「ねえ、先生?」
妖艶に女が笑う。
彼女と同じ顔で。
美しい。
美しいのだが気持ちが悪い。
「先生、あの子でしょう?」
クスクスと笑いながら虚空へ呟いている。
俺たちを見ているのに、見ていない。
「やっと、見つけました。
褒めてください、先生」
何か危険な気がする。
纏っている空気がおかしい。
ーーーかちり
スイッチを入れる。
念のため準備はしておく。
視界が変わる。
黒く、隣のヨシノもあの女も見えなくなる。
全てが死に包まれた、感覚だけの世界。
「あっはははははははははははは」
突然の笑い。
狂った声が公園に響き渡る。
顔に手を当て、痙攣をおこしながらも笑い続ける。
やがて、笑いが止む。
ーーー一瞬の静寂。
真顔で彼女が呟く。
敵意のこもった声。
ヨシノと同じ声。
その眼はヨシノを見てーーー
「やれ」
ーーー空間が割れる。
あたり一面の、生命体。
獣、鳥、魚、果ては幻獣まで。
空間を突き破って溢れてくる。
全てがこちらに向かって飛んでくる。
右も、上も、下も、後ろも、どこからでさえ殺しに来る。
前に出る。
右の豹は、頭にあった点を突いた。
上の鷹は、羽を切り落とし、地に落とした。
後ろの狼は、首から切り落とした。
下の鯱は、飛び上がったところを点を突いた。
「ーーーーーー!?」
後ろでヨシノが何かを叫んでいる。
女の使い魔が彼女を襲おうとしてくる。
ふざけるな、指一本触れさせない。
彼女の周りを球状に、聖域とする。
小さな声でつぶやく。
「大丈夫、すぐ終わる。
俺が絶対護るから」
君の前にある障害全て、殺してみせる
戦闘は、続く。
既に数は、数十、数百の域。
終わりが見えない。
いくら戦闘特化であっても、疲れが出てくる。
だが、それがどうした?
使い魔に無限はない。
これを魔術で作っているのなら限界が来るはず。
実際に存在するのなら、殺しきればいいだけのこと。
俺だけがそれを行える。
ーーー有限なんて、無いも同然だ
「やはり、あの眼が邪魔ですね」
女が唐突に呟いた。
何か策を練っている言葉。
だが、この空間を制しているのは俺だ。
あらゆる事象も、この眼で殺しきることができる。
ヨシノの後方に二頭の犬がいる。
焦らず、首を切断、体を蹴り上げ、左胸の点を突く。
目前に見えた、角つきの馬も十七の肉片に変えた。
勝てない生物はいない。
殺せないものはない。
ーーー故に油断した。
左に何かがいた。
ヨシノだった。
俺の肩を掴んだ。
大丈夫だ、そう呟いてその手を一瞬だけ触った。
だが、触ったところで違和感に気付く。
左側から、笑い声が聞こえる。
使い魔の動きが止まる。
「ヒガンっっ!」
後ろのヨシノが言ってくる。
その声をかき消すかのように
「呆気ないですね、人殺し」
瞬間、
ーーーーーー俺の視界から"黒"が消えた
出てきた動物は、見た目がそんなだけで、大体魔獣です。
そうとしか言えないやつをヒガンは幻獣っていってます。