魔法少女リリカルなのは サイヤの魂を受け継いだ戦士 作:飴玉ベジット
「よし、プレシアの怪我は何とか治せた……」
これまでクロノとユーノはボージャックの不意打ちで傷を負ったプレシアの治療をしていた。その治療がようやく終わったようなので、なのは達は少しだけホッと安堵のため息を吐いた。
だが、問題は。
「がはぁっ!!」
「龍也くん……!」
「ぐっ……!!」
「リュート……!」
目の前で行われている一方的な戦いだ。
なのはも、アルフのおかげで何とか正気に戻ったフェイトも目の前に光景が信じられなかった。
この場にいるほとんどの人が思っていた。龍也なら、リュートなら、どんな敵にだって負けないのではないかと。
実際2人は、自分達が倒せないと思っていた敵でも苦戦することなく戦い、勝利を手にしてきた。
しかし現実は違う。
今彼女たちが目にしているのは、突然現れた青いの肌の男、ボージャックという人物に龍也とリュートが苦戦、いや、一方的に痛めつけられてる光景だ。
なのはとフェイトは杖を強く握る。それと同時になのはは龍也が、フェイトはリュートが自分にかけてくれた言葉がそれぞれの脳裏を掠めた。
"言っただろ?俺はなのはの味方だって"
"安心しろ。どんな奴が来ようとも、俺がお前を守ってやる"
((今までずっと私を助けてくれたのに、このまま黙って見てるだけなんて……絶対に嫌だ!))
それは2人の共通の意志だった。なのはとフェイトはある決意を胸に動こうとする。
「2人とも、妙な事は考えるな!」
だけどそんな2人の気持ちを察したクロノは止める。
「クロノくん……でも!」
「でもも何もない!……悔しいが、この戦いに僕達は完全に戦力外なんだ」
クロノは歯を食いしばりながら言う。悔しいのは誰だって同じなのだ。特にクロノは年下の2人にこの戦いを任せざるを得ない状況に、1番歳上であるはずの自分がなんも役にも立てないことに1番苛立っていた。だが、あの次元の戦いになると、とてもじゃないが手を出せない。
それでも、意を決したなのはは一歩、前へと歩みを進める。
「なのは!?」
「クロノ君の言ってること、わからないって言うんじゃないよ。でも、龍也君がいつも側にいてくれたのに……一緒に戦ってくれたのに……このまま何もしないなんて不公平だもん!」
なのはの心からの言葉に共感したフェイトもまた、その足を一歩前へと踏み出す。
「フェイト!?まさかあんたも!?」
「アルフ、ごめん……でもリュートはいつだって私を助けてくれた、力になってくれた……そんなリュートが傷つくのを黙って見ているわけにはいかない」
なのはとフェイトは互いを見合い、頷く。
「待って!2人とも!無茶だ!!」
ユーノは止める。だが、彼は心のどこかでわかっていた。あの2人は言葉でも力づくでも止めることができないことを。それでも止めずにはいられない。だけど2人は笑顔で言った。
「ユーノ君、ここで皆を守ってくれる?」
「アルフも、お願いね」
「待つんだ!無謀だと言うのがまだわからな……」
「行くよ、フェイトちゃん!」
「うん……!」
クロノの制止も空しく、なのはとフェイトはそれぞれ一つの魔力球を作り出す。
「ディバインシューター!シュートッ!!」
「フォトンランサー!ファイア!!」
なのはとフェイトが放った魔力弾は見事直撃し、ボージャックの意識が2人にいった。
「「はあぁぁぁぁぁっ!!」」
「チィッ……」
その一瞬の隙を見逃さなかった2人は気を解放、ボージャックの拘束から逃れ、そこから同時攻撃をしてボージャックを吹き飛ばした。
「龍也君、大丈夫!?」
「リュート!!」
なのはとフェイトははそれぞれ大切な人の側に駆け寄る。しかし、2人の口から出てきた言葉は……
「何やってんだよ!俺達のことはいいから、早くここから逃げろ!!」
「馬鹿か貴様ら!余力があるんなら俺達のためじゃなく逃げるために使いやがれ!!」
まさかの逃げろと怒鳴られた。2人はここまで怒鳴られた経験など無い二人はビクッと肩を震わせた。
だけど、龍也とリュートが怒鳴ったのは自分達を思っての事なのだということもすぐにわかった。故に彼女達もこう返す。
「そんなの……出来ないよ。だって……龍也君を置いて逃げるなんて……私には出来ないの!」
「ごめんね、でも、私もリュートが傷つくところを見るの……我慢できない!」
「なのは、フェイト……」
「チッ、筋金入りの馬鹿どもが……」
一足先に立ち上がったリュートは、肺の空気を入れ替えるくらいのため息の吐いた。
「……遠距離支援に徹しろ」
「「えっ?」」
リュートがボソッと呟いたことを、なのはとフェイトは思わず反応する
「聞こえなかったのか?遠距離支援に徹しろ。それがこの戦いに参加する条件だ」
条件付きとはいえ、リュートは立ち上がりながら2人の参戦を認めた。
「まぁ、体を張って戦うのが俺達の役割みたいなもんだからな」
そう言いながら、リュートより少し遅れて龍也も跳ね起きた。
「よっし!いっちょ行くか!」
龍也は鉢巻の帯を締め直して、改めて気を引き締めた。
「遺言はそれでいいのか?」
奇襲する機会なぞいくらでもあったのに、ボージャックはそれをしなかった。それほど彼には余裕があるのだろう。
その態度に龍也とリュートは若干怒りを露わにしかけたが、なんとか堪えてなのはとフェイトの方を見た。
なのはとフェイトも頷くと龍也とリュートは再び気を解放した。
「ファイアッ!!」
「シュート!」
戦闘再開を告げるように、なのはとフェイトは魔力球を放ち、ボージャックに当たって爆発を起こす。
その隙に龍也とリュートは大地を蹴り、ボージャックとの距離を詰めた。
「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」
煙を切り裂くように現れた龍也とリュートに驚きながらも、ボージャックは寸前に2人のパンチを防いだ。
「ぐっ!?」
だが、2人の攻撃が強烈だったのか吹き飛ばされた。
「だぁーだだだだだだだだ!!」
「でぇぇりゃあぁぁぁぁぁ!」
龍也とリュートの歪ながらも連携のとれた攻撃でボージャックを攻めまくる。それは僅かな時間ではあるものの、ある時は敵として戦い、ある時は味方として協力していくうちに相手の癖やパターンを呑み込んできたからだ。
勿論、この短期間でここまでの連携を地球人がやるのはかなり難しい。まさに2人が戦闘のエキスパートであるサイヤ人だからこそできた奇跡である。
だが、流石はそのサイヤ人を苦しめた敵。ボージャックは2人のラッシュの間にある一瞬の隙を見つけると、2人の腕を掴むとそのままぶつけ、投げ飛ばした。
ボージャックは追い討ちをかけるべく2人のところへ突撃した。そして、ボージャックは2人を薙ぎ払おうと、拳を横にぶん回したが、2人はそれを回避した。
「サンダー……スマッシャー!!」
「ぐっ!」
その隙に、フェイトの渾身の砲撃魔法がボージャックに直撃し、吹き飛ばされた。
「ディバインシューター……シュート!!」
なのはが放ったディバインシューターが複雑な軌道を描きながらボージャックを襲った。
「きさまら「てぇやあぁぁぁぁぁ!!!」ぐっ……!」
なのはを睨むボージャックにリュートが迫る。寸前で気づいたので直撃こそはしなかったものの、リュートの拳はボージャックの頬を掠めた。ボージャックはリュートへの反撃を試みる、だが。
「スキあり!」
「がっ!?」
突如ボージャックの首に衝撃がはしった。リュートはあくまで囮、本命は後ろに回り込んだ龍也のキックだった。作戦は見事に成功しボージャックは体勢を崩した。そこへ龍也とリュートは畳みかける。
「だりゃりゃりゃりゃりゃあああああっ!!」
「だだだだだ!でやあああああっ!!」
「ぐ、がっ……!?」
龍也とリュートの渾身のラッシュが叩き込まれていく。防ぐこともままならず次々と炸裂する拳と蹴り。だが、ボージャックとてやられっぱなしではない。
「貴様らあああああっ!!」
「「くっ!」」
ボージャックの反撃を躱し距離を取る龍也とリュート。あれだけ叩き込んだのにボージャックは動きのキレは落ちておらず、怒りのこもった目で龍也に突撃した。
「ぐぉ!?」
ボージャックのパンチを喰らった龍也だが、なんとか堪えてその腕を捕まえた。
「なに!?」
「リュート!今だ!」
「俺に指図するな!!!」
龍也の妨害行動に驚くボージャックの顔に、リュートは肘に力を込めたエルボーをかました。
「があっ!……くっ!」
又もや吹き飛ばされたボージャックだが、足に地面をつけてその勢いを封殺した。
「このままだと埒があかねぇな。リュート、こうなったら俺達の合体技で一気に決めるぞ!」
「くそったれ……気に食わないが仕方ない。さっさと終わらせるぞ!」
なのはとフェイトの援護射撃は続いている。
ボージャックはそれをうっとおしそうに跳ね除けたり防ぎながら、龍也とリュートを見据えた。
"なのは!フェイト!目を瞑ってくれ!"
龍也がテレパシーを使ってなのはとフェイトにそう伝えた後、龍也とリュートが再び動き出す。
ボージャックに突撃――と見せかけて2人はボージャックの目の前で上昇した。
「逃がさん!」
2人を追いかけようと猛スピードで龍也とリュートの元に迫るボージャック。スピードにも差があるのか少しずつ、だが確実に2人との距離が縮まってきた。
後少しで追いつく。ボージャックがそう思った矢先、リュートは目を塞ぎ、龍也もボージャックがいる方向に向きを変え、開いた両手を額に添えて目を瞑る。その意図がわからないボージャックに動揺が駆け抜けて一瞬の隙を生んだ。
「太陽拳!」
次の瞬間、龍也の全身が太陽のように輝き、全体を巻き込む。突然の出来事に対応できずボージャックはその光に包まれていく。
「ぐおおおおお……ッッ!!」
苦痛で塗れた呻き声が零れ出す。両手を顔に覆い表情を歪ませ呻き声は木霊する。
「今だ!」
「わかってる!」
その隙に2人は一旦ボージャックと距離を置き、同時に必殺技の構えをとった。気を溜めると同時に龍也を包むように強風が起こり、リュートの両手から稲妻が走った。
「ファイナル!……フラァァァァァァァァァァッシュ!!!」
「かぁ~めぇ~はぁ~めぇ~!……波ああぁぁぁぁぁ!!!」
龍也の放ったかめはめ波とリュートの必殺技であるファイナルフラッシュ、1つでも受ければ怪我を避けられない威力を持つ光が混ざり合い、まるで稲妻を纏った光のようにも見えるエネルギー波、あえて名付けるのならファイナルかめはめ波となってそのままボージャックの元へと向かう。まさにこれが2人の切り札ともいえる必殺技だった。
漸く視力が回復したボージャックの目には、2人が放った合体気功波が目の前まで迫っていた。
「ぐっ、おのれ……!」
もはや避けきれない。ボージャックはファイナルかめはめ波を受け止めようと両手を前に出す。だが、片方だけでもすさまじい威力を持つ気功波が合体してさらに強力になったのだ。その威力の前に少しずつ後ずさる。
「ぐ……うおおおおおっ!?」
「「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」
2人が叫ぶと同時に気功波の威力が更に上がった。
気功波に押されたボージャックは、とうとう飲み込まれて爆発した。モクモクと立ち上る煙を前にしながら龍也とリュートは息を切らしながら着地する。
「はぁっ……はぁっ……お、終わったか?」
「ぐっ……死ぬほど疲れたぜ……」
「龍也くん!」
「リュート!」
龍也とリュートに駆け寄るなのはとフェイト。終わった、そう皆思っていた――龍也とリュートを除いては。
「!?……こ、この気は……嘘だろ!?」
「え……?」
「チッ……どんな頑丈な身体をしていやがるんだ」
「リュート?」
龍也とリュートは傍に寄って来ていた
次の瞬間、煙から僅かな人影が浮かんでいた。その正体になのは達も驚愕した。そこには、ボージャックがまだ立っていたのだ。
2人が放った渾身の合体技を受けてもまだ意識があることになのはとフェイトは驚く。一方、ボロボロになったボージャックは、頭部に血管を浮かび上がらせながら言う。
「もう許さん!生きているのが苦しいと思うくらいの絶望を味わうがいい!!」
そう言い放つと、ボージャックは4人に向かって無数の気弾を撃った。龍也とリュートは避けようとしたが、その後ろにはなのはやフェイト達がいた。
「「くそっ!」」
せめて、なのはたちを守る為に2人はバリアを張った。
だが、激情したことによって力を更に引き出したボージャックの攻撃を、体力を限界近くまで使った龍也とリュートが防げるわけがなく、気弾が当たれば当たるほどバリアに罅が出てきた。
「ち、ちくしょう……!」
「くそったれめ……!」
「これでトドメだ!」
ボージャックは跳び、2人に向けてコズミックボマーを放った。その結果、甲高い音とともにバリアが破壊され、2人とも吹き飛ばされた。
「「ぐわぁっ!!」」
何回も地面を転がった後、2人は気絶し、超サイヤ人も解けた。それを確認したボージャックはくっくっくっと笑いながら、なのは達の方を見た。
「ようやくくたばったか。さて、次はお前達の番だ」
自分たちの方に歩いてくるボージャック。それに対してなのはとフェイト、クロノは杖を構え、ユーノとアルフも戦闘体勢に入った。だが、心の何処かで自分達が死んでしまうのではという気持ちがあった。
無理もない。あの2人が本気を出しても勝てないとなると自分達も勝てないことは明白だった。
死のカウントダウンが刻一刻と迫って来たその時。
「うぉ!?」
ボージャックの背中に何かが当たり、爆発した。それによってボージャックは前のめりに倒れかけたが、何とか踏ん張った。
「貴様……まだ生きていたのか!?」
「はぁ……はぁ……はぁ……」
ボージャックが後ろを向くと、そこにはボロボロの龍也が立っていた。
よっしゃ!!なんとか7月の間に投稿できたぁぁぁぁぁ!!