最強の女傭兵 近未来でスポーツ美少女となる   作:のこのこ大王

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■宮本 恵理:2年生ストライカー。経験不足故に未だ実力不足感が否めない。
■北条 蒼:1年生サポーター。姉の方。妹大好き。妹のことになると性格が攻撃的になる。
■北条 紅:1年生アタッカー。妹の方。姉大好き。姉のことになると性格が(ry
■卯月 結菜:1年生アタッカー。ド素人。憧れから入部し現在基礎訓練中。将来的に兵科転向の可能性もあり。
■神宮寺 詩:1年生ストライカー。お嬢様。両肩背中一体型大型滑腔砲を使う一撃系。最近の高機動ブームが嫌い。


第72話 琵琶湖女子・紅白戦:後編

 

 

 

 

 

■side:レッドチーム 宮本 恵理

 

 

 

 

 

 今日もまた紅白戦だ。

 ただ今日は、いつもと違う。

 

 レギュラー争いという言葉が重く圧し掛かる。

 そのせいで自分でも緊張しているのが解る。

 しかも正面に居るのは―――

 

「ほらほら!そんな消極的な動きじゃ、相手にペース取られるだけだよ!」

 

 最近特にブースターの動きに磨きがかかった梓先輩が、ガトリングを撃ちながら高速移動で挑発行為を繰り返す。

 マシンガン付きの大盾でガードしつつ両肩ガトリングで反撃を行うが、まったく効果がない。

 

 相手はブースターで動き回りながらの攻撃。

 対して私は、両肩武器の欠点とも言える『その場から動けない』状態での攻撃。

 多少は旋回して対応出来るとは言え、その程度だ。

 とてもではないが先輩の動きについていけていない。

 かといって内蔵マシンガンでは、ほとんどダメージにならないため意味がない。

 

「これ以上行かせない!」

 

 新人の紅ちゃんがグレネードを投げるも、簡単に回避しつつ反撃とばかりにガトリングを撃っている。

 それをさせまいとして攻撃しているのだが、先ほど言ったように牽制攻撃にもなっていない。

 ガトリングを撃って紅ちゃんが怯んだ瞬間、どこからともなく彼女の正面から丸い形の小さいものが飛んできて地面にバウンドした。

 それはバウンドした瞬間に方向を僅かに変化させ、内側に曲がると2回目のバウンドでまるで意思を持つかのように逆側に動きつつ綺麗に彼女の元へと吸い込まれるように飛び込んだ。

 そして爆発と共にログが更新され―――

 

 

 ―――ヘッドショットキル!

 

 

 ◆キル

 x レッドチーム:北条 紅

 〇 ブルーチーム:大谷 晴香

 

 

 ◆ヘッドショットキル

 x ブルーチーム:新城 梓

 〇 レッドチーム:霧島 アリス

 

 

「えっ……」

 

 私は一瞬何が起こったのか解らなかった。

 

「よくも紅をッ!」

 

 蒼ちゃんが飛び出して晴香さんに攻撃するも、相手は既に隠れていて攻撃そのものに意味が無い。

 それでも彼女は前に出ようとするが、京子さんがカバーするように攻撃してくるため突っ込めない。

 

 中途半端に飛び出す形となった彼女を逃がすはずもなく、肩3連ミサイルを構える京子さん。

 だが―――

 

 

 ―――ヘッドショットキル!

 

 

 ◆ヘッドショットキル

 x ブルーチーム:南 京子

 〇 レッドチーム:霧島 アリス

 

 

 大盾を構えて、肩武器を使うために動けなくなる一瞬をカバーしながらの攻撃だったが、逆にそれが仇となる。

 止まった瞬間、綺麗にヘッドショットを決められた彼女はそのまま倒れて消えていく。

 

 間髪入れず、飛び出したままだった蒼ちゃんが再度突撃していく。

 まさかそんなことになるとは思っていなかったのか、晴香さんは焦りながら迎撃する。

 しかし被弾も気にせず盾を構えて突撃してくるサポーターというものにライフルを投げ捨てショットガンに持ち替える。

 そして目の前まで突っ込んできた盾にポンプ式ショットガンを乱射する。

 至近距離でまともに受けたため、3発目あたりで大きく凹んだ大盾。

 だが4発目を撃とうとした彼女は、大盾を投げつけられて思わず怯む。

 

 まさか投げつけてくるとは思っていなかったのだろう。

 蒼ちゃんは、そのままマシンガンをほぼゼロ距離で撃つ。

 対して晴香さんも怯んだものの、スグにショットガンを撃ち返す。

 

 

 ◆キル

 x レッドチーム:北条 蒼

 〇 ブルーチーム:大谷 晴香

 

 

 ◆キル

 x ブルーチーム:大谷 晴香

 〇 レッドチーム:北条 蒼

 

 

 私が一瞬当惑してからの出来事が早すぎる。

 そして戦場でボケっとしているという最悪の状態だった私は、それが何を意味するのかを知らされる。

 突然の衝撃。

 気づけば復活カウントが表示されていた。

 

 

 ◆キル

 x レッドチーム:宮本 恵理

 〇 ブルーチーム:神宮寺 詩

 

 

「何やってるんだろ、私……」

 

 思わずため息を吐く。

 今まで散々、梓先輩に『とにかく動け!』と言われてきたのに。

 

 

 ―――ヘッドショットキル!

 

 

 ◆ヘッドショットキル

 x ブルーチーム:神宮寺 詩

 〇 レッドチーム:霧島 アリス

 

 

 戦場では特殊キルアナウンスが鳴り響くも、私はそれどころではなかった。

 

 

 

 

 

■side:レッドチーム 藤沢 花蓮

 

 

 

 

 

 試合開始直後から司令塔側を防衛することになった。

 それは構わない。

 リーダーである以上、なるべく撃破リスクから遠ざかるべきだろうから。

 確か相手リーダーは、じゃんけんで笠井さんに決まったとか。

 まあそれはどうでもいい。

 

 問題は、今の状況。

 

「どうしたものかしら……」

 

 まったく動かないのだ。

 最初は、灯里さんが攻めてきたのでミサイルで牽制をした。

 千佳さんの狙撃に少し恐怖があったものの、今の所は大丈夫。

 彼女はどういう訳か、普段は全然狙撃が命中しないのだ。

 なら警戒しなくていいのか?と言われるとそれは違う。

 何故かここぞというタイミングで必ずヘッドショットを取って来るという不思議なブレイカーなのだ。

 特に最近は地雷という一般からは『ネタ武器』と呼ばれるものを使用している。

 だがそれは『警戒が不要な武器』ということではない。

 

 一撃でストライカーを倒す可能性を秘めた武器であり、防御側で使用されると厄介な武器だ。

 そういったこともあり、私から前に出て攻めるということがしにくい。

 後ろに居る結菜さんは、アタッカーであり本来なら私よりも前に出ていなければいけません。

 しかしまだまだ彼女は初心者。

 流石に前に出たり突っ込めとは言えませんわ。

 

 だからこそ先輩として、ここは道を切り開きたい所なのですが……。

 

 思い出すのは、去年の高校生大会からの出来事。

 そしてその結果。

 いつも肝心なところで撃破されてしまい、迷惑をかけてしまっていた高校生大会。

 そして冬季のエキシビションマッチでは、火力を出さなければならない自分がまったくの役立たずだった。

 

 最近の紅白戦でも戦績が明らかに伸び悩んでいる。

 その原因は既に解っても居る。

 大盾とブースターだ。

 

 この2つのおかげでミサイルの直撃が取りにくくなった。

 しかも今までならその圧倒的火力や見た目の迫力などで相手を萎縮させることが出来たが、最近はそれも効果が無くなってきた。

 どう考えてもミサイルだけでは限界を感じてしまう。

 しかし『ミサイラー』として今までやってきたという矜持。

 何より『もう少し頑張れば何とかなるのではないか』という甘い考えが、私の足を鈍らせる。

 

「……結菜さん。相手は前に出てくる気が無いみたいなのでこの辺りで撃ち合いをしてみなさい。何かあれば援護しますから」

 

「は、はい!」

 

 未だ悩み続けて試合に集中出来ていない自分がウロウロするよりも、相手も動く気が無いというのなら新人である彼女に経験をさせるべきだ。

 そう判断して彼女に少しだけ前に出るように指示を出す。

 

「大丈夫。どうせ練習試合なのですから。思い切ってやってごらんなさい」

 

「わかりました!」

 

 緊張した声でそう彼女は返事をすると、様子を見ながら少しづつ攻撃を仕掛けて相手の反応を窺い出す。

 

「……どうせ練習試合だから、ね」

 

 新人の彼女には気軽に言う癖に、自分には言えないのか……と思わずため息を吐く。

 それは何より自分自身に向けて言うべき台詞だろう。

 

 前の学校で『ミサイラー』という自分の在り方を否定されてから今日まで、ずっと頑張ってきた。

 でもこのまま意地を通すことが本当に正しいのか?

 それともこれはただ最近上手く行かないからと焦っているからなのだろうか?

 

 そんな時、中央で散々暴れていたアリスさんが全体通信のまま呟くような声で言った。

 

「どいつもこいつも隙だらけ。レギュラー争いだと言われ焦り過ぎ。どうしても落ち着かないなら誰かに相談でもすればいい」

 

 そう言われて『確かに』と苦笑する。

 どうも私自身、焦って答えを出そうとし過ぎていることに気づく。

 もう少しゆっくり悩んでも良いはずだ。

 そして誰かに相談するというのも、言われて見てようやくその考えに至る。

 

「本当に……らしくないわね」

 

 意識を試合に戻すと、灯里さんと結菜さんが何とも微笑ましい撃ち合いをしている。

 その後ろでは何とか地雷をどうにかしようと、縦に転がしている千佳さんの姿。

 それを見て思わず笑ってしまった。

 

「本当に、悩んでいるのが馬鹿みたい」

 

 

 

 

 




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