至らない点が多々ありますがどうか読んでやっていただけると嬉しいです。
起、その一
ーーー黒
ただ一面の黒色。
他の色なんて何もない。
彼が認識できる世界というのはただその一色しかないものだった・・・。
だが何故こんなものしか認識できないのかを彼は知っていた。
結論から言うと彼には眼というものが存在しなかった。
眼もなければ腕も足も顔も・・・。
ただ肉塊というだけの醜悪な体。
誰しもが見れば悲鳴があがるものの中に彼という命は存在した。
そもそも機能も全くついていない肉塊の命を「彼」という男性呼称でよぶのはおかしなものだが作り手がそう認識した故に彼は「彼」となった。
ここで作り手、というが彼は正当な性行為などで生まれたわけではなく、人造、いわゆるホムンクルスというようなものを作る過程で生まれた。
作り手は非常に優秀な魔術師と呼ばれるものであり、
こと、ホムンクルスの製造においてはこれからも超えるものはいないだろうというほどで、その道ではない魔術師たちの世界においても作り手を知らないものはいないほどである。
作り手は数多の生命をつくりその全てが至高と呼ばれるほどではあったが、作り終えたものには興味が無かったのか、作り上げた作品をほったらかして次の作品の製作に移っていた。
しかし、作品が多くなるにつれて、ふと違和感を覚える。
ーーーはて、?
私の作品はこんなに少なかったか・・・?
すでに数十、という数を作り上げた作り手は自分の作品が数えるほどしかないことに気付く。
逃げ出したのか、と思いついて数を数える。
記憶していた数は99。
残っているのは戦闘向きではないおよそ50対ほど。
半数近くが逃げ出したことになる。
そして逃げ出したのはどれも戦闘向きに作ったものたち。
100体目を集大成として作り上げていた時のことであった。
しかし、作り手は落ち着いて製造を再開する。
1年に一作でも100年。
作り手には時間がなかった。
これを利用して最高傑作を作ればよいと、そう思いいたる。
民間人の命などどうでもいい、ただ自分の作品のためと。
作り手の作品は人型しかおらず、100体目もそうなる予定だ。
100体目とは「彼」のこと。
作り手は一度生命として作り上げてからそれぞれの付属情報などを付け加える。
故に彼は自分の体をいじられ、様々を追加されるのをただ待った。
「多機能を付けようとするから劣化品が生まれる。一点のみに特化したものを作ればよい」
それが口癖で、作り手が最高のホムンクルスを作る秘訣であった。
いままでの99体はそうしてきた。
しかし、今まで通りでは至高を超えた至高には至らない。
故に、起源というものに細工をすることにした。
起源とは魂に刻まれた性質のようなもの。
選んだ起源は「死」。
あらゆるものを殺すだけの存在。
英雄も、真祖と呼ばれる者たちも、それこそ神でさえ。
特化させた機能は殺すこと。
魂の起源は「死」
また、作り手は数々の研究の果てに多機能を付属する術を見つけていた。
故に思いつく限りの様々なもの詰め込んだ。
とうに超えた彼の魂の容量も持ち得る神秘で解決した。
作り手は様々な作品を作ったが、性に合っていたのは戦闘向きのもの。
作り手の感性において最高のものが生まれるはずだった。
足りなかった、人としての部品を付け足す。
腕が生まれ、足が揃い、皮膚が作成された。
顔の形も定まり、口、鼻、耳、髪。
最後に「眼」が生まれた。
彼の起源とを結ぶ媒体として最も慎重に作られた。
「死」という情報を捉えるため選んだものが眼球だった。
体を付け足され、彼が初めに行ったのは眼を開くことだった。
知識では知っていた色のある世界。
そういうものなんだと、自分にはまだ見ることができないが、いつかきっと。
ただそれだけを待ち望み眼を開くーーーーー
ーーーーしかし、彼が初めてとらえたのは、いつもどうりの、何も変わらない、「黒色」だった。