最強の女傭兵 近未来でスポーツ美少女となる 作:のこのこ大王
■ヘイニ・エッシ・ポルヴァリ:フィンランド代表選手の1人。今回の砲撃戦主体の戦術の基礎を提案した選手。
■マルヤーナ・サンニ・モルサ:フィンランド代表選手の1人。元からストライカー装備全てをそれなりに使えた選手だったため、今回の砲撃選手に選ばれた。
■side:U-18女子フィンランド代表 ティニヤ・アヌ・パーヴィライネン
「さあ!ドンドン撃って!相手が突っ込めない状況を作り出すのよ!」
「了解!」
通信でひたすら攻撃する指示を出しながら次に撃つ角度を決める。
「次はここに撃つわよ!データリンク!」
「確認した!」
「こっちもよ!」
『ヘイニ・エッシ・ポルヴァリ』と『マルヤーナ・サンニ・モルサ』の言葉を聞いて叫ぶ。
「発射ッ!!」
砲撃は放物線を描いて相手陣地に落下。
その途中で大量の小型弾となり広範囲を爆撃する。
それが一斉に3発。
一気に範囲内に大きくダメージを与える。
「相手が前に出たがってる!効果がある証拠だ!」
「このまま順調に押し込めば勝てるぞ!」
2人もそう叫んで味方を励ます。
私達がまともに戦っても前回優勝国である日本には勝てないでしょう。
でもLEGENDは個人だけのゲームじゃない。
こうしたチームワークも十分『強さ』になるのよ!
試合時間は、既に半分を過ぎようとしていた。
お互い撃破が無いものの、明らかにこちらが戦場を支配している。
そんなことを考えながら砲撃をひたすら続けると、ついに相手側が少し下がり始めたではないか。
「みんな、落ち着いて!ゆっくりでいいの!ゆっくり相手を追い詰めるわよ!」
「了解!」
「相手ブレイカーは?」
「問題ありません。レールガンっぽいですけど抑えれてます!」
通信を飛ばせば的確で元気の良い声が返ってくる。
皆で考え、皆でたどり着いた戦術だ。
相手の日本は特にブレイカーが強い。
だからこそ対ブレイカー対策としてブレイカー専用装備を運用して貰っている。
正直、完全にサポーターよりも目立たない役目になるでしょう。
でも、それでも『皆で勝つためですから』と笑顔で言ってくれた彼女。
そんな彼女のためにも、私達にメインを任せて防衛に徹してくれる他の仲間達のためにも。
「この試合、必ず勝つわよ!」
■side:U-18女子日本代表 宮島 文
「ホント何をやってるんすか……」
ついそんな言葉が出てしまう。
連携不足も喧嘩も容認したとして、それでも前に出ようとして出れないとか意味が解らない。
どういうタイミングで出れば良いのかなんてストライカーの初歩だろうにと。
それが出来ずにダメージばかり貰っては弾薬や回復を持っていく。
だからスグに無くなって補充が必要になる。
でもその時間すら稼げない。
そうなれば後は簡単な話だ。
ただ押し込まれるだけ。
*画像【渓谷:フィンランド押し込まれ】
*画像【渓谷:フィンランド押し込まれ拡大】
更に相手はあえて発電所を制圧しない。
何故なら制圧すればゲートが解放されるから。
そうなると司令塔前に移動出来るため色々と動けるスペースが出来てしまう。
だが自分達が司令塔攻撃をしない場合ならどうか。
ゲートをあえて閉めておけば相手はスペースが無く、混雑して射線どころではなくなる。
まとまってしまえば広範囲砲撃をまともに食らってしまうだろう。
しかしここでバラバラになってしまえば各個撃破されるだけ。
「……このままじゃ完全に詰みっすよ」
この状況なら鈴木でも出して砲撃勝負に持ち込むなり何なり出来るだろうに。
少なくとも選手を何人か交代させるべきだ。
なのにリーダーが動かない。
「リーダー!動かなくていいんすか?このままじゃジリ貧っすよ!」
「わ、解ってるわよ!」
……絶対に解ってないっすね。
言われてもなお動かない時点でお察しっす。
仕方が無い。
ワザとらしく大きなため息を吐く。
「―――ならもう自分が行くっす」
そう言って私は開始位置からベンチに移動した。
リアルに戻るとスグにVR装置から出る。
すると監督が待っていたかのように既に準備をしていた。
私はそのまま前にある認証プレートに手を乗せた。
これは地味に追加された新ルールの1つ。
本来選手交代はリーダーのみが行える。
監督はリーダーからの申請をリアル側で手続きして処理を行うだけ。
だが今回の追加で誰か選手1人がベンチに戻り、認証プレートに手を置くことで監督が直接選手交代を指示出来るようになるのだ。
これにより何らかの事情で指揮を取れなくなったりしたリーダー選手そのものを交代することも出来るようになった。
端末操作により一気に選手交代申請が審判団と選手達に流れる。
◆交代要請
宮島文 ⇒ 田川 秋
池上 聖華【L】 ⇒ 宮島 文【L】
大谷 晴香 ⇒ 黒澤 桂子
神沢 蘭 ⇒ 大場 未来
一条 恋 ⇒ 鈴木 桃香
南 京子 ⇒ 長野 誠子
鳥安 明美 ⇒ 福田 理央
「はぁ!?」
情報を見て思わず叫ぶ。
「アンタが当分のリーダーをやりな。池上にはちょいと荷が重かったようだ」
「はぁ~……そういうガラじゃないんすけど」
「まあ今回だけだと思って頑張りな。……それに自信が無いからと逃げれば逃げるほど、向き合うのに時間がかかっちまうよ」
「……まあ、了解っす」
選手達にも交代要請が出て少し通信で揉めたりもしたが、指示である以上仕方が無い。
戦線に影響がなるべく出ないように順番に、素早く交代を行う。
そして再び配置に就いたが、これは少し厳しいと言える。
*画像【渓谷:フィンランド交代】
*画像【渓谷:フィンランド交代拡大】
「とりあえず時間稼ぎすら出来ないっすから、押し返すしかないっすね」
もう何度目になるか解らないため息。
だが、確かに任された以上逃げる訳にはいかない。
「お前らッ!もうくだんねぇーことで揉めるなっすよ!!揉めた奴はフレンドリーファイアで世界中の晒しものにしてやるっす!!」
通信越しに息を呑むのが聞こえたっすが、そうじゃない。
「返事はどうしたっすかッ!?」
「りょ、了解!」
「声が小さいっすッ!!」
「了解ッ!!」
「今から一斉に発電所まで押し返すっす!無駄な反論をした奴も前に出るのを戸惑った奴もまとめてフレンドリーファイア対象っす!」
砲撃が飛んでくる音が聞こえる。
最低限の回避を指示しながら通信で叫ぶ。
「次の相手の砲撃で前に出るっす!それまでに弾と耐久値を回復しておくっすよ!」
「了解ッ!!」
周囲忙しなく動く様子を見ながら相手側への牽制攻撃を行う。
「……やっぱり先輩の真似は難しいっす」
かつて自分達を引っ張ってくれた先輩の顔を思い出し、やっぱり自分は裏方だなと改めて思った。
予想通りというべきか、予想外というべきか。
フィンランドの『対日本戦術』が効果を発揮してしまい苦戦する日本。
身内での連携も取れず、大舞台であるためテンパってしまい指揮が取れなくなる池上。
結局は経験を積んできた宮島の機転により何とか反撃の切っ掛けを手することが出来たが、このまま反撃となるのか?
それともフィンランドにこのまま押し切られてしまうのか?
次話:決着編をお待ちください。
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活動報告を更新しました。
今回の件に関しての説明なので、興味のある方だけどうぞ。