最強の女傭兵 近未来でスポーツ美少女となる   作:のこのこ大王

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第61話 エキシビションマッチ 琵琶湖女子VS東京大神

 

 

 

■side:東京私立大神高等学校2年 田川(たがわ) (あき)

 

 

 

 

 

 会場の熱気は嫌でも気持ちを高めてくれる。

 私が試合に最初から出ているということの証明だ。

 

 いつもベンチにすら入れず観客席から応援していただけの私は、もう終わり。

 これからは、この場所を私の場所とするのだ。

 

 

 ―――試合開始!

 

 

 開始の合図と共に全員がお決まりの位置まで走る。

 

 

*画像【AC版:開始】

 

【挿絵表示】

 

 

 

 私は真ん中で防衛。

 もし隙があれば斬り込む。

 それが作戦だ。

 

 開始直後に通信で相手の配置情報が入ってくる。

 相手も上下に2人配置してきた。

 つまり正面は1人だ。

 

 一応『双方とも世界選手権に出場した選手は基本的に出ない』と取り決めている以上、霧島アリスが正面なんてことはない。

 それでも正面を1人で担当するとなると、やはりそれなりの選手が出てくるはずだ。

 

 そう思って様子を見た時だった。

 

「……」

 

 目の前の光景が信じられなかった。

 正面の相手は突然、そっと目の前の障害物の横……足元にゆっくりと黒い地雷をセットした。

 まるで『気づかれませんように』といった感じである。

 

「―――馬鹿にしてるのっ!?」

 

 思わずそう叫んだ。

 あんな大きな、しかもピカピカ光って無駄に目立っている。

 そんなものに誰が引っかかるというのか。

 

 警棒を持っている側の腕に付けている腕部2連ロケットを撃って地雷を破壊する。

 思ったより大きな爆発だったが、それだけだ。

 爆発の煙が収まると、今度は相手が壁からチラチラとこちらを見て来る。

 銃を構えることなく単純に様子を見ている感じだ。

 

 武装からして相手はブレイカーだ。

 そうなると一撃のヘッドショットが怖いが、それは一部のエースだけが出来る行為である。

 普通のブレイカー相手なら恐れることはない。

 しかも相手は明らかに初心者的な動きだ。

 

「―――行ける!」

 

 私は大盾を構えてブースターを吹かすと一気に飛び出す。

 そしてそのまま相手の壁を回り込んで一撃入れるだけ。

 壁が近づくとブースターを調整し、曲がるために角度と速度を調整する。

 勢いが落ちるのを最小限に留め、一気に曲がる。

 

「―――え?」

 

 思わず間抜けな声が出た。

 壁の裏に入った瞬間、見えたのは2つ。

 

 1つは少し離れた位置でこちらに背中を向け、耳を塞いでしゃがみ込む相手。

 そしてもう1つは―――

 

 大きな爆発音と共に壁裏にセットされていた地雷が爆発する。

 その衝撃で大きく吹き飛ばされ、後ろの壁に激突した。

 運良く咄嗟に構えた盾のおかげで何とか生き残る。

 しかし盾は破壊され耐久値も3割ほどしかない。

 

 地雷は、ネタ武器の癖にやたらと威力がある謎な武器だ。

 

「……チッ」

 

 思わず舌打ちが出る。

 短気に行動してしまった結果がコレだ。

 これ以上は危ない。

 そう思って後ろに下がろうとした時だった。

 

「うそっ!?」

 

 いつの間にか後ろに回り込んでいた相手ブレイカーが既にこちらにライフルを向けていた。

 あまりにも近すぎる距離。

 こちらは背中を向けたまま。

 致命的な失態だ。

 

 

 ◆キル

 × 東京大神 :田川 秋

 〇 滋賀琵琶湖:安田 千佳

 

 

 キルログが動くと歓声が大きくなる。

 復活待ちのカウントダウンを見て思わず感情のままに操作版を叩く。

 

 中央から司令塔を攻撃されぬよう、上下のラインが僅かに下がって中央をカバーする。

 琵琶湖女子側は、そこからあまり動かずラインを維持することを選択したようだ。

 長すぎるカウントが終わり、再度出撃する。

 先ほどは相手の誘いに乗ってしまった。

 しかしもう相手の手札もやり方も理解した。

 もう同じ手にはかからない。

 

 中央に出ると相手はまた中央の壁からチラチラとこちらを見ていた。

 まず相手に向かって突撃する。

 もちろん先ほどのように中央の壁ギリギリにはいかない。

 余裕を持って外壁ギリギリを攻める。

 相手は突然の出来事に焦ったのか、ライフルを発砲するも高速移動中のストライカーに当たる訳がない。

 

 そのまま壁裏なども確認するが地雷など一切設置されていない。

 相手はリロードも間に合うまい。

 強引に切り返しながら相手に大盾を前に突っ込む。

 一瞬で距離を詰めると盾で相手のライフルを弾き飛ばす。

 そしてそのまま大型警棒を振り上げ、そして降ろ―――

 

「なっ!?」

 

 相手に向かって大型警棒を振り降ろす。

 その瞬間、見えてはいけないものが見えた。

 相手ブレイカーは、何をトチ狂ったのか地雷を両手で持って盾代わりに突き出してきた。

 勢い良く振り落とす腕を止めようにも、もはや止まらない。

 

 心の中で『馬鹿野郎!』と叫びながら私は相手の突き出した地雷に大型警棒を叩きつけるハメになった。

 

 

 ◆キル

 × 東京大神 :田川 秋

 〇 滋賀琵琶湖:安田 千佳

 

自滅 滋賀琵琶湖:安田 千佳

 

 

 

 そして再びの復活カウント。

 

「何なのよ、あいつはッ!?」

 

 私は、相手の意味不明な行動が理解出来ずそう叫ぶしかなかった。

 

 

 

 

 

 

■side:私立琵琶湖スポーツ女子学園 前橋 和歌子

 

 

 

 

 

「あ~、こうなったか~」

 

 私は思わずため息を吐く。

 中央の安田さんは意外に善戦した。

 相手の次世代エース級と思われる高機動重装甲ストライカーを翻弄していた。

 

 あのネタとしか思えない地雷をよくもあそこまで使えたものだと感心する。

 

「確か霧島さんから貰ったとか何とか言ってたような……?」

 

 その辺りは後日、確認するとしよう。

 問題は―――

 

 

 ―――ブルーチーム、司令塔への攻撃を開始しました!

 

 

 北側を防衛していた三峰・杉山コンビが相手ストライカー2人に負けてしまい、司令塔まで雪崩れ込まれてしまった。

 こうなると5人版ではどうしようもない。

 

 三峰はアタッカー用の重装甲を使用していたが、そのせいで機動力が下がり、押し引きに対応出来なくなって撃破された。

 杉山も一人で粘った方だが、新しく装備した肩ミサイルを重視し過ぎて従来より牽制攻撃の手数が減ってしまっているように感じる。

 対して相手のストライカーはガーディアンこそ装備しているものの、従来の大盾に大型マシンガンという兵装で無理の無い攻めを維持していた。

 やはりこの差が大きいと言えるだろう。

 

 対して南側の宮本と藤沢は、特に大きく装備変更をしていないおかげか守り通せていたようだ。

 しかしこちらも藤沢のミサイル対策なのか、徹底してミサイルを撃たせてからでないと仕掛けないという戦術だった。

 そのせいで宮本だけではKDが稼げず相手を押すことも出来なかった。

 

 

 ―――試合終了

 

 

 そのまま司令塔を潰され、試合が終わってしまった。

 結果的に初心者組の経験不足というか、まだまだな部分が露骨に出てしまう結果となり負けてしまったという感じである。

 ある意味、まだ初めて1年未満で強豪校の3年生とある程度撃ち合えたというだけでも進歩と言えば進歩なのだが。

 何より、負けた彼女達の中で初心者組がそこまで悔しがっていないのも問題だ。

 LEGENDだけではない。

 何事も諦めの気持ちが入ればその時点で終わりである。

 

 これからどう指導していくべきなのか。

 私は夜遅くまで何度も今日の試合のリプレイを見続けた。

 

 

 

 

 

 

 




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