型月設定のお伽噺   作:linda

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こんにちわ
だいたいもう終盤です。

もう少しだけお願いします。


展、その十一

「あら、どうしたんですか先生、昨日のあの子は?」

 

くすくす、と一部始終を見ていたように女が笑う。

そんな態度が心の底から気に食わない。

こいつの眼を見ていると意識が飛びそうになる。

 

 

「ひどい人ですよね、あなたはこんなに頑張っているというのに。

 彼女はあなたの心を深く傷つける」

 

やめろ、お前が彼女を分かったように喋るな。

 

そう言えばいいのに、口は何故か動かず。

こいつから彼女の批判を、自分の頑張りを認めてもらいたかった。

 

「たとえ悪気がなくてもあなたはこんなに苦しそう」

 

 

そう、そうなんだよ。

彼女を殺してしまったことに変わりはない。

 

後悔した。

でも現実は、彼女は許してはくれない。

 

許されるものではない。

でも、彼女なら僕を許してくれると思っていた。

それがたとえ禁忌であっても、彼女は僕を包んでくれると思っていた。

 

それが馬鹿な理想とも知らずに。

 

いつからだろう、ここまで弱くなってしまったのは。

欲しかったのは居場所だったのに、いつのまにか愛を欲しがった。

 

 

 

「じゃあ、どうすれば良かったんだよ!!」

 

抑えきれない感情は触媒を得て爆発する。

口からこぼれ出る言葉は理不尽なものばかり。

 

膝をついて地面に崩れる。

 

こいつは敵だ。

でも、僕を認めてくれた。

 

母に甘える子のように言葉を続ける。

 

 

「君を殺したことに変わりはない、でも、ならどうすれば良かったんだよ!

 大人しく手を引けば良かったのか、違うだろ!?」

 

彼女に似ているこの女から眼を離せない。

あくまで彼女を女に投影して。

 

何も言わず"彼女"は微笑んでくれていた。

それがどうしようもなく癇に障る。

 

 

「あのまま放っておいたら君はあいつに殺された!

 君を放置することは、もう一度殺しを行うことと同じだ!」

 

「それは認められない、君をもう一度手にかけたくはなかった。

 だから必死に護った、他のモノを殺してでも!」

 

言葉が止まらない。

流れ出た感情を塞き止める術はない。

それがどれほど最低だと分かっていても、どれほど醜くても吐き出さなくてはヒトではいられなかった。

 

「たしかに僕には殺し(これ)しかない。

 それでも、懸命にやったんだ。

 その結果がこれなのかよ!!」

 

「あんまりだろう、僕だって苦しんだんだよ!

 それでも知らない顔をして君はーーーーー」

 

気づいた時には涙が出ていて、顔なんてぐしゃぐしゃで。

それでも"彼女"に伝えたくて、杭を打ち付ける。

 

君だから、こうなるのかな?

よく分からないや。

きっと許してもらえないと思うけど、伝えなければいけないと思ったんだ。

 

 

 

 

"彼女"に抱きしめられる。

優しく、慈愛に満ちた声で。

 

 

「大丈夫、私が護ります」

 

あぁ、温かい。

この温度だ。

 

初めて抱きしめられた時の。

 

ホテルで手を握った時の

 

欲しかった。

そんなものが。

 

ただ触れてほしかった。

握っていてほしかった。

離さないでいてほしかった。

囁いていてほしかった。

 

 

ーーー誰に?

誰って"彼女"に決まっているじゃないか。

 

ーーー誰だと?

「これからは私がいる、だから安心して」

 

"彼女"だよ、僕の前にいる。

 

ーーーどんな人だ?

心が叫ぶんだ、この人が良いって。

笑顔が好きなんだ。

 

ーーー本当か?

当たり前だ、僕は"彼女"をーーーーー

 

 

 

 

 

「だから、代わりにあの子を頂戴?」

 

え、誰って?

 

「あの子よ」

 

あの子?

 

「そう、あなたと一緒だった笑顔が気持ち悪い売女」

 

え?

 

「あの子の不死を奪って、じっくりと殺してあげる。

 あなたを誑かした、傷つけた罪を分からせてあげる」

 

「爪を剥がした後に一関節ずつ切り落として、眼以外の顔をぐちゃぐちゃにした後に鏡を見せて、己の醜さを分からせてあげる。

 だってあの子はーーーーー」

 

聞こえない。

君はこんなこと言わない。

耳が情報を得るのを拒否する。

 

心で再び声がする。

 

 

ーーーもう一度だけ聞く、本当か?

・・・・・・・・・・・分からない。

この気持ちも、罪も背負って彼女に触れていいのかが分からない。

怖い。

 

ーーー何が?

拒絶されるのが。

 

ーーーそれだけか?

あぁ、彼女に拒絶されるのがこの世で一番恐ろしい。

 

ーーーだったら、早く行け、彼女はそんな奴じゃないだろう?

何をもってそう言える、何をもって僕を肯定する。

 

ーーーそんなの、お前の心が望んでいるからだろう。

俺の、心が・・・?

 

ーーー気持ちのまま行け、その感情は間違っていない。

良いのだろうか、彼女に触れても。

 

ーーー私が肯定する。

 

体を起こす。

"女"を振りほどく。

 

もう迷いはない。

 

揺らがない。

 

故に足を踏み出す。

彼女の内側に触れる為に。

 

彼女が、俺が、何物でも構わない。

 

 

 

 

 

 

故にそんな言葉予想していなかった。

 

女が俺が崩れると思っていたのだろう、最後の切り札を切ってきた。

悲痛に叫ぶ女は痛々しく、見ていられなかった。

 

それでも俺は目を見開いた。

 

 

 

「だって、あの子は、あいつは、あなたが殺さなければならない99体目よ!!

 あの不死性はあの人が、あいつの起源を操った結果なんだから!」

 

「あいつは、それを、知っていて、あなたを苦しめたのよ!!」

 

 

信じられなかった。

俺の眼も、彼女の不死性を知っているということはそれは真実なのだろう。

目前が真っ暗になる。

 

見ている光景が認識できない。

否定したかったのに、なぜかその言葉には説得力があった。

 

だから声を出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから、どうした?」

 

関係ない。

些細なイレギュラーだっただけだ。

 

先ほど肯定したばかりだろう。

 

 

ーーー彼女が、俺が、何物でも構わないーーー

 

ーーー揺らがないーーー

 

俺が100体目と知っていたのなら、苦しかったのは彼女の方だ。

だから今度は俺の番だ。

 

伝えなければ、この気持ちを。

安心させなければ、頑張らなくていいと。

 

足を動かす。

果てがないほど全力で、きっと彼女はあそこにいる。

 

 

 

景色が変わる前に、女に言葉をかける。

 

 

「爪が甘かったな、"紫蘭"。

 お前は、私を真には理解していなかった」

 

何故か、分からなかったがその名前は聞き覚えがあって。

ずっと昔にこんなやり取りをしていたようだった。

 

そうして彼女は、今までで一番悲痛な顔をした。

彼女の闇が見えた気がした。




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