最強の女傭兵 近未来でスポーツ美少女となる   作:のこのこ大王

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**ミサイルに関して**
どうもご指摘が多いため解りやすさを重視した「無誘導」という表現ではなく「指令誘導式」という表記に変更します。また従来のミサイルは「ホーミング誘導式」とします。藤沢の「指令誘導式」は頭部カメラと直結するシステムにより視野情報やショートカット操作により感覚的にミサイルの簡易制御を可能としたミサイルであり、使い手の技量がまともに影響する玄人向けミサイルとなっています。


第90話

 

 

 

 

■side:熊本私立天城女子高等学校 監督

 

 

 

 

 

「お前達なら必ず勝てるッ!日本中の度肝を抜いてやれッ!!」

 

「はいっ!!」

 

 なるべく彼女達のモチベーションが上がるように全力で声をかけた。

 この段階まで来ると、私が出来ることなど限られる。

 だからこそ、彼女達を最高の状態で送り出してやることこそ重要だ。

 

 元気良く返事返した後、やる気を出して互いに声を掛け合いながらVR装置に入る選手達。

 その様子を見てホッと一息吐くも、緊張からか身震いがする。

 

 我々、天城女子は『目指せ!全国出場!』という目標で今まで頑張ってきた。

 何度も惜しい所で全国を逃してきた私達だったが、今年ついに念願の全国大会出場の切符を手にする。

 しかも幸運なことに予選ブロックも何とか抜け切り、初出場・初決勝トーナメント進出という快挙を成し遂げた。

 

 その時は、皆で喜んだ。

 地元でも盛大に祝って貰えた。

 『もしかしたら優勝も』なんて声も出始めたぐらいにみんな大いに喜んでいた。

 だがそれも決勝トーナメントの発表で沈静化する。

 

 

 決勝トーナメント:第一試合

 熊本私立天城女子高等学校 VS 滋賀私立琵琶湖スポーツ女子学園

 

 

 まさかであった。

 こんなにも早く前回の優勝校であり、今回も優勝最有力と言われている所と当たってしまうとは。

 選手達も衝撃だったようで、しばらくはお通夜のような状態だった。

 だがその雰囲気を変えたのがリーダーの来島(くるしま)だ。

 

 『ここで勝てば優勝間違い無し!』

 

 そう言ってチームを何とか盛り上げようと頑張っていた。

 そんな彼女を見て私も監督として何かしなければと声をかけ続けた。

 そうしてようやく今日、万全な状態で試合に臨むことが出来る。

 

 事前に何度も相手の予選試合のリプレイを見て研究した。

 そして個人の動きだけではなく、どうすれば崩せるのかという戦術研究も声が枯れるまでやった。

 こうした積み重ねが、彼女達の自信となり武器となる。

 相手は恐らく可能な限り主力を温存し、データを取らせないようにするはず。

 狙い目は、まさにそこだ。

 全力でない間に必殺の一撃を入れて隙を作る。

 その一瞬の隙に全てを賭ける。

 私達が勝つためには、それしかない。

 そもそも地力が違うのだ。

 持久戦などもってのほかだ。

 やれることは全てやった。

 あとは、それが上手く行くよう願うだけ。

 

 そう思っていると何故かベンチ内がザワザワしている。

 見ればマネージャーの子が出ている表示をこちらに見せてきた。

 

 『只今、ゲームシステムと接続中です。しばらくお待ちください』

 

 こんな表記など滅多に出ない。

 何故ならこうした技術は日々進化しており、今では読み込みに時間がかかるなどということはほぼ無い。

 

 

 監督達が首をかしげている頃。

 世界から切り離されたベンチの外では、予想外のことが起こっていた。

 接続カット後に会場やテレビでは、スターティングメンバーの発表がある。

 この時、琵琶湖女子側のメンバーが発表されていた。

 

 ■琵琶湖スポーツ女子学園

 

 ・藤沢 花蓮  ST 【L】

 ・新城 梓   ST

 ・大場 未来  AT

 ・杉山 栄子  SP

 ・大谷 晴香  AT

 ・南 京子   SP

 ・笠井 千恵美 ST 

 ・シャーロット ST

 ・霧島 アリス BR

 ・安田 千佳  BR

 

 これを見た会場が騒然とし過ぎており、そのまま声を選手達に届けることに待ったがかかったのだ。

 そのため前代未聞の『会場待ち』という状態で試合が5分ほど遅れる事態となった。

 

 

 そうとは知らない選手達やベンチなどには、少し不安な空気が流れる。

 だが、程なく会場が落ち着くと『まもなくゲームが開始されます。準備をお願いします』という開始前のメッセージが表示された。

 これにより選手達は、気持ちを切り替えてスタートの合図を待つ。

 

 私も『何か少しトラブルでもあったのかな?』程度にしか考えていなかった。

 それが、良くなかったのだろうか。

 

 試合開始の合図が鳴り響く。

 会場の声援も大きく、自然と見ている側も力が入る。

 そして双方が中央でぶつかった瞬間。

 

 ―――それは起こってしまった。

 

 開幕中央を4人で一気に前に出た選手達。

 そこに現れたのは、見たことが無いミサイルを装備した相手選手だ。

 

「まさか―――」

 

 そこで私は、ようやく気づいたのだ。

 琵琶湖女子が、スタメンを変えてきたことに。

 

 右手と一体型になっている箱型武器から小さなミサイルが物凄い勢いで連射される。

 『針型連射式ミサイル:ニードルミサイル』と名付けられたそれは、低威力ながらマシンガン並みの連射力で小さな細長いミサイルを撃ち出す。

 

 一番前に居た高機動重装甲ストライカーが大盾でガードする。

 細かくも連射力があるミサイルの雨に足を止められてしまう。

 そこに今度は左手と一体型になっていた同じく箱型武器から中型ミサイルが物凄い速さで飛び出した。

 

 足を止めているストライカーの大盾にそのミサイルが直撃すると、ストライカーはゆっくりと後ろに倒れながら光の粒子となって消えた。

 撃破ログが更新される。

 『貫通式ミサイル:ペネトレーター』と名付けられたそれは相手装甲などを確実に貫通した後、内部に本命を叩き込むためのミサイルである。

 何よりこの2つは、今までのホーミング誘導式ではないのだ。

 指令誘導式を採用したミサイルで、頭部カメラと直結することで簡易的にではあるものの、感覚的にミサイルを操作出来る革新的なミサイルとなっている。

 そのため使用者の技量がまともに反映されてしまう玄人向けとなってしまったが……。

 

 これにより大型シールドごとガーディアン装甲を正面から貫通爆破され撃破されたストライカー。

 その様子に突っ込もうとしていた残り3人が萎縮してしまう。

 

「イザイザ、ジンジョーニィー!」

 

 そこへ高機動型のストライカーが大型ブレード1本で突っ込んできたのだ。

 慌てて3人が反撃しようとするが、一瞬で間合いを詰められ通り抜けざまに1人が横薙ぎで一閃。

 しかもこの突撃してきたストライカーのスグ後ろにはガトリング持ちのストライカーが2人居て、どちらもブースター装備。

 この2人が流れるように突撃してきて先頭のブレード持ちに意識が持っていかれている2人を一瞬にして撃破していった。

 

 運の悪いことは続く。

 中央ばかりに目を向けていて気付かなかったが、既に上下ラインの攻防も終わっていた。

 思わず隣のマネージャーの子に確認すると上側は、大盾サポーターの影に隠れながらグレネードを的確に投げつつ押し込んできた相手にやられたらしい。

 そして下側も相手サポーターに気を取られた一瞬の隙を突かれて相手アタッカーによる至近距離からのショットガンによって倒されたそうだ。

 一瞬にして8選手が撃破され、中央後方に残り2選手だけと―――

 

 絶望的な戦況を理解しようとする前に、特殊キルアナウンスが連続して鳴り響く。

 2連続で鳴り響いたヘッドショットアナウンスは、霧島アリスと安田千佳の2人だ。

 それぞれが残っていた2人を倒してしまった。

 

 開始まだ2分ほどだ。

 それでもう我が高校の選手は、誰一人として残っていなかった。

 あまりの出来事に呆然としてしまい、監督としての義務を放棄してしまう。

 本来なら私が、サレンダー申請をしなければならなかったのに。

 

 リーダーの来島からのサレンダー申請により決勝トーナメント第一試合は、一瞬にして終了することになった。

 そのあまりの衝撃に会場すら歓声よりもどよめきの方が多かったほどだ。

 

 こうして私達の全国初挑戦は、最後の最後にとびきりの苦い思い出と共に……終わった。

 

 

 

 

 

 




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