最強の女傭兵 近未来でスポーツ美少女となる   作:のこのこ大王

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第13話

 

 

 

■side:霧島 アリス

 

 

 

 

 

 全国女子高生LEGEND大会。

 

 このオンライン全盛期の時代に、わざわざ東京にある

 国際大会などにも使用されるLEGEND専用施設に全国から

 女子高生達が集まって行われる非効率極まりない大会。

 

 まあこれで動く人の分だけ各地で収益が上がると思えば

 関連企業への『飴』と見るべきか。

 そんな下らないことを考えつつも現状のカオスと向き合う。

 

「いぇ~い!」

 

 新城先輩がノリノリで今流行の曲を歌っており

 周囲では、お菓子や飲み物を片手に合いの手を入れるメンバー。

 

 現在我々は、中央に大きなテーブルがありそれを囲むように

 外側に椅子がグルっと配置されている

 パーティーバスと呼ばれるもので移動していた。

 運転席がある側の壁には、大型のモニターがあり

 それを利用したカラオケ大会が絶賛開催中という訳である。

 

 古来より『女が3人寄れば姦しい』と言われているが

 3倍を超える人数になれば、どうやら混沌が生まれるようだ。

 まるで酔っ払いが絡んでくるかの如く

 何かとちょっかいをかけてくる連中を適当にあしらいつつ

 スマホでネットニュースをチェックする。

 

 本来なら今の時期だと

 本選出場校の特集などが大々的に流れているはずなのだが

 今年に限っては、別の話題が注目を集めていた。

 

『霧島 アリス ATに転向!? 噂の真相に迫る!!』

 

 といった見出しで予選でATをやっていたことに関して

 LEGEND関係者が、あーでもない、こーでもないと

 まあ好き勝手に独自の感想を発表し、それに便乗して

 ネットの掲示板などでも個人予想の大発表会と化していた。

 

 しかし真相は、そう複雑なものではない。

 

「安田 千佳を追い回してた時の延長なんだけどなぁ」

 

 みんなに迷惑をかけない程度に強くなりたいと言い出した彼女を

 徹底的に追い回すために普段使わないATを使っただけである。

 元々装備だけは持っていたこともあるが、やはり基本的な戦闘となると

 ATが一番安定している。

 なので訓練のため、そして遊びを含めてという気軽さで

 ひたすら追い回して遊んで……訓練をしていた訳だが

 周囲から『ATでも問題ないぐらいに動けている』と言われ

 じゃあ試しにと晴香や京子と戦ってみると

 かなり良い勝負が出来てしまった。

 

 そしてそれを見ていた大場先輩が、調子に乗って自分も参加すると言い出し

 徹底的にショットガンの利点を潰す立ち回りをしてこちらが勝つと

 自信を砕かれたようで部屋の隅で、のの字を書いていた。

 それを見ていた三峰 灯里は『今、自信を無くすと困るので……』と半笑いをしながら

 やんわりと対戦を断ってきた。

 

 実際、監督とも話をしたが、安田 千佳がブレイカー1択である以上

 ブレイカー2名というのは、攻撃的な編成である今のチーム状況に合わない。

 編成に幅を持たせる意味でも、私がアタッカーを兼任出来るというのは

 非常に大きいということになり、試験的にアタッカーを予選で試したというのが

 事の真相という訳である。

 なのでここまで大きく取り扱われるとため息しか出ない。

 

「別にブレイカーをやらない訳でも辞めた訳でもないんだけど」

 

 まあ世間なんて、マスコミなんてそんなものだということは

 有名になるにつれ解っていたことなので、半ば諦めていた。

 

 

 ・・・・・・・。

 ・・・・・。

 ・・・。

 

 

 みんなが騒ぎ疲れて一段落した頃、ようやく目的地に着く。

 会場は、国内でも屈指の巨大LEGEND専用施設。

 

 今日は、ここで本選の抽選が行われる。

 既に会場には、多くの女子高生がウロウロしており

 関係者だけでなく、かなりの数のマスコミも集まっていた。

 それを見て思わず、隠れるようにみんなを会場入り口横に集める。

 その場所は、大きな柱があって比較的目立ちにくい。

 

「ん? どうしたの?

 何かあった?」

 

 みんなを代表してか新城先輩が聞いてくる。

 

「マスコミだらけなので、少し待って下さい」

 

 私の言葉に「ああ~」とみんなが口にする。

 

「ですが、どちらにしろ会場に入らなければなりませんわよ?」

 

「大丈夫です、藤沢先輩。

 ちゃんと考えがあります」

 

 そう言うと周囲を探す。

 結構な数が集まってきている。

 必ず私が求める相手が居るはずだ。

 

 周囲を見回していると、会場の近くに1台の大型バスが止まり

 車内からは、予想通り女子高生達が下りて来る。

 その集団を観察していると、見知った顔を見つけた。

 

「よし、彼女にしよう」

 

 そう決めると柱に完全に隠れるような位置まで移動した後

 思いっきり大きな声で叫ぶ。

 

「U-15のリーダー【谷町 香織】が来たわ~!!」

 

 スグ近くに居た人は、当然こちらを向くが

 会場のほとんどは、私の言葉で周囲を窺い

 大型バスという解りやすいものに視線が動いて

 そこに居る谷町 香織を見つける。

 

 叫ばれた谷町は、何故自分の名前がいきなり叫ばれたのか解らず

 呆然としていたが、こちらを見つけると恨みがましい視線を向けてきた。

 しかしもう遅い。

 会場の周辺に居た記者やテレビ関係者などが

 私の声に反応し、谷町を見つけて一気に詰めかける。

 その騒ぎに会場内に居たマスコミ連中まで外に出てきて

 谷町を見つけるなりこれまた詰め寄る。

 

 その流れを見届けると私は冷静に

 

「さて、行きましょうか」

 

 とみんなに言うと、全員が苦笑していた。

 

 これは仕方が無いことなのだ。

 こうでもしなければ、自慢じゃないが

 私の所にマスコミが集まってきてしまうため、正直ウザい。

 

 陽動作戦を完了した私は、そのまま会場に入る。

 谷町 香織が恨みがましい視線を向けてきた時に

 彼女の隣に居た少女が、こちらに殺気全開の視線を向けてきていたが

 そんな視線を向けられるのは、今に始まったことでもない。

 どこかで見たことがあるような顔にも見えたが

 いちいち覚えていないので、気にしないことにした。

 

 

 

 

 

 

■side:元・U-15女子世界大会日本代表リーダー 谷町 香織

 

 

 

 

 

 道が混雑していたため、予想外に時間がかかってしまったが

 ようやく会場に着いたようだ。

 

 荷物を持ってバスを降りると、相変わらず巨大な施設が出迎えてくれる。

 車内は、誰かさんのせいであまりにも静かだったので

 バスを降りた瞬間、思わず退屈からか欠伸が出る。

 

 その誰かさんが降りた後、晶と桃香が降りてきたが

 どちらもウンザリした顔をしていた。

 ホント、この空気を何とかして欲しい。

 そう思っているといきなり声がした。

 

「U-15のリーダー【谷町 香織】が来たわ~!!」

 

 確かにアレ以来、街中で声をかけられることも多くなったし

 サインを求められることもある。

 それ自体は、不思議ではない。

 問題は、何故今いきなり叫ぶように呼ばれたのかということだ。

 とりあえず叫んだ奴を探すために周囲を見回すと

 会場入り口横にある巨大な柱の所で

 こちらに軽く手を振っている見知った顔を見つけた。

 

「なぁっ!?」

 

 相手を見て思わず声を上げてしまう。

 声を上げたであろう相手は、共にU-15女子世界大会を戦った戦友であり

 我らがエースだった霧島 アリスである。

 

 何故彼女がそんなことをと考えるよりも先に答えがやってきた。

 そう、マスコミの集団だ。

 よりにもよって彼女は、私を囮にしたのだ。

 晶と桃香もアリスを見つけて苦笑していたので

 私の考えは、間違っていないだろう。

 せめてもの抗議で、やってくれたなという想いを視線に込めて睨んでおく。

 

 そうしている間にすっかり周囲をマスコミに囲まれてしまった。

 これはもう、質問攻撃を受けるしかない流れだ。

 諦めの気持ちで、さあ質問してこいとマスコミを見ると

 何故か彼らは、質問をせず微妙な顔をしている。

 

 おや?っと一瞬思ったが、スグに理解する。

 彼らの視線の先に居る人物。

 私の隣に居る、困った人。

 

 我らが東京私立大神高等学校のリーダーであり

 U-18女子世界大会でリーダーを務めた天才ブレイカー 白石 舞。

 彼女が、アリスの居た方角を親の仇でも見るような目で睨みつけていた。

 

 そりゃ声かけにくいよね。

 私達だってこれで迷惑してるのよ。

 でもまあ、これは君たちマスコミも悪い。

 今まで散々持ち上げてきた白石先輩を

 霧島 アリスが出てきた瞬間に、そのまま投げ捨てたのだから。

 だから少しは、マスコミ諸君にもこの苦労を理解して貰おう。

 

「ホント、どうにかして欲しい」

 

 いつの間にか後ろに来ていた晶が、小さな声で呟く。

 

 彼女は、大野(おおの) 晶(あきら)。

 U-15で共に戦った1人で、相手との距離を詰めることが上手い

 好戦的なアタッカーである。

 

「気持ちは、解らなくもないけど

 いい加減にして欲しいわ」

 

 晶の隣に居た桃香も、ため息と共に呟く。

 

 もう1人は、鈴木(すずき) 桃香(ももか)。

 同じくU-15で共に戦った1人で

 迫撃砲という遠距離砲撃武器を操るストライカー。

 大型ガトリングと迫撃砲による徹底した後方支援プレイヤーである。

 

 私達3人は、レジェンドの名門の1つであり

 昨年の全国女子高生LEGEND大会優勝校でもある

 東京私立大神高等学校に進学していた。

 間違いなく最高レベルの環境で満足していたのだが

 彼女、白石 舞だけは不満たらたらだった。

 

 確かに先輩は、素晴らしい腕のプレイヤーだ。

 霧島 アリスという異次元の存在を見てきた私でも

 先輩ならもしかしたら……と思えるほどに強い。

 しかし事あるごとに八つ当たりのような態度で

 周囲の空気を悪くする。

 

 他の先輩に聞くと、去年まではそうでもなかったそうだ。

 チームの中心的存在にしてみんなの憧れ。

 面倒見も良く、とても優しい先輩だったそうな。

 だが、霧島 アリスの登場で

 一気に今のような気難しい人になったらしい。

 

 まあ同じブレイカーだと、どうしてもアリスと比べられて評価される。

 なのでやってられなくなるのは解らなくもないが

 だからといって、周囲に迷惑をかけて良い理由にはならない。

 リーダーが率先してチームの輪を乱してどうするんだよと。

 U-15でリーダーをしていたこともあり

 今の彼女のようなリーダーの姿を、少なくとも私は許容できない。

 

「こんなことなら、あのスカウト受けておけば良かった」

 

 晶の一言で、思い出す。

 私達3人は、私立琵琶湖スポーツ女子学園からスカウトを受けていた。

 だが結局、U-15の監督の母校であり監督の強い勧めもあって

 東京私立大神高等学校を選んだのだ。

 

「もう、それは言わないって約束したでしょ。

 私だってあんな爆弾があるって解ってたら

 そっちのスカウト受けてたわよ」

 

「はいはい、晶も桃香もその辺で。

 もう一回、私が監督に話してくるからさ」

 

 2人の愚痴を聞きながら、こっそりため息を吐く。

 白石先輩は、3年生。

 つまり今年で卒業だ。

 

「今年いっぱいだとわかってても、つらいわ~」

 

 そう呟きながら考えていると

 ようやく勇気を出して声をかけた1人を切っ掛けに

 マスコミの集中攻撃が始まる。

 

 はぁ。

 まずは、これから何とかしなきゃ。

 

 

 

 




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