最強の女傭兵 近未来でスポーツ美少女となる   作:のこのこ大王

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第131話 VS世界大会予選ロシア戦:part2

 

■side:U-18女子日本代表 大谷 晴香

 

 

 

 

 

 開幕からのいきなりの攻勢。

 正直移動しながらどうしようか悩んでいた。

 

 最初にカバーに入ったのは速度のある新城先輩だ。

 だが明らかに止めきれていない状況。

 しかしそこから私達が『初心者組』と呼んでいた恵理が強引に止め、灯里が追撃を行う。

 そこに千佳が支援を行うことで完全に勢いを止めきった。

 

「……成長してるってことだよねぇ」

 

 そう呟きながら私はそこに参加せず発電所を抑えるために動き出す。

 今回、こちらも中央に人をかけて押し込む戦術を採用する予定だった。

 つまりは初動で完全に動きが被ってしまい、更に相手側の方が優秀だということ。

 

 マップを見ても不利だと言わざるを得ない。

 

「晴香さんと京子さんは発電所カバー!」

 

 移動中にそんな指示が藤沢先輩から来る。

 『わかってるわよ』と思いながら了解と返事を返して発電所に向かう。

 相手側は、アタッカーが2人。

 

 さっそく撃ち合いを始めた所で京子がカバーに入ってくれる。

 そのまま相手を抑えようと思った所で、横から大型ガトリングが撃ち込まれてきた。

 

 それを壁を盾にして回避しつつ相手アタッカーへの牽制攻撃を続ける。

 しかし頭を抑えられた形になり、これ以上前に出ることが難しくなった。

 

「―――発電所は取らせるか?」

 

 発電所はあくまで司令塔への攻撃権。

 それを渡した所で最終的に攻撃されなければ問題がないものでもある。

 数的不利な状況で無理をするよりも確実に相手をここで止め続ける方が重要だ。

 そう思って前に出ずに牽制だけに留めようと思った瞬間。

 

 

 ―――ヘッドショットキル!

 

 

 ◆ヘッドショットキル

 × 日本 :鳥安 明美

 〇 ロシア:アナスタシア

 

 

 思わず舌打ちをする。

 下側は確かブレイカー同士の一騎討ちだったはず。

 ここで攻撃権を渡してしまえば、そのまま相手ブレイカーが司令塔に攻撃を行う。

 それは試合に負けることを意味する。

 

「晴香ちゃん!」

 

 京子からの声。

 名前を呼ばれただけだが何を言いたいのか理解する。

 

「おーけー!突っ込むよ!」

 

 2人で一気に発電所に突っ込む。

 あそこまで飛び込めば発電所自体が壁になる。

 ……まあ同時にそう簡単に下がることも出来なくなるのだけども。

 

 サブアームのアサルトライフルも使用してアサルトライフル3つによる移動しながらの一斉射撃。

 命中精度は決して高くはないものの、それでもその弾幕量は相手の頭を一瞬とは言え抑えることが出来る。

 京子も大型マシンガンにミサイルを撃ちながら前に出る。

 おかげで発電所まではたどり着けた。

 だがここからだ。

 

 予想通り、相手のストライカーが側面に回り込みたそうにしながら攻撃してくる。

 同時に正面のアタッカーも一度は下がったが、再度前に出始める。

 障害物がそれなりにあるものの、やはり純粋な人数不利は厳しい。

 グレネードを投げるにしても2~3秒ぐらいは時間が必要だ。

 しかし今、撃ち合いを止めれば一気に押し込まれてグレネードどころではない。

 

 一応占領されないように止めはしたが、非常にまずい。

 どう対処すべきかと思っていた時だった。

 

 相手ストライカーに対して中央方面から攻撃が入る。

 相手も何事だと思いつつも後退する。

 

 するとブースト全開で大型ガトリングを撃ちながらこちらにやってきたのは―――

 

「カバーする!」

 

 新城先輩だった。

 相変わらず広い場所では良い動きだと思う。

 

「中央は?」

 

「下が負けてる以上、発電所は渡せない。中央もこれ以上人を出せないってさ」

 

 京子の質問にまるで予想していたかのようにスグに答える先輩。

 確かにここで司令塔攻撃だけは絶対に回避しなければならない。

 

「とりあえず相手ストライカーは私が抑える。2人は正面アタッカーを押し返して。出来れば相手側施設までは詰め寄りたい」

 

 下側が押されポイント的にも負けている。

 ここでアナスタシアをどうこうするのは不可能。

 ソフィアも3人と良い勝負をしているみたいだが、撃破までいくかは微妙なところ。

 中央は、支援2人と藤沢先輩がひたすら弾幕を張って妨害するのが精一杯だろう。

 となればだ。

 

「なるほど、私達が撃破取るしかないって感じですか」

 

「そういうこと!」

 

 私にそう返事をした新城先輩は、相手ストライカーに攻撃をして頭を抑えにかかる。

 障害物の無い広場で、その機動力を活かした変則的な動きで相手を翻弄していた。

 

 

*画像【研究所:2年目ロシア予選中盤】

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

■side:U-18女子ロシア代表 アナスタシア・エラストヴナ・シャンキナ

 

 

 

 

 

 私は構えていた銃を下ろす。

 

「つまんないなぁ」

 

 U-18は今年で最後。

 そんな中、日本との再戦が実現する。

 しかしそこには私達を倒した選手が居ない。

 U-18でのリベンジがこれでもう出来なくなってしまった。

 マイは仕方がない。

 でもアリスは違う。

 そうなった事情も聞いた。

 『自分達で足の引っ張り合いをして負けるのが趣味なのよ』とアリスが言っていた。

 その通りだと思う。

 

 『代わりに馬鹿鳥を送るから好きなだけ遊べばいい』

 そう言われて対峙した相手は興味を惹く相手ではなかった。

 

 動きが単調でフェイントも微妙。

 狙ってから撃つまでも遅い。

 何より『レクイエム』という爆発弾による爆風を狙って仕掛けてくることすら出来ていない。

 事前情報ではレールガンだと聞いていたのだけど、まあ何を持った所で関係ないわ。

 どうせ結果は同じなのだから。

 

 何度も先制攻撃を譲ってあげたのに1発も当てることが出来ず。

 流石に3発外した段階で、もういいやと思ってヘッドショットを決めた。

 

 本来ならばここで発電所が取れることを想定して前に出なければならない。

 だけど私は前に出るつもりはない。

 そんなことをしなくても勝てるからだ。

 

「ソーニャは愉しそうでいいよね~」

 

「いきなり何を―――って甘いッ!」

 

 銃声と金属の当たる音が響く中、ソーニャは愉しそうに相手と戦っている。

 サポーターの支援を受けているとはいえ、実質3人を相手にしているようなもの。

 

「私もそっちが良かったなぁ~」

 

 フリーになった私が中央に攻撃を仕掛けて壊滅させてもいいのだけど、それはやらない。

 試合を始める前にみんなでそう決めたから。

 

 私もソーニャも今年で終わり。

 そうなると当然来年が気になる訳で。

 U-18ロシアが弱体化するのは確実。

 なのでそうならないように余裕がある試合では、他メンバーの成長のために手を出さない。

 

 真剣勝負の最中にそんなことをするのは相手に対して失礼であるという声もあがったが、そもそも私達を本気にさせられないのが悪いのだ。

 文句があるなら実力で示せ。

 口だけの正義に何の意味がある。

 それが私達が歩んできた道。

 そう言うと反対意見も消えた。

 

 だからこうして私は、倒した相手が帰ってくるまで1発だけ撃った弾丸を補給しながら暇つぶしに全体マップを見ている。

 

「『馬鹿鳥』とかいうのに期待してたんだけどなぁ~」

 

 アリスが送ると言ったから、てっきりそれなりの相手だと思っていたのに。

 気づけば盛大なため息を吐いていた。

 

 

 

 

 

 




■次話 決着編にて対ロシア戦終了予定です。

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*更新ペースが大幅に落ちている状態、大変申し訳ありません。
 感想なども返信したい所ではあるのですが、また同じようなことが起こると困りますので返信はしないもしくはかなりゆっくりめになると思います。
 ただ感想自体は全て目を通しています。

 活動報告へのコメントも個別に返信出来ないため返信しませんが、全て目を通しています。

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