最強の女傭兵 近未来でスポーツ美少女となる   作:のこのこ大王

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第78話

 

 

 

 

■side:とあるプロLEGEND選手

 

 

 

 

 

「右翼!もっと前に出て牽制!左翼は一旦下がって!」

 

 リーダーからの指示で仲間が動き出す。

 しかし相手側からの攻撃によって思うように動けないみたい。

 相手からすれば牽制攻撃なのだろうが、流石にこの弾幕量をどうこうするのは不可能だわ。

 

 ……私は誰だって?

 

 名乗るほどの選手じゃないわ。

 何とかプロ選手としてやっていけてるだけの、ただの『その他大勢』よ。

 

 そんな自虐的なことを考えつつ相手の様子を見るために弾避けの壁から相手側を覗く。

 

「―――ッ!!」

 

 全身に鳥肌が立ったのが解る。

 背筋に冷たいものが走った。

 

「荷電粒子砲来ますッ!!!」

 

 通信で何とかそう叫びながら全力で射程外に向けて走る。

 弾幕がどうとか言っている場合じゃない。

 どちらにしろ、ここで動けなければ消し飛ばされるだけなのだから。

 

 周囲が光に包まれる。

 しばらくしてようやく周囲を確認出来るようになった。

 どうやら私は、まだ生き残っているみたいね。

 だってまだ、戦場に居るのだから。

 

 何故か倒れていたので起き上がると、見たくもない光景が真っ先に目に入る。

 荷電粒子砲によって真っ直ぐ一直線に障害物などを貫いた跡があった。

 本来なら破壊不可能なはずの弾避けの壁を消し飛ばす唯一の超火力。

 

 通信では、リーダーによる損害確認が行われていた。

 それによると荷電粒子砲で3名が脱落したらしい。

 それで済んだと喜ぶべきなのか、それともそれだけの損害を出してしまったと嘆くべきなのか。

 

 正面に居る相手。

 スパイダー型多脚戦車『タランチュラ』

 例の暴走事件で登場したスパイダーの発展型であり、現在のG.G.Gの最新式である。

 

 荷電粒子砲を撃ち終わり排熱を行っているが、過去に撃ち抜かれた教訓なのか排熱機構も変化している。

 おかげでその瞬間を狙って狙撃しても意味が無い。

 現にダメ元といった感じで仲間の1人が4連ミサイルを排熱装置に撃ち込んだけど、ダメージが入っているような感じは一切無かった。

 

 その姿も一回り大きくなっていて、正面にある牙のような30mmチェーンガンも2門から4門に増量されている。

 装備されていたミサイルも12連ミサイルになっていたりと火力面の強化もされていた。

 

 何より厄介なのが―――

 

「まだ動くなッ!!」

 

 リーダーが通信で叫ぶが既に遅い。

 荷電粒子砲の恐怖のせいか、スグにでも安全圏まで逃げ出したいという心理からだろうか。

 生き残ったうちの1人が早々に走って後退した。

 だがそれを許すほどコイツは甘くない。

 

 一瞬で動きを察知すると12連ミサイルの雨が降ってきて足止めされる。

 そこに4門のチェーンガンによる一斉掃射が行われ、回避も出来ず一瞬で撃破されてしまった。

 

 そう、前よりも明らかに反応速度と対応力が上がっている。

 こうなってくると逆に弱点を探す方が困難だと思う。

 

「こうなったら一斉攻撃だッ!!根性見せろッ!!」

 

 ついにリーダーが脳死しちゃった。

 そんな感想だった。

 

 何もかも捨てて全員で総攻撃を開始してしまう。

 もうこうなってしまうと参加する以外に道は無いのよね。

 

 元々半包囲気味の布陣だったこともあり、そのまま一斉攻撃を仕掛ける形になる。

 だが、相手はそれを嫌ったのか予想外の動きを見せた。

 いつもはその足を利用してガチャガチャと動くのだが、その足全てにローラーのようなものが出てきたのだ。

 そしてローラーによって信じられないぐらいの速度でローラーダッシュを行い半包囲状態から逃げられてしまう。

 

 しかもそれだけじゃなかった。

 逃げ出した先は、半包囲の左翼側。

 つまり左翼に突撃してきたことになる。

 当然、左翼側は逃げ出すしかなかった。

 そのままでは轢き殺されてしまう。

 

 そうして飛び出してきた相手を待ってましたとばかりに構えていたチェーンガンで撃破していく。

 完全に狙ってきた動きだった。

 

 それに対抗しようと無理に突っ込んだリーダーもミサイルにやられて終わり。

 通信障害で仲間が次々やられていく。

 もう逆転の目などもない。

 それでも精一杯やれることをやろうと私は最後まで抵抗する。

 

 ふと、振り返ってきた『タランチュラ』が、前足?をこちらに向けたと思ったら先からアンカーが飛び出してきた。

 高速で撃ち出されたアンカーを避けきれずに直撃されてしまった私は、大きく後ろに飛ばされて壁に激突する。

 

「そんな装備までついているなら、最初に自己申告しておいてほしかったわ」

 

 そう呟きながら立ち上がる。

 VR世界なので痛みがほぼ無いのが幸いだったけど、言ってしまえばただそれだけ。

 立ち上がった私が見たのは、目の前まで迫ってきた『タランチュラ』が30mmをこちらに向ける姿だった。

 

 あえなく全滅判定となったことで試合が終了して私達はVR世界から帰ってくる。

 こちらが感想を言う前から戦車の開発者達が満足そうに戦車のスペックなどを観戦していた関係者に説明していた。

 

 『LEGEND 2nd』という仮名称で進んでいる新プロジェクト。

 今までのPvPではなく、チーム対大型ロボットというPvEとも言える新しいモード。

 そのテストプレイというべきか、性能テストというべきか。

 それらの最終テストに私達が選ばれたという形だ。

 

 実は、例の多脚戦車暴走事件以降にそういうものがあっても良いのではないか?という話が出たらしい。

 それに巻き込まれた女子高生チームが『スパイダー』に勝ったことで、検討され始めたとか。

 実際に戦ってみて言えることだけど、もう少し弱くしてくれないとまず勝てないわ。

 

 旧式とは言え、当時は最新型だった『スパイダー』をよく倒せたなと逆にその女子高生達を褒めたいぐらいよ。

 後でレポートを出さなきゃダメだから、そこに思いっきり弱体化の要請を書かなくちゃ。

 

 

 

 

 

■side:私立琵琶湖スポーツ女子学園2年 霧島 アリス

 

 

 

 

 

 今日は、LEGEND協会に呼ばれて面倒な書類を提出してきた。

 どうして未だこういうものは、紙媒体なのだろう。

 まあ紙全盛期だった前世に比べるとマシになったと言えるのだが。

 

 せっかく外に出たついでとばかりに小物を扱うショップなどを見て回る。

 こういう店には意外と便利なものが売っていて、ついつい買ってしまう。

 まあ実際使うし便利だから構わないのだけど。

 

 そして予想通りに予定外の買い物をしたついでに、とある場所に寄る。

 AC版LEGENDだ。

 

 そこには既に何人ものプレイヤーが居て、端末を操作して装備を見直している者やプレイヤー同士で会話をしている者など、様々な形で順番待ちをしていた。

 それらに興味など無いのでスルーして大きなモニター付きの端末の前まで移動する。

 

 この前、あのサムライガールから『面白いものが見れる』と聞いたからだ。

 あの謎映画以上に『面白いもの』などあるのだろうか?などと考えつつも、まだ残っているのかなとモニターを操作して履歴を呼び出す。

 するとその『面白いもの』とやらの正体が解った。

 

 5v5で戦うAC版。

 開幕全員が戦わずに中央に集まっている。

 しかも全員がブレードとブースターのみ装備したストライカー。

 お互い離れた位置で向かい合う。

 全員が剣を両手で持ち杖のように地面に剣先を向けた状態で整列していた。

 

 その状態からお互い1人づつが前に出て剣を構える。

 リーダー役っぽいプレイヤーが開始の宣言をすると勝負が始まった。

 そしてその一騎討ちが終わると勝者は下がり、次のプレイヤーが前に出る。

 まるで団体戦のようだ。

 

 こうしてゲーム性を一切無視した謎の勝負が試合時間終了まで繰り返された。

 それがデータとして残っていたということである。

 そして意外とこの動画が拡散されており、かなりの再生数らしい。

 拡散しているならネットで見ればと思うのだが、あの子が『オリジナルを見て欲しいヨ~』と言っていたのでせっかくだからと見に来たわけだ。

 

 正直馬鹿らしいと思う反面、ルールに囚われずに自由に愉しむ姿は羨ましいと思う。

 

 ちなみにこの時の姿が写真で撮られており『自らが生み出した文化に興味津々?』などという話と共に拡散したらしい。

 そこからどんどん勝手に話だけが独り歩きをして、最終的にはAC版LEGENDに『一騎討ちモード』という最初から1対1で戦うモードが追加されるのだが、これはまた別の話。

 

 

 

 

 

 

 

 




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