戦姫絶唱シンフォギアXDU -孤独な影と運命に捧ぐ鎮魂歌- 作:ヒモトラマンロープ・ダーク
時を同じく、並行世界。
マリア、クリス、セレナの3人もダークロプスゼロ=メビウスキラーからの襲撃を受け、拉致寸前のところまできていた。しかし、突如として現れた謎の少女がモンスターギア『グルジオ』を纏い乱入。危機を救われるマリアたちだったが…
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メビウスキラーは敗走していた。
ダークロプスゼロ・スーツは片腕を失うほど破損した上に、メイン武装のスラッガーも紛失…ボディには爪に引き裂かれた跡、マスクはひび割れて散々な有様。元より未調整かつマリアとの戦いでダメージが蓄積していたとはいえ、『グルジオ』は想定以上の敵で隠し玉の『スペシウムの無効化』も通じない…ならばと、全力でコスタリカのジャングルを飛行で突き抜け逃げることを選択したのだが。
当のグルジオは砲身を背負う肉食恐竜チックな巨体に似合わず、木々をなぎ倒しながらジェット噴射で凄まじいスピードで追ってくる。
「クソ! こんなの話に聞いてねぇぞ!」
悪態をつきながら、バイザーからビームを放つ…が、グルジオの堅牢な装甲は熱くなる程度。モンスターギア自体に大したダメージは無い。流石にこれ以上は分が悪いか…ろくにエネルギーも残っていないし、不肖だが潮時だろう。
「…あばよ!」
「!」
行動不能になっていた戦車を見つけ、片手でグルジオに放り投げるともう1度、バイザーからのビームを放ち破壊し爆発させて目くらましに。顔面に直撃を受けたグルジオ…これには怯み、その隙にとダークロプスゼロは捨て台詞を吐いて上空へ逃げ去っていく。
「逃がすか!」
対して、グルジオは逆噴射の急ブレーキから地面を刳りながら着地するなり、尻尾を地面に叩きつけボディを固定…背中の黒鉄に鈍く輝る砲台にエネルギーを収束させる。恐らくシンフォギアの切り札『絶唱』にすら匹敵する光の渦が檻を破ろうとする野獣のようにゴォォ!唸りをあげ、美剣は無防備なメビウスキラーの背中へと標準をあわせた。
「落ちろ!」
次の瞬間、砲口から放たれる彗星が如き光の柱。山吹色を帯びつつも、無慈悲に全てを焼きはらう潮流は射線上にあるダークロプスゼロをとらえる…ことは叶わず、獲物は寸前で金色のワームホールを展開するなり飛び込んで姿を消した。
取り逃がしたか…『ちっ』と舌打ちした美剣はグルジオを反転させ、装者たちが放り込まれたカプセルの元へ向かう。まずはとマリアのカプセルのケース部分を爪で引き裂いて破壊すると、ガラス片がパラパラと舞い、中身のマリアも手で庇うが気にしない。取り敢えず、時間的に余裕は無いのだから。
「立て。」
「あ、ありが……ちょ、なに!?」
一方、助けが来たと思ったマリアだったが立ち上がるなり、グルジオの爪先が胸元に突きつけられた。危うくカプセルの中に転がり戻りそうになったが、構わず質問がとんでくる。
「その武装、スペシウムだな? お前らはA.I.B.か? 私が知る限り、歌いながら戦うなんてトンチキな輩がいる連中ではなかったはずだが。」
「ま、待って…!? 助けてくれたんじゃないの!? それに、貴女は一体…。もしかして、科特隊の人?」
敵対の意思は無いととにかく伝えねば。すると、最後の言葉に一瞬だけグルジオな硬直したのを確認…数秒後、砲塔が持ち上がりグルジオの背部が肋を開くように展開、中から美剣が現れる。
「お前たちいつの時代の話をしている?」
「いつの時代って… その武装はスペシウムでしょ? なら…」
マリアの見立てでは、このグルジオ…恐らくはウルトラマンスーツと同系統にあたる物のはず。しかし、美剣は首を傾げて暫く…血みどろのマリアや未だカプセルで足掻くクリスやセレナに目を向け溜息。
「応急処置はしてやる。その間、話を聞かせてもらうぞ。」
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それから、クリスとセレナを引っ張りだし、グルジオに積んであった応急処置キットで手当てに入る美剣。消毒液や脱脂綿に包帯、ピンセットなど見慣れた物の他、謎のオレンジのジェルが入ったボトルなどを駆使し手際よく処置を施していく…。爛れかける傷口や止まらない血の海をにも怯まず進めていく様は『素人』のソレではない…明らかに訓練を受けている。
(もしかして、この娘は衛生兵かしら? …にしては、砲兵(?)ばりな兵器よねコレ。)
処置を受けながら、マリアは美剣の素性を考察しながらも自分たちが何者か…そして、別の並行世界で出逢った科特隊の話を伝えた。基本、『そうか…』『続けろ。』くらいしか返事は無かったが、科特隊の話だけは気難しい顔をして思うところがある様子。
一時間後… 3人の処置は完了。本格的な治療はここでは無理だがこれで今はヨシとしよう。
「ありがとうございます、助かりました。えっと、美剣さんで良いかしら?」
「ああ。こちらも興味深い話を聞かせてもらったからな。」
「………あの気になっていたけれど、貴女は科特隊の人ではないの?」
さて、把握しておかなければならいことはシンフォギア装者側にもある。…グルジオ、引いては美剣は何者なのか?ダークロプスゼロといい、今回の話は間違いなくウルトラマンの世界が関わっているとみて間違いない。彼女もその関係者なら…
すると、彼女は『あくまで私の推論だが…』と疑問へ答える。
「私もお前たちと同じ、次元を跨いできた存在だ…だが、お前たちが出逢ったウルトラマンの世界は恐らく私が来た時間軸の世界とは別物だな。私の世界では科特隊は愚か、『星団評議会』も既に壊滅している。」
「なんですって!?」
星団評議会…簡単に言えば、銀河レベルの国連みたいなもので、現・科特隊の母体組織。それが、壊滅しているとしたら、科特隊は存在してないはず… されど、ならこのグルジオはなんだ?異星人の兵装にしてはウルトラマンに親しいものを感じるのは何故か。気になるところだが、今は重要なのはそこではない。
「恐らく、そのパラレルワールドでお前たちは目をつけられたんだろう。まあ、星団評議会が存在する世界なら文字通り容疑者など星の数程だが…」
鼻で星団評議会を嗤う美剣…。マリアたちの知るところではないが、星間同士で銀河レベルで手を取り合いなんて聞こえの良い建前こそ前面にあるが、実際は謀略やテロを煽ったりの他に暗殺など日常茶飯事と腐敗した組織である。彼女の世界でもそれは同じで、皮肉が洩れるのも無理はないだろう。無論、必ずそこに犯人がいると限られたわけではないのも留意すべき。
「並行世界を跨ぐ敵か。あの世界にそんな技術があるとは思えなかったけど。取り敢えず、本部に戻るべきかしら。貴女も一緒に来てくれる?」
取り敢えず、文字通りに敵の目星もつかないので基本世界に戻る判断を下すマリア…それに、クリスやセレナも応じるが美剣は顔を険しくする。何かあるのか?
「マリア、恐らくだが…お前たちの拠点も危ないかもしれんぞ。」
「え…」
「恐らく、敵の狙いはお前たちのシンフォギアだろう。改修を必要とせずスペシウムの装備まで発現させる兵装など多くの者の興味を惹くのは間違いない。」
そうだ、メビウスキラーもそれを仄めかすことを言っていた。敵が何者にせよシンフォギアを把握しているなら、戦力が分断されている今のうちに基本世界に攻撃してきてもおかしくはない…
…この時、既に手遅れと知るのはもう少し後だ。
「クソ、なら急いで戻らねえと…痛っ!?」
「無茶はするな、あくまで応急処置に過ぎん。傷口が開くぞ?」
早るクリスをたしなめながら、グルジオへ飛び乗る美剣は片手で携帯端末を操作し何やらホログラムで何やら座標を確認するとスッボリと機械の竜を着込んで起動。眼に光が灯ると首をあげてマリアたちへ最後に言葉を残す。
「お前たちはついてくるな。私に任せておけ。」
「美剣さ…っ!?」
そして、彼女はジェットを噴射し上昇。そのまま青空の彼方へ鳥のように消えていった…。
取り残された少女たち。満身創痍だが、残念なことに言われたまま大人しくしている彼女たちではない。現場のリーダーであるマリアにクリスがわざとらしく問う。
「…で、これからどうするよ? 任せておくか?」
「まさか。マムに連絡をとって、本部に戻りましょう。様子を確認してそれから、すぐにウルトラマンの世界へ行くわ。」
「姉さん、私は…」
「セレナは残って。万一、この世界にまた敵が来ないとも限らないし。」
今後の行動は決まった。後はF.I.S.からの迅速な回収と基本世界の無事を祈るばかりだ……
(万一と言っても、残っていた皆がそう簡単にやられるはずは無いと思うのだけれど…‥)
★ ★ ★ ★ ★ ★
「ぁああああアァ!!!」
――ダークロプススーツを装着されて尚、響は抗っていた。
限界を振り切った力で強引にスーツのパーツを引き剥がしながらフラフラであってもダークロプス軍団に立ち向かうが、ヒョイッと避けられて脚をかけられたりした上に無防備になった背中を踏みつけられたりと最早、戦いとして扱われていない。それでも、ダークロプスを振りはらい立ち上がると拳を構える。
(この程度のピンチがなんだ…!もっと絶望的な状況はあった…! 拳は握れる…歌もまだ唄える…ッ!まだ戦え…!)
「ふむ。」
――ドゴッ
「カハッ!?」
まだ消えない闘志を嘲笑うギガバトルナイザーのスイングが胸を殴打する。悪魔(ベリアル)の手が頭蓋を包み、握り潰さんと凄まじい握力をかけていく…
「言ったはずだ…これでエンドマークだと。」
「まだ…負けてない…!私は… 私たちは…ッ」
――美しいものだ…希望の光が絶望の闇へと儚く散っていく様は。
「!…やめろ!!」
ベリアルはマスクの舌で恍惚な笑みを浮かべながらギガバトルナイザーを振り上げる…! これに気がついた奏が踵をかえし、響を救出すべく全速力で駆ける。だが、悲しいかな…ガングニールを持ってしてもあまりにも距離が開き過ぎていた。
(間に合え!間に合え間に合え間に合え間に合え!! 繰り返してなるものかァ!)
脳裏に過ぎる『友の最期』。もう繰り返さないと誓ったのだ…もうあのような悲劇は絶対に。この槍が折れないなら、自分がまだ唄えるなら……!
――ドゴォォッ!!
無情に鉄槌は振り下ろされ、巨大な土煙と土砂が舞った…
途端、カランと槍が地に落ち…奏は膝をついた。呆然としながらも脳は事実を処理し嫌でも理解させる。それがどんなに目を背けたい事象であっても…
「…嘘…だろ。」
ついさっきまでの屈託ないあの娘の笑顔は失われた。時間は違えど自分の歌を好きと言って慕ってくれた太陽のような温もりが…
絶望、悲嘆…
されど、関係ないと邪悪の尖兵ダークロプスたちが背後から影を落とす…。これで最後のひとり…戦乙女は全てこれで捕えられる。スラッガーを振り上げ、奏に目掛けて……
ジャキン!という斬鉄音が響き、首が転がる。
「………は?」
ダークロプスの兜が。
何事かと思うより先に、ヒュンヒュンと暗い空舞う風切り音と直後にパシッ!!とコンテナの山の上でスラッガーを掴む音。炎と昇りかけの朝日に染められながら青いマントを靡かせる『戦士』が息絶え絶えな響を膝を折りながら抱きかかえていた。後ろ姿のため全身のフォルムは見えづらいが頭部はダークロプスを彷彿させる……だが、鋼ながらも優しく包む手に響は不思議と安心感を覚えていた。
「……あなた…は?」
「――俺は『ウルトラマン』だ。もう大丈夫、ここから先は俺に任せろ。」
熱く、優しい男の声。見つめてくるツインアイがその奥に血が脈打つ温もりを覚えさせてくれる…… 朦朧とした意識のまま、こくりと頷くと意識が遠くなってしまうが…不安は全くなかった。後は彼が何とかしてくれる、そんな確信と共に彼女は気絶した。
そして、『戦士』は少女を降ろして立ち上がり、下方の空振ったギガバトルナイザーをブンッと振り回したベリアルを見下ろす。ダークロプスに似ているが、スーツは白銀にトリコロールカラーとヒーローらしい色合いにマントを靡かせる様は強者のオーラを醸し出す。
「…ククク。これも宿命、いいや運命というやつか!」
相対するベリアルは笑い… そして、『宿敵』の名を叫ぶ!
「次元を超えても尚、立ちはだかるとはな…ゼロォ…?
――――ウルトラマンゼロォォォ!!!!」
きたぞ、我らのウルトラマンゼロ。