戦姫絶唱シンフォギアXDU -孤独な影と運命に捧ぐ鎮魂歌- 作:ヒモトラマンロープ・ダーク
再会は突然に。
キリエを救出し、元の世界に帰って以降は全く姿を現さなかったシンフォギア装者たち。勿論、進次郎にとっては喜ぶことである…のだが、どうして彼女たちは人目につく科特隊の施設内でシンフォギアを纏っているのか?悪事を働く異星人や他異常の気配な無いし、辺りは科特隊の催し物のコスプレとでも勘違いした人々でごった返し平和そのもの。カメラで写真を撮る人や握手を求める人…様々だが、一応彼女たちのシンフォギアは科特隊に置き換えればウルトラマンスーツ並に大事かつ秘匿すべきもののはず…。
「お? お久しぶりデース!」
「ご無沙汰しています。」
「あ、うん…久しぶり… あれ、マリアさんは…?」
驚きながらも訝しげな視線を送る進次郎に対し、確かに記憶通りな身振りや喋り方をするふたり。相変わらず仲が良さそうで何よりだがマリアの姿は見当たらない…すると、ふたりは打ってかわって焦った表情をして進次郎の手を掴む。
「あ。あの!実は、私たちの本拠地が敵の攻撃に晒されてピンチなんでデス!! マリアも今はどうなっているか…」
「今、頼れるのは貴方たちウルトラマンだけなんです!だから、私達と一緒に来てくれませんか!?」
「え? えぇ!? ちょっと…!?」
シンフォギア装者の危機!?
…でも、さっきノリノリで被写体やってたよね君達?というか、正体を大声で叫ばないで!? そんな疑問や何やらが飛び出す前にグイグイと顔を近づけて言葉を喉から胸へと押し返してしまう。年頃の真面目な男子である進次郎、ウルトラマンだろうと女子への耐性が低い…
「無茶も承知デス!でも、時間が…!」
「ち、近っ…!?」
切歌の勢いに呑まれかける進次郎…ここで、見かねたのはイデ。
「落ち着くんだふたりとも。まずは事情を聞かせてくれないか? 中へ案内しよう。エドにも話を通さないと…」
何はともあれ、人命救助や異星人への緊急対処以外にウルトラマンスーツを勝手に使用するのは基本的にNG…無理を通すなら司令官であるエドなら判断を仰ぐくらいはしなくては。ただシンフォギア装者の危機ともなれば、進次郎やイデとて穏やかではない。すぐにでも、助けにいきたいところだ。
そんな彼等を調は微かに口角を吊り上げながら見つめ…
「――…(キエテ・カレカレータ)。」
静かに呟く…『地球には由来しない言語』を。
進次郎とイデには聞き取り辛いだろう大きさで、誰も意に留めないことぐらいだ…聞き取れてもなんでもないで済まされるのだから油断していたのだろう。まさか、夢にも思わないだろう…この場に『聴覚に優れ、言葉を理解しうる存在』がいることに。
「シンジロー…! イデ…!」
キリエの叫びが進次郎たちを止める。そして、彼女は叫ぶ!
「ソイツら、シラベとキリカジャナイ!
――『セレブロ』だ!」
――セレブロ?
彼等が首を傾げるより先に調がチッと舌打ちするなり、瞬時にイデの後ろに回りこむと彼を拘束。同時に気をとられた進次郎へ切歌が大鎌を振りかぶる…!反応が遅れた進次郎は防御すら間に合わず、死神の刃が肉を斬り裂…
「ムンッ!」
―ガキンッ!!
「デェッ!?」
否、寸前でイガリマは割り込んできたスペシウムソードで止められる。諸星のセブンだ。
「諸星さん!」
「ボケっとするな! はあッ!」
イガリマを切り払いで強引に間合いをとらせると進次郎に臨戦状態を促す。明確な敵対行動をとった切歌と調は諸星の眼に完全に『敵』として映る…。例え、一度は共に剣を握った仲であって、女子どもだろうと容赦はしない。
一方、進次郎はというと何の脈絡もない攻撃にかなり動揺していた。
「…ふたりとも、なんでっ!?」
「知りたければ…」
「ついてくるデスッ!」
そんな彼を嘲笑うようにイデを連れ去り、記念館の壁を破壊して逃走する彼女たち。すぐさま、『待てッ!』とセブンがその後を追う。進次郎も続こうとするも騒ぎになったため人目がさらに集中してウルトラマンスーツを纏うことが出来ない。
その時、彼のブレスレットに通信が入る…科特隊の司令官であるゼットン星人・エドからだ。
【進次郎くん、屋上に向かうんだ。】
「エドさん…!」
【そこなら今、人目につくことはない。移動しながら状況の報告を頼む。】
エドの指示どおり、エレベーターに逆戻りしながら切歌と調の凶行…そして、イデが拐われたことを焦りを滲ませながら伝える進次郎。彼自身、理解不能の混乱で頭がいっぱいだがそれでも何とか言葉を繋げる。
「…突然で、一体なにがどうなっているんだが…! そうだ、キリエちゃんが、ふたりを『セレブロ』とか言ってましたが…」
【セレブロ…? 確かにそう言ったのかね?】
「え? えぇ…。」
セレブロ…その単語にエドが少し沈黙した。小さく『よりにもよってか…』と呟いたのが聞こえた気がしたが、続けてふたりを追いかける諸星の通信が割って入る。
【小僧! 確かにセレブロと言ったんだな?】
「は、はい! キリエちゃんは確かにそう言ってました。」
【……成程な。イフロ星人の聴覚だからこそ気がついたのか。なら、早く来い。このふたりを相手に峰打ちで済ますには難しすぎる。追いつかなければ、仲良く刀の錆になるぞ。】
諸星も何か知っている?気になるところだが、彼の最後の言葉がなまじ冗談には思えない…急がなくては。最上階に着くなり、屋上に続く階段へ走り、駆け上がり、ドアを開けて床を思いっきり踏んで夕暮れ時にに差し掛かった茜色の空へと自分を投げ出す。ウルトラマン因子を持つこの身体はネコ科の猛獣や原人なんぞ遥かに上回る跳躍をもたらし、夕陽の彼方へと逃げ去る少女たちを視界に捉えることを可能にする。
そして、彼は拳を突き出し『光』を纏う。
「ジュアッ!!」
ギュォオオオオ!!!とスペシウムの潮流が流れながら進次郎の身体を機械パーツと装甲が組み立てられるように包んでいく…。そして、舞い上がった身体は背部のスラスターを吹かし茜色の雲を切り裂く流星となる…
一方…
「このッ!しつこいデスね!お前に用は無いんデスよ!」
「ご生憎様、こっちは誘拐犯には用があるんでね。」
切歌に阻まれながらも、イデを連れ去り逃走する調を強引に追跡していたセブン。彼女単体なら簡単に確保出来ただろうが、数で不利なこちらでは大怪我を避けるのは難しい。別に好んで傷つけたりする趣味はない…今は、好機を待っていた。
「さて、そろそろか…」
その時、彼方の上空から隕石のように落下した何かが調の行く手を阻む。慌て急ブレーキをかけた彼女の前に、ゆらりと『彼』は立ち上がる……
「……ジュァ…!」
「ウルトラマン…!」
進次郎のスーツ…『ULTRAMAN SUIT B.TYPE』。
白銀と紅の装甲が夕焼をバックに美しく輝きを帯びる。
…来たぞ、我らのウルトラマン。
★ ★ ★ ★ ★ ★
「――『寄生生命体・セレブロ』。異星人としては小型にして非力だが、知能は高く自らより強力な生命体などを宿主として意識を乗っ取るタイプの生態をしている。君の弟に寄生していたのもコイツだ。」
「…」
科特隊の手術室でエドは諸星と話をしていた。その隣には手術台に乗り横たわる諸星に似た男の亡骸に、大きなガラス瓶に詰められたエイと甲殻類をかけあわせたような生命体が並べられている。
場所が場所なだけのゼットン星人であるエドの不気味さがかやり際立つが、諸星は気にしない。それよりも聞かねばならないことがある。
「レイは…弟は生きていたんですか?」
「いや、脳は既に内臓組織としては機能していない様子だった。殆どの肉体機能は同化していたセレブロによって維持されていたんだろう。彼の魂は既にこの肉体は無かったと言って良い。」
…そうか。
胸を撫で下ろした諸星は亡骸に視線をおとす。損傷が激しかったが、エドやイデの計らいで完璧とまでいかなくても縫合で綺麗になっていた。そこに、尊厳の凌辱の痕など無い。
「わざわざ、ありがとうございます。弟もきっと喜んでいるでしょう。」
「…せめても、我々が君に出来ることだ。君は立派な兄だ。弟の尊厳を守ったのだから。」
エドの慰めの言葉が虚しく響く…
励ましは胸に届くことなく、諸星は眼をクイッと眼鏡をあげて隠した…。
「さて、これで終わりだクソ異星人…いいや、『虫ケラ』ども。」
…ついに追い詰められた切歌と調。
後方からはセブン、前からはウルトラマン…逃げ場はない。
「イデさんを返してもらうぞ!」
相手のアクションの隙を与えまいと先にウルトラマンが踏み込んだ。以前の未熟な進次郎だったら、呼び掛けをしている間に相手へ人質というカードを与えていただろう。しかし、幾多の戦いを経た彼は迷うことなく、イデを担ぐ調に勢いを乗せたキックを見舞い弾きとばすとイデを奪還する。幸い、抱きとめられた姿を見る限り目立った外傷は無く、気絶しているだけの様子。不幸中の幸いか…
一方、くの字で屋上の手すりで叩きつけられた調だったが、痛がる素振りすらなくコキッコキッと蟲のように首を動かしながらゆらりと立ち上がる。
「捕獲対象、確認。…四肢等の欠損もやむを得なしと判断。」
そう告げると、手首を交差させエース同様の三日月状の刃を形成する彼女。そのまま、腕を振り抜きウルトラマン目掛け放つ。
対するウルトラマンはイデを抱きか抱えて跳躍、回避すると続けてくる第2波に空いた片手からスペシウムの光輪・ウルトラスラッシュを放って相殺する。
一方のセブンも切歌を問答無用の剣の連撃で圧倒していた。間合いに踏みこまれると鎌の切歌では相性が悪く、流れるように連なるスペシウムソードの斬撃を防ぐだけで手一杯である。呼吸も乱れて体幹も揺らいで足許も怪しくなってきた…バランスを崩せば最後、刀の錆となるだろう。
「こ、このぉ!? 少しは反撃はさせ…」
「貴様の意見など求めていない。」
次の瞬間、イガリマの鎌が宙を舞い…スペシウムソードの切っ先が喉元に突きつけられる。いくらシンフォギアといえど、武装であるアームドギアが無ければ特に脅威にはならない。
「はぁぁぁ!」
「くっ!」
ウルトラマンもイデを置いて、調と激しい空中戦を繰り広げていた。シュルシャガナは本来ならふよふよと浮遊に近いくらいのことしか出来ないが、エーススーツ・ギアの機能で高い機動性や加速を獲得していた。しかし、そのエーススーツを手掛けたヤプールの技術でバージョンアップしたウルトラマンスーツに対応しきれず、ヤケクソ気味にまた三日月の刃を形成して突撃。対し、腕からスペシウムの光刃、ウルトラブレードを展開したウルトラマンが迎え撃ち両者は交錯…!
直後、シュルシャガナの左腕装甲が砕け破損。調はバランスを大きく崩して墜落…そこを、ウルトラマンが組みつきビル屋上に叩きつけ、そのまま羽交い締めに。
これで、完全にふたりは制圧されたのだった。
「諸星さん…!」
「よくやった。あとは…」
まだ終わりではない。セブンはスペシウムソードの刃先を切歌の眼前にチラつかせる…研ぎ澄まされた刀身は生唾を呑む少女の顔を映す。脅し…彼女たちではなく、『彼女たちの中に潜む何者』かへ向けて。
「武装を解除し、 一刻も早くその娘たちの身体から出ていけ虫ケラども。選択肢は大人しく従うか、引きずりだされて斬り刻まれるかだ。さあ、選べ。」
「…」
観念したのか膝をつき、口をぐぱぁと開く切歌…その喉奥からモゾモゾと蠢く黒い影。忌々しげにセブンを睨む複眼が不気味に光り、グロテスクな音をたてながら這い出ようとしてくる生物…。諸星の狙いは最初からコイツだ。科特隊基地とセブンスーツのセンサーによる分析でふたりの体内から明らかに本人たちの発するフォニックゲインに隠れるように鼓動する振動波は確認しており、行動の怪しさからすぐに接触せずに遠目から監視していたのだ。
進次郎とイデにより想定外の戦闘まで発展したがまあ良い。これで少女たちの救出も出来る上に、異星人犯罪者もも確保。事態は終息に向かうはずだった…
―― Croitzal ronzell Gungnir zizzl…♪
「!」
その時、直感的に危険を察知したセブンはその場を飛び退き、死角から飛来し、自分を貫こうとした撃槍を回避。空を裂いた切っ先はスペシウムソードが棒切れのように見えるほど大きく鋭い…まともに当たれば串刺しになっていたかもしれない。
「諸星さ…!」
「調ちゃんを離せぇぇぇ!!!」
「ッ!?」
続けて、気を取られたウルトラマンの顔面に鉄拳が直撃。
ハンマーのフルスイングをもろに受けたような衝撃がスーツ越しでも伝わるほど重く、かなりの重さがあるはずのウルトラマン・スーツが石ころのように簡単に転がされてしまう。
「…な、何なんだ?」
脳震盪を起こしかけの頭を抱えながらウルトラマンたちは前を見る。
乱入者はふたり… こちらに向けるのは『槍』と『拳』…
「よお、クソウルトラマンども。うちのかわいい後輩たちを随分と可愛がってくれたじゃねぇか?えぇ?」
「…これ以上、仲間に手出しはさせない!」
立ちはだかる撃槍二振り。ガングニールを纏う奏と響…
すれ違いによる最悪のエンカウントが幕を開けようとしていた…。
▶▶▶▶To be Continued.
調「やっと本編が開始したと思ったらこの仕打ち…」
切歌「何か蟲をいれられるわ、操られるわ散々デスよ。というか、こういう役回り私たち担当じゃないデスよね?」
調「そうだよねぇ?」
調・切「「じーっ…」」
翼「ま、待て!?何故、私を見るのだ!?や、やめろ!」←TVアニメでもコラボイベントでも操られた人