最強の女傭兵 近未来でスポーツ美少女となる   作:のこのこ大王

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■霧島 アリス:前世の記憶と経験を持つ主人公。最強の女傭兵だった。
■白石 舞:異常なまでの努力により天才と呼ばれる実力となったブレイカー。
■鈴木 桃香:前衛ストライカーの夢は破れたものの砲撃ストライカーとして開花した毒舌少女。
■黄 若晴:中国のニューヒーロー。観察力と直感で銃弾を回避する人間離れした少女。
■王 蘭玲:U-18中国リーダー。冷静な判断力が評価されているが日本を見下していたりと慢心気味。


第48話 U-18女子世界選手権 対中国:後編

■side:U-18女子日本代表 霧島 アリス

 

 

 

 

 

 序盤の奇襲から既に30分以上経った。

 ヘッドショット対策を徹底した相手に日本は苦戦を強いられている。

 対して相手は突撃してくるエースを投入し、少しずつこちらの点数を削っていた。

 

 日本:960

 中国:990

 

 相手の中央の1人が少し下がるのが遅れたせいでこちらの一斉攻撃に沈んだ。

 対して相手は定期的に北側・中央・南側のどこかにエースが突撃してきて味方を狩る。

 主に狙われているのは、出場回数の少ない控え選手だ。

 しかも銃弾を弾きながらの突撃にやられた者は、やたらと腰が引けてしまう。

 そのため交代させるしかないのだが、控え選手の少なさも含めて辛い状況になりつつある。

 

 海外遠征は、時差や環境の変化などで体調を崩しやすい。

 その対処を怠ったせいなのか、それとも数々のトラブルも含めた誰かの仕業か。

 どちらにしても、もう試合は残り10分を切っていた。

 

「次、鈴木さんと交代してください。申請を出しておきます」

 

 後ろに下がった味方サポーターに今回リーダーの飯尾明日香が声をかけていた。

 ここまで膠着している以上、彼女が一番強いだろうが彼女は今体調不良の真っ最中だ。

 さてどうなることやら。

 

「……しかしやたらと来るなぁ」

 

 さっきからずっと相手の突っ込んでくるのがこちら側をウロウロしていた。

 まるで『今から行くから準備しておけ』と言っているような感じである。

 

 正直、今の気分は『めんどくさい』だ。

 『今から逆転すればいいじゃない』という気持ちと『このまま負けても別に構わないよね』という気持ちの2つがせめぎ合っている。

 おかげでLEGENDをまったく愉しめていない。

 どうしたものかと思っていると、我慢出来なくなったのか相手が動き出す。

 

 スモークからのスタングレネードという時間差投擲で前の2人の動きを止めるとそのまま突っ込んで来て2人を倒し更に奥へ移動した。

 例の突っ込んでくる奴だ。

 慌てた飯尾明日香がスグにカバーに入ったため、勢いに乗って突っ込もうとした相手が1人彼女に撃破される。

 私は仕方なく高台を降りて回り込もうとしている奴の相手をすることにした。

 

 

*画像【工場区:中国戦-2】

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 

■side:U-18女子中国代表 黄 若晴

 

 

 

 

 

 私が曲がり角を曲がると既に射撃体勢の霧島アリスが待ち構えていた。

 

 相手の動き、銃口、状況などで相手が引き金を引くタイミングを見抜く。

 飛んできた弾をナイフで弾くとそのまま相手に迫る。

 後ろに下がるかと思えば、そのままこちらの振り下ろしたブレードを短く横に回避しながら冷静にリロードを行っていた。

 アリスが銃口をこちらに向けるよりも先にナイフを横に薙ぐ。

 するとアリスは後ろに下がりながらライフルを構えようとする。

 

「その瞬間を待っていた!」

 

 前に半歩踏み出しながら下から上へのブレードによる切り上げ。

 構えた相手のライフルが真っ二つになる。

 アリスは、さほど驚いた様子を見せることなくライフルを捨てるとリボルバーを持ち出してきた。

 あまりの構えの速さに1発先制を許してしまう。

 だがそれを真横にステップを踏むように回避しつつ遠心力を利用して回転しながらブレードを薙ぐ。

 流石に避けられまいと思った一撃だったが、アリスはそれを片手で抜いたナイフを斜めにして一瞬だけ受け止める。

 そしてスグに受け流しつつ自分はその場で横の壁を蹴りながら垂直ジャンプをしていた。

 

 相手の重量がナイフ一本からこちらのブレードに伝わり、あまりの重さに横薙ぎをしつつもバランスを崩す。

 ジャンプ回避したアリスはその場で1発、後ろに下がりつつ1発撃つがそれらを全てナイフで弾く。

 距離を取らせるのはマズイ気がしてそのまま再度相手に突っ込む。

 突っ込みながらのブレードの突きを相手が回避するが、それを見越してもう片手で持つナイフの方で切りかかる。

 しかしそれを相手もナイフで受け止めつつ、もう片手で持つリボルバーをこちらに向けた。

 

 相手が撃つ前にブレードを持つ手を振ってリボルバーを弾こうとするが、それを嫌って撃たずに銃口を上に持ち上げてブレードを回避する。

 その瞬間、アリスはナイフでこちらの顔めがけて突きを放っていた。

 咄嗟に体勢を低くして回避しつつもこちらもナイフで応戦する。

 それをリボルバーのグリップで弾いたアリスは、そのまま銃口をこちらに向けて1発撃つ。

 だがそれを予想していた私は、その一撃をナイフで弾きつつ振り上げていたブレードを振り下ろす。

 しかしアリスは、ブレードの側面にナイフをぶつけて簡単に弾いてしまう。

 

 そしてそのままリボルバーをこちらに向けて1発撃ちながら後ろに飛ぶように下がる。

 銃口をこちらに向ける動作の時点で既にナイフで弾く準備をしていたおかげで何とか弾く。

 だがその瞬間、後ろに下がったアリスがこちらにナイフを持っていた側の手で何かを投げてきた。

 恐らくナイフではない。

 ナイフ投げに関してはLEGENDのルール上ダメージにならないからだ。

 ならば何だ?

 

 一瞬嫌な気配を感じてその飛んできたものを反射的に避けようとする。

 しかし、それが真横を通過する瞬間。

 アリスが最後の1発を撃って、その自分で投げたものを破壊した。

 周囲に電撃が走る。

 

「しまっ―――」

 

 スタングレネード。

 それに気づいた時、既に装甲は動かなくなっていた。

 

 アリスは、足元に落としたナイフを拾ってからこちらに歩いてくると真横に立つ。

 そして―――

 

「*中国語『なかなか良い勝負で愉しめたわ。また会いましょう、黄若晴』」

 

 そう言うとこちらを一切見ずにナイフを逆手に持ち、そのまま腕を横に薙ぐ。

 ナイフは、綺麗に背面コアへと突き刺さった。

 

 

 ―――バックアタックキル!

 

 

 ◆バックアタックキル

 x チャイナ:ファン・ルォチン

 〇 ジャパン:アリス・キリシマ

 

 

 その瞬間、まだ試合は終わっていないにも関わらず大歓声が響き渡った。

 LEGENDの歴史の中で初めてと言ってもいいほどのハイレベルな接近戦。

 この試合は世界的な話題となり、2人の知名度は更に急上昇することになった。

 

 

 

 

 

■side:U-18女子日本代表 鈴木 桃香

 

 

 

 

 

 あー、面倒くさい。

 そして気持ちが悪い。

 昨日からずっと吐き気がする。

 病院で診て貰ったが『食あたりか何かだろう』という適当な診断。

 ホント、使えない。

 にも関わらず試合に出ろって?

 人使いの荒いチームだこと。

 

「で、何させる気よ?」

 

 VR装置から交代申請が通ったのを確認してスグ戦場に入る。

 

「相手の砲撃してるリーダー何とかならない?」

 

 リーダーの飯尾がそんなことを言い出した。

 

「ああ、アレ?まだ生きてるの?さっさと始末すればいいじゃない、あんな三流」

 

 マップを見ると中央に定期的に砲弾を撃ち込む下手くそが、ずっと大きな顔をしていた。

 

「発電所近くまで出るから援護して。それが終わったら私交代でいいわよね?」

 

「何とか出来たらいくらでも交代して構わないわよ」

 

「じゃあ前のお2人さん、よろしく」

 

「よっしゃー!安心して前出てきて構わないよ!」

「いい加減ウザいからさっさと処理してくれない?」

 

 元気の良い返事に思わずため息が出る。

 こっちは調子が悪いんだからあまり騒がないでよ。

 

 相手の砲弾が降ってくるが気にせず前に出る。

 こんなもの避ける価値もない。

 所定位置に就いた私は、そのまま砲撃体勢に入って心の中でカウントを数える。

 

「……今!」

 

 発射するとスグに後ろに下がり、そのまま帰る。

 相手が砲撃体勢に入る瞬間に合わせて撃ったのだ。

 あの三流ではどうしようもないだろう。

 

「え?まだ帰られても―――」

 

 

 ◆キル

 x チャイナ:ワン・ランリン【L】

 〇 ジャパン:モモカ・スズキ

 

 

「―――で、まだ何か?」

 

「い、いえ。助かったわ」

 

 それだけ聞くと早々に交代してベンチに戻り、そのまま空いたベンチに寝転ぶ。

 

「あー、ホントどうしてあんなのに苦戦するんだか……」

 

 日本:940

 中国:920

 

 気づけばリーダー撃破により点差は逆転していた。

 

 

 

 

 

■side:U-18女子日本代表 白石 舞

 

 

 

 

 

 最初は本当にどうなるかと思った。

 徹底した狙撃警戒と銃弾を弾く人間離れしたエースによる猛攻。

 ジワジワ開く点差。

 

 しかしやはり時間が迫ると色々と動きが活発になった。

 あの人間離れした相手とアリスの一騎撃ちはアリスに軍配が上がった。

 むしろ私はどうして彼女に接近戦を挑んだのかを知りたい。

 彼女はU-15だけでもナイフキル50を超える戦果を叩き出している。

 つまりは『接近戦も強い』のだ。

 

 そして相手が動揺している間に交代してきた鈴木によって相手リーダーを撃破した。

 相変わらずの毒舌な子だが、やはり砲撃の腕は一流だと思う。

 状況しか見ていないにも関わらず、たったの一発でピンポイント砲撃をしたのだから。

 彼女はその辺の砲撃ストライカーのような広範囲に低威力砲弾をばら撒くタイプではない。

 高威力の砲弾一発だけを落とすピンポイントタイプだ。

 元々照準が手動であることも含め、非常に扱いにくいタイプと言えるだろう。

 それを使いこなすのだから砲撃の天才の名は本物である。

 

 残り時間僅かになり点差も逆転。

 このまま一気にと思えば、中央を物凄い速さで走っている相手が居る。

 

 黄若晴だ。

 最後まで諦めない姿勢という奴だろう。

 狙撃では止められない以上―――

 

 そんなことを考えていた瞬間だった。

 ライフルの発砲音と共に黄若晴が足を払われるように動いて耐久値が減る。

 前に踏み出した足が自分の意思とは関係無い方向に強制的に動いた感じだろう。

 まさに回避しようがない一撃で体勢を大きく崩す。

 こんなことが出来るのは、彼女ぐらいしか居ないだろう。

 だが倒れている時間などないと言わんがばかりに根性で踏みとどまる。

 

「―――まるで譲られてるみたいで気に入らないけど」

 

 私はライフルの引き金を引いて体勢が崩れ動けない相手にトドメを刺す。

 

 

 ―――ヘッドショットキル!

 

 

 ◆ヘッドショットキル

 x チャイナ:ファン・ルォチン

 〇 ジャパン:マイ・シライシ

 

 

「結局、余裕を無くすとそうなってしまうのよね。……まあ私が言うのもなんでしょうけど」

 

 まさかのエースが2度も撃破されると思ってもみなかった中国は、そのスグ後に一斉攻撃を開始した。

 口上のように名乗りを上げながら突撃する様子は、無謀にしか見えなかった。

 だが彼女らにとってそれは彼女らにしか解らない何かだったのだろう。

 こうして蓋を開けてみれば日本対中国は、大きな点差を付けて日本の圧勝となった。

 

 

 




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