最強の女傭兵 近未来でスポーツ美少女となる   作:のこのこ大王

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第21話 日常編

 

 

 

 

■side:霧島 アリス

 

 

 

 

 

 朝、日の出と共に起きる。

 前世ではそれが日常だったせいで、完全な癖になっていた。

 

 今日は休みだったなと電子カレンダーで確認しながら、身だしなみを整えるためベッドから起き上がる。

 傭兵時代でも、それなりに身だしなみには気を使った。

 それは何も女子力うんぬんではなく、やはり交渉事では最低限必要だからだ。

 未だ自分とは思えない鏡の中の美少女の身だしなみを整えながら昨日のことを思い出す。

 

 スパイダーに襲撃された事件から、1週間。

 世の中は未だその事件一色で、当事者である私達は迂闊に外に出られない。

 見晴らしの良い自分の部屋の窓から外を見ると、校門前には複数のテレビ局の車が堂々と止まっている。

 隠す気すら無いらしい。

 

 そんな中、暇なのかテレビ電話で一条恋から連絡があり、せっかくなので京子ちゃんや晴香を混ぜた複数会話で色々と話をした。

 病院送りとなった青峰は、検査などを含め1ヶ月ほど入院することになったらしい。

 ほとんどの人間は後遺症など無く元気らしいが、一部スパイダー君にトラウマを植え付けられたようで精神的に不安定な子も居るらしく、今後が心配だと言っていた。

 

「ああ、ならその子らに伝えておいて。犯人捕まったって」

 

「え? 何でそんなこと知ってるの?」

 

 私の言葉に、恋が食いつく。

 

「昨日『現地の特殊部隊が突入して犯人を確保した』ってお爺ちゃんからメールが来た。明日辺りにはニュースになるんじゃない?」

 

「……アンタ、サラっとそんな報道すらされてない情報を」

 

「流石、日本LEGENDを背負う男と呼ばれる大臣だけあるね……」

 

 恋だけでなく、晴香まで呆れた声で呟く。

 私だってそう思うよ?

 でもあの人、いつもそんな感じなんだもの。

 そんな感じで適当に会話をしていると更に人数が増えた。

 

「あ~、香織達が参加したがってるけど繋いでいい?」

 

「達? 他誰?」

 

 香織の時点である程度予想出来るが、一応聞いておく。

 

「晶と桃香」

 

「お~、いいじゃん。繋ごうよ」

 

「おっけ~」

 

 先に晴香が返事をしたことで一気に通信に人が増える。

 懐かしい顔も多い。

 

「お~、みんな久しぶり~」

 

 U-15でリーダーだった谷町香織。

 

「ホントだね」

 

 U-15で迫撃砲を運用していた鈴木桃香。

 

「懐かしさがハンパ無いね」

 

 U-15で数々の攻撃の切っ掛けを作ってきた大野晶。

 

「しかし大丈夫だった、恋?」

「ホント、ニュース見てビックリしたわよ!」

「3日ほど連絡付かなくなるし」

 

 入ってきたメンバーが一斉に恋を気遣う。

 

「私は大丈夫なんだけどね。一部ちょっとまだダメな子も居て」

 

 恋は、先ほどこちらにしていた説明を繰り返す。

 

「でも無事でよかったよ。アリス達もよくあんなのと戦う気になったわね」

 

「せっかくの良い勝負を潰されたから、腹いせにスクラップにしてやったわ」

 

 淡々と感想を言うと全員が笑い出す。

 

「そうそう、あの時もこんな感じだったわ」

 

「アリスちゃん、珍しく怒ってたもんね」

 

 晴香と京子ちゃんも、その時のことを思い出してか笑いながら当時の状況を語っていた。

 

「そういや晴香。メッチャ多脚戦車に追われてたね」

 

「そう!ちょっと晶聞いてよ~!アイツちょっとグレで3連ミサイルをポッドごと破壊したら親の仇みたいに狙ってきてさ~」

 

 晴香は晶を捕まえると延々と追い回された話をし続ける。

 そんな中、突然香織が声を上げる。

 

「あっ!そういやアリス!よくもやってくれたわね!!」

 

「ん?何の話?」

 

「人の名前思いっきり叫んでマスコミ押し付けたでしょ!」

 

「……あ~、そんなこともあったねぇ」

 

「あれ、めんどくさかったんだから!

 ……白石先輩に関してはホントアンタのおかげで苦労してるのよ」

 

「誰よ、その何とか先輩」

 

「まあ、アリスはこんな感じだよね」

「やっぱり先輩が一人でカラ回ってるだけか」

「うん、わかってた」

 

 私の一言に、香織・晶・桃香の3人は『あ~』っとため息にも似た諦めの声を上げる。

 

「で、その何とか先輩ってのを私知らないんだけど」

 

「……去年のU-18女子日本代表のリーダーで天才ブレイカーって呼ばれてた人よ」

 

「……うん、でその人と私に何の関係が?」

 

「その返事、絶対解ってないでしょ!?」

 

「ダイジョ~ブ、ダイジョ~ブ」

 

「……清々しいまでに興味無しとか、逆に先輩が可哀想になってくるわね」

 

 よく解らないが香織が、明らかにテンション低めでため息を吐く。

 

「ウチのリーダーなんだけど『霧島アリスを倒すのは私だ!』って張り切り過ぎてウザいのよ」

「そうそう、この前なんてアリスの載った雑誌握り潰して捨ててたぐらいだし」

 

 聞いてもいないのによほど不満があったのか、その何とか先輩の愚痴を語り出す大神組。

 

「この前の時だってアンタのこと睨みつけてたでしょ?」

 

「……うん」

 

「……コイツ、全然記憶にありませんって顔したまま返事しやがって」

 

「いきなり見知らぬ他人に『霧島アリスねっ!勝負しなさいッ!!』とか言われたり『アナタを倒すのは私よっ!』とか何度も言われてみれば解るわよ。いちいち覚えるのも面倒だって」

 

 そう言うと全員が苦笑する。

 

「確かにそういうの居たね。……確か中国だっけ?」

 

「あ~、居たねぇ。『一騎討ちさせろ!』だったっけ?」

 

「そうそう、それでアリスが無視して切れてた奴」

 

 そんな奴居たっけ?と思いつつも丁度良いのでそのまま私の意見を言う。

 

「……うん、そういうのが連続すれば嫌でも解る」

 

「……ああ、こうして記憶にすら残らないのか」

「ここまで行くと逆に相手が可哀想よね」

 

 何故か晴香と京子ちゃんが諦め顔で相手に同情し始め、その後U-15の頃の話を中心に盛り上がって夜遅くまで会話をしていた。

 

 昨日の事を思い出していると、着替えも終わり身だしなみも完璧となる。

 時間を見てもまだ朝早くなので、空中に浮かんでいる電子操作盤を触って一覧から動画を開く。

 

 今勉強しているのは、フランス語だ。

 前世ではロクな教育を受けていなかったせいで、傭兵時代は言葉の壁に特に苦労した。

 何とか根性でお得意様の国の言葉だけは覚えたが、やはり会話が出来ると出来ないでは雲泥の差だ。

 生まれ変わった今は一応お嬢様のような暮らしが出来るので、ある程度高水準の教育が受けられている。

 なのでその環境を最大限利用する形で特に語学に力を入れている。

 一通り動画を見終わると、そろそろ寮の朝食の時間だ。

 私はドアを開けて廊下に出るとそのまま真っ直ぐ進み、設備が整った広いラウンジに出た所で立ち止まる。

 

「……ナニコレ?」

 

 ウチの学園は、基本的に寮生が多い。

 全国から人が集まっているのだから当然だ。

 そして巨大な寮では、競技別にフロアが別になっている。

 例えば2階は、陸上系の部活に参加している人達。

 例えば3階は、水泳などの部活に参加している人達といった感じである。

 私達LEGEND組は、何と寮の最上階。

 そりゃ部屋からの見晴らしは良いだろう。

 

 そんな見晴らしの良い眺めを愉しめ、高そうなソファーや共同簡易キッチンに巨大モニターなどが揃った高級ラウンジっぽい場所。

 そこに何故か寿司屋のカウンターが付いた屋台風の出店が鎮座していた。

 しかも女性の職人付きで。

 その前では、晴香と京子ちゃん以外の全員が当たり前のようにお寿司を食べていた。

 

「あら、アリスさん。ごきげんよう。よろしければアナタもどう?」

 

「…どういう状況です、これ?」

 

 戦場では、意味不明な状況に出くわしてもその場で呆けるなどあってはならない。

 それは即、死に直結しかねないからだ。

 そんな命の価値が限りなく軽い戦場を経験した記憶を持つ私であったが、そんな私ですら一瞬フリーズしてしまった。

 

「朝、起きると急にお寿司が食べたくなりましたの。でも今私達が外に出ると何かとウルサイでしょう?だから出張ならと思いまして」

 

 …流石、藤沢のお嬢様。

 考えることも、やることもぶっ飛んでるわ。

 

「で、私達はその恩恵にあずかってるって訳」

 

 お茶を飲みながらまったりしてる杉山先輩が、こちらを向いて状況を話してくれた。

 残りは全員、お寿司に夢中である。

 

「…とりあえず晴香と京子ちゃんを起こしてきます。じゃないと後で文句言いそうなので」

 

 まあ、何でもいいかと考えるのを放棄して2人を起こしにいく。

 眠そうにしながら出てきた2人だったが、やはりラウンジの状況に驚き色々とツッコミを入れていた。

 

 ちなみにその後、下のフロアからこの騒ぎの様子を見に来た生徒達から寮生全体に話が伝わり、

 藤沢先輩の提案もあって寮内寿司パーティーが開催された。

 しかも追加で他の屋台風の出張サービスも呼ばれ、気づけば職員なども巻き込んだ騒ぎとなる。

 

 更に何を考えたのか、藤沢先輩は寿司の盛り合わせを何人かで持つと校門前で張り込むマスコミの元へと歩いていく。

 ようやく巡ってきたチャンスとばかりに集まる報道陣に対して『お仕事大変ですね。よろしければお寿司でもどうですか?』と運んだ寿司を配り出す。

 報道陣はそれを受け取りつつも『何故に朝から寿司?』という疑問でフリーズしてしまう。

 まあこちらの取材が出来なくともスグに事件の犯人逮捕で盛り上がるだろうから問題ないだろう。

 

 結局これら一連の話は、参加出来なかった一部寮生ではない生徒達からの恨みの声と共に何故か語り継がれる伝説の1つとなった。

 

 

 

 

 




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