魔法少女リリカルなのは サイヤの魂を受け継いだ戦士 作:飴玉ベジット
(なんだ?さっきから感じるこの嫌な気配は……一体何が起こるんっていうんだ?)
(くそ!何かが引っ掛かる!だが、正体がわからない分、イライラする上に戦いにも集中できん!)
2人が嫌な予感の正体を真っ先に思い浮かぶのはジュエルシードだった。
この嫌な感じはジュエルシードが怪物を生み出した時に感じる気と似ている。
だがこの付近にあるジュエルシードは封印済みの一つのみのはずだ。
他にあるのだったらなのはやフェイトも気づいているはずだが、この違和感を感じているのはどうやら龍也とリュートのみのようだった。
何かが起こる…そう思いながらも、2人はぶつかり合った。
一方で、なのはとフェイトの戦いも続いていた。
龍也とリュートのそれに比べると遅い方に入るのだが、それでも、一般人から見れば高速でぶつかり合いを続けた。
その実力は龍也との特訓や、新魔法のフラッシュムーブでなんとかくらいついていたが、接近戦においては、ややフェイトに分があった。
だから、なのはは龍也との特訓で得たもう1つの新魔法を使う。
「ディバインシューター!シュートッ!!」
「!!」
現れたのは桜色の魔力弾。
弾速こそやや遅いが発射速度は早く、誘導に優れており、連射も可能という優れた魔法である。
フェイトはその桜色の魔力弾達を回避しながらこちらも一つの魔法で対処する。
「フォトンランサー……ファイア!!」
ディバインシューターと同じくフォトンスフィアという発射台から槍のような魔力弾を放つ魔法だが、ディバインシューターと違い、誘導はできないが、弾速が速いのが特徴だ。
桜色の魔力弾と金色の魔力弾がぶつかり合い相殺される。
その爆発の中をなのははフラッシュムーブを使い潜り抜け、フェイトに向かって突撃する。
「くっ……」
再び交差するレイジングハートとバルディッシュ。ギリギリと音を立てながら力と力は拮抗する。そんな中、なのはが口を開いた。
「さっき言葉だけじゃなにも変わらないって言ってたよね。…確かにそれはあるかもしれないけど……話さないと、言葉にしないと伝わらないこともきっとあるよ!」
「……っ!?」
その言葉にフェイトに動揺が走る。
「私がジュエルシードを集めるのはこの街に壊れて、大切な人達が危険な目に巻き込まれるのが嫌だから! ……だから教えて? あなたはどうしてジュエルシードを集めているの?」
「わ、私は……」
思わずフェイトが喋りそうになったその時だった。横から飛んできた声がフェイトの言葉を断つ。
「言わなくていい!フェイト!」
「アルフ……!?」
その声はユーノと戦っているアルフだった。
「アタシ達の最優先目標はジュエルシードの確保!今はそれだけを考えるんだ!フェイトの望みを叶えるためにも!」
「……!」
「あっ……!?」
フェイトはアルフの言葉を受けて口を閉じ、真っすぐ宙に浮かんだままのジュエルシードへと向かっていく。
一方なのはもそれに気づき全速力でフェイトを追いかけた。
二人は全速力でジュエルシードとの距離を詰め、杖を突き出そうとする。
ちょうどその時だった。
「そうだ!」
「まさか!?」
偶然にも、この光景を見たリュートはこの後起こる展開を思い出した。同時に龍也もこの嫌な気配の正体にようやく気づいた。
「リリカルマジカル!」
「ジュエルシード!」
『封…」」
2人がジュエルシードを封印しようとした矢先……
「なのは!やめろ!!」
「フェイト!早くそこから離れろ!!」
『え?』
龍也とリュートは急いで止めに入ろうとしたが間に合わず、2人のデバイスはほぼ同時にジュエルシードに組み付いた。
「「っ!?」」
その瞬間、2人のデバイスに罅が入り、ジュエルシードから膨大な光が放たれた。
「きゃあ!!」
「あっ!?」
光は上空まで伸び、その衝撃でなのはとフェイトは吹き飛ばされた。リュートはフェイトを、龍也はなのはを受け止める。
「なのは!怪我してないか!?」
「あ、ありがとう、龍也君」
「フェイト!大丈夫か!?」
「うん…戻って、バルディッシュ」
バルディッシュは光に包まれ待機状態になる。フェイトはジュエルシードを見ると決心した顔をし、ジュエルシードに向かっていった
「おい!フェイト!?」
「フェイト!?一体何を…」
フェイトはそのままジュエルシードに手を伸ばすと、すぐに掴んだ。その行動にリュートとアルフはただ驚くしかなかった。
「フェイト!!駄目だ!危ない!!」
アルフは必死にフェイトを止めようと叫ぶ。
「くぅ……止まれ……止まれ、止まれ……!」
フェイトは必死にジュエルシードを抑えようとしていた。だが暴走わ抑えきれないのか、ジュエルシードを掴む手からは血が吹き出ていた。
「フェイト!!……くそ!もうどうにでもなれ!」
「リュート!?」
その光景を見ていたリュートもジュエルシードの方へ向かい、フェイトの手の上からジュエルシードを抑える。すると、リュートもフェイト同様にグローブが破れ、手から血が吹き出した。
「俺が気でコーティングして、エネルギーの放出を抑える!お前は封印することだけに専念しろ!」
「リュート……うん!」
「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」
フェイトは魔力を、リュートは気を一気に解放する。すると、さきほどまでジュエルシードが放っていた強烈な光が収まり、暴走が止まった。
フェイトは魔力を解放した疲労で尻餅をつく。リュートも膝をつきそうになったが、なんとか堪えた。
「2人共!!まったく!なんて無茶するんだい!!」
人間形態になったアルフが、フェイトとリュートに駆け寄り、怒鳴るように喚き出した。
「ごめん、アルフ。それから……ありがとう、リュート」
「気にするな。俺が勝手にやったことだ」
すると、リュートは龍也たちの方を向いた。
「さて……俺達はこれで撤退させてもらう。貴様らが追ってくるのであれば相手になってやるが……どうする?」
「それは……」
ユーノが何かを言おうとした矢先、龍也が先に言葉を言った。
「わかった。持って行けよ」
「龍也君!?」
それを聞いたなのはは思わず叫び、ユーノも目を大きく開ける。
「それの暴走を食い止めたのは他でもないあの2人だ。ならあいつらが持ってくのが筋なんじゃないかって俺は思うんだ。それに、いつかは全部取り返しさえすれば、問題はなしだろ?」
龍也の言い分はよく分かった。確かに正論だし最終的に自分達の手に渡ればいいのだが、このまま見過ごしていいのだろうかとなのはとユーノは考える。
「そう言うことなら、ここはお言葉に甘えさせれもらうよ。行くよ、フェイト、リュート」
だが、2人は答えを出す前にアルフは了承の旨を伝え、先ほどの封印で疲弊した2人に声をかける。
「……うん」
「あぁ」
「ちょっと待って!」
3人がこの場を去る直前、なのはは慌てて引き止めた。
「私は高町なのは!せめて、せめて貴方達の名前だけでも教えて!」
「……フェイト……フェイト・テスタロッサ」
「俺はリュート・ツヴァイク。貴様は?」
「……石崎龍也だ」
それぞれ自分の名前を言った後、今度こそフェイト達はこの場を去った。
「フェイト……ちゃん…」
「リュート、か……」
なのはと龍也は、それぞれのライバルとなる少女と少年の名前を呟いた。
次回、あの大魔道士の登場です