最強の女傭兵 近未来でスポーツ美少女となる   作:のこのこ大王

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第106話 選考会紅白戦1戦目:前編(2年目)

 

 

 

 

■side:レッドチーム 一条 恋

 

 

 

 

 

 正直、今回の代表に関してはグダグダ過ぎて笑うに笑えない状態だった。

 前代未聞の人気投票などという選考もそうだったが、その後の大炎上も含めて話にならない。

 そして結局は、この人気投票結果で選考会だ。

 アリス達が逃げたのも解らなくもない。

 ……まあ結局、何故かコーチとして帰ってきたけども。

 

 でもまあそれぐらいの方が良かったのかもしれない。

 

 試合開始のアナウンスと共に開始音が鳴り響く。

 

「さて、いきますか」

 

 今回のマップは軍事施設。

 

 

*画像【軍事施設:初期】

 

【挿絵表示】

 

 

 

 この場所は、地味に力押しが出来てしまう場所だ。

 何故なら上下と中央の3ルートあるが、途中でどのルートにも干渉出来ないためである。

 綺麗に仕切られているため、何処かが押されても簡単に援護が出来ない。

 それこそルートの入口まで下がらなければ無理だ。

 

 しかしここの一番面倒なのは、その入口は最終防衛ラインであると同時に最高の防御ラインでもある点だ。

 上下にある軍事施設に後ろの開始地点と回復場所に困らず、万が一撃破されても復帰後スグに戦線復帰となる。

 

 さて、ここまで言えば解るでしょう。

 臨時リーダーとなった琵琶湖女子のリーダーである藤沢の方針で、最初からこの防衛ラインでのKD戦をすることになった。

 理由は簡単だ。

 

 相手は明らかに突撃するメンツばかり。

 絶対に強引に潰しにくるのが目に見えている。

 

 そこで徹底した防衛で足止めし、逆に撃ち合いを強制する。

 そして苛立って前に出てきた奴から狩っていくという形になった。

 

 

 ―――ブルーチーム、発電所制圧!

 

 

 私が持ち場に就いた瞬間、発電所制圧のアナウンスが鳴り響く。

 まあ予想していたとは言え、やはりこうなったかという感じだね。

 

「チッ!梓か!」

 

 世界戦で何度か話をしているうちに、相手の方が1つ上だけど互いに名前で呼び合う関係になった。

 そして密かに自分のライバル認定をしている相手でもある。

 

 手に持った大型ガトリングを撃つ。

 相手はブースターで回避行動を取りつつもガトリングで応戦してくる。

 ……やはり相手の方が上手い。

 

 何もブースターのある無しじゃない。

 私は大型ガトリングだけでなく両肩ガトリングも含めた一斉射撃では最強だと思っている。

 だけど大型ガトリング単体の運用のみだと梓の方が、悔しいことに上手いのだ。

 もちろんそこまでの差があるとは思っていない。

 でも……それでも、その僅かな差であってもガトリング使いとしては負けたくない。

 

 しかし現実は、そこにブースターという更なる要素が加わる。

 このせいで私と梓だと非常に相性が悪い。

 両肩ガトリングは非常に強力ではあるものの、反動の強さもあって足を止めて発射体勢を取らなければならない。

 これをせずに使用すれば集弾性が悪すぎてロクに当たらないし、最悪だと反動に負けて転倒する恐れまである。

 

 そんな一斉射もその辺のブースター使いなら何とでもなるが、彼女相手になると違ってくる。

 綺麗な動きで回避を優先してくるため、なかなか当たらないのだ。

 しかもその間、ガトリングもある程度撃ってくる。

 こちらは足を止めている関係で相手のガトリングを全て受けることになってしまう。

 対して相手は一斉射の効果を感じるほど被弾してくれない。

 なので切り札とも言えるものを使った瞬間に負けが確定する最悪な状態なのだ。

 せめて相手がオーバーヒートや体勢を崩したりと隙を見せてくれなければ使えない。

 

 互いに決定打に欠ける撃ち合いを続ける。

 そうしている内に、あちらこちらで戦闘が始まった。

 

 

*画像【軍事施設:選考会1戦目】

 

【挿絵表示】

 

 

 

 どうすればと悩んでいると、発電所の裏に隠れていた大場が飛び出してきた。

 これはマズイと思った瞬間。

 

「援護しますわ!」

 

 そう通信が聞こえたと思ったら、私の左横を大量の小型ミサイルが通過していく。

 大場はそれに気づいて、また発電所裏に逃げ込んだ。

 

 いつもならここで『助かった!』と言う所なのだが、どうしても言葉が出ない。

 思えば今年の全国大会よりも前までは、正直に言えば自分の方が上だと思っていた。

 それがいつの間にか、大きく差を付けられてしまっている。

 

 琵琶湖女子のメンバーが、敵だろうが味方だろうが関係無い。

 彼女らと戦えば戦うほど、まるで自分がLEGENDをやり始めた頃の素人に戻ったかような錯覚に陥る。

 何をどう頑張っても追い付ける気がしなかった先輩達の背中。

 それを思い出してしまうのだ。

 

 大型ガトリングを持つ手に力が入る。

 

「最強のストライカーは、私だぁぁぁぁーーー!!!」

 

 私は前に出てきて圧力をかけてこようとする梓に向かって叫びながら、ガトリングを撃った。

 

 

 

 

 

■side:ブルーチーム 田川 秋

 

 

 

 

 

 正直に言えばイライラする。

 開始と同時に一気に雪崩れ込む予定だった。

 それが止められたまでは、まあ想定内だ。

 でも、そこからがダメでしょうよ。

 

 あれだけ前に出て支援すると言っていた目の前のサポーターは、もはや満身創痍だ。

 相手のアタッカー、神沢に良いように遊ばれている。

 神沢の強みは両肩アームについているアサルトライフルだ。

 手動リロード出来ないので弾切れになると少し面倒ではあるものの、比較的装弾数の多いライフル。

 それを両肩と手に持っていて、一斉射が可能になっている。

 

 今はそれをせず、上手く3つを撃ちわけている。

 弾切れと思わせて誘い出したり、目の前で大胆にも手に持っているアサルトライフルを手動リロードしたり。

 そうして間抜けにも誘い出されては攻撃を受け、ダメージを受けては自分で回復パックを使ってしまっている。

 更には、はるか後方に居るストライカーからのビーム砲。

 直撃こそしなかったものの、盾に命中して耐久値がもう3割ほどしか残っていない。

 相手がその気なら、もう一気に詰め寄られて撃破されているような状態だ。

 正直、もうこれ以上アテに出来ない。

 

 2度目のビーム砲が通り過ぎ、運良くサポーターが回避出来たタイミングで一気に飛び出す。

 丁度相手の神沢も後ろに下がった瞬間という、まさにここしかないという場面だ。

 こちらの接近に気づいた神沢だが、こいつの弱点は接近戦に弱いという点だ。

 一斉攻撃は弾数が十分でなければ効果を発揮しにくい。

 それにコイツが最初から接近戦を捨てているのはデータとして知っている。

 

 大盾を構えての突撃に神沢は抵抗を諦めて下がった。

 そしてその神沢を追うように連中が壁にしている障害物を超えるとそのまま神沢を……追わずに真っ直ぐ奥の温井を目指す。

 流石にあのビーム砲を放置しておけない。

 

 だが、そのまま直進した瞬間だった。

 

 ピピッ!

 

 あの嫌な音が聞こえた私は、条件反射で音がした場所から逃げる。

 その瞬間、爆発が起こった。

 

「チッ!」

 

 思わず舌打ちをする。

 私の大っ嫌いな地雷だ。

 

 その爆発の黒煙の中で発砲音が聞こえた瞬間、私の胴体に衝撃が入る。

 思わずブースターでその場から逃げるように動くと安田の姿が見えた。

 

 零式ライフルだ。

 流石は、ガーディアンキラーと呼ばれるだけはある。

 大盾を持つ側とは逆側を綺麗に狙われた一撃で、耐久値が一気に半分になった。

 それでもこれはチャンスかもしれない。

 これで安田は手札を全て切った状態だ。

 温井よりもこちらを優先すべきでしょ。

 

 そう判断してブースターを使用し強引に向きを安田へと変えようとした瞬間。

 頭部センサーに反応があったので、その場から横に強引にスライド移動すると、自分が居た場所に小型ミサイルが大量に撃ち込まれた。

 回避しつつミサイルの飛んできた後ろを確認すると、例のミサイラーがこちらを向いていた。

 更に反応があったので反転しつつ盾を構えるとアサルトライフル3つによる一斉射が襲い掛かってきた。

 神沢もこちらに対して動き出していたのだ。

 

「流石に無理かッ……!」

 

 盾を構えつつブースターで後ろに下がると、射線が切れた瞬間に反転して全力で逃げる。

 途中、蛇行した動きで回避行動を挟むと、私のスグ左側をビーム砲が通過した。

 ビーム砲を回避した私は、発電所後ろに入る。

 

 するとこちらに回復パックが投げ込まれてきた。

 目の前のサポーター……渋谷だったか。

 彼女からのようだ。

 

「……正直、助かったわ」

 

 よく見れば盾なども新品になっている。

 恐らく私が切り込んだタイミングで援護ではなく下がって補給をしたのでしょう。

 まあ下手に援護されるよりよほどマシなので、それに関しては何も言わない。

 

「……そう」

 

 軽くそう返事だけ返して回復パックを手に取った。

 

 

 

 

 

 




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