最強の女傭兵 近未来でスポーツ美少女となる   作:のこのこ大王

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第127話 VS世界大会予選フィンランド戦:決着編

 

 

 

 

 

■side:U-18女子日本代表 大場 未来

 

 

 

 

 

「今ッ!!」

 

 新リーダーの宮島による指示で一斉に突撃を開始する。

 正直ベンチで見てる時は『何やってるんだよ』と思っていただけに、試合に出れるのはありがたい。

 交代の際に神沢と一条が特攻に加われないことをグダグダ言っていたが、そのせいで準備が遅れて余計に時間が無くなったことはあとで追及してやる。

 

 相手の砲撃を掻い潜るようにして前に出ると、相手の集中砲火が待っていた。

 障害物らしいものが無い中で、これは厳しい。

 どんどん耐久値が減っていく。

 堪らず帰り用に持っておきたかったスモークグレネードを投げる。

 すると後方の大野や黒澤までも投げやがった。

 

 それならそれで最初に投げるべきだろう。

 どうして誰か1人は予備で持っておこうと思わないのか。

 まあ今更言っても始まらない。

 

 とにかく突っ込もうとしていた時だった。

 目の前をご自慢の速度で走っていた梓の奴が急にサイドに流れた。

 明らかに余計な動作だ。

 

「ちょっ!?」

 

 正面の壁が無くなれば弾はこちらにやってくる。

 ストライカーほど丈夫ではないアタッカーに、これはダメだ。

 スパイクシールドで何とかしようとするが、そういう問題ではない。

 

 しかも後方から同じく突っ込んでいた晶までが梓と同じくサイドに流れた。

 この瞬間に気づく。

 2人は銃撃に耐えきれず回避行動を取ったのだと。

 

「お前ら、バッカだろッ!?」 

 

 そんなことをしても一時的に回避出来たように感じるだけ。

 結局前に出る以上、トータルで見れば余計な被弾を重ねているだけだ。

 

 

*画像【渓谷:日本突撃】

 

【挿絵表示】

 

 

 

 更に最悪なことは重なる。

 砲撃の音が聞こえたかと思えば、綺麗にアイツらの回避方向へと落下した。

 

 

 ◆キル

 × 日本    :大野 晶

 〇 フィンランド:ティニヤ

 

 

 ◆キル

 × 日本    :新城 梓

 〇 フィンランド:ヘイニ

 

 

 銃撃によるダメージに余計な回避行動をしたせいで逆に避けきれなかった砲撃。

 それらによりトータルダメージで撃破判定を取られたみたいだ。

 一気に2人分持っていかれた。

 非常に流れは悪い。

 だが―――

 

「もらったッ!!」

 

 正面に居るであろうアタッカーの1人にショットガンを向けつつ迫る。

 壁からの飛び出しマスターキーや片手斧などを警戒しつつも踏み込んだ。

 

「―――マジかッ!?」

 

 

 ◆キル

 × 日本    :大場 未来

 〇 フィンランド:スヴィ

 

 自滅 フィンランド:スヴィ

 

 

 飛び出してきた相手が使用したもの。

 それはグレネードだった。

 

 

 

 

 

■side:U-18女子日本代表 田川 秋

 

 

 

 

 

「はぁ!?」

 

 思わず叫んだ。

 一斉突撃開始で中央に視線が集中している隙に最南から切り込もうとしていた。

 それがまさか中央から正面の圧力に負けて逃げてきた味方のせいで見つかるなんて。

 

 こちらは大盾がある分何とかなっているが、攻撃に特化している笠井は相手サポーターの盾を破壊するものの、そのままダメージを受けすぎて撃破判定となって消えた。

 笠井を撃破した相手はこちらに攻撃を集中させてくる。

 まあ同時に琵琶湖の2人が突っ込んでいるから何とかなるでしょうと思っていると最悪のログが流れてくる。

 

 北側突撃の3人がやられたというログだ。

 1人は自爆だが残り2人は何をやっているのやら。

 

 距離を詰め切って相手サポーターに迫る。

 相手にシールドごと突っ込んで体勢を崩し、そこを大型警棒で撃破。

 後ろからショットガンを撃ってこようとする相手にその場で急旋回しながら距離を詰めてのシールドバッシュ。

 

 そこを大型警棒でトドメを―――

 

「しまっ―――」

 

 

 ◆キル

 × 日本    :田川 秋

 〇 フィンランド:シルック

 

 自滅 フィンランド:シルック

 

 

 警棒を防ごうという感じで相手が持ち出してきたのは、グレネードだった。

 

 

 

 

 

■side:U-18女子日本代表 黒澤 桂子

 

 

 

 

 

「くっそ、盾をやられた!」

 

 目の前の誠子からそんな声が聞こえてくる。

 相手サポーターから発射された誘導ミサイルを回避出来る場所が無く、盾で受けた結果だ。

 だが、距離は詰めた。

 ここからはこちらのターンだ。

 

 誠子はサブアームの小型マシンガンを弾幕として道を切り開いてくれる。

 そんな彼女にアタッカーの1人がショットガンを手に攻撃を仕掛けてきた。

 

「させるかぁー!」

 

 バックパックブースターによる突撃で相手に体当たりを仕掛ける。

 残念ながら単なるショルダーシールドなのでダメージは無いものの、ショットガンを落とさせることに成功。

 そのまま追撃を―――

 

 

 ◆キル

 × 日本    :長野 誠子

 〇 フィンランド:ヘッレヴィ

 

 

「はぁっ!?」

 

 思わず誠子が居た方へ振り向く。

 そこには北側の生き残りアタッカーが、サポーターに夢中になっていた誠子を横から奇襲したようだ。

 

 その時。

 スグ近くで音がして気づく。

 今は戦場。

 目の前には未だ生きている敵。

 視線を逸らすなんて素人でもやらない愚行だ。

 

 アンダーバレルショットガンを相手側に向けた時に、その音の正体を理解する。

 

 

 ◆キル

 × 日本    :黒澤 桂子

 〇 フィンランド:ソイントゥ

 

 自滅 フィンランド:ソイントゥ

 

 

 

 

 

■side:U-18女子日本代表 福田 理央

 

 

 

 

 

 交代で呼ばれた時は『まさか』と思った。

 でも今、私は世界大会という大舞台に立っている。

 恐らくLEGENDアイドル史上初の快挙だろう。

 

 あとは私がここで実力を証明するだけだ。

 ピピッ!っという音が聞こえてくる。

 その音でようやくかと思いながらも相手側に気づかれないように前に出てバイポッドを使用して伏せ撃ちの体勢を取る。

 

 大型狙撃用レールガン。

 ブレイカー専用装備として新たに追加されたレールガンタイプの1つ。

 ただこれはデータリンクで戦場データを読み込む時間がかかる。

 そして伏せ撃ちでしか運用出来ない。

 

 何故これを使うことになったのか。

 それは日本の絶対的エースと呼ばれ、現在はコーチをしている霧島アリスさんからの意見だった。

 

 『アナタは狙うのが遅いのに一撃必殺を狙うせいで、余計に狙いが遅くなるという悪循環に陥っている。だったらいっそ遅いことを割り切って一撃必殺を突き詰めるべき』

 

 そう言われ、提案されたのがコレだ。

 正直最初は半信半疑だった。

 だがこれに慣れると、面白いぐらいに一撃必殺が取れる。

 つまりは世間の注目を集めることも可能だということ。

 

 だからこれを徹底して練習してきた。

 チャージMAXの電子音が聞こえてきたので、あらかじめ狙いを定めていた相手ブレイカーを狙う。

 そして引き金を引いた。

 

 発砲音がしたかと思えば次の瞬間には相手が倒れていた。

 キルログが更新される。

 

「―――やった」

 

 初めての世界戦で、初めてのキル。

 完璧じゃない。

 そう思った次の瞬間。

 何か音が聞こえてきたかと思えば、空から大量の砲弾が降ってきた。

 

 

 

 

 

■side:U-18女子フィンランド代表 ティニヤ・アヌ・パーヴィライネン

 

 

 

 

 

 

 撃破ログを見て、何とか倒せたかと安堵する。

 

 こちらが先制でポイントを取った瞬間からだ。

 それを何とか死守しようと皆が率先して自爆をし始めた。

 

「残り時間を考えればこれが一番です!」

「大丈夫!これ以上通しませんよ!」

「私達が勝つんだ!」

 

 それぞれ色んなことを言いながら自爆をしていった。

 皆、勝利を信じて。

 だからこそ、ここで撃ち合いに負ける訳にはいかない。

 

 気持ちを切り替えて正面から逃げようとする相手リーダーを追撃する。

 しかし相手は大盾で防御しつつ下がる。

 更に相手側から何度も正確な砲撃が飛んできて、正直かなり危ない。

 

「もう少し!もう少しよッ!!」

 

 通信で叫びつつ、ひたすら砲撃する。

 途中で相手側砲撃手によって生き残りのサポーターが撃破されるも、まだ2人分こちらが有利。

 とりあえず互いの復活が終わるまではもう動かないでしょう。

 

 要注意である相手砲撃ストライカーの砲撃範囲から逃げつつも、広範囲である利点を活かし範囲ギリギリから攻撃して嫌がらせをする。

 これで相手が苛立って前に出てくれれば……と思ったが、やはりそれは流石に無理そうだった。

 時間が経過し、互いに撃破された選手達が帰ってくる。

 だが残り時間も僅か。

 

「無理をせず防御を固めましょう!レールガンだけには注意!」

 

「了解!」

 

 日本は残り時間の関係で、再度の総攻撃を行ってきた。

 しかしこちらは既に坂の上で防御陣形を張っている。

 早々簡単にこちらに迫ることは出来ない。

 

 それでも的確に飛んでくる砲撃を何とか回避しつつこちらも砲撃で常に相手を削り続ける。

 そうしている間にも時間が過ぎていく。

 最後の最後で、相手側のレールガンによって仲間が1人やられる。

 

 しかし次の瞬間。

 

 

 ―――試合終了!

 

 

 試合終了のアナウンスと共に鳴り響く音。

 そして表示される点数。

 

 日本    :920

 フィンランド:930

 

 その差、僅か10P。

 白熱した接戦であり、最後の最後まで気が抜けなかった勝負。

 それを制したフィンランド。

 

「―――勝った?」

 

 フィンランドの勝利判定を目の前にしても信じられない気持ちだった。

 だが、次の瞬間。

 

「やった!やったよー!!」

「勝った!日本に勝った!!」

「きゃー!!勝てたー!!」

 

 仲間達の歓喜の声が聞こえてくる。

 

「やったね!」

「勝ったぞ!」

 

 ヘイニとマルヤーナの2人が抱きついてくる。

 そこでようやく実感する。

 私達は勝ったのだと。

 

「―――そっか。勝ったんだ、私達……ッ!!」

 

 気づけば皆で思いっきり泣いていた。

 その姿は、中継され世界中に流れる。

 仲間達と共に勝利を目指す、まさにLEGENDらしい一面に世界中が称賛の拍手を送った。

 

 フィンランドでは、自国チームによるこの感動的なジャイアントキリングに国中がお祭り騒ぎとなる。

 

 一方で、日本選手達は一言も言葉を発さずに会場を後にした。

 

 

 

 

 

 




フィンランド戦これで決着となります。

まさかの接戦。
そして僅差による敗北となった日本。
しかも試合内容を見れば、勝てた可能性が高い試合。

対してフィンランドは、格上相手に確実にリードを守るために自爆戦術を使用してでも勝ちにこだわりました。

鈴木や福田などが一定の撃破で迫りましたが、やはり不利を覆すには時間が足りなかった。
この結果に恐らく日本の評論家様方は、そりゃもう酷評するんでしょうね。

この敗戦から日本勢は何を学ぶのか?
それとも学ばずに同じことを繰り返してしまうのか?



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