最強の女傭兵 近未来でスポーツ美少女となる   作:のこのこ大王

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■霧島 アリス:本作主人公。身体に精神年齢が引っ張られてしまい今では完全に少女化しているが前世の記憶と経験を持つ伝説の女傭兵と呼ばれた女性。


第62話

 

 

 

 

 

■side:私立琵琶湖スポーツ女子学園1年 霧島 アリス

 

 

 

 

 

 あー、笑った。

 久々に大爆笑した気分だ。

 これだからLEGENDは辞められない。

 

 今回、日本LEGEND協会の一部が暴走して先走った結果の冬季全国大会。

 やはりというか名門校ほど辞退が多く、完全にイマイチな大会となってしまっていた。

 これに関して日本政府や国際LEGEND協会からも何かあるかもしれないらしい。

 まあ好きにしてくれとしか思わないが。

 

 それよりも今回のエキシビションマッチは、面白過ぎた。

 泣き付く千佳に地雷の基本的な使い方だけを教えておいた。

 それを忠実に再現した結果、相手の高機動重装甲ストライカーは見事に引っかかって半ば自滅気味に死んだ。

 ここまではいい。

 そして2度目は無いだろうからここで千佳がやられて終了かと思えば、まさかの地雷を盾にしての自爆である。

 どこの世界に地雷で攻撃を受け止めようとする奴がいるのか。

 予想通りと言うべきか爆発して双方撃破である。

 だがこれでもうあのストライカーは怖くて近づけなくなっただろう。

 千佳に関しても恐らく何か防ぐものを探した結果、腰にあった地雷に手が伸びてしまったみたいだが……。

 

 それにしても地雷だよ、地雷。

 そんなもので受け止めようとした姿も面白いが、それを殴ってしまった側も最高だった。

 あの地雷を突き出されて驚きながらも『ふざけるんじゃないわよ』とでも言いたげな感じ。

 そして、あの地雷を殴るまでに『地雷を殴るのを止められない絶望感』へと変化していく表情。

 何もかもが良く出来た喜劇にしか見えない。

 実は『映画やドラマ』のような『台本』があったと言われても納得出来てしまうぐらいだ。

 それぐらい良く出来た流れだった。

 

 もし私がストライカー側だったら、試合中でもその場で相手に声をかけただろう。

 地雷を盾にしているのは『咄嗟』なのか『自爆狙い』なのかどっちだ?と。

 もし『自爆』だと答えれば『よく一瞬でそれを狙えたな』と褒めていただろう。

 もし『咄嗟』だと答えればその場で大笑いしていただろう。

 いや、本当に面白い出来事だった。

 

 試合後、試合に負けたと多少ガッカリした感じの彼女に盛大な拍手をした。

 そして『よくやった。千佳はそのままでいい』と褒めておいた。

 周囲から何か言いたげな視線を向けられたが、千佳はひょっとすると褒められて伸びるタイプかもしれない。

 だから褒めるのはきっとたぶん間違いじゃないはずだと思っておこう。

 やがて『ピザ職人:安田千佳』と呼ばれるかもしれないじゃないか。

 だって私では今回のような誘いと、投げて相手の近くで撃ち抜いて爆発させるぐらいしか使い方が思いつかないのだ。

 そんな地雷をまさか盾に使うなど……彼女は天才なのではないだろうか?

 

 しかし今回、千佳以外のメンバーが少し残念過ぎた感じだ。

 

 藤沢先輩は、もう少しミサイルの運用や戦術面でもやれていた気がする。

 それが今回どうだ?

 相手の行動に苛立ち牽制攻撃を多めにした結果、ミサイルの欠点であるリロードの遅さを的確に突かれていた。

 そのせいで宮本が居なければとっくに南側から抜かれていただろう。

 ミサイラーの長所は、その圧倒的火力だ。

 例えガーディアンでもフルバーストを食らえば盾ごと消える。

 この火力をいかに叩き込むかが重要なのに、今回の先輩は牽制に使い過ぎた。

 しかも明らかに相手がそれが狙いだと解るような動きをしていたにも関わらずそれに乗っかってしまった。

 何か作戦があったならともかく、それも無い状態で相手の罠に飛び込んでしまったのが一番良くない。

 

 逆に宮本は、全国大会後からの変化がない。

 世界大会後に初めてまともな公式戦で戦う姿を見たが進歩が見られない。

 盾を構えて肩のガトリングを撃つのは構わないが、肩部ガトリングは反動が大きく使用しながら動くことが出来ない。

 その分、火力が手持ちの大型ガトリング並みにあるのが特徴なので、その部分をどう活かすかが大事だ。

 だが彼女は、その火力を牽制攻撃にしか使えていない。

 メインでダメージを与えているのが盾内蔵マシンガンでは火力不足過ぎる。

 良く言えば防御重視、悪く言えば臆病過ぎて火力不足。

 もうそろそろ何とかしなければこれ以上の成長は望めないだろう。

 

 三峰もアタッカー用の重装甲という新しいものに手を出したようだが、それを使いこなせずにやられた。

 確かに装甲を厚くすればそれだけ撃破されにくくなる。

 しかしその分だけ機動力を失う。

 LEGENDは基本的に足を止めての撃ち合いという印象を受けるが、細かい移動が非常に多い。

 また相手の攻撃は基本的に機動力で回避するため、完全に機動力が死ぬとそれはそれで大変なのだ。

 ストライカー装甲は、その特性もあってかまだパワーがある。

 なので重装甲でもそこそこ動けるのだ。

 しかしアタッカーの場合、そのサポートはあくまで中型装甲向けである。

 そこに重装甲を装備してはサポートの限界を超えてしまい、下手をするとストライカーより動けなくなってしまう。

 システム的な欠点なのか、あえてそれを残すことで差としているのかは不明だが、現在の状態でアタッカーの重装甲はそう言う理由もありオススメ出来ない。

 しかも彼女の場合は、基本的なアタッカーのセオリー通りの戦闘スタイルだ。

 基本的なアタッカーは細かく位置取りを変更しつつ戦うのが基本なので、そのスタイルとも合っていない。

 更に言えば、彼女はまだアタッカーに慣れていないというか使いこなせていない。

 アサルトライフルは牽制武器ではなく主力武器だ。

 グレネードは火力が高いものの、どこまでいってもサブ武器である。

 ショットガンなども同様だ。

 その辺りを意識しつつ武装選択や位置取りなどをしっかりと判断しきれていない。

 これは絶対的に経験が足りないのもあるが、それ以上に彼女がまだ自分のスタイルを確立出来ていないのも大きい。

 ウチのアタッカーのように何かに特化するのか、それともバランスを追求するのか。

 どちらにしろ彼女も、もうそろそろ何とかしなければ大きな壁に当たって長期間停滞してしまうだろう。

 

 杉山先輩は、完全にサポーターの火力面更新に振り回されている。

 肩部シングルミサイルを装備しているが、それに意識が行き過ぎている。

 それならまだ大型マシンガンと腕部ロケットで直接的な攻撃火力を増やすなり、京子のように大盾を持ってカバーする方がいい。

 まあただでさえサポート装備をよく持てるなという線の細さなので、あまり重量が持てない可能性が無い訳でもないが。

 

 とにかく、牽制攻撃主体の先輩の戦い方を考えれば、その手数を増やすかサポートに特化した方がマシだろう。

 流行を下手に追いかけて火力ばかりを見るべきではない。

 そして先輩も地味に自分のスタイルを微妙に確立出来ていない。

 基本的なサポーターとしての動きをしているが、どうも攻撃系の動きが悪く見える。

 サポートに関しても基本的な動きが出来ているだけで、それ以上でも以下でもない。

 少なくとも小型盾でも良いので装備して撃ち合いという名の牽制を増やすか、京子のように大盾で防御を固めつつ肩ミサイルなどで相手に嫌がらせをしつつ前に出るなどの工夫が欲しい所だ。

 

 そういう意味では、千佳が相手をしていたストライカーは粗削りだったが面白かった。

 動きそのものはまだまだだが、飛び込む勇気とブースターを最低限使いこなしていたバランス感覚は評価できる。

 しかしあのストライカーにも絶対的な経験不足を感じた。

 まるで対人戦を経験していないのでは?と思うほど千佳に指示した誘いに乗っていたことを考えてもまだまだだと言える。

 それに地雷を殴った時もそうだ。

 あれぐらいならブースターを再度加速させ、通り過ぎれば良かったのだ。

 そうすれば腕を止めれずとも強制的に動くことで空振りさせることが出来た。

 その後、もう一度ゆっくりと狙いを定めて殴れば良い。

 

 ……まあそんな未熟で半端な連中だからだったからこそ、あの名シーンが生まれた訳で。

 

「今日の試合映像は永久保存決定だわ」

 

 

 

 




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