ごめんなさい。
「先生、好きです・・・」
研究の合間、二人で雑談している時私は彼に告白した。
言った。
言ってしまった。
もう後戻り出来ない。
それでも、貴方への好きが止められなかったから。
五年。
ずっと、ずっと好きだった。
私の青春全て彼に捧げた。
それでも貴方は察してくれなかったからーーー
頬を赤く染め俯く。
とても彼の顔を見ることなんて出来なかった。
心臓の音がうるさい。
呼吸がおぼつかない。
知らなかった。
好きってこんな苦しかったんだ。
なら、あの時も、あの時も、私の好きは大したことではなかったのだ。
あなたの全てが愛おしい。
その仕草全てに魅力を感じてしまう。
少し狂人かと思ってしまうくらい、実際私も自分が気持ち悪くてたまらないのだけど。
恋は盲目という言葉があるが、その通りである。
貴方に弟子入りしたのは十五の時。
もう私は二十歳になりましたよ?
魅力はありませんか?
まだ私は貴方の中で女になっていないんですか?
自分的に一番貴方の人生に触れてきたと思ってます。
これは自負していいことではないんですか?
傲岸不遜な貴方は私と関わって少しづつ優しくなりました。
私は貴方の中でどんな存在なんですか?
驚くほどに乙女をやっている、現在二十歳、職業魔術師の私は、固く瞑った目を薄眼に開けて彼を見た。
ほんの少ししかない期待を込めて首を少し上げる。
ーーー赤。
この場合は朱色がいいのだろうか。
とにかく真っ赤。
茹蛸のように顔が赤い彼は、明らかに怒っている顔では無かった。
唇をきつく噛み、私を直視できずに視線を宙に泳がせている。
世界中に轟かせる悪名も美名も名高い魔術師、"ーーー"。
そんな彼がこんな小娘の告白ひとつでここまでの反応をしてくれる。
それが嬉しくて。
今までの人生の何よりもうれしくて、両手を彼に伸ばす。
「先生ーーーー」
恍惚の、鏡を見れば私は絶叫してしまう表情で彼に歩み寄る。
貴方がこんなにも愛おしいから、私はこうなってしまいます。
自分が自分ではないような、そんな感覚。
愛さえあれば世界が救える気もしていた。
告白は決まったようなものだった。
それを確信したからこそ、保守的な私は彼に歩み寄ることができる。
ふり払わないでしょう?
お願い、拒絶しないで。
貴方の顔をもっとよく見せてーーーーーーー
「ま、待った!」
彼が崩れそうな精神に鞭打って私の停止を願い出る。
彼は今にも泣きだしそうで、笑いそうで、壊れてしまいそうで。
だから、その場で立ち止まる。
「そ、それはけ、け、結婚をするということか!?」
突然の発言に笑いがこみあげる。
愛しくて抱いてあげたくなる。
それは私も思ってましたけど、まずは男女の交際から思ってました。
貴方が中身は乙女なんだって分かりました。
男のくせに・・・。
「そう、ですね。
先生が結婚までしてくださるのなら喜んで」
くすり、と少し余裕をもった態度で彼に返す。
私の声を聞いて、彼の顔がさらに赤くなる。
今にも破裂しそうだ。
あ、と思った時には遅かった。
彼がこんな人と知らなかったわけではないが、まさかこんな場でも自分の意地を通すとは思ってもみなかった。
「わ、わたしは、まだ自分の研究のな、納得のいく成果がでていない!
だ、だから、十年待っていてくれ、きっとお前に似合う人間になって見せる!!」
ーーーヘタレ。
心の中で呟く。
まさか私の一世一代の告白をこんな風に躱されるとは思ってはいなかった。
それでも、彼が、貴方が選んだのなら私はそれについていきます。
だからーーーーーーー
「もう・・・・。
それなら、私も先生に負けないよう、お役に立てるよう精一杯頑張ります!」
絶対ついていくって決めたから。
追いついてやると覚悟したから。
役に立ちたいって心から思えたから。
あなたの隣を歩きたいってことは間違ってないって思えるから。
「だから、しばらくお別れです
花嫁修業と思っててください」
彼が驚いている。
まさか私がこんなことを言うとは予想していなかったのだろう。
だから、もう一つだけ。
あなたは放っておくと何をするかわからないから。
私を忘れないように。
「浮気は許しませんよ・・・?」
満面の笑顔で笑う私に、彼も次第に顔が明るくなっていく。
二人で顔を突き合わせて笑いあう。
緊張なんて消し飛んで相手を見つめあいながら。
ーーーーーお互い忘れないように。
自分の名前にちなんでそんなお願いをかけた。
甘い!