最強の女傭兵 近未来でスポーツ美少女となる   作:のこのこ大王

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第11話

 

 

 

■side:霧島 アリス

 

 

 

 

 

 高校生のLEGENDプレイヤーにとって重要な大会。

 それは、全国高校生LEGEND大会と呼ばれるものだ。

 この大会、夏休みを利用すべく夏に行われる。

 

 この夏の全国高校生LEGEND大会。

 もちろん男性と女性で分かれているため

 正確に言えば、全国女子高生LEGEND大会となる訳だが。

 

 都道府県ごとに予選があり、それを勝ち抜いた1チームが

 各都道府県の代表として、同じく全国で勝ち抜いてきた強豪校と戦うことになる。

 

 本選は、全国から集まった47校にチャレンジ枠という

 大会本部が選ぶ1校を含めた48校が、1ブロック6校に分かれてのリーグ戦を行う。

 このリーグ戦で上位1校のみが決勝トーナメントに出場できる。

 これが鬼門で、運に左右されやすく

 ここで多くの強豪校同士が潰し合うことになる。

 

 そしてリーグ戦を勝ち上がった8校は

 決勝をトーナメント方式で戦い、優勝を目指す。

 これが一番ある意味注目度があり、プロのスカウトも大忙しとなる。

 何故ならこの夏大会は、世界大会……つまりは

 U-18女子日本代表の選考会も兼ねているためだ。

 ここで活躍した選手は選考会に呼ばれやすくなるため

 LEGENDに情熱を燃やす少女達にとって一番の頑張り所となる。

 

 という訳で、我が「私立琵琶湖スポーツ女子学園」も夏の大会に向けて

 他校との練習試合や新人育成など、頑張っている訳なのだが

 そんな中、最近暇になってきている。

 私が部室の椅子に座ってダラダラしているのが良い証拠だ。

 

 人数が居ないからというのが大きな理由ではあるのだが

 どうもそれだけではないようで、元プロでもある前橋監督は

 わざわざ机を挟んだ向かいに座ると、一枚の紙きれを眺めながら唸り出した。

 

 正直、放置したい所なのだが

 これ見よがしに目の前でそんなことをされると

 スルーする訳にはいかないというのが残念である。

 

「……どうしたんですか?」

 

「いえ、たいしたことではないのよ」

 

 なら、そんな目の前で唸るなよと言いそうになるが

 それをグッと我慢する。

 

「ただ、予想外に練習試合を受けてくれる所が少なくてね」

 

「……そう言えば前に、私の名前を出せば一発だ何だと言ってませんでしたっけ?」

 

「それが問題なのよねぇ。

 貴女の名前で、受けてくれるところも多いのだけど

 逆に貴女の名前を聞いて、断られることも多くて」

 

 自分の名前で断られるってどういう意味だよっと思っていると

 表情に出ていたのか、苦笑しながら彼女が答える。

 

「どうも貴女とは、本番である夏大会で勝負したいみたいなのよ。

 『霧島 アリスは大会でキッチリ叩くから、練習試合はお断りします』ですって。

 まあ手の内を迂闊に晒したくないって所かしら」

 

 正直、なんだそりゃと言いたい。

 でもまあ、前々から一方的に勝負だのライバルだのと言われることも多く

 試合中でも、試合そっちのけで私を撃破するためだけに突っ込んできた人は

 1人や2人どころではない。

 中には、ルールを無視して一対一で勝負しろと言い出す変なのまで居た。

 

 ぶっちゃけ良い迷惑である。

 

「だから予定の修正をしなきゃならなくてね。

 

 ……あ、そう言えば貴女宛てに協会から手紙が届いてたわよ」

 

 唐突に思い出したといった感じで1通の綺麗な封筒を取り出すと

 こちらに渡してくる。

 

 それを受け取ると丁寧に開封する。

 

 中には、返信用の封筒と手紙が入っていた。

 何の手紙だろうと読み始めた私だったが……。

 

「……何で、今なの?」

 

 これ以外の言葉が見つからない。

 何故ならこの手紙は、U-18女子日本代表を選ぶ選考会の招待状。

 参加・不参加を明記して返信する手紙だったのである。

 しかも本来なら参加・不参加を明記して返信するだけなのだが

 わざわざ手書きの手紙が同封されていた。

 内容は、当たり障りのない挨拶からスタートし

 U-15の時の称賛へと流れ、最終的にU-18にどうしても参加して欲しい

 という話なのだが、条件があれば言って欲しいとまである。

 可能な限り希望通りの環境を整えるなどと、何でそんなに必死なんだという

 レベルの文章になっていた。

 

「え? これって選考会の?」

 

「選考会ってこうやって呼ばれるんだ……」

 

「あれ? この手紙って夏大会後ぐらいに来るんじゃなかったっけ?」

 

「そうそう、夏大会の戦績とかで呼ぶ人を決めるはずだよね」

 

 いつの間にか、私を中心に部員が全員集まって手紙を覗き込んでいた。

 プライバシーも何もあったものじゃない。

 

「霧島 アリスは、もはや夏大会の成績関係なく招集するつもりだから

 さっさと送り付けたという話ではないかしら?」

 

 花蓮の一言に全員が「あ~、そうか~」と納得した感じになる。

 それはそれでどうなんだろう。

 

「確かに、参加以外認めないって感じの文章ですもんね。

 それにまあ、普通こんな手書きの手紙なんて付いてませんし」

 

「そりゃだって、もし霧島 アリスが参加せずU-18女子日本代表が優勝逃したら

 もう叩かれまくりでしょうよ。

 『何でアリスを出さなかったんだ!』って」

 

「ああ、それで

 『アリスが出てれば勝てた!』とか『監督の責任問題だ!』とか言われて

 ワイドショーとかで大騒ぎになるんですよね、わかります」

 

 周囲で勝手にワイワイと言っているが……。

 いやホント、色んな意味で迷惑この上ない話である。

 

「……このまま、そこのゴミ箱に投げ捨てちゃダメかな」

 

「いやいやいや、流石にそれは!」

 

 思わず本音が漏れたみたいで、京子ちゃんにスグに止められた。

 

「こういうことされると、正直マスコミとかがウルサイ」

 

 そう、何かあると何処からその話を聞きつけたのか

 スグに連中は、集まってくるのだ。

 

 学校内と家では、流石に色々な権力的なアレもあり

 迫って来られることは無いのだが、それ以外を狙ってくる。

 正直、こちらからすれば熱心なストーカーと何ら変わりがない。

 そのせいで、寮から出て買い物1つ行くのにも苦労することがある。

 

「心配なさらなくても、誰もこの件について話はしませんわ」

 

 花蓮がそう言うと、みんな『うんうん』と頷いている。

 

「ありがとう」

 

 私は、素直に感謝する。

 中学生の頃は『私達、友達だよね!』と言いながら

 人様のプライベートな話をマスコミに垂れ流していた奴らが居た。

 

 結局こういうことは、人によるのだ。

 

 前世でも笑顔で擦り寄って来る敵も居れば

 嫌な顔をしながらも手を貸してくれる味方も居たし

 都合の良い時しか寄ってこない奴や、味方の振りをした他人も多かった。

 

 そう思えば、例えちょっとしたことでも

 ちゃんと約束事を守ってくれたり、こちらを心配してくれる相手というのは

 とても大事であることを知っている。

 だからこそ、ちゃんと感謝の言葉を口にするようにしていた。

 

「―――ッ!!

 べべ、べ、別に、か、感謝されることでは、ありませんことよっ!?」

 

 花蓮の方を向いて感謝の言葉を口にしただけなのだが

 顔を真っ赤にしながら動揺していた。

 

「ん?」

 

 疑問に思って周囲を見ると、みんな心なしか顔が赤い。

 

「……相変わらず、アリスちゃんの笑顔は強力だね」

 

 何が起こったのかと考えていると、京子ちゃんがそう口にする。

 

「……あれ? 私、笑ってた?」

 

「うん、自然な感じで凄く強力だった」

 

「強力ねぇ……」

 

 いつもあまり感情を表に出さないせいか

 たまに笑顔などになると、みんな『破壊力がある』とか『笑顔が強力』など

 まるで兵器の威力を語るような感じで評価してくる。

 

 確かに鏡を見るたびに、前世の自分とは比べものにならないほどの

 美少女になっているのだから、周囲からすればそんな少女の笑顔は

 『強力』なのだろう。

 惜しむらくは、それを自分自身では見れないという点だ。

 前に鏡の前で笑顔の練習をしてみたが、どうも『している感』が強すぎて

 彼女らの言う評価の笑顔とは、程遠かった。

 

 ちなみに選考会の返事は、両親や祖父母に一応報告を入れてから

 参加すると返事をしておいた。

 夏の全国大会を前にして早くも選考会への招待が来たことに

 両親は驚いていたが、祖父母はどちらも『当然だ』といった感じだった。

 しかも『次からは、直前認可など許さない』と、既に

 複数の国と共同で国際LEGEND協会に圧力をかけているそうな。

 

 ……いや、そんなニュースにすらなっていないような

 重要情報をサラっと流さないで欲しい。

 

 

 

 

 

 

 □■□■□■□■□■□■□■□■

 

 

 

 

 

 ―――試合終了

 

 大音量で鳴り響く音と共に試合終了のアナウンスが流れる。

 

『試合終了!!

 圧倒的! まさに強者の戦いを見せつけました!!

 

 全国女子高校生LEGEND大会・滋賀県予選決勝!

 県立浜大津高校 対 私立琵琶湖スポーツ女子学園の試合!

 

 私立琵琶湖スポーツ女子学園が、相手ポイントを削り切っての勝利で

 全国大会への切符を手にしましたっ!!』

 

 大会が行われた施設の実況ブースでは

 ローカル放送のテレビ局が入っており、テレビ中継と実況を行っていた。

 試合が予想外に早く終わってしまったために

 テレビ局のスタッフがブース内に居る2人に会話で繋げと指示を出す。

 それを見た2人は、慣れた様子で試合を振り返り出した。

 

『いや~、しかし私立琵琶湖スポーツ女子学園は、強いですねぇ~。

 全試合、相手のポイントを削り切る圧巻の勝利でした』

 

『今年から新設された新しい高校ではあったのですが

 ここは少し特殊でしたので、学校側からすれば予想通りだったのかもしれません』

 

『―――というと?』

 

『この学校は、【世界に通用する次世代のスポーツ選手を育てる】という目的で

 新設された所で、理事長がスポーツ振興大臣の霧島氏の奥さんなんですよ』

 

『霧島氏の奥さんといえば、元東京都知事の―――』

 

『そうです。

 そんな学校だけあって、最先端の設備を備え

 開校するにあたって全国から優秀な選手に声をかけて集めたことでも

 注目されていたんですよ。

 

 実際、各分野のスポーツでもこの学校から

 既に何人も国内大会の優勝者や日本代表選手が出てきていますからね』

 

『そうだったんですか。

 なるほど、だからLEGENDも強かった……と』

 

『昨年、LEGEND界で日本初の世界大会優勝というタイトル獲得。

 その立役者であるU-15日本女子代表だった選手のうち

 南選手、大谷選手、そして霧島選手の三人が

 この琵琶湖スポーツ女子学園には在籍しています。

 これは、非常に大きいでしょう』

 

『先ほどの決勝でもその三選手は、大活躍していましたね!』

 

『はい。

 特に霧島 アリス選手は、苗字で解ると思いますが

 スポーツ振興大臣の霧島氏のお孫さんでもありますから

 ある意味、この学校に入るのは当然の流れだったのかもしれません』

 

『なるほど、確かにそうかもしれませんね。

 では、ここからは試合のハイライトを振り返ってみましょう』

 

 その言葉でテレビの画面は、先ほどの決勝戦の映像を映し出した。

 

 地方予選は、地方のローカルテレビ局が独占放送するのだが

 その生中継の映像は、その日のうちに何故かネットにアップされ

 最新の霧島 アリスの情報として拡散することになるのだった。

 

 

 

 




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