最強の女傭兵 近未来でスポーツ美少女となる   作:のこのこ大王

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第91話

 

 

 

 

 

■side:とあるLEGEND関連雑誌のベテラン記者

 

 

 

 

 

「こりゃ、どうなってるんだぁ?」

 

 吸い終わったばかりなのに、また次のタバコを銜えて火をつける。

 最近吸い過ぎだと注意されているのだが、どうしてもやめられない。

 タバコを堪能しながら送られてきた動画を次々と確認する。

 

 どれも世界各国で行われているクラブチーム大会などの映像だ。

 そこには今年のU-18女子代表に選ばれるであろう少女達が映っていた。

 

 次に再生した動画は、中国というタイトルのもの。

 

「ここで黄若晴が突っ込んだぁー!」

 

 試合開始直後から積極的に攻め込む昨年話題となった選手。

 

「1人、2人、3人、4人……5人いったぁー!!」

 

 去年よりも明らかに進化したキレのある動きは、もはや刃物を思わせるほどだ。

 一瞬で中央に陣取る5人の選手を翻弄しながら一瞬で倒しきってしまう。

 

「強い!圧倒的に強いッ!!我らが国の代表は彼女しかいないっ!!」

 

 実況の興奮した声と共に試合は一瞬で決着する。

 

 俺はその映像に苦笑しつつ、次の動画を再生する。

 次のタイトルは、ロシアだ。

 再生された動画は、試合開始前の説明の後半からだ。

 それが終わると試合が始まる。

 そしてスグにその状況が訪れた。

 

「ロシアの守護神!ソフィアがたった1人で3人を押し込んでいるぞッ!!」

 

 実況が叫ぶ通り、北側通路から侵攻してきた3人をソフィア1人が押し返していた。

 相手側もブースター装備のストライカーであり、高機動戦闘であるにも関わらずソフィアはほぼダメージを受けていない。

 対して相手はどんどんとダメージが蓄積し、我慢しきれず接近戦を挑んだ選手も一瞬で叩きのめされてしまう。

 

 結局、2人がやられた段階で最後の1人が逃げ出すも、ソフィアがそれを許さず追撃して仕留めた。

 

「我らが守護神は、やはり強かった!!」

 

 余裕そうな表情でマガジン交換する姿は、もはやベテラン兵といった風格である。

 そして何とか劣勢を変えそうと逆側から侵攻を開始した相手チームだったが―――

 

 

 ―――ヘッドショットキル!

 

 

 特殊キルアナウンスが量産され、キルログに表示されるのは『妖精』の名だ。

 

「おおぉ~!!同士諸君ッ!!我らが国の妖精も健在だッ!!」

 

 たった2人で半数以上の選手を狩ったことにより、この勝負も一瞬で決着が付いた。

 あまりの衝撃に気づけばタバコを吸い終わっている。

 

 興奮が収まらないまま、その次に選んだのは『アメリカ』。

 動画を再生しながら次のタバコを銜える。

 

 試合が少し進んだ所で、そのシーンが訪れた。

 接近武器と大盾という高機動重装甲ストライカー2人が中央を強引に切り崩す。

 応戦してきた2人をそれぞれ大盾のシールドバッシュからのブレードによって撃破する。

 そのままの勢いに乗って更に奥に進んだ所で1人の選手が現れた。

 

 大型マシンガンと大盾。

 そしてブーストという先ほど見たソフィアと同じ装備編成。

 

 2人が突っ込んでくるのを迎え撃つかのように銃を撃たずに突っ込む。

 そして1人目の移動しながらのシールドバッシュを回避すると、そのまま奥の2人目に向かってその場でジャンプしつつ斜め横回転。

 2人目が驚いてとっさにシールドで防御している所に、回転からのシールドバッシュを決めて横に大きく殴りつける。

 それによって大きく体勢を崩す2人目。

 だがその隙をカバーするかのように1人目が、盾を捨て急旋回しながらブレードを両手で持ち横に構えて突っ込んできた。

 予想通りだったのか特に気にすることなく振り返った彼女は、移動しながらのブレード一閃を盾で下から跳ね上げるようにして払う。

 その一撃で体勢を崩しつつもそのまま逃げようとするブレード持ちだったが、彼女がそれを許さない。

 盾で払った反動を利用して体勢を変化させると、そのまま通り過ぎようとした相手に超至近距離から大型マシンガンを連射した。

 

 流石のガーディアンもそれには耐えきれず、一瞬にして光の粒子となって消えていく。

 その時、体勢を崩していた2人目が持ち直して反撃に出ようとしていたが―――

 

「はっ!?」

 

 思わず声が出た。

 彼女は、大盾を回転させるようにして投げたのだ。

 どこかの盾を投げるヒーローのような攻撃。

 当然LEGENDでは当たってもダメージはならないが、あの質量だ。

 当たった選手は、驚きながらも盾で防御する。

 流石に体勢を立て直した後であり、大盾でしっかり防御すればそれまでだった。

 だがそれで彼女は終わらない。

 

 大盾で防御したせいもあり、一瞬だけ相手から目を離してしまったのだ。

 防御が終わり、大盾を横にズラして相手を視認しようとした選手はその瞬間驚きの表情となる。

 

 既に目の前に相手選手が居たのだ。

 

 しかもマシンガンを捨て、腰に装備してあった大型警棒を振り上げた状態でだ。

 咄嗟に大盾を戻したのは正しい判断だっだだろう。

 だがそれも時間稼ぎでしかない。

 警棒の一撃で盾を弾かれ、またも大きく体勢を崩してしまう。

 盾を手放さなかったことを褒めればいいのか、それとも手放して体勢を少しでも確保して反撃を狙うべきだったのだろうか。

 今となっては解らないが、確かに言えることは1つだけ。

 

 今回の決着は、体勢を崩した相手に追撃を入れて確実に仕留めた彼女―――『ジェシカ・ラングフォード』の勝利だということだ。

 

 送られてきた動画は、どれもこれも今年のU-18世界女子代表に選ばれそうな選手の映像ばかり。

 そしてその彼女達は、去年とは比べものにならないほど成長していた。

 

「どうだ?映像を見た感想は?」

 

「とてもじゃないが信じられない……」

 

 この映像を送ってきた親友であり同業者でもある男の声に震える声で答える。

 

「残念ながらこれが今の彼女達だ」

 

「異常なのは、日本だけじゃないってことか」

 

 思い出すのは昨日の試合。

 今開催されている全国高校生LEGEND大会で行われた琵琶湖女子の試合だ。

 U-18メンバー候補が揃っている所ではあるが、今年は去年に比べて異常に強いのだ。

 それこそ「何かあった」と言われた方が納得できるほどに。

 

「お前が言うように世界各国でこうした現象が見られる。まあ各国とも概ね大歓迎さ」

 

 苦笑しながらそう話す親友に『そうだろうな』と私も苦笑しながら返す。

 自国選手が強くなって喜ばない国などないだろうよと思いながら。

 

 それから色々と仕事の話をしてから電話を終える。

 そしてまた次のタバコに火をつけながら、ふと思い出す。

 

「そういや次の試合は、琵琶湖女子と東京大神がぶつかるんだったよな」

 

 確か部署内で『事実上の決勝戦』だなんだとタイトルをつけようとしていたなと。

 東京大神も確かに強くなっている。

 白石が抜けたが、それを感じさせない強さだ。

 しかし―――それでどこまで今の琵琶湖女子と戦えるのだろうか。

 

「コイツは、明日もひと騒動ありそうかもなぁ」

 

 気づけば、また新しいタバコに火をつけていた。 

 

 

 

 

 

 




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