最強の女傭兵 近未来でスポーツ美少女となる   作:のこのこ大王

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■今回は2話分投稿です。

2021/06/06 0:00に第126話が更新されます。


第125話 VS世界大会予選フィンランド戦:前編

 

 

■side:U-18女子日本代表監督 芳川 浅子

 

 

 

 

 

 大歓声の中、思わずため息を吐く。

 正直に言えば帰りたい気分だわ。

 

「まあ、それでもやるしかないのだけどね」

 

 ついに始まった世界予選。

 今日はその試合日。

 対戦相手はフィンランド。

 

 霧島の孫娘曰く『確実に組織力で負けてるから無理』だと言っていた。

 あの娘に関しては何故そこまで言い切れるほど相手の事情を知っているのか?などツッコミどころも多い。

 だがそれも今更だ。

 そしてそれらに興味が無い訳ではないが、下手に首を突っ込もうとも思わない。

 

「なるようになるさ」

 

 あまり選手達が居る所で下手な感情を出す訳にもいかない。

 そう思いながら気分を変えるために手元のメンバー情報を見る。

 

 

*スタメン

大谷 晴香

大野 晶

神沢 蘭

新城 梓

一条 恋

笠井 千恵美

池上 聖華【L】

南 京子

宮島 文

鳥安 明美

 

 

 今回の戦場である『渓谷』に合わせて射撃寄りな編成にしておいた。

 ここはどうしても突撃しにくい。

 しかも障害物があまり無いのもあって射程がある武器ほど好まれる。

 だが同時に射線が通り過ぎていて、下手に姿を晒すと集中砲火を受ける可能性もある面倒なマップだ。

 

 

*画像【渓谷:初期】

 

【挿絵表示】

 

 

 

 ふと見ると選手達が愉し気にVR装置に入っていくのが見える。

 昔の私なら『気を抜き過ぎだ!』と怒鳴っていただろう。

 ずいぶんと丸くなったものだなと苦笑しつつ彼女達を見送った。

 

 

 

 

 

■side:U-18女子日本代表 鳥安 明美

 

 

 

 

 

 ―――試合開始!

 

 アナウンスと共に皆が一斉に飛び出す。

 そんな中、私はゆっくり歩く。

 今回はラッキーなことに渓谷。

 ブレイカーの聖地とも呼ばれる非常にやりやすいマップ。

 

「早々に位置バレしないようにゆっくり登場して一撃って所かな~」

 

 そんなことを考えながらレールガンのチャージを始める。

 相手はフィンランド。

 毎回予選落ちしているような所で、特に目立った選手が居るとも聞いていない。

 予選でロシアと当たったのが厳しいが、それ以外は取り立てて強い所は無いので余裕でしょ。

 

「おい!砲撃止まらないぞ!」

「何なのよ、これ!」

「一体どれだけの砲撃ストライカーが居るんだよ!」

 

 前に元気良く飛び出していったストライカー組が、開始早々に泣き言を言いだした。

 ……ホント、頼りにならない先輩方だことで。

 

 見晴らしが良く補給もしやすい軍事施設横という絶好ポジションに到着すると、先ほどの通信の意味が解る。

 

「あら~、派手だこと~」

 

 恐らく3人だろう。

 砲撃ストライカーによる広範囲・低威力のばら撒きだ。

 しかもそれを3人全てが行っているとなれば、そりゃウザいでしょうよ。

 

「まあ、ここは私が助けてあげる所かなぁ~?」

 

 そう言いながらもうスグチャージが完了するレールガンを構えた。

 狙うは砲撃ストライカー。

 盾を構えて防御を重視しているようだが、レールガンの貫通力があれば問題ないはず。

 そう思って狙いを付けた瞬間―――

 

「いたたたたっ!」

 

 連続で低威力の弾が命中して思わず逃げる。

 まるでガトリングのような連射力で飛んできたソレによって耐久値が4割ほど減ってしまった。

 

「くっそ~、まさかあんなのまだ使ってる奴がいるなんて……」

 

 減った耐久値を回復しながら、先ほどの攻撃を思い出す。

 ブルーム社製連射式ライフル。

 かつて選考会で『神崎 小梅』が使用していたものである。

 ガーディアンをはじめとした装甲強化や盾類の追加などによって、攻撃が通らなくなり次第に消えていったもの。 

 

「また、アレを見ることになるとはねぇ~」

 

 ガーディアン登場前までの主流だった手数重視タイプのブレイカー。

 それらが主に使用していた武器の1つ。

 自分がかつて使用していたS.L社製のジャッカルと並んで人気だったもの。

 

「……チッ」

 

 気づけばレールガンのチャージが消えていた。

 このレールガンの欠点は『銃身に衝撃が入ると強制ダウンする』というものだ。

 これにより使用不能判定が出ないような軽微な攻撃でも銃身に攻撃が当たるとチャージが無くなる。

 爆発などの誤作動予防らしいのだが……。

 

「……ああ、なるほど。そういうことか」

 

 しかも相手のブレイカーは、こちらしか狙っている様子がない。

 つまりあそこのブレイカーは『対鳥安用』なのだ。

 そして装甲が薄いブレイカー相手なら、連射式ライフルもまだまだ活躍する。

 

 

*画像【渓谷:対フィンランド開始】

 

【挿絵表示】

 

 

*画像【渓谷:対フィンランド拡大】

 

【挿絵表示】

 

 

 

「ホント、何でこんなめんどくさい武器持たせたんだろ」

 

 私は再チャージをしつつ、つい愚痴をこぼした。

 

 

 

 

 

■side:U-18女子日本代表 笠井 千恵美

 

 

 

 

 

「また来たぞ!」

 

 誰が言ったのかなんて関係ない。

 スグに逃げるも範囲が広すぎて微妙にダメージを受けてしまう。

 

 先ほどから中央に対して広範囲の嫌がらせ砲撃が、文字通り嫌がらせのように大量に降ってくる。

 正直馬鹿なんじゃないの?と言いたくなるほどだ。

 

 1発の砲撃で1割しかダメージを受けないとしても3発飛んでくれば3割。

 それが2セットくれば6割。

 立派な攻撃に早変わりという感じだ。

 

 本来こんな攻撃をしてきた所で、射撃による防御面が落ちるためごり押しされて終了。

 だからこそこんなに大量の砲撃ストライカーが出てくることはない。

 しかしその前提は簡単に崩れ去った。

 

「くっそ!前に出れないぞ!」

「下手に顔を出すな!」

「一気に突っ込めばいいじゃんか!」

「それで全員まとめて処理されたいの!?」

 

 こちら側で喧嘩をしている連中の問題もあると言えばあるかもしれないが、それだけじゃない。

 アタッカーの火力が増加したせいで、今までなら無視して強引に突っ込めた場面で突っ込めなくなった。

 更にストライカーだけが高速移動で相手を翻弄していたのだが、ほとんどの兵科でそれなりの機動力が追加されたために速度による優位性も減少した。

 だからこそ、今までのように気軽に『じゃあ突っ込んで倒してこよう』と言えない。

 でもそれじゃ結局ダメだ。

 こうしている間にも撃ち込まれる砲撃によってジワジワ削られているのだから。

 

「喧嘩しているぐらいなら、とっとと突っ込んで相手の反応でも見てこいっす!」

 

 そう言いながら大阪日吉の宮島が回復パックをこちらに投げてくる。

 変に距離を取られて撃ち合いが微妙な感じになっているのなら、こちらから前に出るしかない。

 

「弾数気にせず一気に斉射しつつ突っ込むしか無いでしょ!」

 

 試合中に喧嘩とか、ホント馬鹿でしょ。

 

 

 

 

 




世界大会予選、日本対フィンランドの開始です。
さっそく練習であれだけ色々言われていたにも関わらず、新環境の洗礼を浴びる形となりました。
ここからどう切り返していくのか?
それともフィンランドが意地を見せるのか?


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