最強の女傭兵 近未来でスポーツ美少女となる 作:のこのこ大王
第178話
■side:シャーリー
(……待ちかねたわ、黄 若晴!)
下段通路のゲートが解放され、滑り込んだ私は、真正面に立つ彼女を見据えて不敵に笑った。
他ルートではすでにチーム同士の激しい銃撃戦が始まっている。
だけど、この通路だけは世界から切り離されたように静まり返っていたわ。
私達には、言葉にせずとも分かる暗黙の了解があった。
日本の『霧島 アリス』。
あの絶対強者に決勝で挑む権利は、私達のどちらか一人にしかない。
何より、敵陣へ単騎で切り込み、大剣一本で戦場を蹂躙するスタイルは、私達二人とも全く同じ。
大剣使いとしてのプライドという暗黙のライバル意識が、この前代未聞の一騎打ちを成立させていた。
「ハァァァッ!!」
背部ブースターが限界までチャージを完了する。
私は一歩を踏み出し、エネルギーを一気に解放した。
ストライカーの特権たる、肉体を置き去りにするような圧倒的なパワーとスピード。
直線的な超高速の突撃。
何度目かの激しい攻防。
黄は私の突撃の慣性を見切り、カウンターの軌道を作ろうとする。
(甘いわ……ッ!)
衝突の直前、私は最高速からあえて強烈な急制動をかけ、ブースターの指向性を変えて軸を横へとずらした。
ただの力任せの猪突猛進じゃない。
極限の速度の中で完全に制御された、技術的なステップ。
「しまっ――」
黄の驚愕の声を置き去りに、死角へと滑り込んだ私のブレードが、彼女のブレイカー装甲を鮮やかに切り裂く。
激しい爆発エフェクトが散り、まずは私が先制の1撃破(キル)を毟り取ったわ。
■side:黄 若晴
リスポーンを終え、私は再び下段通路へと走る。
頭のどこかでは、チームのために他ルートを援護すべきだという冷徹な計算もあるわ。
だけど、あの金髪の少女――シャーロット・ヴァレリー・オルコットを前にして、退くことなんて絶対にできなかった。
(『最強』の名は、誰にも譲らないわ。自分こそが最強だって、証明してみせる)
彼女は確かに強い。
驚異的な突撃速度の中に、あれほど精密なステップを混ぜてくるなんて並のストライカーではないわね。
だけど、単騎で戦場を切り開いてきた誇りは、私にだってある。
再び下段通路の正面で刃を交える。
火花が散り、金属音が幾度も響く。
相手の強さを認め、敬意を払うからこそ、私の闘志は内側から激しく燃え上がっていた。
何度目かの緊迫した攻防の末、その瞬間が訪れる。
「ここよ……!」
シャーロットが再び超高速の突撃を仕掛けた瞬間、私の脳内は完全にその軌道を捉えていた。
ブレイカー装装甲の柔軟性を限界まで引き出し、ミリ単位の身のこなしで刃をかわす。
そのまま、大剣の重さを一切感じさせない超絶技巧の連撃を繰り出した。
シャーロットが防御を固めるより早く、その防御を潰し、武装ごと切りつけ、上半身の装甲を強引に叩き斬る。
『やり返したぁー!! 黄 若晴、完璧なカウンターでリベンジ達成!!』
ポイントは五分。
私達は再びブレードを構え直し、静かに相手がやってくる方角を睨んだ。
■side:シャーリー
火花が散り、装甲が削れる金属音が何度も響く。
試合時間が残り少なくなり、精神的にも精一杯。
仲間達も互いに撃ち合いから、どちらも突撃準備を隠そうとしていない。
そんな中で、私は相手を睨みつける。
黄 若晴、本当に強い。
心の底から敬意を払わざるを得ない怪物ね。
(だからこそ――私はあいつに勝ちたい! 勝ってアリスの前に立つのよ!!)
決着がつかないまま、制限時間だけが減っていく。
残り時間、5分。
私達は、ほぼ同時に互いの全てを賭けた最大の大勝負に出た。
ブースターを全開にして黄の懐へと飛び込む。
――だけど、それは黄の狙い通りだった。
「……捕らえたわ」
冷徹な声が響く。
私の突撃の全慣性を利用するように、黄の大剣が私の防御を強引に弾き飛ばし、姿勢を完全に崩しにきた。
勢いがついた突撃である以上、慣性が発生しており逃げれない。
回避不能の防御崩し。
そこへ、容赦のない必殺の連撃が私を襲う。
大剣の刃が、私の視界を埋め尽くしていく。
これで、決まった――誰もが、そう確信したその瞬間だった。
(―――終わってたまるものかぁぉぉぉッ!!!)
脳が沸騰するような強烈な感覚が、全身のシステムを突き抜けた。