最強の女傭兵 近未来でスポーツ美少女となる   作:のこのこ大王

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*ロシア戦のサブタイトルを1・2・3から前編・後編・決着に変更しました。
 既に一度そういうサブタイトルが存在するので合わせる形としました。


第57話 U-18女子世界選手権 決勝 対ロシア:決着

 

 

 

■side:U-18女子ロシア代表 アナスタシア・エラストヴナ・シャンキナ

 

 

 

 

 

 ここまで張り詰めた緊張が、かつてあっただろうか。

 どれだけフェイントなどを仕掛けても通じず、大きな勝負もしてこない。

 堅実にジワジワとこちらを追い詰めるように耐久値を削ってくる。

 完全に相手にペースを握られているような感覚。

 

 ……面白い。

 

 自分の全てを賭して挑む真剣勝負。

 それが出来るだけの好敵手。

 まさに最高の状況だ。

 

 

 ―――ヘッドショットキル!

 

 

 ◆ヘッドショットキル

 × ロシア :ソフィア・アファナーシエヴナ・ドミトリエヴァ

 〇 ジャパン:マイ・シライシ

 

 

 アナウンスを聞き、ログを見て思わず笑みを浮かべる。

 ソーニャのことだ。

 恐らく今、暴れるほどに悔しがっていることだろう。

 しかし名前を見て考える。

 

「ソーニャを倒せるだけの実力あったかなぁ?」

 

 マイ・シライシ。

 それなりの腕ではあったが、かといって私達に通用するような選手ではなかったはず。

 ……まあ考えても無駄か。

 

 それよりも……だ。

 せっかくの愉しい時間。

 だがそれも、そろそろ終わりにしなければならない。

 ソーニャが倒された以上、カバーに入らなければ押し込まれてしまう。

 

「……はぁ」

 

 ため息が出るも仕方が無い。

 最後に派手に決めようじゃないか。

 

 私は、勢いよく飛び出すとアリスが居る場所に向かって走り出す。

 そして隠れている所にライフルを構えたまま飛び込む。

 だが、その場に彼女は居ない。

 

 何となくそう思っていた私は、銃を構えたままスグに真後ろへと振り返る。

 そして同時に横へと飛びながら狙いをつけて引き金を引く。

 アリスは、まるで私が振り返るのが解っていたかのように冷静にこちらの銃弾を回避する。

 少し意外だったのが、彼女がライフルを構えていなかった点だ。

 そのままナイフ片手に突っ込んできた。

 

「うっそでしょ!」

 

 思わずライフルを片手で持つ。

 その瞬間ナイフが迫ってきて後ろに下がりながら回避する。

 だが次の瞬間には、もう相手のナイフが目の前まで迫ってきていた。

 体勢を崩しながらそれも避けつつ腰のハンドガンを手に持つ。

 

 こちらが体勢を崩したのをチャンスと見たのか、それとも最初からそのつもりだったのか。

 既に3度目のナイフがこちらに向かって振られていた。

 それをハンドガンを盾にして回避する。

 ナイフがハンドガンに突き刺さる。

 

「はぁっ!」

 

 相手がナイフを抜く前にハンドガンごと横に投げ捨てるように力任せに投げ捨てた。

 これでこれ以上のナイフによる接近戦は無理なはずだ。

 更に私はライフルを持っていない方の手に装着しているナックルを起動させる。

 これは相手に強制ノックバックを起こす近接武器だ。

 アリスも同じような装備をしていたようで、それを起動しつつこちらに向かって飛び上がる。

 

 そしてお互いのナックルがぶつかる。

 激しい音が鳴り響く。

 

 一瞬の衝突後、お互いの装備によるノックバックで大きく吹き飛ばされた。

 私は、足を地面に擦って土煙を上げながら後ろに飛ばされる。

 アリスは、ジャンプしてからの振り下ろしだったため宙を浮いたまま縦回転しながら吹き飛ばされた。

 

 前かがみを維持し、倒れることだけはないように必死に衝撃に耐える。

 そして吹き飛ばしの効果が薄れだした瞬間、足が未だ地面を滑っているがその状態のままライフルを構える。

 相手は空中を吹き飛ばされただけでなく縦に回転していた。

 方向感覚すら狂い、まともに着地も出来ないだろう。

 私の方が圧倒的有利だ。

 しかしそれだけで私は手を緩めない。

 アリスは、強いのだ。

 だからこそ私は、ギリギリの状態でも追撃の手を緩めずにライフルを構えるのだ。

 

「―――もらっ」

 

 ライフルを構え相手の位置を確認し、あとはスコープを覗いて撃つだけだ。

 だがその瞬間、私は信じられないものを見た。

 

 アリスは、空中で確かに縦回転をしながら後ろに吹き飛ばされていた。

 だが彼女はその状態でライフルを構えていたのだ。

 そして丁度私が見た時。

 空中で頭が下で足が上を向いた……上下逆さまの状態でこちらに綺麗にライフルを構えスコープを覗いていたのだ。

 その姿に思わず動きが止まってしまう。

 

 この時『ああ、私は負けたんだな』と何故か納得していた。

 

 ライフルの発砲音。

 その次に私が見たのは、LEGENDを始めた頃に何度か見たことがある懐かしの『復活カウント』だった。

 

 

 ―――ヘッドショットキル!

 

 

 ◆ヘッドショットキル

 × ロシア :アナスタシア・エラストヴナ・シャンキナ

 〇 ジャパン:アリス・キリシマ

 

 

 

 

 

■side:U-18女子ロシア代表リーダー ニーナ・ボリーソヴナ・サフノフスカヤ

 

 

 

 

 

 私は、最初それが信じられなかった。

 

 

 ◆ヘッドショットキル

 × ロシア :ソフィア・アファナーシエヴナ・ドミトリエヴァ

 〇 ジャパン:マイ・シライシ

 

 

 このログを見た時、何かの間違いかと思った。

 今までどれだけ激しい攻撃にさらされても彼女は一度たりとも撃破されることはなかった。

 だからこそついた名前が『ロシアの守護神』。

 その彼女がやられたというのだ。

 

 あり得ない。

 このままでは中央が突破されかねない。

 北側を他メンバーに任せて中央維持に力を入れる。

 日本は、このチャンスに次々距離を詰めてきた。

 

 

*画像【研究所:ロシア戦3】

 

【挿絵表示】

 

 

 

「中央を抑えろ!これ以上侵攻を許すな!」

 

 彼女が復活して帰ってくれば可能性はある。

 だからこそ必死で叫びながら戦うことで相手を止めようとした。

 それにこの異常事態に気づいたナースチャが相手を倒して早々に合流してくれる可能性もある。

 

 まだこれからだ。

 そう思っていた時だった。

 

 

 ―――ヘッドショットキル!

 

 

 ◆ヘッドショットキル

 × ロシア :アナスタシア・エラストヴナ・シャンキナ

 〇 ジャパン:アリス・キリシマ

 

 アナウンスが鳴り響き、ログの更新される。

 その瞬間、観客からの歓声が物凄いことになっていた。

 

 一体何が起こったというのか。

 ロシアのダブルエースと世界的にも有名で、最強選手とも呼ばれた彼女らがやられた?

 しかも去年圧倒的大差で破った日本相手に?

 

 全体通信からも悲鳴にも似た声が上がる。

 押し込まれる状況、広がる点差に両エースの敗北。

 全てが私達の負けを物語っていた。

 

「……ま、まだ!まだだ!諦めるな戦士達よ!ここで諦めたら我らが祖国を誰が―――」

 

 士気を上げようと声を張り上げて鼓舞している最中だった。

 突如、司令塔側から何かが高速で迫ってくるのが見えた。

 

 それに対処しようとして私は気づく。

 既に発電所は抑えられ、司令塔周辺には誰も居ないフリー状態。

 では何故相手は司令塔への攻撃をしないのだろう?

 

 だがそんなことを考えたのが悪かった。

 高速で突っ込んできたのはストライカー。

 例の高機動近接ストライカーだ。

 それが大盾を前にして私にぶつかる。

 

「くっ!!」

 

 痛みなどほぼ無いはずなのに体の中の空気を全て吐き出さされたような感覚で吹き飛ばされ壁に激突する。

 周囲の仲間がその異常事態に気づくも、前からの圧力が強くて後ろに援護が出来ないようだ。

 

 何とか起き上がろうとすると向こうから声がかかる。

 

「*ロシア語『アナタね。さっきから祖国がどうのと言ってたのは』」

 

「*ロシア語『……それが何なのよ!』」

 

「*ロシア語『なら見せてみなさいよ、アナタの祖国への忠誠心を』」

 

 相手はそれだけ言うと高速で突っ込んでくる。

 それを止めようと攻撃するも銃弾は弾かれ、ミサイルを撃つも避けられてそのままタックルを決められた。

 しかも今度は後ろがスグ壁である。

 壁とタックルに挟まれ強い衝撃が全身に響き渡る。

 

「*ロシア語『ほら!さっさとアナタの愛国心とやらを見せてみなさい!そのためにわざわざ司令塔放置してきたのだから!』」

 

「*ロシア語『クソ日本人がッ!お前らに私達の何が解るッ!!』」

 

「*ロシア語『私はね、アナタのように覚悟も無く国への愛を語る奴が大嫌いなのよッ!!』」

 

 相手の大型警棒で足を殴られ地面に膝をつかされる。

 

「*ロシア語『自分のためなら堂々と自分のためだと言え!祖国や愛国心などという言葉で誤魔化すな!』」

 

 更に相手の打撃で武器を打ち払われ丸腰状態にさせられた。

 

「*ロシア語『本当に祖国に殉じた人々を私は知っている。だからこそアナタのような存在を許すことが出来ないッ!!覚えておきなさいッ!!!』」

 

 そして私は、まるで断頭台に繋がれた死刑囚のような体勢で相手が振り下ろす大型警棒によって頭部を破壊され光の粒子となった。

 

 

 ◆キル

 × ロシア :ニーナ・ボリーソヴナ・サフノフスカヤ【L】

 〇 ジャパン:アリス・キリシマ

 

 

 この瞬間、ロシアチームの監督によるサレンダー申請が受理され試合終了となった。

 これによりU-18女子世界選手権は、意外とあっさりと日本の優勝で幕を閉じることになる。

 

 後にロシア監督はこう語っている。

 『ダブルエースが落とされ、リーダーもやられた。しかも司令塔への攻撃を見逃されてだよ?これ以上無様な姿を晒す訳にはいかなかった』と。

 

 この監督の素早い対応によりロシアの代表選手達が責められることは一切無かったらしい。

 そしてもう1つ話題になったのは、試合終了後だ。

 

 アナスタシアがアリスの所にやってきて握手を求めたのだ。

 彼女もそういうことをしない選手であったため騒然となったのだ。

 ちなみに満足そうに握手をした後で『До свидания!(また会いましょう)』と言ったらしい。

 

 こうしてU-18女子世界選手権大会は、様々な出来事や名勝負を生み出した歴史に残る大会としても有名になった。

 

 

 

 

 




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