最強の女傭兵 近未来でスポーツ美少女となる   作:のこのこ大王

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第59話

 

 

 

 

 

■side:私立琵琶湖スポーツ女子学園1年 霧島 アリス

 

 

 

 

 

 お祭り騒ぎがようやく落ち着きはじめた頃合いで、やっと世界大会が終わった感じとなった。

 というのも、歴史的快挙だと騒がれ過ぎたからだ。

 

 まずは空港で待つファンの多さ。

 空港側が規制をかけてもまったくの無駄となるほどの数が来た。

 そこにマスコミまで殺到するのだ。

 現場は、まさにカオス空間だったと言える。

 そして何度やらせるのだというほど写真撮影や記者会見が用意されており、もう好きにしてくれという状態だ。

 日本LEGEND協会があまりの状況に手を回したようで、『任意参加』となったので多少マシにはなったが……。

 

 任意参加組も最初は、市長・知事・有力政治家・総理大臣とステップアップするかのように次々と表彰され続けた。

 それで終わればマシだったが、次から次へとテレビの出演依頼や雑誌のインタビュー。

 果てはモデル・解説・CMなど様々な仕事まで持ち込まれ始めた段階で彼女らもようやく逃げ出すようになる。

 しかしその段階まで来てしまった以上、逃げ出した所でもはや無駄なのだ。

 あの手この手で出演依頼を引き受けるハメになり、あまりの忙しさにダウンする選手まで現れ始めた。

 

 そしてスカウト合戦も過熱し始めた。

 高校卒業と同時にプロという選択が多い中、大学LEGEND界でも『ウチに来て欲しい』というアピール合戦になっていた。

 そもそも大学LEGENDは、どうしても盛り上がりに欠けている。

 何故なら優秀な選手ほど破格の条件で高校からプロに行ってしまうからだ。

 どうしてもスポーツ故に選手生命が短いLEGENDでは、いち早くプロになれるならという感じで大学よりもプロを目指す選手が圧倒的に多い。

 もちろん大学LEGENDも色々と対応しようとはしているのだが、どうしてもプロに押し負けている状況だった。

 だからこそ、このブーム中に大学LEGENDにも目を向けて欲しいという必死のアピールである。

 

 そして当然プロも黙っていない。

 破格の条件が飛び出しているようで、どこも引く気が無いといった感じだ。

 

 ……私?

 まだ1年だからそういうのとは縁がない。

 と思っていたのだが、今から地道に関係を築こうと努力される方々が居るようで。

 色んな所に手配して、そういうのが来ないようにして平和を勝ち取った。

 

 

 世間ではそんなやり取りを全力の他人事として勝手に進路を予想したりと盛り上がっている。

 そうした中、日本LEGEND協会から特大のサプライズが飛び込んできた。

 

『冬季全国中高生LEGEND大会の開催決定』

 

 従来、夏にしか行われなかった中学・高校の全国大会を冬にもやろうという話だ。

 これは前々から言われ続けてきたことで『もっとチャンスを』という声が上がっており、その内決まるだろうと言われてきたことだ。

 それがまさかこのタイミングでの開催決定である。

 

 明らかに今盛り上がっているLEGEND熱を利用しようという発想なのだろう。

 この決定が全国に広がるとスグにニュースで大々的に取り上げられ、全国各地の選手達が歓声を上げた。

 

 しかし世界戦の代表選手達からすると困る。

 今年の全てを世界戦に懸けて燃え尽きた彼女らに『もう1回大きい大会があるよ』と言った所で、なかなか色々と切り替えにくい。

 

 とりあえず何故か懐かれたアナスタシアが送ってきたメールでも読むか。

 

 

 

 

 

■side:私立琵琶湖スポーツ女子学園監督 前橋 和歌子

 

 

 

 

 

 日本は、世界大会で勝った勝利に酔いしれていた。

 そんな中、日本LEGEND協会は思い切ったことをし始めた。

 

『冬季全国中高生LEGEND大会の開催決定』

 

 多くの声を受けて……などと綺麗事を言ってはいるが、明らかに今回の優勝をチャンスとしたのだろう。

 事前情報もそこまで多く来ていないことを考えても夏と同程度の規模での戦いをするようだ。

 開催決定の知らせから1週間ほどしてからようやく開催に関しての様々な話が出てきた。

 正直もっと前からやれよと言いたい気分ではあるが、私からすればそれどころではない。

 

 今、目の前に広がる状況。

 半分がやる気を出し、半分がやる気が無い。

 つまり世界戦で戦った新城・大場・大谷・南・霧島のやる気が無い状態である。

 普段何かとやる気を出していた2年生の2人もそうだが、アリスも誰かからのメールを堂々と読んでいたりする。

 要するに完全にオフモードなのだ。

 

 ここから再びやる気を見せる宮本・三峰・安田・杉山・藤沢の5人と同じモチベーションにする。

 ……無茶なんじゃないかと一瞬でも思えてしまうほどの話だ。

 

 本当にもう腹が立つ。

 こういう気持ちの問題などもあるから、そう言う話はもっと最初にすべきなのだ。

 いきなり勢いに任せて何でもやればいいというものじゃない。

 

 そんな怒りと共に次の日に急遽行われることになった冬季大会に向けての監督説明会に参加した。

 

「―――ということもありですね!」

 

 意外にも急遽大会をという声に対して怒りの声が多かった。

 まあ当然だろう。

 もう既に秋なのだ。

 準備期間も無ければ、選手達に再びやる気を出せというのも無茶である。

 確かに冬季大会に関して希望の声は多かった。

 だが誰もが思っただろう。

 

 『こんな勢いでやられたくない』と。

 

 夏と同程度の規模で開催すると勢い良く宣言する関係者達。

 しかし既に開催予定の施設周辺では別の大型イベントが開催されており、宿泊施設などの問題もあった。

 更に言えばVRである以上、集まる必要などない。

 いっそ集まらない遠隔開催という声まで出始めるなど、完全にグダグダな状態になっていた。

 そうして『結局やることにはなったけど細かいことは全部頑張って何とかして』という丸投げ状態に突入。

 そんな状態でまともな準備など出来る訳もなく、結局日本LEGEND協会の会長が出てきて総指揮を執ることになった。

 

 そこからは、一気に話が進むことになる。

 開催会場の変更や宿泊施設など各種手配に開催日の決定など。

 更にどの学校でも練習不足状態であったため、逆に練習試合を協会側が統一することになった。

 具体的に言えば、『冬季大会の参加校から抽選にて組み合わせを決め、各校3試合ずつ練習試合を行う』という形だ。

 これならどの学校も平等だろうという話である。

 賛否色々あったものの、この方式が採用されることになり、各学校とも少しづつではあるが大会モードへとシフトしていった。

 

 そして我が琵琶湖女子では―――

 

「あ~、やる気でないわ~」

 

 そんな気の抜けた声と共に完全にやる気が無い世界戦出場組と、それを呆れた感じで見る居残り組の姿。

 そして我関せずという感じで何語か解らないメールを打ち続けるアリス。

 

「……ああ、ホントこれ私にどうこう出来るのかしら」

 

 

 




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