最強の女傭兵 近未来でスポーツ美少女となる   作:のこのこ大王

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第136話

 

 

 

 

■side:シャーロット・ヴァレリー・オルコット

 

 

 

 

 

「いかに技術が進歩したといっても、やはり距離が離れているとそれだけ移動には時間がかかるものね」

 

 空港の外に出て、思わず伸びをする。

 懐かしい故郷の青空を眺めていると、どこからともなく声がした。

 

「やっと帰ってきたわね、私の可愛い娘!」

 

 そう言いながら私を抱きしめるママ。

 

「私達の天使、元気にしていたかい?」

 

 ママのスグ後ろにはパパも居た。

 私を迎えに来るとは言っていたけど、まさか2人でとは思わなかった。

 

「今日はみんなで美味しいものを食べて、たくさん話そう」

 

「そうね。せっかく家族が揃ったのだから」

 

 2人にそう言われて懐かしい景色を見ながら移動する。

 所々見慣れないものがあるのは、1年という時間を感じさせた。

 

 ……そう、私はアメリカへと戻っていた。

 日本への留学は1年間、そう決まっていたからだ。

 本音を言えばもう1年ほど向こうに居たい気持ちもあった。

 だけど、それではダメだと思う。

 私は私の道を進むと決めたのだから。

 

 パパやママに、日本がどれだけ素晴らしかったか。

 そしてたくさんの友人に恵まれ、とても素晴らしい経験が出来たと何度も語った。

 留学に否定的だった2人だけど、最後は納得して送り出してくれた。

 だからこそ、それが間違いではなかったと言いたくてつい熱が入ってしまう。

 そうして一通りのやり取りが終わり、夜になって自分の部屋へと帰ってくる。

 懐かしさを感じながらも大量の荷物を整理する。

 その1つ1つを見るたびに日本での出来事を思い出す。

 

 留学が終わり帰国することを伝えた日。

 みんなは泣いてくれた。

 送別会も開いてくれて精一杯騒いだ。

 通信関連の技術進歩もあり、海をまたいでもテレビ電話による通話は非常に安定している。

 はるか昔のような距離による疎遠など関係無くなってきた現代。

 にも関わらずあれだけ私との別れを惜しんでくれたみんなには感謝の気持ちしかない。

 

 ……私はずっと1人だった。

 LEGENDに憧れるも、いつもみんなとは違う個性的な装備ばかりを選択してしまう。

 自分としてはそれが気に入っていたのだが、周囲はそれを認めてくれない。

 クラブチームの監督も私には声をかけてはくれない。

 練習も最低限しかさせてもらえず、練習試合も基本的にずっと見ているだけ。

 そんな私を見かねた両親は『LEGEND以外にも愉しいことはたくさんある』と言ってくれた。

 でも……私はLEGENDから離れることはなかった。

 

 丁度そんな時だった。

 世界戦で誰もやったことがない戦い方を披露したアリスの姿を見たのは。

 誰よりも自由なその姿に、私は魅せられた。

 だからこそ留学を決め、アリスの居る学校を選んだのだ。

 

 ―――次の日。

 

 私は、とあるクラブチームへと向かった。

 そこはアメリカ屈指の強豪と呼ばれるチーム。

 ふらっと現れた私が誰に止められるでもなく淡々と事務手続きをしていることが不思議なのか、選手達が集まってきた。

 その中に、見たことがある顔があった。

 

「あら……『変わり者』がウチに何の用かしら?まさかとは思うけどウチに入るつもりじゃないでしょうね?」

 

「……別に私の勝手でしょう?」

 

「ハッキリ言ってあげるわ。ウチはアナタみたいなのが入れるチームじゃないの」

 

「それはアナタが決めることじゃないわ」

 

「はっ、これだから『変わり者』は困るわ。常識が通じないのですもの」

「まあそれを理解出来る頭も無いんじゃない?」

「確かに(笑)」

 

 更に2人ほど見知った顔が追加で現れて一緒に私を馬鹿にしてくる。

 昔の私なら、きっと揉め事を嫌って曖昧な笑みを浮かべていたと思う。

 ……でも、今は違う。

 

「好きに言えばいいわ。それじゃ手続きがあるから」

 

 そう言って3人を放置して奥へ行こうとした時だった。

 

「待ちなさい。だからアナタにウチは相応しくないの。名門チームの名を汚す前に立ち去って貰えないかしら?」 

 

「……さっきも言ったよね?それはアナタが判断することじゃない」

 

「いいえ、そういう訳にはいかないわ。相応しくない者が相応しくない場所に居るなんて認められない」

 

 相変わらず自分勝手な……と思いながらどうしたものかと考えていると、相手が思いついたと言わんばかりに口を開く。

 

「そうだわ。今からLEGENDで決闘をしましょう。私に勝てればウチに入るのを認めてあげる」

 

「何度同じことを言わせれば気が済むの?アナタにそんな決定権はないわ」

 

「あら、負けるのが怖いの?それならさっさと消えなさい。勝負から逃げる弱虫なんてもっともウチに相応しくないわ」

 

「そういう問題じゃないと思うのだけど……」

 

「あまり弱い者いじめをしては可哀想ですよ」

「そうそう。もう少し優しく諭してあげないと」

 

 3人でまあ好き放題言ってくれちゃって。

 ……何だかもうどうでも良くなってきたわ。

 

「……わかったわ。その勝負受けてあげる」

 

「あらあら。実力差も解らずに挑むなんて何てお馬鹿さんでしょう」

「仕方がないですよ。その程度の実力だってことです」

「一方的にやられて泣いちゃわないかしら?」

 

「もう面倒なんで3人同時で構わないわ。いい加減煩いし」

 

「はぁ?本気で言ってるの?」

 

「3人同時で丁度良いハンデでしょ」

 

「……へぇ、面白いことを言うわね」

「いいじゃないですか。3人でやっちゃいましょう」

「一度痛い目に遭わないと解らないみたい」

 

 軽く挑発しただけで綺麗に3人とも釣れてしまった。

 どっちが考え無しの馬鹿なのやら。

 

 空いていたVR装置に入るとシステムを起動させる。

 

「今ならまだ泣いて謝れば許してあげ―――」

 

 通信をカットして煩い雑音を消す。

 そして目を閉じて精神統一を行う。

 

 ゆっくり目を開けるとそこはVR世界。

 各種データを確認すると、どうやら点数30Pづつの小規模戦。

 つまり私は相手3人を倒せば勝ち。

 相手は私を3度倒せば勝ちという形になる。

 彼女達からすれば私を3度倒すことで圧勝であると言いたいのでしょう。

 

 一度大きく深呼吸をする。

 すると丁度良いタイミングで試合開始のアナウンスが聞こえた。

 

「―――よし、いける」

 

 私は、ブースターに火を入れた。

 

 

 

 

 

■side:ジェシカ・ラングフォード

 

 

 

 

 

「これは何の騒ぎ?」

 

 今日は友人が来るということで、いつもより早くクラブチームに足を運んだ。

 すると何故か人だかりが出来ていた。

 なので近くにいた後輩を捕まえて話を聞く。

 

「私もその場に居た訳じゃないのですが―――」

 

 そう言いながら話してくれたのは、今日ウチに入ろうという子にウチのチームの3人が絡んだらしい。

 そして何故かLEGENDで決着をつけるという話となり、今こうして試合中だという。

 

「……何を馬鹿なことを」

 

 詳しい話が見えてこないが、どう考えても馬鹿な話である予感しかしない。

 気づけばため息が出ていた。

 そして外部観戦用のモニターで試合を確認した瞬間、またもため息を吐く。

 

「―――事前に連絡しろってあれほど言っておいたでしょうに」

 

 眺めていた画面では、大型ブレードを持った高機動ストライカーが物凄い速さで動き回っていた。

 対して重武装の火力重視なストライカー2人と同じく重武装なアタッカーは、3人揃って翻弄され各個撃破されていく。

 そのあまりにも一方的な蹂躙劇にギャラリーも声すら上げれず、ただ茫然とその姿を見ているだけだった。

 

 

 

 

 

 




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