最強の女傭兵 近未来でスポーツ美少女となる   作:のこのこ大王

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■霧島 アリス:主人公。前世の記憶と経験持ち。武器は全て試さないと気が済まないタイプ。
■堀川 茜:大阪日吉3年リーダー。世界戦に参加出来ると喜んでいる。


第43話

 

 

 

 

 

■side:U-18女子日本代表 霧島 アリス

 

 

 

 

 

 U-18の女子日本代表選考会も終わり、出場10名・控え15名の代表25名が決まった。

 最終調整と呼ばれた紅白戦に出場していた選手を中心に25名が選ばれたようだ。

 

 そして代表の通知から更に1週間後。

 今度は『全企業合同新製品発表会』が開催されることになる。

 その日と同時に公表された新装備類の数々に、監督達から『取ったデータの一部が完全に無駄になっただろ!』と協会に抗議があったそうだ。

 知っていたなら事前にそれぐらいの情報を寄こすなり発表会後に選考会という流れでも良かっただろうよと。

 しかし『国際LEGEND協会の意向』と言われてしまうとどうしようもない。

 

 まあそんなやり取りが行われている頃、私達琵琶湖女子組は会場に来ていた。

 というか私達だけでなく、間違いなくLEGEND選手のほとんどが会場入りしているだろう。

 特にU-18代表に選ばれた選手は、この日に全員会場を訪れるように呼ばれているのだから。

 

 U-18代表には日本LEGEND協会から『世界戦に向けて装備一式を揃えるように』と言われている。

 もちろん費用は協会持ちらしい。

 一式とは、メイン兵科の武器や装甲などである。

 サブなどの予備に関しても必要なら個別に申請するようにと言われているが、基本的に皆メインしか買わないだろう。

 全部まとめて他人の費用で買わせるなどという図太い人間が居ないだけかもしれないが。

 ということで、この会場では見本品を見るだけでなくその場で直接購入もできる。

 なので全国からLEGEND選手が集まってきているのだ。

 その辺を見回せばプロ選手やマスコミなどもウロウロしていた。

 

 そんな中、みんなが一斉に会場で散らばっていく。

 そりゃそうだ。

 みんな見たいものが違うのだから。

 

 私はみんなが散らばったのを確認すると、会場の隅にある休憩所でジュースを飲む。

 ゴチャゴチャしている今、人をかき分けて動きたくないからだ。

 ある程度待って、人がそれぞれのブースでじっくりとし始めた段階で動き出す。

 

 まずは、アタッカーコーナー。

 盾禁止が本日から正式ルールとなる。

 これに関してアタッカー選手でも意見が分かれた。

 追加される重装甲でカバーしようとする選手。

 盾持ちになるサポーターに変更する選手。

 同じく盾持ちのストライカーに変更する選手。

 盾を諦めてそのままアタッカーとして頑張る選手。

 あとは盾禁止の影響を受けない選手ぐらいか。

 反応は様々だったが、アタッカーに腕部ロケなど一部ストライカー用装備が兼任となり火力面が少し強化されるようで、その辺りも反応が様々だった。

 中にはストライカーが持つようなサイズの大型アサルトライフルなどもある。

 

 ……というかそんな情報あったか?

 まさか直前で追加した?

 まあ考えても無駄なのでその辺は気にしないことにした。

 

 コーナーでは晴香や晶が、腕部ロケやシングル肩ミサイルなどをああでもない、こうでもないと言い合いをしていた。

 逆に三峰灯里などは熱心に重装甲を見学しているようだ。

 私も適当に追加装備を見てから次へと移動する。

 

 次はサポーターコーナー。

 盾追加と腕部一体型のガトリング。

 更にストライカー用と同じ両手持ち大型マシンガンにアタッカーと同じく肩装備の2~3連ミサイルなど火力の充実っぷりが凄い。

 こっちの方がアタッカーじゃね?と思ったのは私だけではないはずだ。

 まあその分、重量が凄いことになるから機動力が死ぬだろうけど。

 しかしアレだな。

 『独自ルート』で聞いていた情報よりも追加などが多い。

 明らかに『後から追加した』感じがする。

 

「それでも一応発表までに間に合ってるから構わないか」

 

 とりあえずそう思うことにした。

 ここでは、京子が真剣な顔で武器のスペックや紹介動画を見ている。

 恐らく奥のVR装置で試し撃ちもやるつもりだろう。

 

 この辺も適当に見て回る。

 肝心の支援関連は、そこまで面白いものが無いのが残念だ。

 サポーターは火力よりも支援系で特化した何かがもう少しあった方が良いと個人的には思っている。

 

 そして次に向かったのは、人が一番多い所。

 ストライカーコーナーだ。

 少し前までは何だかんだでアタッカーが一番多かったのだが、ルール変更もあってか、この会場では人が明らかに多い。

 原因の1つは、目の前に飾られたロケットランチャーだ。

 大きなサイズから携帯用の小さめまで様々だ。

 意外なことに、見た目が『RPG』っぽいのや『パンツァーファウスト』っぽいのは無かった。

 やはりグレネードランチャーや使い捨ての無反動砲はダメなのか。

 いっそどこぞのゲームのようにパワードスーツを着ているようなものなのだから、迫撃砲とか装備しても面白いのに。

 それこそグングニルを両手持ちとか、ロマンがあって良いと思う。

 

 そして大型マシンガンの一部がサポーターに流れたせいで、マシンガン派では騒動が起こっているらしい。

 正直馬鹿らしいと思わなくもないが、人間というものはそういった下らないことに必死になる生き物だ。

 そもそもガトリングは弾数無制限という恩恵が大きい。

 大型マシンガンはガトリングに比べ威力は落ちるが連射力が高く、何より空転時間が無いためより接近戦向きだ。

 で、ストライカーのような鈍足機体で誰が接近戦を意識するのか?というのがマシンガン派が抱える最大の問題点と言える。

 地味に弾切れするのでマガジン交換をしなければならないのも面倒である。

 その分、軽量であるのでそこでカバーすべきなのか?

 まあそんな悩みはマシンガン派に任せよう。

 

 考え事をしながらようやく目的のモノを見つけた。

 『クイックブースター』だ。

 装備制限が物凄く厳しいが、これを付ければ短時間だけとはいえ物凄く早く動くことが出来る。

 それこそ軽量アタッカーよりも早いぐらいだ。

 しかし連続稼働時間が短く短時間運用しか不可能で、オーバーヒートすると長時間使用不可能になるなどデメリットの方が目立つ。

 私は近くをたまたま通ったスタッフを捕まえると出品されていた3種類のブースター全てを購入する。

 両親からクレジットカードを持たされているからお金を出しても良かったのだが、せっかく協会が買ってくれるというのだ。

 ありがたく買って貰おう。

 

 そして最後に行くのは、もちろんブレイカーコーナー。

 ここだけ一番人が少ない。

 やはり未だに敷居が高いのだろう。

 コーナーに近づいただけで周囲から人が一斉に離れた。

 そしてヒソヒソと人を見て小声で話をする。

 

「……まだ堂々とサインが欲しいと押しかけてくる連中の方がマシだわ」

 

 どういうつもりでそうするのか知らないが、こちらからすれば不愉快極まりない。

 そんな連中など気にするだけ無駄なので、さっさと新商品の確認をする。

 資料で見た大型の刀など、ホントにこれで何させる気だよと思う。

 これを持って突撃しろと?ならせめてもう少し小型にしろと言いたい。

 何?この籠手みたいなの?

 インパクトパンチ?

 これで相手を殴ると相手を大きく吹き飛ばす?

 いまいち使い道が解らないのだけど?

 

 2丁銃に関してもどうしてそう大型なのか。

 せめてもう少し小型で使い勝手を良くすればいいのに。

 もしくはブレイカーにマシンガンをくれと。

 サブで持てれば格段と自衛力も突撃力も高くなるはずだ。

 そんなことを考えながら見ていると、謎のモノを見つけてしまう。

 

「……地雷?」

 

 そう、地雷だ。

 円盤型の設置型地雷である。

 鉄で出来たフリスビーを置いただけという見た目だ。

 

 そんな地雷の前にある紹介動画では、道のど真ん中に置かれた地雷に対して『まるで気づいていませんよ』というワザとらしいストライカーが歩いてきて地雷を踏む。

 すると爆発が起こってストライカーが一撃で光の粒子となって消える。

 

『高防御力を誇るストライカーでもこの通り!圧倒的火力で敵を倒します!』

 

 動画では女性の声でそんな宣伝が行われている。

 しかしそんなことはどうでもいい。

 

 この地雷。

 どうみても大きくて目立つ。

 大きいサイズのピザぐらいで真っ黒だ。

 そんなものが道端に堂々と置かれて気づかない方がどうかしている。

 最悪見通しの悪い曲がり角に仕掛けて、かつ相手が走り込んでくるぐらいでないとまず無理だろう。

 もしくは真っ黒なので薄暗い所などに仕掛けるぐらいか。

 でもこいつ、真ん中で赤い光がピカピカ光っているのだ。

 もうネタじゃないのか?としか言えない。

 地雷が自己主張してどうするよと。

 前世でも作ったは良いがその場から動かせない迫撃砲など馬鹿みたいなものを見てきた。

 その記憶を合わせてもかなりの上位に入るほど馬鹿な兵器だろう。

 

「……せめてステルス機能が付いてて設置したら消えるとかさ」

 

 思わずツッコミを入れたくなる。

 何故こんなものを作ったのかと言いたい。

 

 確かにブレイカーは遊撃兵科だと言われているものの、LEGENDの現状では狙撃兵としてしか見られていない。

 だからだろうか、遊撃兵としての装備も作られてはいるが、どうしても使い勝手が極端に悪いものが多い。

 まあ理由は簡単だ。

 誰も使わないからこそ実戦データが取れず、机上の空論だけの装備が生まれてしまうのだ。

 それでも作られるのは、やはり一定数必ず購入する層が居るからだろう。

 使ってみなければそれが本当にゴミ武器なのか判らない。

 だからこそ私はそんなネタ兵器達に最初から完全なゴミだという烙印は押さない。

 何故なら散々馬鹿にしている私も、そんな『必ず購入する層』なのだから。

 

 スタッフを捕まえて新商品全てを購入することを告げるとスタッフは慌てたように人を呼びに行った。

 そしてやってきたのは各メーカーの広報担当者達である。

 

「……余計なことを」

 

 思わずため息が出る。

 商品購入後も延々と下らない話をしてくる。

 どのメーカーも言うことは『自社製品を使ってくれ』ということ。

 それだけで評判になるからだろう。

 それどころか『我が社の商品を提供する』とまで言い出した。

 これは、あの会社が私に自社製品を送ったことで私が『零式ライフル』を使い続けていると勘違いしているからだろう。

 とりあえずこれ以上の面倒事はゴメンなので馬鹿丁寧にその辺りはお断りした。

 それでも食い下がる連中にいい加減面倒になって、ストライカーコーナーの人混みを利用して振り切った。

 

 ある程度見終えたが、みんなとの集合時間には少し早い。

 なので隅っこにある目立ちにくい休憩スペースで休憩する。

 

 座りながら購入した装備をどう使おう、どう試そうと考えていると声をかけられた。

 

「お、霧島アリスやん。久しぶり~になるんかな?」

 

「ああ、茜か」

 

「……ウチ、一応年上なんやけどなぁ~」

 

「茜は、茜でしょう」

 

 そう言うと茜は、ため息を吐く。

 

「……まあええわ。別に同じ学校って訳でもないし、それにこれから一緒に戦う仲間やからな」

 

「仲間?」

 

「せや。U-18の結果届いたやろ?」

 

「ああ、そういう」

 

「アリスが合格しとらんで、誰が合格するっちゅうねんな。ああ、アリスって呼ぶけどええよな?」

 

「お好きにどうぞ」

 

「ならそう呼ぶわ」

 

 そう言いながら茜が隣に座る。

 

「いや~、まさか高校生活最後に世界大会出れるとはな~」

 

「そういうものかしら?」

 

「ウチにとっちゃそういうもんや。世界で自分を試せるとか面白いやん」

 

「……世界もあまり変わらないわよ」

 

「おお、流石U-15で日本を初優勝に導いた人は言うことが違うなぁ。でも今年はロシアとか強敵もおるで?」

 

「ロシア?」

 

「あら?知らへん?ロシアのダブルエース?」

 

「興味が無いから」

 

「はははっ!流石はアリスや!」

 

 茜は何が面白かったのかお腹を抱えて笑っていた。

 それが済むと、ようやくこちらを向いた。

 

「ロシアにダブルエースっちゅうのが居てな?【ロシアの妖精】アナスタシアと【ロシアの守護神】ソフィアの2人や」

 

 茜は飲みかけのコーヒー缶を横に置くと両手を使ってオーバーに語る。

 

「妖精アナスタシアは、世界が認める天才ブレイカーって言われとる。アリスと同じヘッドショットが得意な子や。そして守護神のソフィアはストライカー。大盾持ちでソフィアの防御を崩した選手はおらへんって言われとる」

 

「へぇ」

 

「そしてこの2人。何と公式戦一度もデス無し……つまり撃破されたことがないんよ!」

 

「……ふ~ん」

 

「あら?あまり興味あらへん感じ?」

 

「実際に戦ってみないと解らないからね。噂って結構適当な場合も多いから」

 

「まあ確かにアリスも公式戦撃破なしやもんなぁ」

 

「被弾すらしたことないわ」

 

「え?嘘やろ?」

 

「そんな下らない嘘付かないわよ」

 

 それに前世の記憶もあって被弾する=重症というイメージが抜けない。

 人間、銃弾を受けても簡単には死なないが、簡単に機能が低下する。

 腕を撃たれれば銃を上手く扱えなくなるし、脚を撃たれれば逃げられなくなる。

 そういった事態を避けるには、そもそも被弾しないことが大前提だ。

 

「いや、ホンマ味方で良かったわ。心強いで」

 

 そう言いながら立ち上がってコーヒー缶の残りを一気飲みする茜。

 

「んじゃ、ウチはもう少し色々見て来るわ」

 

「そう」

 

「ほな、またな~」

 

 こちらに手を振りながら茜は去っていった。

 

「……さてと」

 

 取り出した端末を操作して両親に電話をかける。

 

「ああ、パパ?ちょっとお願いがあるのだけど?LEGEND用の装備が買いたくて……うん、カードは持ってるけど先に―――」

 

 一部は協会に買わせるが全部となると協会に対して借りを作り過ぎる。

 ある程度は自前で揃えた方がこちらとしても都合が良い。

 なので両親に相談して残りは自前購入することにした。

 

 ちなみに後日、KAWASHIMA社から『霧島アリス様は当社の名誉会員ですのでお代は結構です』と購入した新装備のうち、KAWASHIMA社の代金は返金されてきた。

 

「……会員の話は、本気だったのね」

 

 

 

 




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