型月設定のお伽噺   作:linda

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少し遅くなりました。
見ている人はどうぞ。
話は全然進まないです。


展、その二

「あれ・・・?」

 

 

気付いたのは次の日の朝だった。

 

ホテルの鏡で自分の顔を初めて見ようとした、そんな時。

 

視界が昨日のあの時から戻っていない。

かろうじてしか色が把握できない。

 

おかげで、自分の顔を見れなかった。

自分の顔と呼べるものにはたくさんの線が走っていて、よくわからなかった。

 

そもそも色を見たのが昨日が初めてなので、戦闘後に戻ると思っていた。

戻らないということは何か理由があるはずーーー

 

 

 

 

 

 

ーーーピー、ピー、ピー。

時計のアラームと呼ばれるものが鳴り響いた。

 

ヨシノとの待ち合わせの一時間前を示しているらしい。

 

一瞬気持ちが高揚するが、再び落胆する。

落胆というよりどうしようという気持ちがこみ上げる。

 

 

「こんな眼で、どうするんだよ・・・」

 

 

目視では真黒にしか見えない、服を眼を閉じてつかむ。

ついでにけたましく鳴り響くアラームに停止を与える。

 

服に袖を通しながらも彼女のことを考える。

 

気が重い。

こんな俺を見て彼女はどう思うんだろうか。

 

白杖を手に取り、はぁ、と深くため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビルの山の脇、歩行者用通路と呼ばれるものを歩きながら、昨日の男のことを考える。

帰りながらも、帰ってからも疲れて何もできなかったから、視界に気付くのも今日になってしまった。

 

 

下卑た笑いを浮かべる顔を思い出す。

対峙した時に"一緒"と感じてしまったから、あれは俺の顔なんだろう。

あいつを思うと自分がいかに醜いかを実感してしまう。

 

眼もまたこうやって。

 

戒めはなくなって眼は開くことができるが、いつでも世界を殺してしまえることが怖かった。

自分が色がほしかったのはこの醜い力を消したかったからなのかもしれない。

 

 

 

 

俯きながら歩いていると、初めの桜の場所が見える。

なんてことのない普通の桜。

誰かが植えたのか、並木道にたくさん生えている。

 

一度桜と認識すると形だけでどうにかなるものである。

 

 

よかった、迷わなくて。

 

ヨシノがいないことを確認して、手前から4本目の気に背中を預けて、考え事の続きをする。

 

 

 

 

 

 

あいつは作品ではなかった。

 

何者かに作られたことに間違いは無い。

大方どこからか情報を掴んだ魔術師が作ったのだろう。

 

機械的な動きに、あの眼。

普通は起こりえない現象だ。

 

では、だれが何のために作ったか。

 

 

一つ、名声を上げるため。

作り手は結構な魔術師だったから、そいつの作品である俺を壊すことは彼を超えたことになるから。

これは昨日殺してしまったから、新しく作るのに時間はかかるし、しばらくはやっては来ないだろう。

 

一つ、性能の実験。

俺は彼が作った最高傑作らしいので、そいつ相手にどれだけやれるかってことを実験しているのかもしれない。

これだったら二体目、三体目を用意しているはずなので、注意をしなければならない。

 

一つ、完全な恨み。

俺、または彼に私怨をもった者による行動。

恨みを持たれた覚えは山ほどあるが、殺されるほどはない。

完全に彼のものだな、と思う。

これも続きがあるだろうから、注意をしなければならない。

 

 

二体目が来るかによって今後の方針を決めるとしよう。

 

そうやって指針を固めたときに、

 

 

 

 

 

 

「お待たせしました」

 

というヨシノの声がかかった。

彼女のほうに顔を向け反射的に眼を開ける。

 

 

 

「お早いんですね」

 

形だけでも分かるほどの満面の笑顔の彼女を見ると、

 

 

ーーーズキリ

という痛みとともに視界に色が戻った。

 

 

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