型月設定のお伽噺   作:linda

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一週間フレンズ。がすごく面白かったです。
エンディング泣きました。



行間、その一


「ーーーだ、少し話し相手になれ」

 

 

その人はとても無関心な人だった。

感情がない、というわけではなくただ単に魔術以外に興味を持てない人だった。

私に声をかけたのも有名な魔術師の家系だったかららしい。

 

彼は偉大な魔術師で、ことホムンクルスの製造で右に出るものは過去に類を見なかったという。

彼の家は長く続いていない魔術師の家系で、母親も父親も大したものではなかった。

父親が日本人で母親がヨーロッパ系。

 

平凡な二人から彼のように才能があるものが生まれて、二人は喜んだ。

嫉妬するわけではなく彼らは援助を惜しまなかった。

予想をはるかに超える速さで彼はホムンクルス学を学び、多くの歴史を覆した。

 

あらゆる面において超越した彼は、魔術教会とよばれる団体に「封印指定」と呼ばれる、才能の強制的な保護を通達された。

学術的に到達できない段階の能力の保護を目的としている。

通達を受けたものは派遣された魔術師により拘束される。

保護といっても拘束して幽閉するだけの、いわゆるホルマリン漬けと何ら変わりはない。

これを受けた魔術師は大半が身を守るため失踪する。

 

しかし、彼はこれを撃退。

あらゆる叡智を働かせ彼は追っ手を追い返した。

その後、何度かの追手を同じく撃退。

そのまま同じ場所に居座り続けた。

 

悪名も美名も知らない魔術はいなかった。

 

私も例外でなく彼を尊敬し、会えた日には手を上げて喜んだことだ。

偉大な彼に会えることは誉れであり、願わくば教えを乞いたいと思った。

 

 

 

 

根源の渦。

この世の全てが書かれており、絶対の真理であるもの。

アカシックレコードとも呼ばれ、全ての魔術師はここに到達することを目的としている。

つまり、魔術師の研究する魔術は根源にたどり着くための手段でしかない。

だが、たかが人の一生では到達するどころか足元にも及ばない。

故に魔術師たちは魔術刻印というものを作り、自分の成果を次代に託すことにした。

そうやって何代も重ねて成果を継承していく。

つまり一般的に名門とは家が長く続いている家のことを指した。

 

 

私の家は名門ではあったが、私は魔術刻印があわず、その役目は私より才能がある妹に引き継がれた。

一子相伝が当たり前の世界においてあぶれた私のような存在は無価値だった。

 

悔しくはなかった。

もともと魔術には興味があったが、根源などには関心がない。

私は独学で魔術を学んでいった。

 

 

 

ーーーそんな時、彼が私の前に現れた。

名門で、起源に関する研究をしていた私の家に彼は訪れた。

 

その時、というよりも封印指定を受ける前から彼は「正規手段外の魂の生成」を完成させており、そこから魂の起源をいじるために私の家にやってきたという。

 

妹という当主が留守で、彼はしばらく待たせてもらうと言った。

恥ずかしさで彼の前に出れなかった私を彼は見つけて声をかけてきた。

 

魔術にしか興味がない彼だが、それは魔術師にとって理想的であった。

 

彼の話す内容はどれも面白く、私は何かを得ようと一言一句に集中した。

系統外の話だったがとても勉強になり、幸せだった。

 

ふと、彼に質問をする。

 

 

「私の目的は根源を目指すことではありません。

 ただ納得のいく研究がしたい。

 それはおかしなことなのでしょうか・・・?」

 

持っていた不安。

周りから何度も馬鹿にされ、軽蔑されてきた。

 

ーーー名門のくせに

 

昔好きだった男の子に言われた言葉だ。

優しそうな人で、きっと理解してもらえると思った。

それでも私を理解してくれるものはいなくて。

 

研究ははかどらない。

名門故にそこそこ才能があり、親に頼み込んで推薦してもらった時計塔は私を非難する塊だった。

実家に逃げ帰り、細々と研究をしていた。

魔術師としてプライドも何もなかった私は普通の女だった。

 

 

「そんなことはない。

 私の夢は自分における最高の作品をつくることだ。

 それで馬鹿にしてきたやつらは私の才能を見て逃げていった。

 いいか、認められたかったら成果を出せ」

 

予想の答えと違い、彼を呆けた眼で見つめる。

時間がたって理解して、嬉しくて笑みがこぼれる。

訝しげな彼が続ける。

 

 

「何を笑っている。

 言っておくがお前を慰めたわけではない。

 もともと持っていた私の夢だ」

 

彼が言い訳をするが聞こえない。

やっと私を理解してくれる人がいた。

それだけが胸にいっぱいで、思わず言わずにはいられなかった。

 

 

 

「私決めました、---さんに弟子入りします!」

 

彼が呆然としている。

目を丸くしていて、可愛い。

 

 

 

もう決めたから。

絶対ついていく。

追いついてやる。

役に立ってやる。

あなたの隣を歩く。

 

 

 

 

 

勘違いでもいい、私は今、あなたに恋をしたーーー

 

 




時計塔は魔術教会を三つに分けたうちのひとつらしいです。
時計塔、アトラス院、彷徨海。

なんか大学みたいなものと思ってます。
間違っていたら指摘を・・・(-_-;)



ーーーは、作り手ですが名前は付けません。
多分いりませんし、下種ですし、感情移入はしないかと・・・。

あと別に水銀ではないですし、マルグリッドは出ません。
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