アニガサキ!-PASTEL COLLARS- 外伝 Episode of ランジュ 作:海色 桜斗
さて、オリジナル設定解説行きましょー
ノベライズ本編におけるオリジナル設定解説③
・東條希の通り名「トピー」
由来は希の誕生花である「スイートピー」から。当初は第3章の登場時まで名前隠そうと思ったんですが、スクールアイドルに夢中になって色々なスクールアイドルの動画を見まくった侑が流石に知らないはずないよなぁ…ってことで初登場にて早速の本名バラシとさせて頂きました。
・お台場の守護神『ユニコーンガンダム』
本編中で触れている内容は後日製作予定の前日譚「Episode of 栞子」の事の顛末までをさっくり説明したものです。ほら、実際に現実で動くはずがないものが何かこう不思議な力で起動するのって燃えるじゃないっスか!
・衛星落下事件
ユニコーンガンダムと同様「Episode of 栞子」の事の顛末までをさっくり説明したもの。元ネタは現在放送中の「デジモンアドベンチャー:」の宇宙ステーション落とし。ガンダム出張ってくるわけだし、これくらいせんと。
・300UCポイント
結子がこの回のみ発言した某バエルマイスターの「300アグニカポイント」と似たような響きの意味のないモノ。所謂小ネタね。
・虹ヶ咲マスコット連盟
本編中ではまだ名称として出してはいないが、文字通り虹ヶ咲に関連するマスコットキャラ達による一時的な協定組織。メンバーは、サスケ、ネーヴェ、アラン、オフィーリア、はんぺん。
アニガサキSS劇場⑤「最強、2年生ズ~続~」
ラ「待たせたわねッ、皆!放置からのランジュ、参入よッ!(ラァァァァァァァァン!!)」
愛「流石ランラン、今日もテンション高くてランランルンルンだね。ランランだけにっ!」
ラ「ふふっ、当然よ、愛。アタシは何時だって気高く咲く花の如くなきゃいけないじゃない!」
せ「ランジュさん、そんなにキャラ全開で大丈夫ですか?ネタバレになりませんか!?」
ラ「いいえ、無問題ラ!大体、スクスタやってくれてる人はランジュのキャラ、知ってるでしょ?」
せ「ま、まぁ、それはそうなんですが・・・・・・(突っ込み忘れてましたが、最初の謎SEは何だったんでしょうか・・・・・・?)」
侑「ランジュちゃんが来たら、もう私達怖いものなしだね」
ラ「当然よ、侑!出演記念として、鐘家の財力で公式から権限全てを買い取ってあげるわ!」
(それ以上はいけない)
歩「そう言えば、栞子ちゃんの寝そべりぬいぐるみが出るみたいだけど、ランジュちゃんのはまだなのかな?私、出たら買ってみたいな(アニメ未登場の癖に私の侑ちゃんに抱き着くなんて、許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない)」
ラ「ひうっ!?何か歩夢が怖い・・・・・・結子、助けてぇ!?」
(私は撮影係で忙しいからまた後でね)
ラ「そんなぁ~!?」
せ「しかし・・・・・・現存メンバーを全て揃えると、私達2年生組も中々キャラが濃いですよね」
愛「それが愛さん達だしねー、せっつーだって属性もりもりじゃん?」
せ「ふふん!何たって私は最初期からの謎の多いスクールアイドルですから!」
愛「うーん、ごめんせっつー。うまく言えないけど、多分せっつーは正体隠せてないよ、きっと」
せ「ゔえ゛ぇっ!?そ、そんな筈は・・・・・・!?」
侑「あはは・・・・・・という訳で!今回のSSは此処まで。次回からは、私達同好会メンバーじゃなくて、コラボキャラの人達や《μ’s》メンバーが来てくれるみたいだよ」
侑「何だか凄いときめきの予感・・・・・・!皆、絶対に見逃さないでね!」
ラ「ランジュの加入までしっかり見届けてよね!!」
侑・愛・せ・歩「「「「意外とちゃっかりしてるなぁ、ランジュ(ちゃん)(さん)・・・・・・」」」」
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麻『・・・・・・ら・・・・・・此方、Nullベース。聞こえてる、兄?』
麻『しかし、侑さんも予告するならゲストが誰か紹介ぐらいしとけよな』
麻『ま、そう言う何もかも完璧じゃないところが愛されてんのは、アサちゃんも分かってんだけどさぁ』
麻『って事で、次回のSSは第3章から活躍してくれる「CITY HUNTER」の主演のお二人の登場だ』
麻『・・・・・・公開前にアサちゃんと一緒に「CITY HUNTER」予習しようね、兄』
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Side:侑
「はふぅ・・・・・・疲れたぁ~」
ここは音楽科の生徒達が最後に通過する最長にして最大の難関、海外への2か月間の短期留学。その舞台ともなるべき街だった。希望生徒達が宿泊するホテルの周りには音楽に付随したありとあらゆる専門的なショップが立ち並び、その目を飽きさせない。その一人であった高咲侑も漏れなくその一人であった。
「同好会の皆、元気かなぁ」
遠く離れた異国の地にいても思うのは自身が発足したと言っても過言ではないスクールアイドル同好会のメンバー達の顔。一緒に濃密な時を過ごした彼女達は、たった数ヶ月間という短い期間でしかないがそれでも一緒に高め合った日々を通して深い深い絆で結ばれていたのである。
「あ、そうだ!電話してみよう」
思い立ったが吉日。侑は迷う事なく、携帯の電話帳を開き、同好会メンバーで幼馴染みでもある『上原歩夢』の名前をタップし、電話を掛けた。だが。
『現在、この電話は電波の届かないところにあるか電源が入っておりません。今一度確認の上――』
「あっれー、おかしいな???」
一応、此処に来る前にもしもの時の海外からの通話が出来るプランに同好会の皆で入って置いたはずだ。しかし、電話は何度かけ直しても誰にかけても一切通じることはなかった。
「もしかして電波障害か何か?うーん、困ったな」
そう言って、ネットに接続し、電波障害情報を調べてみる。すると。
『現在、この国内のみにおいて日本との通話ができない状況になっております。ご了承ください』
「えぇ~、そんなぁ!?何でこのタイミングでピンポイントで電波障害が起こるのさー!」
現状においてメンバーの誰とも通話したくとも出来ない。そんな歯がゆい状況に居ても立ってもいられず、ホテルの外へ飛び出した。これは素人目から見ても明らかにおかしい。まるで、誰かが意図的に日本への通信を拒絶しているかのように。
「すみませーん、固定電話を貸していただけませんかー!?」
侑は覚えたてで拙い英語を使いながら、外にいる人々に声を掛ける。しかし、その呼びかけに応じる者は誰もおらず、皆が皆、我が物顔で街を練り歩いて行った。
「んー、私が上手く言葉を喋れてないのかな・・・・・・どうしよう、誰か、誰か同郷の人は・・・・・・?」
辺りを見回す。だが、そこには同じ日本で生まれ育ったであろうと思われる人物は一人もおらず、やがて侑は落胆に溺れた。
「はぁ~っ・・・・・・付いてないなぁ、もぅ・・・・・・!」
久しぶりに皆の声が聞きたい。でも聞けない。そろそろ此方へきて1ヶ月程となる。残りは後もう1ヶ月。それを生き抜くために少しくらいは救いがあってもいいだろうと侑は思う。すると、そんな侑に救済の手を差し伸べる人物が現れた。
「やぁやぁ、お嬢さん。何事かお困りのようやんな?」
「・・・・・・!?あっ、は、はい!あの、実はですね――」
「うっふふ、そんなに焦らんでもええよ。ウチは逃げたりせぇへんから」
その人は独特な関西弁で喋っていた。馴染みはなくても、その発音・その声。全てが懐かしさを感じる。そして、侑は何故か自分はこの声を何処かで聞いたことがある。そう思った。
「へぇ。そんな事になってたん。気づかなかったなぁ」
「あの、貴女の家に固定電話はありませんか?それならもしかしたら日本に通じるかも・・・・・・!」
「あー、ごめんなぁ。ウチのとこには置いてないんよー」
彼女の返答を聞いて、もう駄目だ、と侑は思った。しかし、そんな彼女の姿を見て、顔にレースローブを纏った女は微笑みながら、こう諭した。
「別に、電話だけが手段ではないやろ。もっといい方法も他に一杯あるやん?」
「あ、そうだ!SNS・・・・・・!」
声が聴きたいという思いに駆られて、文章で会話をするSNSの存在をすっかり失念してしまっていた。侑はすぐにLINEを開き、同好会の共有チャットにメッセージを送ろうとした、が。
『メッセージが送信できません』
「駄目だぁ~・・・・・・!」
「あらまぁ」
アプリは開けるが、メッセージを送信しても横の矢印マークが全く消えず、エラーを吐く。電話の時と同じく何度繰り返しても、挙句携帯を再起動して見ても上手く行かなかった。
「もう、終わりだぁ~・・・・・・!」
「えぇ~っ、手段ならまだまだあるやん」
「もう無いですってばぁぁぁぁぁ~」
「ほんとにぃ?」
侑が現状で考えうる事の出来るありとあらゆる手段を試すもどれも無理な話。しかし、目の前の女性はまだ何かあるまだ何かあるとしつこい程に訴えかけてきている。
「じゃあ、その他の手段って一体何なんですかぁ~!」
「んー、それは勿論――」
『ババババババババババババババババババ・・・・・・・!』
女性が言葉を切った次の瞬間、侑達がいる場所の上空に一台のヘリコプターが現れ、滞空をしている様が確認できた。その常識を逸脱した状況に侑は思わず驚きの声を上げた。
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
「トピー様、如何いたしましたか?」
「えっとな~、何故か今ここじゃあ日本に電話もメッセージもできないみたいなんよ~。だから、この子の伝言を現地のラグナくんとミノリちゃんに伝えてくれる~?」
「ええ、お安い御用ですよ。それで、お伝えしたい事とは?」
ヘリから身を乗り出した男が侑のいる方を見て、そんな事を尋ねる。侑はその視線に気づき、驚いている暇はないとその男に向かって思いっきり叫んだ。
「虹ヶ咲の同好会の皆にー、後1ヶ月で戻るから待っててって伝えてくださーーーーい!」
「成程、成程。あの近頃有名な虹ヶ咲学園の方でしたか。了解です、必ずお伝えいたしますので」
侑の言伝を聞いて、再びヘリの中へと戻っていった後、男はそのままヘリで遠くの空へと飛び去って行った。な、なんでもありなのか・・・・・・世界の富豪人と言うのは・・・・・・!?
「さ、あの人が戻ってくるまでウチらもそれぞれ頑張ろうっか、到着したら連絡するから無理せぇへんようになぁ~!」
その時だった。顔が隠れて見えなくなっているその女性の別れ際の声を聴いて、侑の中にあった何処かで聞き覚えのある声と言う疑問が確信へと変わる。侑は思わず叫んだ。
「あ、あのっ!もしかして貴女は・・・・・・《μ’s》の希ちゃんですかー!?」
そんな侑の声に、少しびっくりしたような反応をした彼女は、やがて口を開いてこう言った。
「へぇ、ウチのこと知っててくれたんやね。でも、今日ここであった事は絶対に内緒ね!」
嗚呼、やっぱりだ。自分の思った通り・・・・・・しかして念願の。伝説のスクールアイドルとして名高い《μ’s》。そのアイドルグループの一員であった彼女にまさかこんなところで出会えるとは。運命の出会いに高ぶった感情をぶつけようとしたが、彼女にそう言われては仕方がない。侑は自身から溢れ出る気持ちをなるべく抑えながら。
「分かりましたーーーっ、秘密にしまぁぁぁぁぁぁぁす!!」
そう叫んで、彼女・・・・・・《μ’s》の東條希と別れたのであった。
「・・・・・・ふふっ、まさかまだウチらのあの一瞬を覚えててくれた人がいたなんて、感動モノやんな」
「こういう巡り合わせこそ、まさしく・・・・・・」
「スピリチュアル、やね」
Side:END...
一方その頃、虹ヶ咲では――
「・・・・・・・」
『おかけになった電話番号は現在、電波の届かないところか――』
「おかしいですね、何度試しても全く通じません・・・・・・」
ここは生徒会室。その部屋の中で栞子は、高咲侑に連絡を取ろうとしていた。だが、結果は同じ。向こうで侑が同好会のメンバーに連絡しようとしても連絡が取れなかったように、此方からも侑の携帯へ連絡を取る術が全くと言ってなかったのだ。
「菜々さん、其方は通じましたか?」
「いいえ・・・・・・やはり駄目ですね。何故か通じなくなっています」
「そう、ですか・・・・・・」
生徒会長である中川菜々と協力し、侑以外の音楽科転入手続きを行った生徒全員に連絡を試みるもやはり誰一人として通じる者はいなかった。
「固定電話でも駄目となると・・・・・・もう何者かが意図的に仕組んだとしか考えられませんね」
「何者か、と言うと・・・・・・やっぱり『監視委員会』でしょうか?」
「・・・・・・ええ、残念ながらそれで間違いありませんね」
スクールアイドル部との対決を見越したあのステージ、その裏の楽屋スペースでメンバー全員が黒服の男達に襲われかけた時。あの男達は確かに自分達を『監視委員会』の者と名乗った。偶々似ている組織名という可能性もなくはないが、敢えてここ虹ヶ咲をピンポイントで狙ってくるあたり、彼ら以外に心当たりはなかったのである。
「栞子さんを利用するだけ利用して、失敗してそれで諦めたかと思いましたが・・・・・・如何やら、あの時の事は単なる前哨戦でしかなかった、と言う事でしょうね」
「・・・・・・気になる事は沢山ありますが、一先ず私達にとってはDIVERフェスもありますから」
「取り敢えず、この事は結さんにも話しておきましょう。あの方なら、きっと護衛をしてくれます」
「そうですね。それと『NLNS』の皆さんにも協力を要請しますか?」
「今は頼れる戦力はより多い方が良いでしょうから。是非、そうしてください」
そして、二人は生徒会室を出て同好会の部室へと急ぐ。だが、彼女達はまだ知らない。敵の狙いがDIVERフェスを妨害する事ではなく、同好会所属のとある二人のメンバーだと言う事に。
「――それじゃあ、せつ菜ちゃんと栞子ちゃんが戻ってきたから、結果発表だよ・・・・・・!」
「結果発表ォォォォォォッ!!」
「な・・・・・・何で二回言ったんですか???」
年末の特番などでよくやっている格付け系の番組の某MCの物真似を小ボケで挟みながら、私は部室にて、事前に私と遥ちゃんと姫乃ちゃんと栞子ちゃんで審査員をして、そのほかのメンバーには踊りを披露してもらい、総合評価が高かった人が次のDIVERフェス枠に参加が出来るという前回のフェスで侑達が取った選考方法で予選会なるものを開き、その結果を皆に伝える時が来た。第2回DIVERフェスの参加という名誉を手に入れた今回の出場者は。
「優勝は・・・・・・宮下愛ちゃん!」
「えっ、アタシ!?おっ、おおおおおお、やったぁぁぁぁぁ!」
私が優勝者の名前を発表すると、その当事者である愛さんはその場で飛び上がり喜びを全身で体現していた。他メンバーは悔しそうではあったが、勝者が決まったのならしょうがないという事で皆一斉に愛さんにエールを送っていた。
「悔しいけど、今回はお預けって事ね。頑張りなさい、愛」
「応ともさ!愛さん、カリンの分まで頑張ってくるぞー!」
「うぅ~っ、また出られなかった・・・・・・ぐや゛じい゛~・・・・・・!」
「いやいや、かすかすもナイスファイトだったぞ~。次は頑張れ、かすかす~」
「かすかすじゃありません、かすみんですぅ!」
「愛ちゃん、おめでとう!前の果林ちゃんみたいに怖くなったらいつでも呼んでいいからね」
「ちょっ、エマ!?///」
「あっはは!うん、もしそうなったらその時はよろしくね、エマっち!」
「愛さん、頑張って。璃奈ちゃんボード『ファイト!』」
「ありがとう、りなりー!りなりーが応援してくれるなら愛さん百人力だぞ~!」
果林さん、かすみちゃん、エマさん、璃奈ちゃん。この4人から始まった愛さんへのエール掛けが一通り終わったところで、不意に愛さんがせつ菜ちゃんに声を掛けた。
「そいや、せっつー。最初はあんなにやる気だったのに途中で棄権したのは何でなのさ?」
そう、この中で誰よりもスクールアイドルへの情熱が高いせつ菜ちゃんだけが何故か今回の選考会をパスしていたのだった。その時の本人は何となくのぼやっとした理由で誤魔化したが、選考会が終わった今、果たして真実を答えてくれるのだろうか。
「前にもお話しましたよ、個人的に思うところがあると。ですから、私は大丈夫です」
「ホントにぃ?だって辞退した後も何か凄くソワソワしてたって言うか、終始何かやりたいんだけど何らかの事情でやれなくてもどかしいみたいな感じだったし」
「一人で無理しちゃだめだよ、せっつー。アタシ達、同じ同好会の仲間じゃんか」
「愛さん・・・・・・」
しかし、未だに意地のようなものは張り続ける彼女を見兼ねて、そういう他人の感情の機微に聡い愛さんが説得を試みていた。うーん・・・・・・最初は栞子ちゃんから始まって次はせつ菜ちゃんか。明らかに一人で抱え込んで無理をしそうな二人だけに、今のような状態は猶更心配であった。
「そう、ですね。皆さんも既に一度巻き込まれている当事者であるわけですし・・・・・・分かりました」
そう口にして、せつ菜ちゃんは今自分が思っている・・・・・・いや、正確には危惧している事を同好会の皆に分かりやすいように掻い摘んで話していく。「スクールアイドル部との対立が最近は均衡状態にある事」「栞子ちゃんと名誉部長の侑に電話をしてみても通じなかった事」「侑の他にカリキュラムに同行した生徒・教員達への連絡すらままならない事」そして何より。
「皆さんは覚えていますか、栞子さんの時に私達の周囲で暗躍していた『監視委員会』と言う謎の組織の存在を」
「ええ、そりゃあもう。一発派手な事をされたんだもの、忘れるのは無理な話ね」
「今回のスクールアイドル部の一件も恐らくあの組織絡みのものだと分かったんです」
「ええっ、そんなぁ・・・・・・!?」
「なので、私は一応生徒会長でもありますので、会場の安全確保に努めようかと思いまして」
せつ菜ちゃんのその断言にエマさんが困惑の声を上げる。しかし、私は何のことかさっぱりわからず、ただただ首を傾げるしかなかった。
「あぁ、そう言えばこの件は結子さん加入以前のお話でしたね。では、私から簡単に説明しましょう」
せつ菜ちゃんが言うにはこう。侑がスクールアイドルフェスティバルなるものを企画しようと同好会メンバーと動いていた時の事。突然、生徒会に当時の栞子ちゃんが殴り込みし、現・生徒会長だった菜々ちゃんに宣戦布告し結果は惨敗。その後、栞子ちゃんを今まで利用していた『監視委員会』が栞子ちゃんを捨て、強行手段としてお台場中心部へ人工衛星の落下を画策した。しかし、その場にいたスクールアイドルとそれを愛する人たち全員の気持ちが一つとなり、それがお台場の守護神「ユニコーンガンダム」を起動。人々の想いの力を増幅した「ユニコーンガンダム」の活躍によってその脅威を配する事に成功。計画が全て失敗した『監視委員会』はすぐに姿を消したのだった。
「へぇ、何か凄いね!あの『ユニコーンガンダム』が動いたんだ!」
「人工衛星の落下を聞いた時は悪夢と思ったけど、アレがまさか本当に動くなんて、ね」
「あの時に経験したことは、思えば全てが夢のようなそんな感じでした」
「まぁ、何であの時だけ動いたのかとかそう言うのは、未だに謎のままなんだけどねぇ」
「私もアニメは実際に見てたけど・・・・・・凄く驚いた。璃奈ちゃんボード『びっくり』!」
そうか、侑が前に言っていた身内のゴタゴタとはこの事件の事だったのか!本当にその事件身内のゴタゴタっていう表現だけで収集して良いのだろうかという突っ込みはさて置いて、う~ん・・・・・・私も実際に見たかったなぁ『ユニコーンガンダム』が動くところ。そんな風に私が悔しさを滲ませていると、今まで事の顛末を説明していたせつ菜ちゃんが凄くプルプルと震えていた。あ、せつ菜ちゃんのオタクスイッチがオンになった。
「嗚呼、鮮明に思い出したら凄く興奮してきました!皆さん!!良ければこの後『機動戦士ガンダムUC』と『機動戦士ガンダムNT』の上映会をしませんか!?」
「ほぅ・・・・・・そうですか。では、せつ菜さん。貴女はそれをどこで見る気なのですか?」
「ひいぃっ・・・・・・!?((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル」
「この人数で見るとなればかなり開けた空間でなければいけません。まさか、この間みたいに無断で学校に何かを持ってきている・・・・・・という訳ではありませんよね?」
「(もの凄い勢いで首を上下に振る)」
しかし、その提案をしたところでそれを聞き逃さなかった栞子ちゃんが物凄い形相を浮かべ、ドスの利いた声でせつ菜ちゃんを問い詰めると、せつ菜ちゃんはすっかり怯えてしまって、それ以上は何も喋らなくなってしまった。・・・・・・そっちも、ちょっと見たかったなぁ。
「駄目だよ、しおってぃー。そんなに怒ったらせっつーが可愛そうじゃんかー」
「あ、愛さん?いえ、しかし・・・・・・」
「しかしもこけしもないよ。例え悪い事でも、人の話は最後までちゃんと聞いてあげないと」
「す、済みません。この間の事もあって少しピリピリし過ぎたかもしれません・・・・・・」
そんな栞子に対してせつ菜を庇う発言をする愛さん。そうか、今までアニメとかゲームとかでしか見たことはなかったから信じてなかったけど、オタクに優しいギャルは本当に実在したんだ!
「せつ菜さんも済みませんでした」
「うえっ!?あ、いえ!そんなに気に病まなくてもいいんですよ栞子さん、私は大丈夫ですから!」
「うんうん、せっつーもしおってぃーもなかなか直りにくい中で仲直りできたね!仲直りだけにっ!」
喧嘩と言う程ではなかったにしろ、少しピリッとした空気をやわらげる役割を果たしたこの場での愛さんの活躍は素晴らしいものだった。いいね、300UCポイント。
「ええと、話を戻しましょうか。それでその問題の彼等ですが・・・・・・」
「次のDIVERフェスを狙っている・・・・・・そう言いたいのね、せつ菜?」
「はい、もし彼等の目的がスクールアイドル部との連携によって私達同好会の活動を阻む事だったとするなら、これ以上の絶好の機会もないでしょうしね」
「横槍を入れて私達の代表で選ばれたメンバーのステージを中断させて、同時に観客に虹ヶ咲のいるステージには襲撃が付き物と思わせて私達の総評を下げる。敵にとっては一石二鳥ね」
別に直接的にウチの同好会が関わっているという話ではないにしろ、相手はあのスクールアイドル部のランジュと手を組んでいる。虹ヶ咲の総評を私達への信頼毎下げるという、演出的にもあちら側に有利に働いてしまう・・・・・・上手く計算しつくされた計画と言う事か。
「なので、私は栞子さんと一緒に生徒会メンバーで会場周辺の警備をします。この間私達が協定を結んだ『NLNS』の皆さんと、結子さんにもその時は一緒に警備に当たってもらうとして」
「ステージ演出の操作は・・・・・・璃奈さん、またお願いしてもよろしいですか?」
「うん、分かった。頑張る」
璃奈ちゃんがこくり、と頷いた。
「ありがとうございます。それとステージに立つ愛さんのサポーターは前回のDIVERフェス担当の果林さんに」
「ええ、分かったわ。愛、よろしくね」
「おおっ、果林も来てくれるの!?愛さん心強ーい!」
果林さんがサポーターに入ると言う事で愛さんは大喜び。えっ、でもこの人確か侑のノートに書いてあった事前情報ではかなりの方向音痴じゃなかったっけ。一人で大丈夫なんだろうか。
「あ、それと果林さんが会場内で迷子にならないようにエマさんも同行お願いします」
「うん!私、頑張るね」
「ううっ・・・・・・それに関しては何も言えないわね。よろしく、エマ」
「任せてよ!」
が、その心配も杞憂。せつ菜ちゃんは如何やら果林さんが方向音痴であるという事実を侑と一緒に目撃していたらしいので、そこら辺もきちんと気を配っていたらしい。流石は生徒会長だ。
「またかすみん達を追い出して自分がステージに立つつもりなんですかね。ぐぬぬ、おのれぇ、スクールアイドル部ぅぅぅ・・・・・・!」
「いえ、今回ばかりは流石にそれは不可能かと」
「うえぇ!?な、何でですか!?」
「幾らあちらが資金力に長けているとは言え、DIVERフェスに関してはまだ私達スクールアイドルはお試し出演のような立ち位置です。如何にランジュさんとは言え、自分達が後々不利になる様な行動は決してとられないかと」
常識はずれな行動が多い彼女とは言え、流石に自身の今後の身の保証すら付かなくなるようなことは絶対にしないだろう。何せ、今回の参加は敢えて見送って私達同好会のライブの妨害を『監視委員会』側にやらせることで、私達に代わってそれ以降の活躍は彼女達が仕切る事になるはずなのだから。そんな将来の美味い商談条件をまさか手放すとは思えない訳で。
「あ、あの、結ちゃん!」
「わぁ、びっくりした!?」
私がスクールアイドル部と『監視委員会』対策で色々と考え事をしていると、不意に歩夢ちゃんが私に話しかけてきたものだからびくっとして振り返る。そんな私を見て、歩夢ちゃんはすぐに申し訳なさそうな顔をしてしまう。あああ、気にしてないから落ち込まないでぇ~・・・・・・!
「あ、ご、ごめんね。色々考え事してる時にいきなり話しかけちゃって」
「ううん、全然大丈夫!それで、何かな?」
「え、えっとね、良ければ結ちゃんの警護の仕事、私も手伝いたい・・・・・・いいかな?」
え、歩夢ちゃんが警護の仕事を・・・・・・?いやいや、まさかそんなやらせるわけには。
「無理しなくても大丈夫だよ、歩夢ちゃん?相手は只でさえおっかない相手だし・・・・・・」
「それでも・・・・・・!私も侑ちゃんから部活と皆を守ってってお願いされたから。だから、私にもできることがあったら何でもするから・・・・・・お願い!」
成程、そう来ましたか。うーん、どうしよう・・・・・・歩夢ちゃんにできる事と言っても何かあるだろうか。私みたいにムキムキな訳で無し、『NLNS』や生徒会の人達みたいに護身用の何かを持っているわけでもないし。参ったなぁ、私こういう子に必死にお願いされると弱いんだよなぁ・・・・・・。
「おや、歩夢さんも加わって頂けるのですか?それは力強いですね」
どうしたものか、と迷っているとその会話を聞いていたせつ菜ちゃんが突拍子もない事を言い出した。ち、力強いって何処が!?
「ええっ!?せつ菜ちゃん、正気!?」
「はい、正気も正気、寧ろ本気です!ね、歩夢さん」
「う、うん。ありがとう、せつ菜ちゃん」
「歩夢さんの侑さんを思う心は誰よりも強いので此処は存分に頼るべきかと!」
いやいやいや、そんな馬鹿な。大体、戦力が欲しいからと言って歩夢ちゃんを借り出す様な真似をして怪我でもさせてしまえばそれこそ侑に合わせる顔がなくなってしまう!
「それに大丈夫ですよ、結さん。歩夢さんには”彼”が付いてますから!」
”彼”!?えっと、それはもしかしてボディーガード役の男の子的な人って事・・・・・・?
「えっと、それじゃあ・・・・・・おいで、サスケ」
「サスケ?」
侑のノートにも書かれていなかった全く聞き覚えのない名前に首を傾げながら、部室の窓を開けて外に向かって歩夢ちゃんが両腕を広げるポーズ(すしざんまいでもバエルでもないからね!)をしたその瞬間だった。
窓の外に急に小さな長い影が現れ、その物体が歩夢ちゃんへ向かって飛んでいき、その綺麗な首に巻き付いた。な、あれはッ・・・・・・!?
『呼んだか、歩夢』
「ん、一緒にやってもらいたい仕事があるの。手伝ってくれる?」
『他ならぬ歩夢の頼みだ、やってやるよ』
「わ、本当!?ありがとう、サスケ!」
チベッタァァァァァ、じゃなくて喋ったァァァァァァ!?え、これどう見てもただの紫色の蛇だよね!?いや、現実に紫色の蛇なんていないけど。蛇が、人語を理解して、喋ってる!?
「あ、紹介するね。この子はサスケ、小さい頃からの私のお友達なんだ」
『ほぅ、侑の奴よりは頼りになりそうだ。まぁ、俺には敵わないだろうがな』
「こーら、今は侑ちゃんの代わりに頑張ってくれてる子なんだからそんなこと言っちゃ、めっ!」
しかもさっきから歩夢ちゃん普通に会話してるし。えぇ~・・・・・・何コレ。
「久しぶりですね、サスケさん!」
『応よ、せつ菜。確か選挙戦の時以来か』
「はい、あの時のサスケさんの御活躍には大いに助けられましたよ!」
『当然だ、この俺がやったんだからな』
ってせつ菜ちゃんまで!?も、もしかして同好会の皆と関わりがあるの、この蛇!?
「わぁ、サスケくんだぁ~!元気してた?」
『エマか。俺はこの通り大事ない、ネーヴェの奴は元気か?』
「うちのネーヴェちゃん?うん、夏休みに一回帰った時は元気だったよ~」
『だろうな。心配するまでもねぇか』
エマ・・・・・・さんは何かパッと見動物と会話できそうな感じだから自然体に見えるなぁ。
「サスケだ、元気してた?」
『璃奈。アランは大事ないか?』
「うん。この間、アップデートして空を飛べるようになった」
『はっ、璃奈程の腕を持つ主に迎えられてアイツも幸せだろうよ』
「そうかな?私、機械の心は分からないけど、アランがそう思っててくれるなら嬉しい」
璃奈ちゃんもか。っていうかさ、さっきから私の知らないネーヴェだとかアランだとか知らない名前が出てくるんだけどその方たちは誰なの・・・・・・?
「うわぁ、サスケだぁ!?」
『愛、何で怖がる?』
「い、いやぁ・・・・・・何かよく分からないけどサスケを見ると妙に落ち着かなくて」
へぇ、愛さんはもしかして蛇が苦手なのかな?そっかぁ、意外だな。イメージだとカエルとか虫とか普通に触れる方だと思ったけど。
「あ、そうだ。サスケ、オロチは戻ってきてる?」
『オロチか?あぁ、多分いると思うぜ』
『あら、呼んだかしら・・・・・・?』
サスケが皆に声を一通り掛けて歩夢ちゃんの元へ戻る。すると、今度は歩夢ちゃんがオロチという又もや知らない名前を口にする。そして、歩夢ちゃんが呼んだ途端にそれは姿を現した。
「オロチ~、久しぶりだね、元気だった?」
『アタシはアユムちゃんのお陰でいつも元気よ?』
「本当?えっへへ、ありがとう~」
『礼を言われるまでもないワ。一ファンとして当然の事よ』
今度は白蛇が出てきた。しかも、サスケとは比べ物にならない位大きな・・・・・・ざっと体長が8mくらいありそうな巨大な白蛇。軽く化け物ジャン・・・・・・。
「あ、この子はオロチ。虹ヶ咲に昔から住んでる池のヌシなんだって」
『オロチよ。アユムちゃんを守れと言うならいつだって従うワ・・・・・・』
その後。歩夢ちゃんの警護の件はサスケとオロチ、二人(?)の協力によって実現できる流れとなった。何だろう、歩夢ちゃん、蛇使いの才能があるんだろうか。いや、これ以上は何も言うまい。
それからというもの。虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会名義での2回目の出場に当たるDIVERフェスに備え、着実に準備を進めていった。不思議な事にその期間はスクールアイドル部の妨害みたいなものが入ることは一切なくまさに順風満帆。でも、私達はもしかしたら前みたいに油断したころにまた来るのかもしれないと気を張り詰めて、練習の場やリハーサルに挑み続ける。
――しかし、敵は既に私達の2手3手先を読んでいた。
それはDIVERフェスを前日に控えた、ある日の練習後の帰宅途中での出来事だった。
「ふいーっ、今日も疲れた疲れた~」
「そうかしら?その割には全然疲れてなさそうね、愛」
「そりゃあね!カリンも分かるでしょ、このライブを目前に控えたワクワク感って言うかさ・・・・・・!」
「ええ、それについては分かるわ。だって、一度あそこを経験してるんだもの」
その日、前回DIVERフェス出演者である朝香果林と今回の出演者となった宮下愛の二人は決起会と称して新宿まで足を延ばし、ショッピングを楽しんでいた。フリーとなった午後の時間を目一杯に使った二人は時刻がギリギリになるまで色々な場所を回り、或いは外にあるベンチでちょっと一休みしたりを繰り返して駅前を散策し尽くした。その帰り道。
「あ、見て、カリン!あそこ、お金持ちの人が良く乗ってる車だ!」
「あぁ、リムジンの事ね。珍しいわね、こんな場所でリムジンを見かけるなんて」
漫画やアニメなどの娯楽作品に登場するお嬢様・お坊ちゃまキャラが一度は乗ってくるであろう白塗りのリムジン車。二人が物珍しそうにそれをみていると、そのリムジン車は二人が歩いていた歩道の近くに一時停車し、ハザードランプを焚く。すると、中から一人の初老の男が姿を現した。
「お初お目にかかります。失礼ですが、お二人は虹ヶ咲スクールアイドル同好会所属の朝香果林様と宮下愛様で間違いは御座いませんか?」
「おおっ、もしかして愛さん達のファンの人だったり!?」
サッと振りかぶって、姿勢正しく挨拶するその男に愛は興奮を隠せぬようだった。それもそうだ、自分が今まで出会ったことのないタイプの人間と出会ってしまえば、彼女は興味を示さずに愛られない質なのであった。
「ある意味ではそうやもしれませぬ。なればこそ、今日はこの私めの話を是非ともお聞きいただきたいのです、よろしいですかな?」
「うわーっ、やっぱり!って事は、何々!?もしかして、豪勢な会場でライブのお誘いとか!?」
いきなりの未知なる体験と未知なる遭遇。自分の好奇心に先程から引っ張られまくりの愛であったが、それとは対極に果林は至って冷静だった。
「・・・・・・待って、愛。この人、怪しくないかしら?」
「そお?パッと見普通のおじ様に見えるけど?」
「・・・・・・愛は少し他人を疑う事を覚えた方がいいわね」
果林が愛には聞こえないように、小さな声でそう呟く。愛の天性の才とも言える程の人の良さは、果林自身も好印象を持っている。だが、それは時として何かを企んでいる人間に利用されてしまうかもしれない弱点にもなり得るモノ。彼女はそれが今の状況では後者となるであろう事を直感で感じ取ったのだ。
「おっと、そう言えば自己紹介が済んでおりませんでしたな。私共はこういうものに御座います」
そう言って男が差し出した名刺には『株式会社WCO 代表取締役補佐 藤井孝則』と書かれていた。如何やら、中々に偉い立場にいる人間らしい。
「成程ね。それで、その取締役補佐の方が私達学生に何の用かしら?」
「実は私、本業とは別に副業でとある家の執事もやっておりまして」
「へぇ・・・・・・その立場に甘えず態々遜る真似までするのね、アナタ」
「何、元々今の地位よりも其方が向いているという事でしょう。今の職を退いたらその道を考えるのもありかも知れませんなぁ」
男が笑いながらそんな事を宣う。ああ、やはりこの男は何処か信用できない。果林の中で疑念が確信へと変わった時、彼女は傍にいた愛の手を取り、その場から立ち去ろうとした。
「ちょ、ちょっとカリン、何処に行くのさ!?」
「何処にも何も家に帰るだけよ。行きましょ、愛」
「おやおや、此方の話はお聞きにならないというのですか?」
その場から早急に立ち去ろうとする果林とそれを引き留めようとする愛。そんな彼女達を見て、男は特別表情を変えることなくそう呟いた。早く逃げなければ自分と仲間の身が危険に曝されるかも知れない、彼女のその考えは本来なら非常に優秀な判断になるはずだった。しかし。
「それは残念ですな。では、この画面に映っている彼女達がどうなってもよろしいと?」
男は先程と同様に全く表情を変えずに果林と愛に向かって携帯に映った画面を見せる。そこに映り込んでいたのは。
「あれ、これってりなりーとエマっち?えっ、どういう事!?」
「この二人は人質って事かしら。随分と卑怯な手を使うわね、取締役補佐さん?」
そこには、果林と愛の最も仲の良い二人である天王寺璃奈とエマ・ヴェルデの二人が大勢の黒服の男達に囲まれている様子が映っており、画面外から激しい取っ組み合いの音が聞こえてきていた。恐らく、結子達が必死で抵抗してくれているのだろう。だが。
『あがっ!?』
『あ、兄、大丈夫!?』
『はは・・・・・・あんまり大丈夫ではないかもな。けど、退くのは難しそうだ・・・・・・!』
『くうっ・・・・・・!敵が遠距離攻撃を使ってくるなんて・・・・・・!』
「「・・・・・・!?」」
苦戦を強いられている仲間達。そんな中、果林と愛は黒服の男達が手にしていたものに目を引き付けられた。黒い鈍色の光を放つ、殺意を持ったコンパクトサイズの鉄の塊・・・・・・即ち、拳銃。日本においてはただの護身用であるはずの威嚇道具。それが本来の殺戮兵器としての一面を顕わにし、その冷たい銃口は静かに彼女達に向けられていた。
「貴方は何を考えているの、アレから出た弾が当たれば人が死ぬのよ!?」
「カッカッカ、ご安心なされよ。我等とて無益な殺生は避けたいところ。あれは暴徒鎮圧用のライオット弾というものだよ」
「まぁ、尤も、ライオット弾であっても当たりどころが悪ければ当然死んでしまうがね」
果林が檄を飛ばしたにも拘らず、男は特にこれと言って焦る様子もなく、ただニヤリと笑ってその映像を消して、携帯をポケットにしまった。これで彼女達と離れた場所にいる果林と愛には彼女達がどうなったのかを見ることは出来なくなってしまった。
「申し遅れました。私、鐘家にてお仕えさせて頂いているセバスと申します。同時に貴女方を捕らえる為にランジュ様より遣わされた『監視委員会』に所属する者でもあります。以後、お見知りおきを」
「監視委員会、ですって!?スクールアイドル部はこんなことをしても許されるの!?」
「
「ど、どうしよう、カリン!?このままじゃ、このままじゃりなりー達が!?」
「くっ・・・・・・!なら、こっちもなりふり構ってられない、わね!」
果林が鞄の中に忍ばせておいたゴーグル型の兵器を掛け、データベースを展開し、男に向かって一直線に突貫した。手に持つは結子から事前に預かった護身用スタンガン。恐らく、敵の旗本であるコイツを叩けば彼女達の安全が確保できる。そう読んでの事だったのだろう。だが。
「フッ、やはり動きは素人。まだまだですなぁ・・・・・・!」
「かはっ・・・・・・!?」
「カリン!?」
初老を迎えていると思って油断していた。相手はそんな年齢を感じさせることのないくらいに筋力が発達しており、流れるようなスピードで果林の攻撃をひらりと躱し、彼女の腹部に鉄拳を叩き込んだ。その瞬間、彼女は身体全体を駆け抜けるような痛みに襲われ、吐血。手にしたスタンガンは一回も電流を迸らせることも出来ずに落下。そのまま意識を失い、床に倒れ伏した。
「ククク、実に他愛ない。さて、次は貴方の番ですか?」
「何で・・・・・・何でこんな事するのさ!?」
愛はその場に倒れた果林の元へ駆け寄り、起こそうと試みる。その最中で未だに冷静さを保ち、果林を道端に落ちたゴミを見るような目で見つめる男に純粋な怒りをぶつける。しかし、当の本人である男は平然とした表情でこう言った。
「何故、で御座いますか。それはこれが戦いである証、至極簡単な話です」
「そんなの・・・・・・そんなのおかしいじゃん!私達はただスクールアイドルがやりたいだけなのに」
「ほぅ・・・・・・成程成程。でしたら、この事態を止める事の出来る打開策を、貴女に授けましょう」
「えっ・・・・・・?」
打開策、この言葉が精神的に追い詰められた者にどれ程の効果を発揮するか。それは火を見るよりも明らかな事実で。
「朝香果林、宮下愛。
「うえっ・・・・・・!?でも、そしたらあの子が・・・・・・ゆうゆが・・・・・・!」
「何も心配為される必要はない。貴女達は今し方選ぶ権利を勝ち得た勝利者だ。だが、注意なされよ、貴女方の判断一つで向こう側の方々の命は保証できなくなる」
「ッ・・・・・・!」
「さぁ、如何致しますかな?」
目の前の圧倒的な光景を前に愉悦に溺れる一人の紳士。かたや、自分達のせいで大切な仲間が命を落とそうとしているかもしれないと言う事実を突きつけられたか弱き少女。後者である彼女がその場で何を選択するか。
「分かり・・・・・・ました・・・・・・!カリンと一緒に行くから、皆にはこれ以上手を出さないで!!」
「フフフ、一方が物分りの良い方で助かりました。では、此方へどうぞ」
男が愛のその言葉を聞き、不敵に微笑むと車の扉を開けた。愛は倒れたままの果林を担いでゆっくりと車の中へと入っていく。もし今気を失っている彼女が目を覚ましたら勝手な判断をしたことで怒られるんだろう・・・・・・そんな事を思いながら。
「ああ、それともう一つ。貴女の明日のDIVERフェスへの参加は予定通り行っていただきますよ」
「同好会ではなく、我々スクールアイドル部名義での出場とはなりますが、悪しからず」
男のそんな言葉を最後に愛の乗った後部座席の扉がぱたりと閉まる。それから1分も経たない内に彼女達を乗せた白塗りのリムジン車は駅前をお台場方面へ向けて発車した。
「・・・・・・」
「ゴメン、皆。ゴメン、ゆうゆ・・・・・・!」
後部座席に倒れた友人を介抱しながら、愛は一人涙を流す。自分だけが何もできなかった、自分のせいで果林を危険に巻き込んでしまった、傷付けてしまった。学校の部活動の頼れる助っ人としてヒーロー扱いを受けてきた自身がこのザマだ。
「あははっ・・・・・・アタシってば、弱すぎだよ・・・・・・!」
何がヒーローだ、何が部活動の救世主だ。肝心な時に身体が動かないなんて本当にどうかしている。彼女の顔には何時ものようなあの晴れやかな笑顔は全くなかった。
「りなりー達、無事だと良いな・・・・・・」
それでも、自分にできることはやった。相手が何処まであの交渉を飲んでくれるか分からない。けれど、彼女は自分が・・・・・・いや、正確には自分と果林があちら側に行くだけで他のメンバー達がこれ以上危険な目に合わないのであれば、それでいいと思った。
「後で・・・・・・果林に、も・・・・・・謝ら、なく――」
――緊張の糸が切れた彼女は、そのままプツリと意識を失い、眠りの淵へと落ちていった。
「・・・・・・っ」
「「「「・・・・・・」」」」
その翌日の放課後の事。部室に集まった面々は全員が全員、意気消沈した悲痛な表情を浮かべて黙りこくっていた。テーブルの周りにある椅子には2つ程空きが出来ていて、昨日の午後に起こった騒動が原因で本来そこにいるべき2人がこの同好会からいなくなってしまった事を意味していた。
『・・・・・・以上、虹ヶ咲学園スクールアイドル部代表、鐘嵐珠さんのステージをお届けしました!』
TVには今日、DIVERフェス会場で披露されるはずだった愛の代わりに、部の代表であるランジュが代理としてステージを独占している姿が映っていた。当初、自分達と一緒に出るはずだった藤黄学園と東雲学園のスクールアイドル達もランジュによってバックダンサーに位置付けられていた。
「ごめん、皆。私が守らなきゃいけなかったのに・・・・・・守れなかった・・・・・・!」
そんな中、最初に口を開いたのは結子だった。守るのは自分の役割のはずだった、けれど自分の近くだけで精一杯で離れたところにいる仲間を助けてやれなかった。彼女にはその事実がどうしても我慢ならなかった。
「そんな・・・・・・!先輩は・・・・・・先輩は一生懸命頑張ってくれたじゃないですか!」
「かすみちゃん・・・・・・」
落ち込む結子にかすみが声を振り絞って、喝を入れる。確かに果林と愛を守ることは敵わなかったけれどあの時みたいに自分達を守ろうとしてくれた。その身体に幾つものライオット弾による弾痕を付けられても尚、アイドルである自分達を守るために人一倍奮起してくれた。そんな彼女を非難出来る者等、何処に居ようものか。
「私も、ごめんね。サスケたちも頑張ってくれたのに・・・・・・!」
『いや、謝るのは俺の方だ、歩夢。役に立てなくて済まん・・・・・・』
『全くだワ。流石にあの人数はアタシ達でもキツかったわね・・・・・・』
一方で、歩夢も傷だらけのサスケとオロチに寄り添いながら、そんな事を口にしていた。
「皆、ごめん。私、役に立てなかった」
「璃奈ちゃんも皆も悪くなんかないよ・・・・・・ごめんね、果林ちゃん・・・・・・!」
「これでは、何の為に生徒会長をやっているのか分からないではないですかっ・・・・・・!」
「・・・・・・今夜は彼方ちゃんでも、あんまりすやぴ出来ないかも・・・・・・」
「・・・・・・」
そして、虹ヶ咲学園に登校した私達に待っていたのは、理事長によるスクールアイドル同好会部室の使用禁止命令。そして、学校内での練習の一切を禁じるという、同好会の実質的活動停止を意味する制裁だった。部室を失った結子達は淳之介達の計らいで当分の間、放課後は『NLNS』基地に身を寄せる事となった。何故同好会と共に潰される予定だったこの部屋が残っているのかは謎だったが、こんな事態だ。逃げ込めるところがあるだけ奇跡的と言うべきか。
「・・・・・・皆さん、少し聞いていただきたいことがあるのですが、よろしいですか?」
「栞子ちゃん・・・・・・?」
部屋が薄暗い雰囲気に包まれる中、急に栞子が席から立ち上がり、メンバー全員の顔を見回す。そして、何かを決意したような表情になると、彼女は再び口を開いた。
「本当ならこの場で言うべき事ではないのかもしれません。ですが、昨日の件と言い、今日の件と言い、こんなやり方が私の幼馴染みのランジュのやり方ではないように思えるんです」
「でも、ランジュさんが命令したから、愛さんと果林さんが・・・・・・!」
「それは分かっています。けど、もしそれが本当だとしても嘘だとしても私はそれを確かめに行かなくちゃならない」
「ランジュの幼馴染みとして・・・・・・そして何より、これ以上スクールアイドル部と監視委員会に何も奪われないように・・・・・・侑さんのスクールアイドル同好会を守るために」
「私がスクールアイドル部に入る事で、捕らわれた愛さんと果林さんを手助けして、ランジュを説得して・・・・・・・監視委員会が何を企んでいるのか、調査して来たいのです」
現時点でランジュとの仲が良かった実績があるのは彼女だけだ。だからこそ自分が囮になって、スパイのような形で自然体で潜り込むことでランジュの背後にいるであろう監視委員会を探ってきたい。それが、今栞子が口にした言葉だった。
「そんな!?栞子ちゃん一人じゃ幾ら何でも危ないよ!?」
「そうだよ、しお子!考え直そう!?」
「歩夢さん、かすみさん・・・・・・・すみません。でも、これは私にしかできない事で」
「――部への潜入、ね。へぇ、面白いこと言うじゃねぇか」
その時だった。今まで誰もいなかったNLNS部の地下室の扉の前に見知らぬ男女が立ったまま此方の様子を見つめていた。男の方は灰色の髪のショートウルフに翡翠色の瞳。女性の方は肩まで伸ばしたオレンジ色のセミロング、そして何より、特徴的な蒼い瞳をしていた。
「だ、誰なんですか、貴方達は?」
「誰、ねェ・・・・・・ま、念の為、俺もコイツも通り名で名乗らせてもらうぜ」
「俺はラグナ。《ムーンカテドラル》所属のNo.0灰の狼だ」
「私はミノリ。この人と同じく《ムーンカテドラル》所属のNo.1晴天の化身だよっ」
《ムーンカテドラル》。結子達は初めて聞く名前に思わず首を傾げる。誰だかは分からないが、少なくとも部や委員会側の者達ではない事は明らかであった。
――彼女達《ムーンカテドラル》との出会い。それは、この後に続くとある男を巡る因縁の争いに発展するとは、この時に誰が予想できただろうか。そして、徐々にその戦いは結子達スクールアイドル同好会だけの問題だけでない大きな陰謀の塊となって襲い来る、その序章に過ぎなかったのだ。
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――俺を呼んだのは、君だろ?
……ちょっと盛り上がりに欠けたかなぁ、今回。
という訳で如何でしたでしょうか。シナリオの運びとしましては、前回の戦い(?)が同好会側についたばかりの結子の実力を向こう側が知らなかったことによるまぐれ勝ちのような感じで、今回が敵がそれを見越したうえで同好会側の予測を完全に上回ってきた事による敗北と言う流れです(戦闘シーンある時点でラブライブじゃない何かになっているのは承知済み)。
さて、次の第3章では謎の組織『ムーンカテドラル』とそれに所属しているラグナ、ミノリ、そして元《μ’s》メンバーの東條希。彼等とNLNSと同好会が共闘して、捕らわれた果林と愛の救出と部室の奪還を目指して、スクールアイドル部陣営への反撃を開始します。
こんなんでも読み続けてくれる方に感謝の意を示しつつ、楽しめる様なシナリオ作りを今後もしていきたいと思っております。
2章完結後の感想も欲しいな……
それでは、また次回更新の第3章でお会いしましょう。