最強の女傭兵 近未来でスポーツ美少女となる   作:のこのこ大王

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■霧島 アリス:琵琶湖女子1年。主人公。伝説の傭兵だった記憶と経験を持つ。
■川島 律子:今年のU-18女子日本代表監督。まだ新米監督。














第33話

 

 

 

■side:とある日本LEGEND協会役員

 

 

 

 

 

「―――以上が、国際LEGEND協会からの通達です」

 

 昨日、国際LEGEND協会の会合から帰ってきた会長がその内容を説明している。

 

「唐突過ぎませんかね?」

「何故今更なのか」

「これだから連中は」

「このような横暴、断固抗議しましょう」

「よほど向こうも焦っていると見える」

 

 周囲では役員達が好き勝手に、色々と言葉を口にしていた。

 逆にこの前の騒動で入れ替わった役員達は、大人しいものだ。

 

 国際LEGEND協会は、世界大会が始まる前に様々な通知をしてきた。

 それは基本的なルール部分から始まり様々なものに影響を及ぼす内容だ。

 どうやら向こうは、これらを世界大会から適応したいようだ。

 

 国際LEGEND協会が出してきた変更点は以下の通り。

 

 1:前回大会から試験的に導入していた『リーダーもしくは監督による試合放棄』に関して、これを正式ルールとして追加する。

 2:出場者10名・控え5名という公式チーム内人数制限を出場者10名・控え15名へと変更する。

 3:グレネードなどによる『自爆』に関して1試合1人につき1回限り可とし、2回目以降を行った場合はペナルティが発生する。

 4:1度交代した選手は30秒間再度交代不可を60秒に延長する。

 5:常に出場選手10名内に全兵科(アタッカー・ストライカー・サポーター・ブレイカー)が1名以上存在しなければならない。

 6:アタッカー装備の『アタッカー用片手シールド』類は全てサポーター用装備に変更される。

 7:今年行われる全企業合同の新製品発表会にて登場予定の全兵科各種新装備は、発表会の日時より使用可能とする。

 

「これは、早々に対応できる問題じゃないぞ!」

「後ろの方はシステムそのものが大幅に変更されるではないか!」 

「何故アタッカーから盾を取り上げるのかね?」

「この時期の変更など選手達が混乱するだけだろうに」

 

 聞こえてくる意見に賛同出来るものもある。

 あまりにも突然の変更だ。

 

「―――静粛に」

 

 会長の一言で皆が一斉に静かになる。

 

「これらは国際LEGEND協会から『決定事項』として伝えられた内容です。それをここで批判しても意味が無い」

 

「事情は分かりました。しかしこの新装備というのは何ですかな?」

 

「お手元の資料の中から赤い表紙のものをご覧ください」

 

 言われるがまま赤い表紙の資料を開く。

 するとそこには、各メーカーから出る新装備の詳細が記載されていた。

 

 それを読むにしたがってまたざわつく会議場。

 

「皆様の懸念も理解出来ます。まったく新しい装備もありますので、これがどういう影響を与えるのか解らない」

 

 会長の言葉に誰もが頷く。

 もしかしたらあまり影響がないかもしれない。

 しかし、もしかしたら大きな変化になるかもしれない。

 

「しかしこれは既に決定事項。我々が行うことは少しでも早く、そして正しくこの内容を選手や関係者に通達することです」

 

「確かに」

 

「国際LEGEND協会からの通達内容は以上です。では次に我々日本LEGEND協会内における会議に移ります」

 

「そうでしたな。ついもう終わった気になってしまった」

 

 誰かが言ったその言葉で周囲から笑い声が聞こえてくる。

 それだけ国際LEGEND協会の通達が面倒なことだからだ。

 

「それではまずは―――」

 

 この後、様々な議論がされていく。

 その中には『冬季中高生全国LEGEND大会開催に関して』というものもあった。

 

 

 

 

 

■side:霧島 アリス

 

 

 

 

 

「まあ、直前認可よりマシか」

 

 それが私の素直な感想だった。

 手に持っているのは『とあるルート』から回ってきた『全企業合同新製品発表会』に登場予定の新装備に関しての資料だ。

 よくもまあこんなタイミングでこんなものを入れてこれるなと思う。

 

 まずアタッカー。

 盾の使用が禁止になった。

 これは恐らく自爆突撃をしにくくする措置だろう。

 これも『とあるルート』から聞いたが、自爆突撃に関しては結構揉めたらしい。

 その結果1試合につき1人1回という妥協したルールになったそうな。

 無制限自爆突撃よりはマシかという程度ではあるが。

 

 その代わりに、アタッカーは中型装甲しか装備出来なかったのが、アタッカー用の重装甲が登場するらしい。

 これで速度を重視するのか、ストライカーのように回避をある程度諦めて撃ち合いに専念するのかを選べるらしい。

 まあ突撃する速度は落ちるが防御が上がるというのもアリか。

 

 次にサポーター。

 アタッカーの代わりに彼らが使っていた盾がサポーター用になるらしい。

 小さめの盾だが使いようによっては十分弾避けになるし、突撃の際にも使いやすい。

 そして今までサブマシンガンが主兵装だったが、新武器としてここに一部ストライカーが使うような腕と一体化したガトリングガン。

 肩に2~3連ほどのミサイルを装備出来るようになるそうな。

 これで火力不足だと言われ続けたサポーターでも十分主力を張れる火力になるだろう。

 

 そしてストライカー。

 今は、ガトリング派と大型マシンガン派、そしてミサイラー派となっているが、ここに新しくロケットランチャーが入る。

 これは主兵装タイプの強力なのもあれば、威力が低めな代わりにサブ武器としても使えるタイプなど様々出るようだ。

 ストライカーの火力が更にあがるという訳だ。

 益々ストライカーは、花形職業となるだろう。

 

 そして装備面でも少し面白いものが出るみたいだ。

 クイックブースターと呼ばれるもので、両肩・足・背中にブースターを付けることで一時的な加速を得ることが出来るらしい。

 これで鈍足であるストライカーが早く動けるようになるようだ。

 ……ただこのブースター。

 装備すると両肩・背中・足に装備するタイプの装備が一切装備出来なくなるという欠点を持つ。

 唯一、肩に付けるシールドだけはいけるっぽいが武器類は無理らしい。

 どの程度の速度になるのか知らないが、付ければ速度が上がる代わりに武装を減らさなければならない。

 これはストライカーの連中がどう判断するのかが見物である。

 

 最後にブレイカー。

 今までハンドガンは1丁しか持てなかったが2丁持てるようになった。

 両手でハンドガンを持つのはよく映画で見る光景だが、実際あんなことは早々出来ないしする場面もない。

 そして近接武器の種類も増えるらしい。

 え?大型の刀?ナニソレ?

 そんな重そうなもの持って突っ込むの?

 てか威力あるのか、これ?

 それ以前に何でこんなものを作ったんだ?

 メーカーどこよ?

 ……ああ、あそこならやりかねないわ。

 

 何故か充実する近接武器とか、連中はブレイカーをどうしたいのか?

 はるか昔、ストライカーにさえ大型武器を持たせて接近戦をさせようとした過去がある連中だから仕方がないと思えばいいのだろうか?

 というかそんなに前に出したいのなら軽量装甲の耐久値を大幅増加するなり、ブレイカー用の中型装甲とか重装甲を作れと言いたい。

 どうしてブレイカーの変化は、こうも実戦を考えていないものが多いのか。

 

 思わずベッドに倒れ込む。

 

「これとルール変更によって結構荒れるだろうな~」

 

 まるで他人事のような気分ではあるが、実際他人事なので仕方がない。

 

「これで少しは愉しくなるといいな~」

 

 ルール改定や『全企業合同新製品発表会』の情報はスグに日本LEGEND協会によって発表された。

 LEGENDプレイヤー達の間ではこの時期での大きな改変に様々な声が出るが、そこまで大きな騒動にはならなかった。

 それよりも新武器などによる環境変化を好意的に捉える声の方が大きく、特に変化の大きなサポーターとストライカーの選手達はまだ見ぬ新武器を予想し合うなど大いに語り合った。

 

 逆に監督達を悩ませたのは、控え枠が一気に10名も増えたことだ。

 今までだと体力的に厳しい選手などを入れ替えながら使ったり、戦術ごとに交代させてきたが、その幅が大きく増えるのだ。

 その気になれば出場選手全員を控えと一気に交換も可能となる。

 そうなれば戦術の変化も容易に行えるため、停滞した戦場を積極的に動かすことが出来る。

 しかしこれで困ってしまうのが、その10名をどうするかだ。

 今年のU-15女子日本代表監督に急遽帰ってきた監督など、『控え10名のためにもう一度選考会をしたい』と言い出した。

 U-18の川上は、逆に選考会が遅れていたことである意味助かった。

 プロ選手達だけで構成された世界大会チームも『10名は直接指名で選ぶ』として騒動を早々に回避した。

 

 むしろこの件で一番面倒なことになったのは、中高のLEGEND部やプロリーグだ。

 全チーム一気に控え枠が10名分増えたのだ。

 中高の部活でもプロチームでも、補欠争いで大いに荒れることになった。

 

 この騒動の中、一部の女子高生LEGEND選手に一通の手紙が届き始める。

 それは―――U-18女子日本代表を選ぶ選考会への招待状であった。

 

 

 




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