最強の女傭兵 近未来でスポーツ美少女となる 作:のこのこ大王
■side:東京私立大神高等学校1年 鳥安 明美
噂の強豪校。
東京大神LEGEND部は、流石の一言だった。
聞いていた通りの設備数に部員数。
何よりそれらを管理する専用スタッフなど。
監督は、白石舞を育てたとされる監督。
「―――という訳で、皆さんを歓迎します」
前で話をしているのは、かつてU-15で共に戦った谷町香織先輩。
今では2年生ながらリーダーらしい。
視線を動かせば、同じくU-15で一緒だった大野晶先輩や鈴木桃香先輩なども居る。
あの規格外を除いたU-15の主力選手が揃っているとか、どういうチームだよと言いたい気分だ。
他にも世界戦には出ていないものの一部で有名だった選手などがウロウロしている。
一通りの挨拶が終わると、さっそく谷町先輩に捕まる。
「てっきり私は、アリスの所に行くと思ってたよ」
「こう言うのもアレですが、私もそのつもりだったんですけど……」
連日大量に押し寄せる地元の権力者達。
週3ぐらいのペースでやってくる地元議員。
週1ぐらいでやってくる大物有名議員とLEGEND協会関係者。
彼らに何を言っても延々と大神推しを語り続け、その相手をし続ける両親。
そしてついに折れ始めた両親を見ているのが辛くなり大神行きを決めた。
「……何でそんなことにってニュースのアレか。思ってたのより数倍酷いね」
先輩が明らかに嫌そうな顔でそう呟く。
「まったくだ。そういうことは止めろと言っておいたはずなんだがねぇ」
急に声をかけられ振り返ると監督が立っていた。
「ウチの信用問題にかかわるから絶対に止めろと前に一度キツく言って止めさせたのにあの連中は……」
ため息を吐きながら監督が頭を下げる。
「すまなかったね。アンタの人生を曲げてしまって。」
「い、いえいえ!大神も良い所だと思います!」
「ははっ、そう言って貰えると少しは気が楽になるよ。……ウチに来たことを後悔させないようこちらも最大限努力しよう。だから腐らずLEGENDを愉しんで欲しい」
「……ありがとうございます」
そう言って私は頭を下げた。
私も最初は、ふざけるなと思わなくもなかった。
自分の行きたい所に行かせろよと。
あの人の元でブレイカーとしての技術を学ぶ。
それが狙いだった。
だが大神の監督を見て『対決から学ぶのも悪くないかも』と少しだけ前向きになれた。
「あ、そうそう」
去り際に谷町先輩が振り返る。
「ウチの目標は全国制覇だから、よろしくね」
笑顔でそう話す先輩。
「もちろんです!」
それに私も笑顔で返した。
■side:京都私立青峰女子学園1年 渋谷 鈴
学校の雰囲気は、流石伝統校と呼ばれるだけの風格を持っていた。
校舎が古いから?
それともこの校門前の桜並木が?
などと考えながら始業式を迎える。
それが終わるとさっそくの勧誘合戦が目に入る。
中学とは違いお祭りのようなその騒ぎに少しだけ愉しい気分になりつつ移動する。
『青峰LEGEND部』と書かれた部屋の扉を開ける。
「あれ?もしかして鈴?」
中に入ってスグの所にある長椅子に座っていた相手が声をかけてきた。
「……一条先輩?」
「お~、何かでウチに誰か来るって聞いてたけどまさかの鈴とはね~」
「私だってビックリですよ」
愉しそうに話す一条先輩に、ため息を吐きながら返事をする私。
私は元々、琵琶湖女子へ行く予定をしていた。
しかし琵琶湖女子が提示する条件よりも更に上を出すと言い切ったスカウト。
そして連日学校にまで押し寄せる元プロなど有名人達の攻勢に行先を変更したという訳だ。
その後ニュースなどでこの件に関しての大炎上。
思わず『約束はちゃんと守って貰えるのか』と確認してしまった。
これについてはこの前の記者会見でアリス先輩のお爺さんである霧島大臣が『選手に罪はない』と発言。
日本LEGEND協会の会長と連名で『今回選手達が提示された条件は全てそのまま』という書類が送られてきた。
なので選手達の間で特に騒ぎにはなっていない。
むしろ騒ぎになっているのは、この騒動を主導したとされるLEGEND系大物議員やLEGEND協会の一部関係者達だ。
明らかな選手達への干渉。
建前を口にするばかりで一切謝罪をしないその態度など、面白いぐらいに炎上している。
「まあ、ウチに来たことを後悔させないわ……ね、リーダー?」
「……そこで私に振るの?」
呆れた声でそう言いながら奥から人が出てくる。
「初めまして。私は3年の『
おっとりとした感じでLEGENDとは無縁そうな見た目の大人びた女性が現れる。
「えっと、入部しにきた渋谷鈴と言います。よろしくお願いします」
「U-15で活躍した選手が入ってくれるのは大歓迎よ。……えっと入部書類どこだったかしら」
そう言いながら高橋先輩は、奥の方へと入っていった。
「ウチの目標は全国大会優勝。当然、琵琶湖女子が最大の壁と認識してる。その辺はどう思う?」
「……潰し甲斐のある壁って感じですね」
「アハハッ!そうこなくっちゃ!」
「……何だか愉しそうね」
2人して笑っていると入部の書類を持ってきた先輩が戻ってきた。
こうして私の高校生活は始まった。
■side:大阪府立日吉女学園1年 岡部 奈緒子
テレビで何度か見たことがある学校に入る。
今日からここが私の母校だ。
本当なら私は琵琶湖女子に行く予定だった。
新城先輩と一緒に戦うためだ。
しかしテレビで報道されているような色々なことがあり結局私は、この学校を選んだ。
後悔などしていない。
それに一緒に戦うチャンスならU-18女子日本代表がある。
私がそれだけの実力を身に付ければいいだけ。
入学式の後、帰る新入生を待ち受ける部活勧誘合戦。
凄い熱気だなと思いながら歩いていると―――
「岡部奈緒子やんなっ!?」
いきなり見知らぬ相手に肩を掴まれ声をかけられる。
一体何事かと思えば次々人が集まってくる。
「ホンマや!本物や!」
「やった!これでウチの戦力あがるで!」
「ウチらLEGEND部やねん!」
「誰か部室に連絡入れてこい!」
「LEGEND部入るんやろ!?」
「テレビで見たことあるで!」
周囲から同時に声をかけられ何を言っているのか解らない。
はるか昔、何人もの意見を同時に聞くことが出来た人が居たらしいが、その人は凄かったのだろうなと変な所で感心してしまう。
そしてこちらの都合などまるで聞かない暴徒とも呼べる集団に連れていかれ、気づけばLEGEND部の部室でお茶を出されていた。
「いや、ウチの部員が悪かったっす」
お茶を出した人が頭を下げてくる。
「い、いえ!ちょっとビックリしただけで」
「いつもはそこまでじゃないんすけど、どうも一度テンション上がると言うこと聞かなくなるんすよね」
そう言いながらため息を吐く彼女を見て『あれ?どこかで見覚えが?』などと考えてしまう。
「いや~、LEGEND部副リーダーとして謝罪するっす。……部長も謝罪するっすよ」
「え~、ど~しても私なんですか~?」
「もう決まったことに今更反論するなっす」
「ぶ~」
部室内に居たもう1人の少女がこちらにやってくる。
「私は『
「私は『宮島 文』っす。3年で副リーダーやってるっす」
リーダーの武宮先輩は大きなリボンが特徴的な可愛い系。
対して副リーダーの宮島先輩は、ものすごくボサボサのハネまくりな髪が特徴的だ。
「2年生リーダーなんですね」
「私は嫌だって言ったんだけど」
「前リーダーからの指名っすから諦めるっす。それに引継ぎの時に徹底して指導を受けた以上誰も代わりは出来ないっすよ」
「いや、文先輩なら出来るでしょ。堀川先輩と仲良かったし」
「リーダーより副リーダーみたいな支える位置の方がやりやすいっす。これは前リーダーとの相談の結果なのでいい加減諦めろっすよ」
「マジかぁ~」
へなへなと机に突っ伏すリーダーと名乗った武宮先輩。
「岡部奈緒子。期待してるっすよ。大阪日吉は次の全国で琵琶湖女子にリベンジするつもりっすから」
「もちろんです!頑張ります!」
最初はどうなるかとも思ったが、意外とすんなり話が進み悪くない環境でLEGENDが出来そうだと安堵する。
「まずは、レギュラーになること。……頑張るぞ!」
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*今後大量に新キャラが登場予定ですので頑張って覚えて下さい(はーと)