最強の女傭兵 近未来でスポーツ美少女となる   作:のこのこ大王

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■シャーロット:琵琶湖女子2年。留学生。部活としてのLEGENDに馴染めずAC版をやり続けたAC版の猛者。
■卯月 結菜:琵琶湖女子1年。完全初心者。とりあえずでアタッカーをしている。少しは慣れてきたものの、動きはまだまだ初心者から抜け出せていない。


第71話 琵琶湖女子・紅白戦:前編

■side:ブルーチーム 黒澤 桂子

 

 

 

 

 

 転校してから既に1ヶ月以上経過した。

 桜は散って緑が勢いを増す。

 私達は、休みだろうが長期休暇だろうが積極的に紅白戦を行った。

 前に居た佐賀大よりも圧倒的に練習量が多い。

 これが琵琶湖女子の強さなのか。

 ……そう思っていた時もあった。

 

 何気なくその辺りを聞いた時だ。

 

「あ~、多分今まで紅白戦とか出来なかったからその辺の反動じゃない?」

 

 と言われた時は、思わずフリーズした。

 『紅白戦1つ満足に出来ない状態で優勝した』という事実に驚けばいいのか。

 『そんな理由で紅白戦をひたすらやってるのか』という事実に呆れればいいのか。

 

 ただ監督から全員に言われた言葉は、間違いなく全員のやる気に関係あるだろう。

 

 『ようやくレギュラー争いが起こる』

 

 これには今まで無条件でレギュラーだった初心者組と呼ばれている3人を含め、何名かが明らかに意識しているようだ。

 私だってその1人。

 レギュラー枠を獲得するのがスタートだ。

 まずはそこに立たねば話にならない。

 

 

 そんな訳で今日も9人で紅白戦だ。

 マップは研究所。

 

 

*画像【研究所:初期】

 

【挿絵表示】

 

 

 

 事前準備中、監督が重大なことを言い出した。

 

「そろそろ他校との練習試合を予定しています。ですので、まずは今日の試合を参考にメンバーを決めますので頑張って下さい」

 

 これには流石に部室内がピリピリとし始める。

 そんな程よい緊張感の中で紅白戦が始まった。

 

 

 試合開始のアナウンスと共に全員一斉に走り出す。

 研究所は、いきなりぶつかるマップだ。

 そして横長であるため複数の防衛線を抱えなければならず、そのどこか1つでも抜かれると非常に不利となる。

 私は誠子と一緒に発電所側を担当する。

 

 ここは設備を縦に挟む形になるため非常に距離が近くなる場所だ。

 それ故に事故も多く、一気に流れが変わる場所の1つでもある。

 位置に就くと早速といった感じで大場先輩が仕掛けてきた。

 U-18で晶と同じく、切り込み隊長などと呼ばれている人だ。

 先輩とは同じように突撃する仲間として何度も戦術について話し込んだ仲である。

 しかし今、それは関係ない。

 

 相手が誘うような動きをすれば引くつもりだったが、意外と積極的に仕掛けてくるのでしっかりと応戦する。

 ここであまり引き過ぎると押し込まれる危険性があるからだ。

 

 

*画像【研究所:紅白戦】

 

【挿絵表示】

 

 

 

 私はここから左側に移動しつつ援護に入る位置に居る千恵美との協力を選ぶ。

 そうして撃ち合いながら相手を誘い込んでいる時だった。

 

「ヘーイ!イキマスヨー!」

 

 底抜けに明るい声がしたと思ったら誠子の奴は右奥まで出ていたようで、そこにあのサムライ馬鹿が居たようだ。

 向こうではロクに部活としてのLEGENDをやらずAC版に入り浸っていたそうな。

 海外ではゲームセンターというものが基本的に無いため、人が集まりそうな所にポンと設置されているらしい。

 何故、部活の方に熱心ではなかったのか。

 それは彼女のスタイルに関係する。

 

「ちょ!マズッ!」

 

 誠子の焦り声で作戦を中止し、援護に回る判断をする。

 だがそれは既に遅かった。

 

 

 ◆キル

 x ブルーチーム:長野 誠子

 〇 レッドチーム:シャーロット

 

 

 ログが更新される。

 そして援護に回るために奥側へと移動中にそれを確認し、失敗したと思った瞬間。

 

「ヤー!ブシドー!」

 

 愉しそうな声と共に施設の影からブースター全開でシャーロットが飛び出してくる。

 

「―――ッ!?」

 

 あまりの速さに驚くも、咄嗟にアサルトライフルを撃ちながら後退する。

 だが攻撃を受けても関係無いとばかりに相手が迫ってきて大型ブレードを振り上げる。

 

 上段からの袈裟斬りを斜め後ろに下がって避ける。

 そのまま通り抜けようとする相手に振り返りながらアサルトライフルを撃つ。

 速過ぎてまともに狙った所で当たらないだろうが、ブースターはそこまで柔軟に動けない。

 進行方向を予測して撃つと結構当たる。

 しかしガーディアンという高性能装甲のせいでイマイチダメージが通らない。

 

 舌打ちしつつも、旋回してこちらに再度突撃してきた相手の横薙ぎを地面に倒れ込むようにして回避する。

 

「ワーオ!」

 

 そんな声が聞こえてくるが無視して即立ち上がる。

 立ち止まっているならアウトだが、追撃が出来ないであろう突進攻撃ならこういう回避も可能だ。

 スグに振り返ってまたアサルトライフルを撃ち込む。

 数発、頭部ヒットしたようで、相手の耐久値が3割ほどになっていた。

 これで流石に引くだろうと思った私が馬鹿だった。

 

「サムライ、ニゲナイヨー!」

 

 本来なら引いて耐久値を回復し、再度機会を窺うのが普通だ。

 なのに目の前の馬鹿は、それをせずそのまま再度突撃をしてきた。

 

「これだからAC馬鹿はッ!!」

 

 AC勢は、何故か謎のこだわりを持っている。

 そしてチームプレイなのにスタンドプレイしかしない。

 だからこそLEGENDの常識では測れない動きを当たり前のようにしてくる。

 

 急いでアサルトライフルの弾を交換するも、微妙に間に合わないと判断。

 少し腰を落として動ける体勢を取り、相手の動きをしっかりと見る。

 

 馬鹿は突っ込んでくるとブースターの力で無理やり軽く一回転するように飛び上がりながら刀を上段に構える。

 そして丁度回転を合わせ落下しながら刀を振り下ろしてきた。

 こちらはアサルトライフルを両手で持って盾にする。

 しかしそれではライフルごと叩き切られるだろう。

 なので刀が当たった瞬間、横に押し出しつつ足で銃を蹴って飛ばした。

 刀を銃で巻き込んで武器ごと飛ばしてやりたかったが、銃に食い込んだ刀が浅かったようで体勢を崩すだけとなった。

 だが、これはチャンスだ。

 相手が立て直す前に腰のマスターキーを手にする。

 

 相手は少し体勢が崩れたものの、強引にブースターで立て直しながら刀を横に構える。

 横薙ぎが来ると解るが、こちらの方が少し早い。

 マスターキーを片手で前に突き出し、引き金を―――

 

「ソレハ『ミキッタ』ヨッ!!」

 

 引き金を引くよりも先に、相手はブースターでそのままこちらに突撃をしてきた。

 マスターキーは手放さなかったものの、強引なタックルにより体勢を大きく崩される。

 相手はそのチャンスを逃さず、横に構えたままだった大型ブレードを勢い良く薙ぎ払う。

 苦し紛れにマスターキーを盾にしようとしたが、ブレードはマスターキーごと綺麗に振り抜かれた。

 

 

 ◆キル

 x ブルーチーム:黒澤 桂子

 〇 レッドチーム:シャーロット

 

 

 目の前に現れた復活カウントを見てため息を吐く。

 

「未だに慣れないなぁ……」

 

 今まで通りの知識や経験が全て当てはまらない高機動ストライカー。

 そして積極的な接近戦。

 

「これに慣れないと先に進めないよねぇ」

 

 各種情報を確認しながらカウント終了まで、頭の中でアレをどう対処すべきかを悩むことにした。

 

 

 

 

 

■side:ブルーチーム 安田 千佳

 

 

 

 

 

 最近、紅白戦ばかりだ。

 でもそれは歓迎すべきだって思う。

 だってようやくいっぱい練習出来るのだから。

 

 そして今日もいつも通りの紅白戦かと思えば、メンバー決めに関係あるって和歌っちが言い出した。

 なのでいつも以上に気合を入れる。

 ウチのチームは凄い人ばかりだ。

 だから外される候補に居るのは自分だと解っている。

 1年前の今頃の私なら、何とも思わなかっただろう。

 いや、間違いなくベンチで良いと思っていたはずだ。

 

 ―――でも。

 今は違う。

 LEGENDの愉しさを知った。

 だからこそ試合に出たい。

 みんなと一緒に戦いたい。

 

 そう思って試合に挑んだ。

 

「……う~ん」

 

 しかし私の気合とは真逆の状況にどうしたものかと悩む。

 私は司令塔側の防衛を任された。

 それは構わない。

 問題は今の状況。

 

 相手側は、花蓮先輩とゆいゆいだ。

 そして私の前にはあかりんが居る。

 ……ぶっちゃけ動かない。

 

 ゆいゆいは初心者だから仕方がないと思う。

 あかりんは、序盤積極的に前に出た。

 それに花蓮先輩がミサイルを撃ってくる。

 

 あかりんはミサイルでこれ以上前に出れない。

 私の下手な射撃では相手を倒せない。

 花蓮先輩は前に一切出てこない。

 ゆいゆいも出てこない。

 相手が来ないから地雷も使えない。

 

「これ、完全に詰みなんですけど~」

 

 良くも悪くも何も起きない。

 かといって無理したらやられてしまうだろう。

 

 何をしても反応が悪く、かといってどうこう出来るだけ凄い選手じゃないのは、自分が一番良く解っている。

 だからこそ何も出来ない。

 

 他メンバーが激しく撃ち合いをしてアピールしている最中に私はただ睨み合っているだけ。

 このままじゃダメだと思うけど解決策が解らない。

 いつもならアリスっちに聞く所だけど、今回アリスっちは相手側。

 

「ど~しよ~」

 

 悩んでも何一つ解決せず、ただ時間だけが過ぎていった。

 

 

 

 

 




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