彼女の言葉に私は自分の耳を疑った。何だ、その極論ともいえる暴論は。全ては”善”で全てが”アタシ”?ふざけるな、それではまるで自分自身が正義の権化であると思い上がっている醜いヒトのようではないか。
「良い事な訳がない。ともすれば、貴女はただそれだけの為に、彼女達と侑の居場所を奪おうと言うの?」
「・・・・・・貴女も同好会と言う呪縛に囚われてしまっているのね」
「大丈夫よ、アタシは絶対に貴女もシオも彼女達も助けてあげられる。そう、絶対によ」
いや、落ち着け私。もしかすると、もしかするとだ、彼女は同好会の事を単に誤解しているだけではないのか?現に彼女は私達を救うと言った。なら、その誤解さえ解けばまだ説得の余地があるかもしれない。私は意を決して次の言葉を紡いだ。
「ランジュさん、貴女はもしかして同好会の事を何処かで誤解しているんじゃないの?」
「・・・・・・誤解?まさか、このアタシが間違える筈がないもの。在り得ない」
「アタシにとって討つべきは高咲侑ただ独り。これには変更も妥協も一切してあげないわ」
彼女の返答を聞いて、数刻前の希望的観測をした自分を思わず呪い殺したくなる。やはり彼女は此方の話を聞く気はないらしい。耳にラードが・・・・・・いや、耳が完全に
「何れにせよ、同好会は必ず潰すわ。どんな手を遣ってもね」
「そんな事、一介の学生である私達に出来るはずがない」
「いいえ、出来るわ。だってここの理事長様は・・・・・・」
「アタシのママなんだもの」
何だって?いや、しかし、それは当然の帰結か。だって、一介の生徒であるだけの彼女がなぜこんなにも堂々と間違った論を振りかざせるのか、そしてどう見ても部活動同士の交流として最も適切ではない行為まで働いているというのにそれを上が見逃すはずがない。そうか、理事長が母親だと言うなら納得だ。恐らく今までもそうやって過剰に甘やかしてきたのだろう、そんな一家庭の下手なコントが災いして、同好会の皆が危険に晒されたって訳か。全く・・・・・・下らなさ過ぎて反吐が出る。
「只、潰すだけじゃ物足りない。だから、アタシの理論が本当に正しいんだって事を皆に理解してもらう。それで同好会から部に移ってもらって高咲侑以外が抜けたところで潰す」
「そんな横暴を通して許されるとでも?」
「それは大丈夫。何たってアタシの協力者はこの学園内でも日毎に増え続けているわ」
「手段は簡単よ。その人が望んでいるけれど出来ない事情があるから出来ずにいる事をその事情を取っ払って解決してあげるの、例えば資金提供とか、ね」
成程、言葉で言って通じぬなら金で黙らせると。そういう事か、実にやり口がドラマや映画などで出てくる悪役のようでゾッっとする。恐らく、今の彼女の歪みようでは私がどうこう動いたところで直せるモノではない。
「あ、もうこんな時間なのね。貴女とはもっとお話ししたかったけれど今日は一先ず此処まで」
「・・・・・・」
そんな事を独り言ちって彼女が私に向かって一礼をする。行動以外は本当によく出来たお嬢様なんだけど同じ女性としてどころか同じ人間としてよく思えないそんな存在だった。
「そうそう、すっかり聞き忘れてたわ。貴女、名前は?」
「結子・・・・・・舘結子だよ」
「結子。へぇ・・・・・・いい名前、益々気に入っちゃった」
「それじゃあ結子・・・・・・ううん、ユイ、再見吧。次は必ず貴女を手に入れて見せるわ」
また会いましょう、そんな台詞を残して彼女・・・・・・鐘嵐珠は何とも風格のある歩き方でその場から去っていった。私はこの時に思った。もし、次に彼女と再び相まみえる時があるならば、それはこの戦いに決着がつく戦いの最中であると。そんな予感が。
「はぁ~・・・・・・やっと着いた」
「おお~重役出勤とは珍しいですなぁ・・・・・・って、何だかゆいゆい疲れ切ってるね、大丈夫?」
ランジュとの不毛な会話を切り抜け、無事部室へと辿り着いた私をいの一番に介抱してくれたのは同級生の愛さんだった。
「話が一方的すぎる相手との会話って、こんなに疲れるんだね・・・・・・」
「んん~?よく話が見えないけど、ゆいゆいも苦労してるんだなぁ。よーし、ここは愛さんのダジャレで気分を解してあげる!」
侑じゃないんでそれは勘弁してください、と心の中で思っても、愛さんの元気溌剌な笑顔を見ると不思議とそれを伝えるのはナンセンスだという結論に至ってしまう。つまり結果は。
「行くよー!誰とー?IKUZO~、GoToで誰が得をしたの?ゴトゥーさん!りなりーが凄い発明したんだって!りな(あ)りー?」
「わーい、面白ーい・・・・・・」
当然こうなる。侑みたいに笑いのレベルが赤ちゃんだったらどれ程良かったことか。まさか人生でこれほどまでに気を遣わねばならん時が来るとは思いもしなかった。
「あの、愛さん?其方の方は?」
そこへ、部屋の広いテーブルの椅子に腰かけていた他校の制服を着た女の子が愛さんに話しかけてきていた。其方を見やると如何やらもう一人・・・・・・此方も違う学校の制服を着ていた。
「駅弁が~・・・・・・と、姫乃っち。ごめんごめん、紹介し忘れてたよ」
「聞いて驚け!この子がウチのゆうゆの代わりにマネージャーをしてくれてるゆいゆいだ~!」
「え、えっと、マネージャー代理の舘結子です。よろしくお願いします」
言いかけたダジャレを言うのを断念して、愛さんがテンション高めに私の事をその子に紹介する。アタシもそれに倣って軽く自己紹介をした。もしかして愛さんの知り合い・・・・・・かな?
「ふふっ、私は藤黄学園の綾小路姫乃です。此方こそ、不束者ですがよろしくお願いしますね」
「あ、ええと、東雲学院の近江遥、です。お姉ちゃんがいつもお世話になっております」
ふむふむ、姫乃ちゃんに遥ちゃんか。・・・・・って、遥ちゃん、さっきお姉ちゃんって言った?苗字が同じだから何となく引っ掛かりはしたが。成程、彼方さんの妹さんか。
「それで、二人は違う学校の生徒さんだよね?何でウチに?」
「あぁ、その件ですが・・・・・・近日中、此方のイベントが開催されるようなので、虹ヶ咲の皆さんにも是非参加頂けたらなと思いまして」
そう言って、姫乃ちゃんが見せてきたのは近々DIVERCITYで開かれるDIVERフェスというイベントへの案内状であった。へぇ、こんなのがあるんだ。
「前回の果林さ・・・・・・こほん、皆さんの参加で非常に好評だったという事で第2回が開かれるようなのですが、宜しければまた私達と参加して頂けませんか?」
「あー、前のフェスはウチの代表としてカリンが出たんだよねー。そっかー、もう一回やれるんだ!ねぇねぇ、だったら次はさ、私が出たーい!」
「ちょっ、抜け駆けはズルいですよ、愛先輩!やっぱり此処は世界一可愛いかすみんの出番だと思いませんか?ね、結衣せんぱーい?」
「でしたら、私も参加したいです!結さん、いいですよね!?」
フェスへの参加の話が来た途端に愛さんとかすみちゃんとせつ菜ちゃんが真っ先に手を挙げて参加希望を表明する。先を越されはしたがこれには同好会の他の面子も黙っていられなかったようで。
「私も是非出場してみたいです!日頃演劇の成果、皆様にお見せしたいです!」
「私も参加したい。璃奈ちゃんボード『ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・!』」
「私も・・・・・・出てみたい、かな?侑ちゃんが帰ってきたら見せてあげたいし・・・・・・!」
「いやいや、次は彼方ちゃんの出番だぜぇ?また皆と一緒に( ˘ω˘)スヤァしたいからね~」
「お姉ちゃんと一緒に出れたら、私は嬉しいです・・・・・・!」
「わ、私だって!前の果林ちゃんに負けないくらい、見に来たお客さんを癒したいもん!」
「エマ、私はヒーリング担当じゃないからね。ま、でも、また私が出るのも、悪くないんじゃない?」
「そうですよ!果林さんこそが王者・・・・・・果林さんこそがフェスクイーンなのですから!」
次々と挙手をするメンバー達。何故かこの話を持ってきた張本人の姫乃ちゃんと遥ちゃんも一緒になってワイワイし始めたけど。姫乃ちゃん、果林先輩のファンなのかな。
「・・・・・・」
「あれ、栞子ちゃん・・・・・・?」
そんな中、一人だけ椅子に座ったまま黙りこくっている人物が一人・・・・・・他でもない栞子ちゃんであった。栞子ちゃんは真剣な表情で考え事をしているかと思いきや少し難しい顔になって小さく唸り出したりと情緒不安定のように見えた。やっぱりまだ何か引きずっているのだろうか、心配だな。
「ね、栞子ちゃんは出なくていいの?」
「へっ?あ、ゆ、結子さん。いえ、私はまだ皆さんの実力と並ぶには程遠いので・・・・・・」
「えぇ~っ、そうかな?私は栞子ちゃんの練習してるところ見てもそうは思わないけど」
「・・・・・・練習同様に本番も上手く運ぶとは限りません。ですから、私はまた皆さんのサポートを」
少し影のある笑顔で私に微笑みかける栞子ちゃん。何だろう、今のままでは流石の栞子ちゃんと言えどもサポートをさせるのは色々と精神面に悪いのではないか。
「栞子ちゃんが何で悩んでるかは・・・・・・まだ私に話してくれないんだね」
「あ、ご、ごめんなさい、顔に出ていましたか?」
「ううん、いいんだ。ただ、答えに行き詰まったら何時でも頼っていいんだからね」
「はい、ありがとうございます。一応、もう少しで自分なりの回答が出そうなのですが・・・・・・そうですね、いざと言う時は遠慮なく頼らせて頂きますね」
今度はちゃんと明るい笑顔で返してくれた栞子ちゃん。気にはなるけど、そこは恐らく個人の問題である為、必要以上に干渉する訳にはいかない。取り敢えずは彼女が自分を頼ってくれるまで気長に待つとしよう。それも一つの信頼の形なのだから。
「ねぇ、ゆいゆい~!そろそろこっち来てくれないと決めれないよ~!」
「せんぱぁ~い、しお子だけじゃなくてかすみんも構って下さいよぉ~!」
「結さん!私、いいステージの演出を思いつきました!相談に乗って下さい!!」
「はいはーい、今行くからちょっと待ってー!」
背中越しに聞こえる催促の声に返事をすると、私は何時もの同好会の騒がしいテーブルの元へ真っ直ぐに向かって行った。過去の私には何もなかった。でも、今の私には大切な同好会の皆がいる。だから向こうがどんな手を使ってきたとしても、私は絶対に、挫けたりはしない・・・・・・!
Side:ランジュ
「はい、ランジュ。次の曲できたよ、確認してみて」
「流石はミアね!分かった、聞いて見るわ」
此処はスクールアイドル部の部室。理事長特権を使い、他の教師陣を買収し、生徒会を通さずに設置した普通ならば存在すること自体が憚られる部活動。だが、そこに所属するランジュは勿論の事、このミアと言う少女も学生とは思えない輝かしい功績を持っていた為、反論する事は許されない。日本人特有の集団心理がそれらの問題点を隠蔽し、一途に黙り込むことを強要した。
「ランジュお嬢様、ミア様。本日仕入れたばかりの茶葉で淹れた紅茶が出来上がりました」
「あら、セバス、ありがとう。ミアも、丁度いいからここで一旦休憩にしましょ」
「本当ならその時間もボクは有効に使いたいけど・・・・・・ん、分かったよ」
ミアが先程仕上げたとされる曲を部屋に設置された最高級のスピーカーで流しながら、優雅にセバスチャンの淹れた紅茶を口にするランジュ。室内にあるものは全てが最高級品、揃えたるは名立たる各界隈のプロの指導者達。まさに此処は、最初から勝利が約束された場所でもあった。
「そう言えばお嬢様。お耳に入れたい話が一つ」
「何かしら、セバス?」
「近頃、我らの施しを受けながら部の存在に苦言を呈す輩が出てきたと報告が」
「そう、もしかしてあの教師達かしら。全く、これだから
そう言って、軽く舌打ちをするランジュ。全く愚かとしか言いようがない、全ての”善”であるべき自分の行動に献金を受け取りながら告発しようとする輩がいる。要するにもう少し値を上げろと言う事だろうか。教師とてこんなものか・・・・・・本当に救いようがない。
「如何いたしましょう?」
「時代遅れの老いぼれにそこまでする義理はないわ。追放してやりなさい」
「畏まりました。それでは早速その手配に移ります故、失礼致します」
「えぇ、よろしくね、セバス」
主であるランジュからの命を受けて、セバスチャンが紅茶の台を片付けに掛かる。と、粗方片付け終わったところでセバスチャンは再びランジュに向き直り、こう提言した。
「しかし、このままでは何れ第2第3の愚かな者達が出てきて騒ぎ出すやもしれません。此処は、我々も手を打って確実にこの部を承認条件まで持って行き、生徒会を通す他ありませぬ」
「アタシはあそこの同好会以外から集める気はないわ。これは絶対事項よ」
「ええ、それは重々承知しております。ですので、そろそろ引き抜きの手引きを、と思いまして」
「わぁ、もう手段を思いついたの!?流石はアタシのセバスね!」
自身を絶賛するランジュの耳元へ口を近づけ、何やらこそこそと話すセバスチャン。そんな如何にも”悪”を絵に描いたかのような出来事が目の前で起こっているのも関わらず、一方のミアはそれらに全く興味を持っておらず、ただ静かに出された紅茶を愉しんでいた。
「良い作戦ね!でも、本当に上手く行くのかしら?」
「お任せ下さい、全ては我が主ランジュ様の仰せのままに。必ずやその二人を引き入れて御覧に見せましょう」
「分かったわ、そっちもお願いね、セバス!」
「畏まりました、お嬢様」
その時、セバスチャンの用意した2枚の写真がヒラリと床に落ちる。その2枚にはそれぞれ違う人物が一人ずつ写っていた。彼女達の名は。
『朝香 果林』
『宮下 愛』
何れも同好会に所属しているスクールアイドル達の名前だった。果たして、彼等は彼女達をどうやって部に引き入れようというのか。マネージャーの代理人である結子が守る使命に目覚めた今、どう彼女と相対し、どのような手段で近づこうというのか。今はまだ、神のみぞ知る。
Side END...
ランジュ視点から始まりランジュ視点で終わる……如何でしたでしょうか。
姫乃ちゃんと遥ちゃんが初登場。舞台は2回目のDIVERフェスへ。最後のシーンでお分かりの方もいると思いますが……そう、問題のあの話への突入です。対象のキャラ推しの方は心の準備をした上で次回更新をお楽しみに。
あ、先に行っておくと本作でしずくは向こうにはいきませんよ。