最強の女傭兵 近未来でスポーツ美少女となる   作:のこのこ大王

7 / 174
第7話 NEWS・LEGEND:1

 

 

 

「さあ、今夜もお届けします!

 水曜日の夜は、もちろんこれ!

 【NEWS・LEGEND】のお時間がやってまいりました~!」

 

 元気の良い女性アナウンサーの声が街頭テレビから響く。

 小柄で小動物を思わせる姿と元気ハツラツという清楚さがウリの

 好感度No1女子アナウンサーの登場に、道行く人も思わず見上げてしまう。

 

 この番組は、平均視聴率15%という人気番組で

 世界的人気スポーツであるLEGENDを解りやすく説明するため

 一般大衆向けとして非常に好感が持たれている。

 

「皆さん、こんばんは。

 司会の大館(おおたち) 次郎(じろう)です」

 

 頭に白髪が目立ち始めているアナウンサー歴30年を超えるベテランが

 余裕を持って挨拶をする。

 

 すると同じくカメラに映っていたNo1女子アナウンサーも挨拶をする。

 

「司会補助の江口(えぐち) 梨々花(りりか)で~す。

 

 さっそくですが、本日のスペシャルゲストは、こちら!

 川上(かわかみ) 律子(りつこ)さんで~す」

 

 カメラが少し横に向くと、司会の隣に座る女性の姿が映る。

 肩ぐらいまである髪に、気の強そうな瞳が特徴的な美人で

 スポーツマンらしく、さわやかな笑顔で挨拶をする。

 

「こんばんは。

 よろしくお願いします」

 

 彼女が挨拶をすると、スッと画面が動いて女子アナが映る。

 その横にはCGで合成したLEGENDをプレイしていた頃の

 川上 律子の姿が映し出されていた。

 

「もはや知らない人は居ないとまで言われていますが

 一応、知らない方のためにも説明します。

 

 川上 律子さんは、昨年リーグ優勝もしたシルバーファルコンズのエースとして活躍し

 世界大会でも日本代表のリーダーとして、また数々の相手の攻撃を止めた

 【日本の守護神】として長らく活躍されてきました。

 3年前、アジア勢初となるベスト8に日本を導くなど

 素晴らしい戦績を残されましたが去年、惜しまれつつ引退された方です。

 そして今年、な、なんとU-18女子世界大会の監督に就任されることが決定しました!

 おめでとうございます!」

 

「おめでとうございます」

 

「はい、ありがとうございます」

 

 司会と女子アナの2人から祝福の言葉を受け、挨拶を返す川上。

 

「川上さん。

 引退してスグの監督就任。

 何が切っ掛けでした?」

 

 ベテラン司会者が、解りやすく言葉を区切って質問する。

 

「はい。

 そもそもお話自体は、引退宣言後スグに頂いていたんですよ。

 最初は、監督経験なんて無いのでお断りしたのですが

 協会からどうしてもとお願いされて、引き受けることにしました」

 

「なるほど、スグにお話があった訳ですね。

 LEGENDは、まだまだ30年のスポーツです。

 特に今、若手が激戦区と呼ばれており

 企業の技術革新なども相まって近年、特に進化してきています。

 その中でのU-18女子日本代表監督。

 率直に、どう思われますか?」

 

「最近は、特に技術的なこともそうですが

 世界的な人気が更に盛り上がっていることにより

 非常に競技人口が増加しました。

 それにより選手層が物凄く厚くなっていると思います。

 そんな中で、非常に重要な立場を任せて頂けたことに

 驚きと共に感謝しております」

 

「なるほど。

 ぜひ川上さんには、頑張って頂きたいですね。

 

 では、このコーナーに行きましょうか」

 

 ベテラン司会者に話題を振られると

 スタジオの横に置いてある情報が映っている

 モニターの傍に移動していた女子アナウンサーが笑顔で声をあげる。

 

「取れたて! LEGEND情報局!」

 

 番組内でもCGで大きなタイトルが表示され音楽が流れる。

 

「本日は、U-18女子日本代表監督である川上 律子さんに来て頂いたということで

 国内で注目されているU-18女子日本代表に選ばれそうな選手を

 番組独自でピックアップしました。

 

 そんな代表候補とも言える選手達の試合映像と共に

 川上さんには、その選手の評価を伺いたいと思います!」

 

 女子アナの声と共にCGでモニターから飛び出すような演出で

 各選手達の顔が出てくる。

 

「では、さっそく行ってみましょう。

 1人目は、この選手!」

 

 すると画面は、過去の試合映像が流れだす。

 それは、昨年のU-15女子世界大会の一回戦目の映像。

 

 中央の発電所で戦うST。

 大型ガトリングと両肩のガトリングによる圧倒的弾幕で

 迎え撃とうとした相手ATが逃げる間もなく一瞬で撃破される。

 

「昨年のU-15女子日本代表選手だった一条 恋選手です!」

 

 女子アナの声と共にCGで編集された

 恋の顔と戦績の一覧が出てくる。

 

「ガトリングを大量に装備して常に最前線で戦う彼女は

 海外では『日本のガトリングガール』と呼ばれ

 世界大会でも全ての試合に出場し、日本優勝に大きく貢献しています。

 

 川上さん、彼女はどうでしょうか?」

 

「彼女は、非常に攻撃的な戦いをしつつも

 一方では非常に冷静な判断力で中央の撃ち合いが出来る選手ですね。

 世界大会の戦績も10戦 19キル 0デスとなっていますが

 中央は、一番撃ち合いが激しく一番警戒される場所なため

 一番撃破が難しいと言われるポジションです。

 特に中央の選手は、各国で最優先マーク対象にもなりますので

 その中でこの戦績というのは、十分な戦果と言えるでしょう。

 一度も撃破されていないという点も高評価ですね」

 

「なるほど~。

 非常に高評価ですね!

 

 では、どんどん行きましょう。

 次は、この選手!」

 

 また画面には、U-15女子世界大会の映像が映る。

 弾幕の切れ間を狙って滑り込みながら的確に前に出て相手との距離を詰めつつ

 射撃で相手を追い詰め撃破を取っていくATの姿。

 

「次もU-15女子世界大会で活躍した大野(おおの) 晶(あきら)選手です!

 

 彼女は、攻撃の要として高火力編成な世界大会メンバーの中でも

 ストライカーに負けないアタッカーとして活躍されていました。

 特にご覧のように前に出て相手にプレッシャーを与える戦術で

 日本の攻める切っ掛けを何度も作った選手です。

 彼女は、どう見られますか?」

 

「彼女も非常に攻撃的な選手ですね。

 特に弾幕の中を突っ込める度胸は、プロでも通用するでしょう。

 LEGENDは、基本的に装備が重いので

 気軽に動き回れるのは、ブレイカーぐらいなのですが

 その特性を理解して、距離を詰めることで

 相手が動けないようにしている訳ですね。

 

 至近距離の撃ち合いになるとストライカーよりもアタッカーの方が有利ですし

 相手がスグ傍まで迫っているというプレッシャーは、相手の冷静な判断力を奪います。

 そうして相手の連携を崩す役割を担ったとも言えるでしょう。

 突っ込む特性上、どうしてもデスが増えてしまいがちですが

 それを恐れず前に出てそれ以上のキル数を取っている点も大きいですね」

 

「なるほど!

 前に出てキルを取ると言えば海外からも『KAMIKAZE』と呼ばれている

 同じくU-15女子日本代表の黒澤選手と長野選手が居ますが

 この2人に関しては、どうでしょうか?」

 

「あの2人は、少し感情的に突っ込み過ぎていますね。

 やられたら必ずやり返す!という意思が見えます。

 それ自体は、別に問題ありませんし

 そういうのは、相手側へのプレッシャーにもなりますので。

 

 しかし後半特にそうでしたが、それを逆手に取られて

 誘き寄せられて撃破を取られる展開が多かったのが問題です。

 大野選手は、そうした所を冷静に判断して我慢出来るという点が

 2人の選手とは違う点とも言えるでしょうか」

 

「確かに、黒澤選手と長野選手の鬼気迫る表情は

 何度もニュースで取り上げられましたものね!

 

 ではでは、続いて~この選手!」

 

 次は、昨年のU-18女子世界大会の3回戦が映し出される。

 会場にヘッドショットコールが響き、相手側のSTが倒れて消える。

 

「美少女天才スナイパーと呼ばれる若き日本のエース!

 

 白石(しらいし) 舞(まい)選手です!」

 

「彼女は、数少ないブレイカーの中でも特に狙撃に優れています。

 世界大会でも5試合で41キル 1デスと非常に好成績でした。

 U-18が負けてしまったのもリーダーである彼女が撃破されてしまい

 通信制限を受け混乱した所を一気に押し込まれての敗戦でしたからね。

 そこは、改善点としてもそれ以外は問題無いと思います。

 

 どのマップでも安定した狙撃と定期的なヘッドショットが取れる

 数少ない非常に戦力になるブレイカーでしょう」

 

「なるほど。

 ありがとうございます。

 彼女は今年18歳なので

 今年も招集すると考えてよろしいでしょうか?」

 

「そうですね。

 間違いなく選考会には、呼ばれると思います」

 

「それは、ぜひとも期待したいところですね。

 では、次の選手にいきましょう」

 

 軽快なトークで国内の有力選手が次々と紹介されていく。

 単純ながら的確な選手評価で、LEGENDを知らない人にも

 伝わりやすく、知っている人でも納得出来る選手評価であったためか

 視聴率も平均視聴率を大きく越えていた。

 

 そして数多くの選手の紹介が終わり、そろそろコーナーの終了かという所で

 女子アナウンサーが満を持してといった感じで画面に向き直る。

 

「さて、次が最後となります。

 もはや彼女を知らない人は居ないでしょう!

 そう、この選手です!」

 

 見事なポーズまで決めた女子アナの振りにテレビ画面も演出付きで切り替わる。

 そして映し出されたのは、少し前まで世界中で放送され

 未だにネットの映像サイトでは、脅威的な勢いで再生数が伸び続けている動画。

 U-15女子世界大会の決勝戦の映像だ。

 

 ラスト1分の逆転劇が、そのまま流され続ける。

 そして逆転優勝が決まったシーンが流れた所でCGによる演出から

 選手の顔と戦績が表示される。

 

「大会MVP選手にしてU-15女子日本代表のエース!

 未だ数々の記録を更新し続けるまさに生ける伝説!

 霧島 アリス選手です!

 

 突如、LEGEND界に現れたかと思えば国内記録を一瞬で塗り替え

 全国中学生大会で圧倒的な戦績で優勝し、そのままU-15女子日本代表選手となりました。

 そして世界を相手にとんでもない記録を打ち立て、日本の悲願だった

 世界大会優勝を成し遂げた、まさにエース オブ エース!」

 

 興奮気味に語る女子アナのテンションに苦笑しつつも

 川上が、テレビ目線で解説を始める。

 

「彼女は、もはや語ることがないほど語り尽くされていると言っても良いほど

 非常に優秀な選手ですね。

 いまいちと言われ続けたブレイカーという職業の認識を大きく改めさせたのは

 間違いなく白石選手と霧島選手でしょう。

 

 特に霧島選手は、従来の偵察と狙撃をメインにしていた

 ブレイカーの概念を完全に打ち砕きました。

 可能ではあるが、誰もやらなかった高機動力を活かした接近戦や

 敵陣に切り込んでの司令塔攻撃など、ブレイカーの可能性を

 切り開いた天才と言えます」

 

「本当にそうですね!

 大会でも、252キルという圧倒的な大会新記録で

 対戦した各国の監督からも称賛されるほどでした」

 

「1試合平均25キルは、信じられないほどの記録です。

 これを超える記録は、恐らく出ることはないだろうと言われるほど

 圧倒的な数字ですからね。

 彼女に関しては、今すぐプロに転向してもやっていけるでしょう」

 

「早くもスカウト合戦が起きているとの噂もあるそうですね?」

 

「少なくとも全チーム、必ず声をかけるでしょう。

 条件面でも破格の条件が出されるはずです。

 それだけの戦績を既に出していますからね。

 それに複数の海外チームも興味を示しているみたいなので

 いきなり海外へという可能性もあり得ます。

 

 間違いなく彼女がプロになる際のドラフト会議では

 史上最高の盛り上がりとなるでしょうね」

 

「まさにLEGEND界が注目する選手という訳ですね!

 そんな彼女の見どころをあえて言うならどこでしょう?」

 

「そうですね。

 狙撃によるヘッドショットも確かに魅力ではあるのですが

 あえて1つというのであれば、敵陣への切り込みでしょうか」

 

「敵陣への切り込みですか?」

 

「そうです。

 先ほども言いましたがブレイカーというのは

 主に狙撃をメインにしています。

 

 それは機動力が高い反面、防御力が無く

 またメイン武器もライフルであるからです。

 

 しかし彼女の場合は、あまり使用されていなかった

 接近武器や、支援武器を使用した独自の戦い方で

 相手陣地に切り込み、一気に敵を倒してしまうことがあります。

 これが簡単そうに見えて非常に難しいのです。

 

 単独で切り込めばそれだけ危険もありますし

 何より防御力の低さ故に攻撃をほとんど受けることが出来ない訳ですから。

 にも関わらず、相手の不意を突いて瞬間的に撃破を取るということを

 安定して出来るというのは、彼女ぐらいしか出来ない芸当と言えるでしょう」

 

「確かに、接近戦というのは滅多に見ませんよね」

 

「そうなんです。

 そういう意味でも彼女は、凄いと言えます」

 

「ということは、川上さん。

 霧島 アリス選手は

 今年のU-18女子日本代表選手候補最有力と考えてもよろしいですか?」

 

「間違いなく最有力です。

 ぜひ代表選手の招集に応じて頂きたいですね」

 

「ということで

 川上さんには、ぜひ頑張って頂きたいと思います!

 

 では以上、取れたて! LEGEND情報局!でした~」

 

 女子アナが手を振りながらコーナーの終了を告げると

 画面には、今まで参加していなかったベテラン司会者が映る。

 

「では一旦CMの後、次のコーナーへ移りたいと思います」

 

 そう言いながらベテラン司会者が一礼すると画面が切り替わり

 テレビCMが流れ出す。

 

 街頭テレビをずっと見ていた人々も、時計を見て慌てだし

 忙しなく動き始めた。

 

 

 

 

 




誤字・脱字などあれば修正機能からお知らせ下さい。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。