最強の女傭兵 近未来でスポーツ美少女となる   作:のこのこ大王

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■本来は04/01のエイプリルフールネタとして出そうかなと思ってたのですが、設定資料に時間が取られてしまい、今回の投稿になりました。
 本編に一切関係ない日常回のようなものです。


THE Battle

 

 

 

 

 

■side:とある退役軍人

 

 

 

 

 

 

 THE Battle

 

 今日オープンテストが始まった新しいVRゲームだ。

 VR世界で一兵士となって陣取り合戦を行うPVP。

 

 これのウリは『昔ながらの本格戦争を』というもので、旧式兵器ばかりが登場する。

 また兵士も今のようなバトルスーツやアーマー的なものを装備せず生身で戦う。

 はるか昔にあった戦争を再現しているという感じだ。

 

 もちろんVRゲームとして成立するようにゲームらしいところも多い。

 例えば高所から落下してもダメージを負うだけで早々死なない。

 流石に高層ビルの屋上などからになると落下ダメージが多すぎて死んでしまうが、パラシュートなどを使えば問題ない。

 

 博物館にあるようなヘリや戦闘機が普通に飛んでいる姿は何とも言えず感慨深いものがある。

 ただヘリや戦闘機は実際よりもかなり遅い速度でしか飛べない。

 これは対空ミサイルなどが当たりやすくすることで制空権を安易に取らせないようにするためらしい。

 

 まあ散々説明したが、私は今日このゲームをやり続けていた。

 軍を辞めて10年。

 気づけばすっかり老け込んで身体も思うように動かなくなっていた。

 そんな時にVRゲームという暇潰しに手を出した。

 VRという仮想空間では身体が自由に動く。

 それだけでも感動ものだが、昔のように戦場を駆けまわるという感覚が何とも言えなかった。

 まあ私が知る戦争など小競り合いでしかなく、こんな旧式ばかりが出てくるようなものではなかったが。

 

 

 何試合かプレイした段階で、私は誘われるがままに小隊に参加する。

 この小隊というのは、参加した全員が同じ陣営に参加することになり、ゲーム中に戦死してもリスポーンする際この小隊員が居る場所からリスポーン出来るため非常に便利になるのだ。

 何より小隊員が近くに居ると銃の精度が上がるなどゲームらしい不思議な補正が入る。

 まあそんな訳で小隊員と共に出撃するのだが、この小隊。

 小隊長の少女が何故かヘリに乗りたがる。

 なので我々小隊は全員ヘリで戦うことになる。

 

 試合開始と共に真っ先にヘリを確保した小隊長の少女、ID名『ALICE』は小隊員が乗り込んだのを確認すると発進する。

 私の担当は、ヘリに固定されているガトリングガンだ。

 これで対地・対空を担当する。

 

「最初、デルタを強襲しましょう」

 

 そう言いだしたのは、隣で地図を見ている小隊員の『ワンダフル』。

 彼の担当は修理。

 手に持っている修理工具をヘリの何処かに当てているだけで勝手に耐久値が回復するという謎工具である。

 今回のマップは市街地だ。

 高層ビルが建ち並ぶ、まさに街中といった感じである。

 

「おっと、戦車はっけ~ん!」

 

 反対側で扉を開けて外を覗いているのは『ステラ』。

 彼女は、ロケットランチャーを車両に撃ち込む係。

 

 ステラが撃ち込んだロケランに続きALICEがヘリのミサイルで追撃を行い戦車を破壊する。

 プロの軍人でもここまでのことは早々出来ない。

 車両の近くに居た歩兵に対して私はガトリングを撃って蹴散らす。

 その隙に地面スレスレの綺麗な飛行で拠点の占領範囲に入って占領を完了する。

 すると一気に拠点移動で味方が現れた。

 

 空に上がると即ロックオン警告が鳴り響く。

 奥に見える対空車両からの攻撃だろうか。

 それをALICEが素早くヘリをビルの影に移動させて回避するとスグに急上昇する。

 何事かと思えば追撃とばかりに相手のヘリがやってきていた。

 だが既にこちらは相手の上を取っている。

 綺麗に相手に機体を傾けるALICEの腕に思わずベテランパイロットのような安心感を覚えながらガトリングを撃つ。

 相手のヘリは不利を悟ってスグに逃げようとするが、それをALICEが許さない。

 完璧な位置取りで一方的に攻撃を行い、相手のヘリは墜落していく。

 

 その直後にロックオン警告。

 これは音で理解する。

 戦闘機だ。

 

 戦闘機から発射されたミサイルを急降下で躱しつつビル群に突っ込んだALICE。

 そのまま陸橋の下を潜り抜け、車用のトンネルを抜けて急上昇する。

 完璧な曲芸飛行にヘリ内で歓声が上がる。

 

 ミサイルを振り切ったALICEは、スグに旋回して元の位置に戻りながらビルの影に隠れるような場所を維持する。

 すると先ほどの戦闘機がまたやってきた。

 本来なら速度が違い過ぎて戦闘など不可能なのだが、ここはVRゲームの世界。

 圧倒的に遅い戦闘機が見えるとその背後を綺麗にヘリで取ったALICE。

 次の瞬間、ロケットランチャーを構えていたステラがそのまま戦闘機の進路を先読みして撃ち込む。

 まるで吸い込まれるように綺麗にロケットランチャーが当たり、煙を出して体勢を崩す戦闘機。

 そこに追撃とばかりにガトリングを撃ち込む。

 

 逃げようとする戦闘機。

 それを許さないALICE。

 そしてガトリングを大量に受けた戦闘機は海へと墜落していく。

 

「ハッハー!!若いもんには負けんぞぅー!!」

 

 周囲からも『ナイス!』と声をかけられて、私は上機嫌だ。

 本来なら出来ないこんな芸当が出来るというのもあるが、こうして協力して何かをするというのが本当に久しぶりだった。

 

 その直後、大きな音と共にヘリの開けっ放しにしてあったスライドドアが吹き飛ぶ。

 ALICEがヘリを咄嗟に傾けたおかげでその程度で済んだとも言える。

 スグにワンダフルが修理を開始した。

 

「いや~、流石ゲーム!狂ってるよねぇ~!」

 

 ステラが嬉しそうに言う先に見えるのは、車両止めを利用して器用に車体の前方だけを上に傾け射角を無理やり上げた戦車だ。

 まさか主砲でヘリを狙うなと……。

 軍人だった私からすれば笑い話でもあり得ないもの。

 

 スグにロケットランチャーを構えたステラに倣い、私もガトリングを撃ってダメージを与える。

 綺麗に決まるもまだ戦車は生きていた。

 周囲に修理工具を当てている兵士が3人ほど見える。

 そりゃ簡単に潰れないわな。

 

 追撃しようとするとロックオン警告が鳴る。

 歩兵からも対空車両からもミサイルなどが一斉に飛んでくる。

 ALICEはその場で静止していたヘリをミサイルが当たるタイミングギリギリで急発進させながら、ビルをかすめるような飛行でミサイルをビルにぶつけだす。

 それでも誘導性が高いミサイルが迫るも、今度は急下降からの陸橋潜りを決めて、そこから狭い路地に突っ込むことで完璧に回避しきった。

 更に急上昇したかと思えばビルの間を綺麗に抜けて相手対空車両の真後ろを取った。

 

「まさか逃げながらこれを狙ったのか!」

「ALICE、最高!!」

「いや、ホントスゲーな!」

 

 私を含め小隊員達が、この出来事に騒ぐ。

 スグにステラと私で対空車両を撃破すると、そのまま相手の後ろから敵を蹂躙していく。

 ゲーム内の全体チャットでも

 『なんだ、あのヘリw』

 『あり得ないだろwww』

 『これだから変態どもはwww』

 『ヘリ強すぎるだろwww』

 などなど様々な言葉が並ぶ。

 

「私も負けてられないな!」

 

 ガトリングで敵兵を薙ぎ払いながら、年甲斐もなくはしゃいでいる自分に気づく。

 だが悪い気はしない。

 

 その後もあえてこちらに挑んできたであろうヘリや戦闘機を撃破していくと、地上の戦況もどんどん有利に傾く。

 

 『ヘリで戦闘機を落とすなwww』

 『開始からずっとあのヘリ落ちてないぞwww』

 『てか気軽に陸橋を潜るなwww』

 『それを言ったらトンネルも気軽に通り過ぎだろw』

 

 などというチャットを見つつも、試合を優勢のまま進めた私達は圧倒的スコアで勝利した。

 ゲームが終わる際に、小隊員同士で『正規サービスが始まったらこのメンツでまた組もう』と約束をする。

 

 ゲームを終了し、現実に戻ると先ほどとは違い自由の利かない身体に思わずため息が出る。

 だがそれも一時的なものだ。

 またあの戦場に帰れば、私は自由になれる。

 若かった頃に見た、あの世界に帰ることが出来るのだ。

 

「いや、人生最後にまた良いものに巡り合えた」

 

 

 

 

 

 一方その頃。

 ALICEというアカウントでプレイしていた少女は、ゲームを切るとベッドに飛び込む。

 

「あ~、やっぱりヘリ操縦の腕が落ちてるわ~」

 

 ショックだわ~などと呟きながらゴロゴロとしていた。

 

 

 

 

 




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