最強の女傭兵 近未来でスポーツ美少女となる   作:のこのこ大王

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第104話 杉山レポート(2年目:コーチ視点)

 

 

 

 

■side:U-18女子日本代表指導コーチ兼選手管理 杉山 栄子

 

 

 

 

 

 元々、日本代表に選ばれるなんて思っていなかった。

 いつも地味だなんだと言われ続けてきた自分のスタイルを考えれば、まあ仕方が無いでしょう。

 なので多少の憧れぐらいはあったけど、その程度だ。

 未来が代表になった時は、その気持ちが少し強く出たこともある。

 でも世の中は火力主義。

 地味で目立たない支援特化など見向きもされない。

 

 それでも私は自分のスタイルが間違っているとは思わない。

 サポーターとは『誰かを助け・支え・共に歩む』ことが基本だと私は思って居る。

 私達が居なければ耐久値や弾薬など、とてもではないが戦線を支えきれない。

 だからこそ……そんな『縁の下の力持ち』として、私達サポーターは戦うのだ。

 

 これこそが私の持論であり『サポーター』のあるべき姿だと思う。

 

 ―――しかし……目の前の光景は、私のそんな持論を吹き飛ばすものだった。

 

 

 

1位:南 京子

・日本代表で何度も世界戦を戦ってきた選手。

 私達の年代でサポーターと言われると、まず名前があがる。

 

 大盾・大型マシンガンに肩ミサイルと今の流行サポーターといった感じの装備。

 一応サブでハンドガンを持っている。

 

 常にアタッカーやストライカーの前で大盾を展開することで『壁』となり攻撃の起点作りに貢献している。

 また盾で防衛しつつミサイル攻撃を仕掛けることで、攻撃にも積極的に参加していた。

 彼女の長所は、その判断力だと思う。

 周囲で誰が一番カバーが必要なのか?ということを瞬時に判断してカバーに入る。

 それだけでも十分代表入り出来るだけの実力だと言える。

 

 機動力を失いたくないのか、それとも利便性を追求してか。

 弾薬パックと回復パックという携帯パックを支援の基本としていた。

 パックは小さくて投げることも出来るので簡単に受け渡しも出来て便利な反面、中身の容量が少ない。

 常にカバーに入るために動き回ることを考えればパックでも構わないのだが、どちらかを設置型にするかレーダーユニットを装備してもいい所かな。

 

 彼女は『共に戦う』というスタイルが強く出過ぎている。

 その辺りがもう少しバランス良くなれば、更に伸びると思う。

 

 

 

2位:宮島 文

・大阪日吉のサブリーダー。

 元々は、どの兵科もそれなりにこなせる万能選手だったらしい。

 今ではすっかりサポーターになってしまったらしく『世界戦でずっとやってたら固定になってしまったっす』と言っていた。

 

 最近のサポーターは誰もが大盾装備だが、彼女だけは小盾装備。

 もう片腕は腕部一体型ガトリング。

 ……何故、腕部一体型を採用したのか。

 それだと片手でしか支援用装備を使えないじゃないの。

 

 そのためか彼女も弾薬・回復共にパック装備。

 小盾で自身を防御しつつガトリングと肩ミサイルで前に出ていく感じである。

 もうそれならストライカーかアタッカーで良いよねって思わなくもない。

 自分でもパックは使えると思えば『自己完結型』とも言えるのかな?

 どちらにしても、もう少し攻撃面を何とかして欲しい所。

 

 

 

3位:渋谷 鈴

・元U-15日本代表選手。

 大型マシンガン、大盾、肩ミサイルと流行の最先端。

 支援も、どちらもパックである。

 

 ……何なの?

 片手間支援で『サポーター』とよく言えるよねって思う。

 彼女も大盾を構えつつ前に出て盾となりながらミサイルなどでジワジワとラインをあげるタイプ。

 壁になりたいなら大盾ストライカーの方が安定しそうに見えるのは私だけなのだろうか。

 

 彼女に関しては最前線に立ち過ぎている点が深刻だと思う。

 下手をすれば真っ先に支援が撃破されかねない。

 少し盾を過信し過ぎている感じがする。

 

 

 

4位:近藤(こんどう) 冬華(とうか)

・現役LEGENDアイドルユニット【Twinkle star】のメンバーらしい。

 

 パックではなく設置型ポットなどを持っている点は、素晴らしい。

 設置型は破壊されるリスクや重量の関係で敬遠されがちだけど、補給速度や容量などがパックとは比べものにならない。

 これ1つがあると無いでは、ラインの安定感が違うと断言できる。

 

 ……ただ、何故に小盾を両手に装備して肩ミサイルを両肩に装備されているので?

 しかも手に持つ武器は、物凄く綺麗なピンク色をした小型マシンガン。

 いつ見てもビビット社のアイドルシリーズは、私には理解出来ないわ……。

 

 というか支援装備を設置してから、ひたすら後方で盾で身を固めてミサイルを撃つだけってどうなの?

 確かに前にひたすら出る連中に比べればサポーターしてると思うよ?

 でもね、引きこもりと後方支援って全然違うのよねぇ~。

 

 アイドルらしく「きゃ~!」とか言ってるけど、選考会でやることじゃないからね?

 

 

 

5位:高橋 翠

・青峰のサポーターリーダーという少し変わった選手。

 本来リーダーは、安定感のあるストライカーが担当することが多い。

 もしくは一番後方に居がちなブレイカーだ。

 

 でも彼女はサポーターでリーダーをやっている。

 だから青峰との試合では少し期待していただけに、実際見ると何とも言えなかった。

 まずお決まりとも言える流行装備一式だけど、大型マシンガンを片手で撃つ際に集弾性が他選手より悪い。

 基本的に努力家な感じで人の話も良く聞く感じだけど、スグに他人をカバーしたがる。

 カバーが必要ない場面でも前に出るのは本人の気質なのか、それともそういう役割がしたいのか。

 どちらにしても装備を使いこなしているのではなく、装備に振り回されている感じがするのが気になる。

 ……運動神経とかは文句ないのになぁ。

 

 

 

6位:長野 誠子

・転向してきた元アタッカー。

 彼女はその性格上、アタッカーからサポーターになったのは意外だった。

 でもそのスタイルを見て『ああ、なるほど』と思った。

 

 要するに彼女は『突っ込むための盾』を必要としていたみたい。

 だからこそのサポーター。

 なのでアタッカーと簡単に突っ込んでいってしまうし、簡単に盾を使い潰してしまう。

 勢いに乗って前に出る時なら構わないでしょうけど、大人しくライン戦というのは難しいでしょうね。

 判断力や反応速度は悪くないだけにもったいない。

 

 支援に関しては無理やり弾薬・回復どちらも可能な大型支援ポットを持たせているので、まだマシな方かな。

 ただ、それすら使い捨てる動きをすることが欠点といえる。

 ちゃんと戦場の動きを予測して、一番あると便利な場所にセットするセンスもサポーターには必要だわ。

 

 

 

7位:石井 美羽

・アタッカーも兼任出来る便利な選手。

 今ではアタッカーの方が多いらしいけど、サポーターとしては貴重な堅実装備だ。

 大盾・小型マシンガン・肩ミサイル・大型支援ポット・支援レーダーという装備。

 やっと……やっとまともな『普通のサポーター』を見た気がしたわ。

 思わず涙が出そうになるほど、普通なのに出会えて嬉しかった。

 

 ……コホン。

 え、えっと。

 そう、彼女の場合は……大盾を活かしきれてない点かな。

 小盾よりも大きくて耐久値のある大盾は、身体を丸ごと隠せるほど大きい。

 それを利用して前に出る支援をしたり、下がる味方の射線上に立って追撃を阻止するなど様々な動きが出来る。

 しかし彼女は自らを守ることだけに使い過ぎていた。

 それならば小盾で十分だと思う。

 そういう意味では、まだ装備が使いこなせていない感じではある。

 

 

 

8位:北条 蒼

・この子が選ばれちゃったか~という感じ。

 双子の姉の方。

 

 彼女に関しては、ようやく基本的な所が終わった感じだった。

 まだ前に出るのも支援に回るのも判断に迷ったりタイミングが遅れたりと粗が目立つ。

 特に妹ちゃんと離すと妹が気になるのか、途端に勝負に集中出来なくなる。

 だからウチでもまだ2人セットでしか運用していない。

 

 なので彼女を使うのなら妹ちゃんとセットが基本。

 実力的にも他校エースクラスが相手だと不安が残るレベル。

 そして彼女も一応、流行装備一式になっているが……それもどうかと思ってはいる。

 もうどうせ2人で1セット運用するなら、それに特化した装備で良いんじゃないかとは思っていた。

 だから今度、その辺の話を監督としてみようかな。

 

 

 

9位:南保 珠

・石井さんの枠で繰り上げ当選した元U-15代表選手。

 アリスさん曰く『言う事聞かない野良猫』らしい。

 

 どういうことかと思ったら、初日でそれを理解してしまった。

 大型マシンガン・小盾・肩ミサイル・腕部ロケという流行一式と少しだけ違う内容。

 支援装備に関しては安心と信頼のパック2種。

 

 マシンガンとミサイルを使ってひたすら前に出て、ロケは補助のように使う。

 そりゃ大盾では機動力が落ちるから小盾になるよねって感じだわ。

 

 それに最大の問題点は『指示を無視する』という点。

 ある程度の動きを見たいがために一定間隔ごとに通信で指示を出して、どう動くのかを見極めようとしているのに言うことを聞かないのだ。

 何度か注意をしてようやく動くので、それに関して文句を言えば『あの場面はこうするべきだった』と言い出す始末。

 チームプレイが何より大事なLEGENDで指示無視とか、あり得ないんですけど!

 

 しかも自分は『仕事をした』と思っているかもしれないが、明らかにアタッカーやストライカーの射線妨害をしているような感じになっていた。

 これでよくU-15に選ばれたなと思う。

 正直これではアイドルの子以下だと判断せざるを得ないかもしれない。

 

 

 

 ある程度選手達の個別データをまとめ終わると、大きなため息を吐く。

 

「まともなのがほとんどいないって何なのよ……」

 

 これが人気投票の闇というものかと一人で苦笑しつつ、あと1日でこれらの総合的なデータを提出しなきゃならないと思うと一気に疲れがくる。

 

「予想外に大変な仕事を引き受けちゃったなぁ~」

 

 愚痴を零しながらも、必要事項を埋める作業に戻ることにした。

 

 

 

 

 




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*これで3人のレポートが出たのでレポート回終了です。
 次話では選考会の選手達による最終紅白戦が始まります。
 そうして25名が決定後、代表選手達の練習がスタートします。
 そこでようやくアリス達コーチの本格的な指導が始まる予定です。

*活動報告への感想もありがとうございます。
 あちらは個別返信出来ないので基本的に返信はしませんが、全て読ませて頂いております。
 ちょっと色々あって迷うこともありますが、何とか自分の書きたい流れでアリス達の3年間を書いていきたいと思います。

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