型月設定のお伽噺   作:linda

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展、その六

ーーー無い。

黒がない。

視界から、あの忌むべき黒が無い。

 

 

ーーー無い。

ずっと要らないって思ってきたあの力。

何物をも殺してしまう力。

彼女だけを殺せなかった力。

 

 

ーーー無い。

力がない。

この目前の、左側の奴らを殺すことのできる力が。

彼女を護ることができる力が。

 

 

 

 

消えた・・・?

いや、違う、奪われた。

 

この女にーーー

 

 

 

 

 

 

無くなった魔眼。

動揺は激しかったが、それでもヨシノを護るために無理矢理落ち着かせた。

 

前を向く。

周囲には、こちらを窺う女の使い魔と、愉快そうな女。

 

口端を吊り上げ、堪えているように震えている。

 

 

何がそんなにおかしいんだ。

魔眼を奪ったとしても、俺にはまだーーー

 

 

 

 

殺人技術(こいつ)があるッッ!!」

 

懐に入れたはずの木箱を引きずり出す。

空中に投げ、箱から出てきた獲物を右手で掴む。

 

魔眼がなくても、死を触れなくても。

 

君がいる。

 

だから、無様な姿は晒せない。

 

必ず、護ってみせる。

 

 

 

苛立たしげな、女の顔。

これで崩れるのだと思っていたのだろう。

 

確かに崩れそうだ、必勝は無くなった。

残された道は逃走だけ。

 

だけど、殺せるだけは殺してみせる。

 

ーーーーー簡単に終わると思うな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヨシノの手を引き前へと走る。

 

前方の獣を一瞬にして解体する。

 

ナイフの切れ味は最高で、線をなぞっているのと遜色なかった。

あの買い物中にどうやってこんな業物を、と思考したところで笑みが漏れた。

 

右からやってくる、人型の狼。

 

振り下ろされた右手をくぐり、初撃に眼を貫く。

引き抜かずそのまま下へと獲物を滑らせる。

 

そのまま右腕を切断。

骨の感触すら感じなかった。

 

背後の巨大な鷲を振り返りながら牽制しつつ、反転し続く二撃目左腕ごと体を両断する。

吼える獣の首に空いた己の左腕を当て顎を上に抑えつけながら、心臓を貫く。

 

溢れ出る血を引き抜き様、後ろに投げつけ、視界を殺す。

懐に潜り、首を切り落とす。

 

 

 

「ーーー!?」

 

恐らく予想外だったのだろう。

今殺した獣は先ほどのモノよりも強かった。

 

それを呆気なく俺が解体したことに驚愕している。

故に女が動揺する。

 

 

 

 

ーーーここしかないと思った。

 

 

「きゃっ!?」

 

繋ぎ直した左手を引いて、ヨシノを引き寄せる。

そのまま重心をずらして抱え込む。

 

精一杯の力を持って地面を蹴る。

 

飛んでいた翼の生えた馬は元の形に戻してやった。

落ちていく馬を蹴り、包囲網外へと離脱する。

 

 

 

 

 

「なーーー」

 

女の声が聞こえる。

知らない。

 

今は彼女を護ることだけを考えろ。

 

 

 

 

 

 

着地後すぐさま公園の外へと、ずっとずっと遠くへ走り続けた。

ホムンクルスの足を魔術で強化して駆けた。

 

ただただ、逃げ続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・。

 逃がしてしまいましたか」

 

「でも、いいでしょう。

 これを奪えただけでも、上々です」

 

無人の公園で女が呟く。

ヒガンが逃げた方角を見つめながら、笑みを浮かべる。

 

「もともと、これは先生の物だ。

 絶対に渡さないーーー」

 

自分と同じ顔の少女を思い出す。

 

気持ち悪い。

自分と顔も、声も似ている。

 

それでも、利用しなければならない女だ。

 

あのホムンクルスを殺しきるためには、まだ足りない。

 

だからーーー

 

 

「次は、あなたですね・・・」

 

同情はする。

それでもあの男だけは許せなかった。

 

 

 

 

ーーーーーだから、私のために死んでちょうだい?

 

 




獣殺すのに、殺人技術ってのもおかしいっすね。
ぴんとこなかったんで一先ず。
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